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*3*
...
午後六時、まもなく夜。
ようやく私は仕事から解放され、帰りの電車に乗っていた。
ジャックは私にもたれ掛かって静かに眠る...だが、私は悩んでいた
「ハンバーグ...作れるかなぁ」
正直ハンバーグはあまり作り慣れてないとか、安い肉があったらいいなとか、豆腐を入れたら怒るかとか、どうでもいい事ばかりだが...
だが、ジャックと約束してしまった以上しっかりと作ってやらないとな
「あっ、そろそろ着くぞ」
「うん」
ジャックの肩をさすって起こし、私の住む○○駅へと降りていった...
...
「よし、早速買いに行くとしよう」
私はジャックの手を繋ぎ、カゴを掴みとってスーパーへと入る...この瞬間は本当に親子みたいだとつくづく思う
ハンバーグなら必要なのは合挽き肉ぐらいだ、安いのを買えば充分なんとかなる。
後は玉葱だろうか...ハンバーグの見映えがよくなるし、余ったら味噌汁の具にも使える
後はそろそろ無くなりそうな日用品でも買っていくか、よし
メニューを考えていると、ジャックが服の袖を引っ張っていた
「どうしたんだいジャック」
「おかあさん、あそこ」
ジャックは肉売り場とは別のところを指差す、じっと見渡してみると...見覚えのある姿があった
柄のないシンプルな衣服、眼鏡に今時のおつかいメモ
「マシュ...?」
マシュ、『マシュ・キリエライト』
どこか遠く、海外にある本部から派遣されてきた私の後輩だ。
とても優秀でどうして日本にやってきたのかどうにも分からない不思議な人物だが...悪い人ではない
「マシュ!」
「あっ...先輩、お疲れ様です」
私はジャックを連れてマシュのところに駆け寄る、お互いこんなところで出会うとは思わなかったので凄く驚いている
「まさか君もここで買い物しているなんて...晩御飯でも探してたの?」
「あっ、はい、先輩もですか?」
「ああ、まぁ献立は決まってるようなものだけどね...マシュは?」
「それが...私、献立を自分で決めたことが無くて」
「え?」
「カルデア本部では決められた食事を用意されてましたから...」
はあ...向こうは給食みたいなものでもあるのかな。
給食を考える人は栄養バランスとか考えながら飽きないようにメニュー考える必要あるから、憧れるな...
「それなら一緒にハンバーグ作らない?」
「えっ」
あっ、しまった...余計なことを考えてたら変なことを口走ってしまった、急に晩御飯誘っちゃ悪いよな、謝らないと
「あっ、ごめんマシュ...今のは」
「良いですよ」
マシュの顔を見る...不思議と怒ってるようには見えない
「一緒に作りましょう、先輩」
「え、で、でも君の献立は...?」
「私、一度でいいから料理を作ってみたかったんです」
あ、ああ...そういう事か
こんな事言われたら引き下がれない
「おかあさん?」
「うん、とりあえず...合挽き肉と玉葱買わないとね」
「たまご!」
「あっ、そうだった!あやうく明日の朝御飯も悲惨なことになるところだった」
私は篭にハンバーグの材料と明日の朝御飯の準備を詰めていく
「それでは先輩、また店の外で」
「あっ、うん...またね」
後輩と料理...責任重大だ
もしマシュに怪我でもさせたら私の首が飛ぶだけではすまない....慎重に動かないと
「おかあさん、こぜにたりてない」
「うわっ、6円足りない!...あっ、50円玉がたった」