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6人の役者
作者: 紫桜  (総ページ数: 86ページ)
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*42*

♯34 「香芽 華(コウガ ハナ)」

西園寺 富・・・。

よく聞く声なのは、学校で聞く声がほとんど、西園寺さんだから。

柏が私をおろすのと同時に、西園寺さんは口を開いた。

「あー、よかった。私、一生懸命探したのよ?」

「・・・すみません・・・」

嫌味が、ひどく冷たい。
なに? この、ぞくっとするかんじ。

そう、初めて会ったときのように・・・。

「あら?そちらは?」

私の謝罪を無視して、西園寺さんは柏の存在を問いかけた。
多分、邪魔なんだと思う。

私1人だったら、いろいろできるから。

「私の友達です。たまたまきてたみたいなんです」

「そう」

にっこりと笑う。

西園寺さんの得意な、おしとやかスマイルだ。
先生や、児童会長としてステージに立つとき、見知らぬ人に会う時などにする。 学校ではね。

「こいつが西園寺 富?」
「え」

柏の発言に、西園寺さんの眉毛が少し動いた。
小さいけど、肩が震えている。

「あなたお名前は・・・?」

「なんで答えないといけないわけ?
 あと、急いでるから、よけてくれる?」

「なっ!」

「てことで、悪いな」

柏は、私の手をとってまた歩き出した。

「お待ちなさい!!」

西園寺さんの声が、廊下に響く。
一瞬、静かになったけれど、すぐにまたさわがしくなった。

「なんなのですか、あなたたちは・・・。
 私にそのような言葉遣い!!」

「お前こそなんなの?」

お前・・・。
きっと、そんなふうによばれたことがないだろうな。

「なに、あんたはえらいわけ?
 そんなふうに言える権限があるわけ?」

「当たり前です!
 私は西園寺家の娘なんです!
 それに、私はあの、三つ葉小学校の児童会会長です。
 そのような言葉、使っていいはずありません」

「だーかーらー。
 そんなの、ちっちゃーい世界の事でしょ?」

「は!?」

柏は、私の手をはなして、指でそれをあらわした。

「西園寺家の娘?
 ふざけないでくれ。
 あんたはなんかしたわけ、大きい家にするために。
 小学生のあんたが何かできるわけもないし、お金をつかってなんかするときは、親が手をくだすわけでしょ?
 あんたは、偉くもなんともないの。 
 あ、それに、金持ちが偉いなんてことも、ありえないしね」

「・・・」

「あと、児童会会長なんて、学校のことでしょ?
 一歩でも外に出たら、んなの、違うからね。
 どんなすばらしくて、優秀な学校でも、児童会会長なんて社会で力もってないし」

柏は、西園寺さんをにらみつけた。

「そうそう、井の中の蛙、大海を知らずっていうことわざ知ってる?」

意地悪く笑うと、歩き始めた。
私は、あわててついていく。

最後には、悔しそうな西園寺さんだけが残った。

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