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*8*
...
あの後、私は普通に仕事をすませ、普通に帰ろうとしていた...
時計の時刻は午後六時、あのダ・ヴィンチを名乗る謎の女性との約束の時間だ
「あっ、藤丸君!こっち!こっちだよー!」
...居た、入り口の近くのベンチで手を振っていた
これが上司ではなかったらひたすら他人のふりをしていたいが...
「はい、今行きます」
...
「まただれかいる」
「えーと...ダ・ヴィンチさん?」
「ダ・ヴィンチちゃんで構わない」
「いやそれは無理!いきなり馴れ馴れしすぎますって」
「うーん...じゃあしばらくの間だけダ・ヴィンチさんは許しておこう」
...何なんだこの人は、マシュとは違う意味で不思議な人だ。カルデア本部というのはこういった人間ばかりなのか?所長にもなるとどれだけの変人になるか...
「それでだ、マシュに料理をさせるために単純な器具でも用意しておこうと思って...」
「買ったんですか?」
「うん、これだけど」
ダ・ヴィンチ...さんは片手に持っていた鞄から大きな箱を取り出す、調理器具丸ごとのタイプで丸い型が沢山ある絵柄からして...
「...たこ焼き器?」
「買ったのはいいんだ...ほらダ・ヴィンチちゃんイタリア人、日本の料理なんて全然知らないし作ったことすらない」
「...だから私に作れと!?」
「マシュが気に入るほどの奴なんだ、頼むよ!カルデアで料理が得意なのは君だけなんだ!」
なんて事だ、他に作れる人間はいなかったのか!?
いくら料理が出来ると言われてもたこ焼きの手料理なんてやったことすらないぞ、大阪人じゃあるまいし!
...だが、頼まれた以上断るのも嫌だ
マシュの事でもあるからな
「...食材費は全額貴方が用意してくださいね?」
「その程度くらいいくらでも、払うのは私じゃなくてカルデアだし」
「えっ、職権濫用?」
「これもビジネスの一貫だ、着いてきたまえマスター君!」
「ま、待って!まずスーパーに寄ってから!!私の冷蔵庫マジで悲惨だから!!」
「おかあさん、ばんごはんなに?」
「たこ焼き!!」
...
「あっはははは!今日はめちゃくちゃ買ったねぇ!」
卵、小麦粉、天かす紅生姜青ネギ桜えび、調味料に鰹節と青のり、マヨネーズ...あと忘れてはならないタコまでレジ袋がパンパンになるまで買ってもらった
たこ焼きってこんなに色々使うのか...知らなかったよ、職人も大変だな
「さてさてではでは...クッキングタイムとしゃれこもう!」
マシュ以上に楽しんでるように見えるのは気のせいではないだろう、さてはこの人も料理とは縁がなかったな