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【鬼滅×花子くん】短編集続編 六人の軌跡
作者: むう  (総ページ数: 151ページ)
関連タグ: 鬼滅 花子くん 2次創作 オリキャラあり 戦闘あり 恋愛要素あり 
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 お久しぶりです。
 うちのパッパが家にいるので家族の時間大切にしてました。
 あ、そうそう今日のイメージ曲は、YOASOBIの「夜に駆ける」です。
 ぜひ聞きながらお読みくださいませ。
 
 *******************


 〈ミツバside〉

 【カガミジゴクの部屋】


 有為「炭治郎くんたちからの念話で、多少雑魚鬼の数も減ってきているようですね」
 ミツバ「そ、そう? それは良かった。…ってあれ、僕っ子再発?」
 有為「勘違いしないでください。どうにも、敬語なしだと慣れないんです」
 ミツバ「そ、そなんだ。いいんじゃない? 自分の好きなようにすれば」
 有為「そうだね…ですね」


 

 と、その時。
 



 ドンガラガシャンドシャッッ
 バラバラバラバラバラッッ

 


 無惨「やっと中に入れた。貴様が鏡の世界の支配者か? 随分と警備が甘いようだが」
 ミツバ「ッ!? 無惨? な、なんで…東方の人たちはどうして…」
 無惨「ああ、あいつらは少し動けなくしただけだ。しぶとい奴らだった」

 有為「ろ、六新鬼月の皆さんは?」
 無惨「……裏切者たちの事なら、深手を与えた。まぁ少しばかりの時間稼ぎは出来たと思うが」


 ミツバ「……何てことをっ」
 無惨「ミツバと言ったかな。よくもまあ好き放題してくれた、今から地獄に送ってやろう」
 ミツバ「嫌だッ!」



 ミツバの腕が無惨の襟元を掴む。
 鋭い爪が無惨のシャツに食い込み、無惨は鬱陶しそうに首を回す。
 そして彼は、数分前と同じようにニヤリと笑い、腕を振り上げようとして……。



 彼岸「させないっ!」
 骸「光の呼吸・玖ノ型 閃光爆裂!!」


 壁にかけられた鏡からカガミジゴクの部屋へと落ちて来た、六新鬼月の壱の双子の姉妹。
 自身の血鬼術で全ての呼吸が使えるようになった骸は、常に装備している剣を振りかざす。


 バチィィィィィィィィィィッッ!



 無惨「ッ。この私に勝負を挑むとは面白い!」



 無惨が赤い相貌を細めて振り向く。
 彼の視線の先には、六人の鬼―六新鬼月たちが立ちはだかっている。


 燐月「ここで決着をつけよう無惨様。俺たちは俺たちらしく行動する自由があるんだ」
 求手名「いつまでもお前の命令に従ってはいられないな!」
 新羅「そこの陰陽師と怪異くんはどうする? 逃げてもいいんだよ?」


 有為「逃げる? そんな選択肢は残念ながらありませんね!」
 ミツバ「と、とと、当然僕も、こいつにお仕置きしてあげるよ!」


 無惨「――愚かだな。そうしている間にも、紅羽の支配は強まっているのだぞ」



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 〈睦彦side〉



 睦彦「ハァ、ハァ。出口がどこかも分かんねえ。取りあえず胡桃沢の記憶を取り戻す!(だだ)」
 紅羽「………刻羽さん」
 睦彦「え?」


 鬼化した胡桃沢が、不意にポツリと呟いた。
 今まで「お前」とか、「睦彦」としか呼ばれてなかったので、驚いて背中の彼女を見る。
 胡桃沢は罰の悪そうに、ぼそぼそと続ける。



 紅羽「睦彦くん」
 睦彦「へ?」
 紅羽「睦彦さん」
 睦彦「お前、何を言って……」


 紅羽「むっくん」




 刹那、俺は目を見開いていた。
 久しぶりに聞いたような感覚に、再び振り向く。
 昔は「刻羽さんと呼べ」だなんて怒鳴っていたけれど、今となればそれ以外で呼ばれることが、とても変に思う。



 紅羽「なんか、むっくんって呼ぶと、安心する」
 睦彦「………」
 紅羽「紅羽のせいで無理をさせてしまってるなら、謝る」
 睦彦「………そ、そんなこと」

 紅羽「分かってるそす。我もずっとモヤモヤしているから。答えはすぐそこにあるのに」
 睦彦「そうだよ、あと少しなんだ。お前に早く戻ってほしい」
 紅羽「どうすればい……う゛っ」



 思慮深げな顔で何やら考えていた彼女が、急に悲鳴を上げて俺の背中から滑り落ちた。
 頭を抱えて地面にうずくまっている。


 睦彦「ど、どうした? 大丈夫か?」
 紅羽「や……やだッ……やめて……ッ 紅羽はお前のものじゃない……っ」


 睦彦「どうしたんだ? なぁ、胡桃z」
 紅羽「ウガァァァァァァァァァァァッッ」



 突然、牙をむき出して胡桃沢が俺に遅いかかってきた。
 不意を突かれた俺は、慌てて剣の柄で攻撃を受け止める。
 彼女は苦しそうに、何かを必死で我慢しているような表情で、こっちを睨んでいた。


 睦彦「っ!?」
 紅羽「違う……グルルルル……違うそす……頭から離れろ無惨…グルルルル……」


 無惨!?
 無惨が鏡の世界に、はたまたこっちのエソラゴトの世界に来ているのか?
 そして胡桃沢がこんなに苦しんでいる原因は、もしかして……。



 睦彦「頑張れ胡桃沢、負けんな! 大丈夫だ、俺はここにいるっ」
 紅羽「我は紅羽じゃない……そんな名前じゃなかったはず……っ お前の言う通りなんか……っ」
 睦彦「負けるな胡桃沢!! こんなの、お前は望んでないだろっ! お前はもっとっ」


 そう、あの胡桃沢仁乃は、ここで折れる人間じゃない。
 俺は彼女を一番近くで見てた。
 いつだって明るくて、優しくて、強くて。
 こんな俺を好きだと言ってくれて、必要だって、そう言ってくれて俺は嬉しくて。

 二人で肩を並べて歩くのが、
 同じ話題で盛り上がるのが、
 彼女にからかわれるのが、ただただ楽しくて。


 だからここで終わっちゃダメだ。
 まだまだ、やりたいことが残っている。
 だからふんばれ、負けないで、また笑って俺を「むっくん」って呼んでほしいから。


 紅羽「離れろ無惨………っ。紅羽は! 仁乃は! お前なんかの支配になんか負けない……っ」
 睦彦「フンバレ! 頑張れ胡桃沢!!」


 紅羽「無惨っ………う゛っ!」



 また、胡桃沢が苦し気にあえいだ。
 どうやら無惨の支配に逃れることに成功したようだ。
 きっと、見えないところで炭治郎たちが無惨と戦ってくれていたのだろう。
 そのことに感謝しつつ、俺は胡桃沢の腕を引っ張って起き上がらせる。



 胡桃沢はまだ瞳や牙は鬼のままだったが、自我はしっかりと取り戻した様子だった。



 睦彦「大丈夫か? 胡桃沢」
 紅羽「思い出した……。全部思い出した。私は、胡桃沢仁乃だった」
 睦彦「ああ、そうだよ。いつだって明るくて優しい、俺の自慢の彼女だよ」


 紅羽「むっくん、一緒に抜け出そう。きっともう、大丈夫だから」
 睦彦「おう。俺はいつでも、お前の味方だ」



 胡桃沢にそっと手を差し出す。
 彼女は俺の手に、自分の小さな指をそっと絡ませた。




 メイ(おめでとうございます。どうやら命令をクリアしたようですね)


 ははは、甘かったなシジマさん!
 俺たちはずっと信じてた。
 こんなことで折れるほど弱い人間じゃないんだぜ!



 睦彦「よし、走るぞぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
 紅羽「うん!!」



 二人の歩調がしっかりと合わさる。
 俺たちは、二人で夜に駆けだしていく。



 【大正コソコソ噂話】
 今日の大正コソコソ噂話:むうのひとりごと



 随分あっさりと支配を外した仁乃ですが、これには理由があります。
 何故こんなにもあっさりと事が進んだのか?
 種明かしはまた次回。お楽しみに!
 
 


 

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