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6人の役者
作者: 紫桜 (総ページ数: 86ページ)
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作者: 紫桜 (総ページ数: 86ページ)
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*48*
♯40 「紫 雫(ムラサキ シズク)」
「はあ、そういうことですか・・・」
瞳は、明るくわけを話してくれました。
けれど、内容は明るくなんかありませんでした。
「そういうことなら、協力します。
切手、いいの見つかると良いですね」
「・・・ありがと」
「それより」
笑顔の瞳とは反対に、今の私はきっと、怖い顔をしていると思う。
「どうしたんですか、今日柏たちと作戦を実行するんでしたよね?」
「んー」
はっきりとしない瞳の態度に、私はもどかしさを感じた。
「なにか、ありましたか?」
「隠せないね、雫には」
瞳の目から零れ落ちたのは、らしくもない、涙でした。
もう少しで、見逃してしまうような、静かな涙でした。
「私ね、柏にね、告白されたの。
好きだって。どうしようか。ねぇ、雫」
ゆっくりとした、落ち着いた声でした。
あふれる涙も、ただただ下に行くばかりで、感情をともなっていないような気がしました。
私は、それに危機感をもたずにはいられません。
本で、読んだばかりだったせいもあるからなのか、私の手は震えていました。
『感情がなくなった人間は、いつの日か壊れいくだろう。
その全てに感情がなくなったならば、もう、手遅れだ。
待っているのは、無の世界』
意味が分からなかった。
そのときは、いくら考えても、もやっとするばかりだった。
でも、今は、なんとなく分かる気がした。
その本は、フィクションだった。
それにも関わらず、こんな気分になるのは、どうして・・・?
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