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作者: 紫桜 (総ページ数: 86ページ)
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*37*
♯33 「香芽 華(コウガ ハナ)」
「華!!!」
そう、さけんだ柏は、ハイエナのように私を奪い取った。
「きゃあ、柏!?」
「何者!?」
私と紅さんは、ほぼ同時に言った。
「え、どうしたの、華。
なにその格好。そんな趣味じゃなかったよね。
てか、どうしてここに来たの。
なんでこんな危ないヤツと一緒にいるの?
逃げなかったの? 晃、めちゃくちゃ探してるよ」
「・・・えーと。
紅さんが着てって言ったから着て、西園寺さんたちから逃げるためにここに入って、そのときカギをかけたら、カギものすごく硬くて・・・」
「わかった。その話は後で晃とゆっくり聞かせてもらう」
ゆっくりのところを強めに言われた。
多分、根掘り葉掘り聞かれるだろうな・・・。
「それより・・・。なんなの、お前」
「俺は、柴崎 紅。君が彼氏?」
「ち・が・い・ま・す!
俺は柏! 彼氏は晃!
名前きいてんじゃねーんだよ。そんくらいしってるっつーの!
なんで華をかけて勝負したんだよ。
高3だろ? 歳、どんだけはなれてんだよ。
華に聞いたわけ? 勝負するからには華の了承得てんだろうな」
「うーん、一気に言われても、俺わかんな」
「分かれ!!
もう、いくぞ」
「え、あ、うん。でも、服・・・」
私がそういうと、柏はため息をついた。
「ああ、めんどっ!
3分な、超特急でね」
柏・・・。
なんか怖い・・・。
そう、思いながら、私は試着室に行った。
3分後・・・。
「着替えれました!」
「ん、ぎりオッケー。
走れよ?」
「え、あ」
私が返事をする前に、柏は手をとって猛ダッシュしていた。
まって、まって、まって。
私と柏の身長と、運動量、どのぐらい違うか分かってる?
なんで、人にあたらないかが不思議。
「は、柏・・・。もう、無理。
ちょ、休憩しよ?」
「え、このくらいで?」
「けっこう、限界、なん、です・・・」
「分かったよ」
柏は、とまると、しゃがみこんだ。
「え?」
「のって」
「え、でも」
「じゃあ、走る?」
「や、です」
「ん」
どうしよう。
晃が見たら失神しそうだよね。
や、でも、これ以上走るのは・・・。
私は、言葉に甘えて乗せてもらう事にした。
「なにコレ、かっる」
柏はつぶやくと、さっきの倍のスピードで走り出した。
「さっきのスピードは・・・」
「華にあわせた」
ぜんぜん合わさってませんでしたよ?
そりゃもう、敬語になるくらいです。はい。
「晃のところ行くからな」
「うん」
私がそういったとき、聞きなれた声がした。
この女子の声・・・。
しってる、大嫌いな・・・。
「あ、香芽さん、みーつけたっ!」
西園寺 富だ。