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*69*
「そういえば先輩、正義の味方は親に見せられなかったと聞きましたが」
「そう、父さんも母さんも何故か正義の味方を見せたがらなかった...理由も分からずしまいさ」
「恐らくですがこれが原因かと」
マシュはスマホのタブ表示で正義の味方のWikiサイトのキャストとニュースサイトを同時に見せる...立香は正義の味方しか見ていなかったので作成者までは把握してなかったのである
「これが何か?」
「このドラマの監督がスタッフに暴行を加えテレビ局から追放されたという事件があったようです、それが原因で正義の味方も35話で打ち切られたとか」
「打ちきりだったのか!キリが良くて知らなかったよ!」
「きっと先輩のお母様は気を使って.....」
「確かにあの頃ならショックを受けたかもしれないよ、今知れて良かった...マシュ?」
マシュはキャストの監督の欄をまじまじと眺めていた
「あっ、いえ...なんでもありません先輩、オムライスの材料を探しましょう」
...
「おい、メイヴ...お前まだあの胸糞悪い番組見てんのか」
「...途中で視聴を切るのはプライドが許さないのよ」
メイヴとクーは同じ頃『正義の味方』を視聴していた、立香のような純粋な見形も出来ず、ただただ悲しさと苛立ちが増えていく
「正義の味方もよく挫けないわね...あれだけ尽くしてるのに不満も漏らさず怒りもせず、そんなに信頼出来るようなやつなのかしら?それになんか脚本もドラマというよりはアニメ臭いのよね...」
「どういうことだ?」
「人形劇見せられてるような気分よ、ただ台本通りに動いてるだけでドラマの魅力である人間臭い演技も演出も何もない、作品としても三流よ」
「そんなにか」
「ええ、そんなによ...ある意味では次が気になるわね、マスターが正義の味方しか見てなかったのが幸いね...」
テレビの中の正義の味方は第30話の次回予告へと移り変わる
そこでは正義の味方の家が燃やされ、保険も黄金類も何もかも奪われ次々とビルが立っていく姿が撮される
序盤のような正義の味方によるありがたい言葉も無く、ニタニタと気持ち悪い気分になっていく
「どんな気持ちでこんな作品を作ったのよ...」
「おい、少し貸せ」
クーはリモコンを取って停止ボタンを押し、ゆっくり再生でキャストを確認していく
「どうしたの?」
「いや、俺の気のせいかもしれないが...ちっ、気のせいだった方がマシだったようだ、こいつなら頷ける」
「ちょっと、クーちゃん?」
「メイヴ、あんたに頼みたいことがある」
「勝手に話をすすめないでくれるかしら?」