完結小説図書館
>>「紹介文/目次」の表示ON/OFFはこちらをクリック
*2*
『第一話』
【贅沢なハンバーグ】
冷たい風を全身で感じ、震えながら私は目が覚める
「う...もう六時半か」
私は決まって六時半に目が覚める、この時間帯はまだ冷えて子供ならまだ布団を被って起き上がるのを拒む時間だ
だが大人はそうはいかない、この時間から炊飯器のスイッチを入れたり、味噌汁を煮込んだり...ゆっくりしてはいられない
独り暮らしをして初めて親がどれだけ幼かった私のために頑張ってくれたのかを実感したくらいだ
いや、正確には一人ではなかったか...まぁ、こんな時間から起きたりはしないだろう
朝御飯は簡単なものでいい、ご飯、味噌汁、あとはおかずを一個作ればいい
定番はやっぱり『だし巻き玉子』だろう、三個か四個作れば腹も満たせる
「...あっ」
そう思っていたのだが...軽率だった
卵を切らしていた...これではおかずを作れない
私は万年金欠で食材を切らすことは稀にある、だが卵は重大すぎる、大半の料理が作れない
回りにはお菓子に調味料...とても単品じゃ無理だ
あるものといったら...冷凍庫にキャベツがあった
「...はぁ、ジャック怒るだろうなぁ」
キャベツだけなんて、刻むしかないじゃないか...
どっかの格闘漫画と違って魚もないし、これじゃ私だって満足出来ないよ
「...なんてこった」
...
「おかあさん、おはよう」
「あっ、ジャック...もう起きたのか」
気が付いたら七時、子供でもそろそろ起きる時間帯だろう、ジャックは居間に来て早々座り込み、朝御飯を期待している
...ああ、なんて純粋な目だ、こんな子に今私は刻んだキャベツを刻んでケチャップをかけただけのものを食べさせようとしているんだ、悪魔か
「...なにこれ?」
「本当は卵焼き食べさせてあげたかったけど、買い忘れてたんだ...」
「もう...おかあさん」
「許してくれ、今晩はハンバーグ作ってあげるから」
「ほんと?やくそくだよ」
「ああ...約束だ、とりあえず朝御飯を食べよう」
「うん」
「いただきます」
私も二人分の箸を用意して、ちょっぴり物足りない朝飯を頂く
...『おかあさん』ジャックからそう呼ばれているが、実は我々は血も繋がってなければ、親子ですらない。
同居人、くたびれたアパートで私と暮らしてくれた...愛くるしい私の大事な存在だ
「...さて、カルデア日本支部までまだまだ時間はある、皿を洗い終わったら洗濯でもしておこうか、ジャック」
「うん!」
食べ終わった食器を片付け、時計を確認しながら洗濯物を取り出す
私の仕事に関してだが、今はあえて詳しくは語らないでおこう
ここで唐突に『世界を救う仕事をしている』等と言っても、誰も信じないだろうし