完結小説図書館
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*9*
「まずはどうするんだい?」
「少し待ってください」
私はズボンのポケットからスマホを取り出して、たこ焼きの作り方を検索する。
今の時代作り方なんて調べれば簡単に出てくる、私はたこ焼きを作ったことはないがレシピさえ分かればちゃんとたこ焼きと呼べるものを作ることが出来ると思っている
「まず卵を一個ボウルに入れてかき混ぜます」
「よし!」
ダ・ヴィンチさんが冷蔵庫から卵を取りだし、台所の角を使わず指の圧力だけで卵を割る...とんでもないな
「えーと、そこから小麦粉に水、調味料を入れる...と、ちょっとすいませんね」
「はいよ」
私は袋から調味料や小麦粉を取りだし、今ダ・ヴィンチさんがかき混ぜてる卵に放り込んでいく
...途中で固いものに触れたががすぐに分かる、ダ・ヴィンチさんの腕だ、義手だとしても石や鉄のような感触はしないはずなのに
「これで生地は完成しました、私タコを切っておきますのでたこ焼き器を付けておいてください」
「じゃ、後は任せたよ」
私は普段なら使わないであろう品...タコの足を取り出して一口サイズにして切っていく
そういえばたこ焼きなんて久しぶりに食べるな、夏祭りなんてろくに行かないしダ・ヴィンチさんのように作ろうとも思わなかった...
たこ焼き...何か忘れてるような...あっ!!
「たこ焼きを回すアレがない!!」
「その程度なら大丈夫、ほら油塗っといたから」
「は、はぁ...では次に生地を入れてください、生地のなかに桜えびに青ネギ、紅しょうがを入れますんで」
「了解、それならタコだけ一旦ちょうだいな」
「はい...」
私はネギと紅生姜を切って生地に埋め込み、その後からタコを埋め込んでいく
「...で?何もないのにどうやってたこ焼き回すんですか?」
あいにく家には串の代わりになるようなものはない...失念した、たこ焼き器を買っているんだから普通に持っているものと思っていた私のミスだ
「心配無用、ダ・ヴィンチちゃんに不可能は無い!」
そう言って義手を叩くと中指の部分から爪楊枝の入ったケースが飛び出す...とりあえずどうしてそんなところに収納されているのかという疑問は捨てることにした
ダ・ヴィンチさんは爪楊枝で正確にたこ焼きを回していく
「いいだろう?この腕には色んな機能が付いているんだ」
「つまようじなんていつ使うんですか...」
「え?君やらない?歯の隙間に何か引っ掛かったときに...」
「おっさんかっ!!...あっ、失礼しました」
「いいさいいさ、実際おっさんだし」
「え?」
「ほらほら、いい感じに焼けてきたよ」