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作者: 紫桜 (総ページ数: 86ページ)
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*34*
♯31 「香芽 華(コウガ ハナ)」
「きゃ、なっ、なにするっ、んですかっ」
パニックになって、変なふうになる。
「うーん、そのまま帰すのはおもしろくない?
だって、1人目のお客様だから」
「お、おろっ、おろしてください」
わけわかんないこと言わないで・・・・。
まず、おろしてください!!
「どうしようか」
そうだった、その決定権はそっちだった。
私は、地に足をつけることもなく、お姫様抱っこされた。
「・・・可愛い。小学生って、うるさいだけかと思ったけど、君はすっごく可愛いね」
「なんなんですかっ」
「あ、俺?
俺は柴崎 紅(しばさき こう)。どんなふうに呼んでもかまわないよ」
「紅・・・?」
「いきなり呼び捨て? まあ、いいけど」
「ちがいます」
コウは1人で充分なんですけど!!!!!
って、そうじゃなくて・・・。
「その前におろしてください。
私、探してる人いるんです!
てか、私が探されてるんですけど・・・」
「探されてる・・・?
迷子なの?」
私は、恥ずかしくなってそっぽをむく。
この状況も、恥ずかしいけど・・・。
「あー、そうなんだ。
なに、友達と来たわけ?」
「ちがいます。彼氏です!」
私がそういった瞬間、紅さんの顔に、笑みがでてきた。
「じゃあ、勝負しよう」
え・・・?
「その彼氏と、俺と。
かくれんぼってやつ?」
「かくれんぼって・・・」
急いでるって、いってるじゃないですか!
「うーん、じゃあ・・・。
イエスと答えなきゃ、おろさないよ?」
「どっちにしろあなたの希望通りじゃないですか!」
「そうだよ?」
さらっと答える、紅さん。
でも、このままじゃ落ち着かないから、そうする事にしよう。
「・・・分かりました」
「やった!」
紅さんは、ソファーに寝かすような形で私をおろした。
「これからどうしようか」
「私に聞かれても」
帰してもらうのが一番なんですけどね。
と、私は心の中でつぶやく。
「じゃあさ、お金要らないから、俺が用意した服着てみて!」
「え、大丈夫ですか・・・。
なんか、不安しかないんですけど」
「サイズはOKだと思うよ?」
「いやいや・・・」
「俺、妹ほしかったんだよね〜」
「話、聞いてます?」
紅さんは、そんな私を無視して「ちょっと待ってて」と、隣の部屋に行ってしまう。
あれ?
これって、脱走のチャンス?