コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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ある日の放課後の魔科学 更新再開っ 
日時: 2011/03/17 13:51
名前: 遮犬 (ID: Q2XZsHfr)

クリックありがとうございますw遮犬と申しますw
えーとコメディではー…2作目、ですかねwシリアスは見て見ぬふりをしておきましょうw

さてさて…今回は非日常コメディファンタジーでございますw

とか言っておいて思いっきり学園モノとか入ってもいいじゃない!萌えキャラいたっていいじゃない!
そんな願望の物語ですけどもw立ち読み程度にどうぞb


…つきまして注意事項…
・亀更新とか、ないな(笑)という方はご遠慮をw
・遮犬の小説を見ているとアレルギー反応が(笑)という方はご遠慮をwてかいっそ苦しみなさい(ぇ
・ファンタジーとか言ってるけどコメディ学園入ってるじゃん(笑)っていう人もご遠慮をw
・多少スパイシーシリアスとか入ってますけど…何か?(殴(蹴

作品イメージソング【】…
ヒロイン的イメージソング【WORLD'S END UMBRELLA】…>>31

〜目次〜
プロローグ…>>1
第1話:ある日の放課後の雇われ救世主
♯1>>7 ♯2>>8 ♯3>>9 ♯4>>10 ♯5>>15
第2話:ある日の放課後の憂鬱
♯1>>16 ♯2>>17 ♯3>>18 ♯4>>19 ♯5>>20
第3話:ある日の放課後の白き小さな王女
♯1>>21 ♯2>>29 ♯3>>30 ♯4>>35 ♯5>>36 EX…>>38
第4話:ある日の放課後の銀髪王子
♯1>>37 ♯2>>41 ♯3>>42 ♯4>>44 ♯5>>45 EX…>>46
第5話:ある日の放課後の学園非日常
♯1>>49 ♯2>>50 ♯3>>51 ♯4>>52 ♯5>>55
第6話:ある日の放課後の休日今日この頃
♯1>>56 ♯2>>60 ♯3>>62





〜【キャラクターデザイン担当】〜



〜【お客様方】〜
月鈴さん
むーみんさん
真珠さん
夜兎〆さん
ハッチしゃnさん
優舞さん(凛さん)
陽風さん
玖織さん
瑠乃さん

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Re: ある日の放課後の魔科学 ( No.7 )
日時: 2010/12/17 17:57
名前: 遮犬 (ID: XvkJzdpR)

今日はのんびりとまだ顔の見慣れていないクラスメイトと授業を受け、そして帰宅。
真っ直ぐ家に帰ると、すぐさまアルバイトのチラシを確認。そしていいアルバイトを見つける。
後はそのままアルバイト先を決定できれば俺の今日の予定はほぼ完了するだろう。
アルバイトを見つける理由は、もちろんこの一人暮らし学校生活で仕送り金では自由なことが出来ない。
それに食べ物もやたらと質素。これはもはや親から働けといわれているようなものだろうな。
つまるところ、俺はいいアルバイトを探していた。でもそれは自宅で、それも普通の店のチラシで、だ。

「あの……帰っていいか?」

一人、俺はとある教室で椅子に座らせられている。
目の前には美少女二人。仏教面したのと可愛らしい顔をしたのが。

俺は今更ながらに後悔している。どうしてあんなものを信じてしまったのか。
そもそも、学校でアルバイトの紙とか見つけることすらおかしい。
俺は、ある一枚の掲示板に貼ってあったチラシを見つけたことが事の原因であった。

"素晴らしきアルバイトを探していませんか?"

何でこんなものに騙されたのだろうと、今更ながらにため息物だ。
そしてそのアルバイト面接の会場たる今はあまり人気のない旧校舎の無人教室へと辿り着いたわけで……


俺はその面接会場たる教室を一応ノックして入る。
書いてある内容は全く、というより何も書いていなかったので不気味だったが、ある一つの項目が目に付く
それは、時給や給料等は個人の頑張りによりいくらでもあがるとやらが。
それがなにやら金欠の一人暮らし高校生には魅力的で、とても素晴らしいものに見えた。

(とっても素晴らしいぜ……!)その時の俺はものすごくバカで単純で金の亡者だったと認識しざるを得ない

中は普通に机が一つ。椅子が両側に一つずつあり、何とか顔合わせできるかなというぐらい。
他は黒板と少し本の入った本棚ぐらいだった。

「なんていうか……本当にここで面接するのか?」

半信半疑でとりあえず中に入る。だが、見た通り誰もいなかった。
時刻は放課後により、部活動が始まる時刻。
外は結構騒がしくなる頃なのだが旧校舎の方で部活動をするのは文化系の方であるために騒がしくない。
むしろ静まりすぎて逆に不気味に感じる。


そして無為にも時間はただただ流れ…10分、20分、30分……

「もう帰ろうっ! うん。見なかったことにしようじゃないかっ!」

何とも無駄な時間を過ごしたと言いたげに思い切りよく椅子を引き、立ち上がる。
その時だった。

「待った」

どこからか声がした。

「君、アルバイト募集の紙を見て来た子だよね?」

辺りを見回す。するとその声の主はいた。
外見は声に似てとても穏やかそうで、なおかつ可愛らしい雰囲気を漂わせる。
美人、ともいえるが美少女、ともいえる。

つまりは女性の方が長いセーターの裾を手で可愛らしく持ちながら教室の出口から話しかけていたのだ。

「えっと……あ、はい」

何ともいえない返事を返してしまった。
というか、30分〜40分ほど待った後のこの状況。フリーズしてしまうのも仕方ないといわせてくれ。

「あ、やっぱりそうですか。お待ちしておりましたよ」

「え?」

お待ちしておりましたって、俺の方が30〜40分ほど待ってたんだけども。

「あ、お待たせしました、ですね」

可愛らしく照れ隠しのような笑顔を見せて言う。
正直、ものすごく可愛いんだが。

「……あ、申し遅れました。僕の名前は伊集院 雪乃(いじゅういん ゆきの)と申します」

いきなり自己紹介された。少し大きいであろう女性用ブレザーを着て、お辞儀される。
ていうか……僕っ娘? マジか……。

「あ、え、えーと……俺の名前は杜坂 木葉っていいます」

俺は今、顔が赤いのだろうか。ちょっと暑くなって来た。
俺の名前を聞いた瞬間、何故か伊集院は驚いたような顔をした後、とびっきりの笑顔に変えた。

「ふふふ。可愛いお名前ですね?」

あぁ……いい……。……って待て!! 俺は今までこの名前を可愛いとか言われるのが嫌じゃなかったのか!

「どうしたんですか? いきなり頭抱えて……」

「い、いや……大丈夫です。病気なんです」

「病気? それって大丈夫じゃないんじゃ……」

ま、まずい……。なんていうか、冗談が通じるのかどうか読めない。
というか、俺の冗談のレベルが低すぎるのか? いや、でも——

俺が悶絶、そして伊集院が心配そうな目で俺を見ていた時だった。

「あーもう、しんどい」

言葉通りにダルそうな声がどこからともなく聞こえてくる。
とは言ってもここは3階で、聞こえてくる場所は扉一点のみだとは思うが——

「って何で黒板が扉みたいにっ!? ていうかすげぇ!!」

説明するととても難しいが、俺の興奮を説明してやろう。え? 興奮じゃなくて状況? わかったわかった
つまりだな。黒板がSF映画の如くにすげぇスライド音と共に左右に開き、そしてその中から——
無愛想な顔をした美少女一人が登場。

「——あんた、誰?」

「……はっ! 危ない危ない……つい、このSFすぎる感じに感動のあまりフリーズしてしまっていた……」

俺がぶつぶつと一人でフリーズしていた成り行きをアバウトに話すが、謎の無愛想美少女は——

「あぁ、アルバイト?」

「話全然噛み合ってないねぇ!?」

全くもって違う話になった! ていうかこの状況からどうやってアルバイトの話に繋がるんだよっ!

「まぁ……でも、今回もダメそうね」

無愛想な美少女は大きくため息を吐き、何だか俺にとって失礼なことを言っているような気がするが……。

「あ、でも瀬菜せなちゃん。この人が"あの"……」

いきなり伊集院が無愛想な美少女に話しかける。どうやらこの美少女、瀬菜という名前らしい。
すると瀬菜は驚いた顔をして

「え!? こいつが!?」

とか俺を指さして言った。
ものすげぇ、失礼だと思いませんか貴方。

「………」

若干、睨みつけるような形で俺を観察している瀬菜。そしてため息一つ吐いて言う。
てかこっちがため息吐きたいよっ!って言いたかったがやめておく。

「アルバイトを言うわ」

(やっとか……)そう思ったのは束の間。


のちに後悔することになる。



「アルバイトの内容は、世界を救うことよ」



すごい勢いで、全身がフリーズ化したのは言うまでもない。

Re: ある日の放課後の魔科学 ( No.8 )
日時: 2011/01/21 12:44
名前: 遮犬 (ID: .pwG6i3H)

「あの……帰っていいか?」

そんなこんなで、こういう言葉が出たわけだ。分かってくれるだろう? 理不尽じゃない人は。
大抵のことは大体、俺は受容できる。これもそれも母・姉コンビのせいなんだけど……。
だが、今回は違う。世界を救うことがアルバイト? 何それ。

「何で帰んのよ」

平然な顔、というより無愛想な顔で瀬菜とやらが俺を睨みつけてくる。
顔的には早く帰りやがれ、みたいな顔をしていらっしゃいますけど。
だからこそ俺はため息混じりと半笑いで言ってやる。

「だってな? 世界を救うことがアルバイト? それ初めて聞いてはいそーですかってなるか?」

我ながらこの意見はごもっともだとは思った。
いきなり「そこの貴方。世界を救ってみませんか?」って言っているようなものである。
——そんなムチャクチャな救世主あるかぁぁぁっ!、と言いたいところだ。 

「あー確かに……最初は、信じてもらえないかもしれないですね……」

伊集院がなにやら呟き、そして俺の顔を見据える。
その顔はどこか凛々しく、何ともいえない美形だった。
その姿に少し見入ってしまったりもするが何とか煩悩を振り切る。

「あの黒板の向こうには、貴方が既に知っている世界があります」

俺はその伊集院の言葉に黒板に目を向けてしまった。
左右に開いている黒板の奥は、暗闇で何も見えない。

「この奥に、別世界があるとでもいいたいのか?」

「その通りです」

即答された。いや、あの、だから……。
そんなものをすぐに信じろといわれても信じられるわけがない。
何せこの学校は普通の高等学校で——

「この学校は普通じゃないわよ?」

何で瀬菜とかいう奴! 俺の心読めたんですか!
別世界がどうたらこうたらより、貴方のその心理術が怖すぎてたまりませんが。

「いや、口から漏れてるから」

「えぇっ!!」

どうやら知らぬ間に思っていたことが筒抜け状態だったようで。
え、てかいつから筒抜けだったんですか? それによっては俺、マジで帰りたいんですけど。

「……まあいいわ。それで、この学校は普通の学校じゃないの」

「うぐぅ……。な、何で?」

「貴方は、魔科学って知ってるかしら?」

いきなりわけの分からん単語が生み出されたぞ、おい。

「あの……」

「何?」

「もしかして、厨ニ病で——ぶはっ!」

殴られた。厨ニ病っぽいじゃねぇかよ……。絶対外野から見たら確実に厨ニ病だろ……。
ゴスッ!
もう一回鈍い音が俺の頭に響く。

「いってぇっ! 何するんだよっ!?」

「口から漏れてんのよっ!」

「えぇっ!!」

ちょっと待ってくれ。いつからそんなに俺の心内状況が漏れ出した? Why?

「ま、いいわ……。じゃあ本当かどうか、自分の目で見てもらおうじゃない」

瀬菜とやらは黒板の方に指を向けて、言い放つ。

「入れ」

単刀直入すぎやしないか?

まあいいか、と心を落ち着けて黒板へと近づいていく。
これで学校とかだったら本気で笑えるけどな。
ていうか、魔科学とかいうの、まだ説明してもらってなかったような……。

「魔科学は、この世界に行ったら分かるわ」

そう、後ろの方から瀬菜とやらが声をかけてくる。ていうかだな……

「一緒にきてくれないのか?」

後ろを振り返りながら俺が言うと、呆けた顔をして瀬菜とやらが

「小さい子じゃあるまいし、一人でいけるでしょうが」

「これって一応アルバイトだよな?」

確認のために言っておく。呆けた顔で一人で行かせる発言をしやがった腹いせもあるが。

「その通りよ? 行ったら分かるから。はい、早く行けっ!」

ゴスッ! 鈍い音が俺の腰か背中辺りから鳴り、その後に続いて痛みが。

「ちょ、まっ——!」

後ろから思い切り蹴られたようで、その勢いで俺は暗闇の中をこけるような形で——

「うわああああっ!!」

消えるように、進んでいった。




「あーくそ……いってぇー……!」

ぶつぶつといいながらも俺は立つ。
そしてそこが学校でないことがすぐに分かった。

「えーと……雪?」

季節はずれもいいところだ。確か、春だったろ? 俺のいたはずである世界は。
それが何だ、この見渡す限り雪平原は。

「マジかよ、おい……」

そして急に寒気が襲ってくる。
春の格好だからまだ少しは厚着だが、寒いものは寒い。何せ周りは全て雪なのだから。

「うん……?」

そしていきなりの眠気。
そういえば、雪とか降ってたりするところで寝たらダメなんだったか?
てかその前に、この状況を説明してくれる人を誰か一人くれ。
俺は、何をすればいいんだ?

「ねむ……」

寝れば夢は覚めるだろうか?
この寒い世界から元の世界に戻れるのだろうかと思った。

「本当に、寒いところって……眠くなるんだなぁ……」

と、言った所で倒れこんでしまう。そして意識が朦朧となり——
最後に見えたのは、可愛らしいフリフリをつけた白い毛布のコートを着こなす少女の姿だった。


「この人……? あ……! 予言の人!」

その可愛らしい少女は倒れている木葉を必死で起こして自分が乗っていたソリに乗せる。
傍では白い狼のような犬が二匹、せわしく白い息を吐いている。

「ライ、レイ? 二人共、行ける?」

そうやってその犬に少女は呼びかける。その二頭の犬は鳴き声で返事をした。

「よし、行こう!」

少女は木葉を乗せて、ソリを滑らせた。


予言で言っていたこの世界を救ってくれるという救世主を乗せて。

Re: ある日の放課後の魔科学 ( No.9 )
日時: 2010/12/03 17:47
名前: 遮犬 (ID: XvkJzdpR)

「やっと、きてくれたね?」

殺風景な教室の中。その中で黒板が左右に大きく開き、奥は闇のみとなっている。
何とも見る限り異様な雰囲気を醸し出している教室の中、伊集院は目の前にいる美少女、瀬菜に声をかけた

「……杜坂 木葉のこと?」

瀬菜の回答に笑顔で頷く伊集院。どうやら回答は正解だったようだ。

「瀬菜ちゃんがずっと待ち望んでいた、"救世主"だよね?」

伊集院は笑顔で言うことに対して、瀬菜は返事もしなかった。だが、否定もしない。
そんな態度も、一瞬だった。すぐに悩んでいるような表情に変わる。

「私との、記憶はない。……ううん、取り戻せないから」

「え? 何か言った?」

瀬菜が小さく呟いたために、伊集院は聞き取れなかったみたいだった。
そんな伊集院に苦笑し「なんでもない」と、言ってから黒板の奥にある闇へと向けて歩き出した。

「行くの?」

伊集院が首を傾げながら聞く。
予定では、まだもう少し時間が経ってから行くということになっていた。

「一応、ね」

素っ気無く後ろを振り返らずに闇の中へと、瀬菜は消えていった。




夢を見た。
それはそれは綺麗な雪景色で
延々と、雪が降り注いでいる世界だった。
そんな世界の中、一人の少女が泣いていた。
「どうしたの?」ってわけを聞くと「わからないの」と、答える。
その返答の意味が分からなくて戸惑っていると、少女は涙を拭いて言った。
「この世界が、壊れることがわからないの」と。


ドスッ!
……いてぇ。腹がものすごく。
その痛みのおかげで目を覚ます。痛みというか、驚いたという方が合ってるか。

「……誰?」

俺の腹を跨いで座っている——女の子。
え、何この展開。

「救世主っ!」

「は、はいぃ?」

いきなり救世主と指をさされながら言われる。
戸惑う他にどうリアクションとったらいいんでしょうか。

「えーとな……まず、どいてくれないか?」

正直この女の子、かなり可愛い。
目が大きくて、くりっとしている。まさにこれが美少女というものか?
その可愛い目だけではなく、顔も端正良く、体も細身で胸は……まだ子供だからな、うん。

「ど、どこ見てるんですかぁっ!!」

ゴスッ!
……鈍い音が俺の胸と腹の中間、いわゆる「みぞおち」と呼ばれるものをされた。

「………」

「あ、ご、ごめんなさい! 救世主、大丈夫ですか?」

「はは、はははは……」

もう、笑うしかなかった。




とりあえず、俺の腹の上からどいてもらい、落ち着いてから話を始めること10分ほど。

「……それで? 俺が倒れていたのを助けて現在に至る、と?」

「はい! 感謝してください!」

普通、口に出して感謝しろとか言いますかね、この小娘。
それも自信有り気に無い胸を張りながら言うものだからたまったものではない。

「はぁ……ありがとう」

「何で最初にため息をついたのかは永遠の闇ですが、どういたしましてです!」

永遠の闇ときたか。知られたら色々とマズい気もするので逆に好都合といえば好都合だが。
それにしても、だ。
どうして俺はこんな寒くて一面雪平原の中にたってあるテントの中にいる?
さっきまで、俺はどこにいた? 無論、学校に決まっている。
俺のフリーダムな放課後を返してくれ。今すぐ家にも帰してくれ……。

「なあ、これって何かの撮影?」

あまりに帰りたいという気持ち上にこんなことを聞いてしまっていた。
俺の言葉を聞いて少女は首を傾げて、呆けた顔をする。

「さつえい? 何ですか? それ」

どうやらこの世界には撮影というものがないようで。
ていうかそれがこの世界を認めてしまっているようで自己嫌悪に入りそうだ。

「家に、帰してくれないか?」

俺はため息をついた後にそう告げる。
この少女には悪いとは思うが、俺はハッキリ言って帰りたい。
大体行きたいとか言ったわけじゃなく、俺は帰ると言った。
だからこうしてこの世界から帰ろうとするのは必然だろうと思う。

「だ、ダメですっ!」

「う、うわっ!」

またしても少女は俺の腹の上へとのっかかってきた。
体の中がムッとして一瞬、息が止まったりするのでやめて欲しいことこのうえないのだが。

「予言の通りなんですっ!」

「よ、予言?」

少女の柔らかい足に挟まれているためか、何だか恥ずかしくなってくる。
体勢的には少女が木葉を襲っているような形。

「とりあえず! ど、どいてくれっ! でないと話もできないっ!」

必死で少女をどかそうとするが、少女は力を入れた手で俺の制服の首元らへんを掴む。

「うおっ!」

そして上に引っ張りあげられるような形に。
苦しいし、恥ずかしい。少女の顔がもう鼻の先ほどにある。息も当たるかどうかぐらいの近さ。

「この世界を救ってくれますよねっ!?」

「いや、だから……」

「ねっ!?」

どうやらこのまま世界を救うことを了承しないとこの妙に力のある手を離してもらえないようだ。

「はぁ……」と、ため息をついた俺は仕方なく了承した。
するとすんなりと腹の上からどいてくれて、ついでに手も離してくれた。
さらには満面の笑顔で俺へと微笑む。凄まじい可愛さだった。

「さすがは救世主ですっ!」

少女は横暴なやり方で世界を救う条約を口約束という何とも頼りない方法で確かめたことに安心したようで

「……そういえば、お互い名前を教えていなかったな」

ずっと忘れていた。
さすがに世界を救うとかそんなことを言ったりもしてしまったことだし、聞いておいたほうがいいだろう。
すると、少女は自信ありげに胸を張って立ち上がった。

「私は白雪しらゆきっていいます! 救世主!」

白雪……か。確かにこの少女の格好といい、外見とかからして似合っていると思った。

「あー……救世主って呼ばれるのは嫌だから俺も教える」

「はいっ! 救世主!」

救世主って呼ばれるのが嫌と言った傍から……! この小娘……。

「俺は、木葉」

「このは?」

「そう。このは」

俺の名前が相当珍しいのか何度も「このは……このは……」と、連呼している。

「木葉っ!」

そして満面の笑顔で俺の名前を言われるのだった。
ていうか、言葉通じるんだな。世界違っても。

やっと落ち着いたと、そう思っていた矢先。

ドンッ!
という、ものすごい地響きの音と共に、外から怒号が聞こえてきた。

Re: ある日の放課後の魔科学 ( No.10 )
日時: 2010/12/04 11:38
名前: 遮犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: XvkJzdpR)

「いるのは分かっている。出て来るんだ!」

刑事みたいなセリフが外から怒号のように聞こえてくる。
きっとこれは白雪宛のものなのだろう。
白雪の表情はさっきまでとは違い、強張っているように見えた。

「一体何なんだ……?」

俺はどうしてこんな状況になっているのかが把握できなかったため、白雪に聞いてみる。

「あの人たちは……王国の人たちです」

白雪は強張った顔のまま、半分泣き出しそうになりながら答えた。

「王国? この世界は王国があるのか?」

俺の言葉に驚いた顔をして白雪は

「きゅうせ! ……木葉のところは王国がないんですか!?」

救世主ってまた言おうとしたうえにいきなり呼びつけ。ますます帰りたくなってきたなぁ……。
そうは思いつつも王国の人間が何故白雪を囲んでいるかということで、このままだと俺も帰れない。
そうこうしているうちに外からまた怒号が鳴り響いてきた。

「出てこなければ……ふたたび魔術を解放する!」

その怒号の後に何やら呪文のようなものが聞こえてくる。これってもしかして……詠唱か何かですか?

「まてまてまてぇっ!! 魔術? 聞いてねぇよっ!!」

「こ、こうなったら……戦うしかないですっ!」

「それもまてぇっ!」

俺の言葉をも無視して、白雪は立ち上がった後に一目散に外に飛び出していった。

「ちょ、ちょっと待てって!」

俺も必死で後を追いかける。
あんな自分より年下な女の子一人だけ行かせるわけにはいかなかった。




「ようやく現れたか……」

王国の兵士と思える20人あまりの小部隊が白雪のテントを取り囲んでいた。
そして、そのテントの中から現れたのは——小さな少女、白雪だった。

「何度も言っているように、渡す気はありません!」

白雪は声を荒げて王国の兵士たちに言った。
するとその王国の兵士たちの中から一人浮いた奴が出てくる。
いかにも公爵家! ってな感じのおっさん一名。

「君。あれは王国の秘宝たるものなのだよ。返してくれないと……色々と面倒なことになる」

「だってあれは——!」

と、白雪が叫ぼうとした瞬間、テントの中から俺登場。
とりあえず白雪に聞きたいことがあった。中にいても聞こえたこと。

「秘宝とか何やら……それって何だ?」

肩越しに俺は白雪に問いかけた。
白雪は微妙な顔をして俯く。まだ俺には話せないということなのだろうか?

「おい。貴様は何者だ?」

偉そうな長いヒゲを生やし、貴族の感じをあかるさまに醸し出しているおっさんが俺に言ってきたようで。
これはなんと答えればいいのだろう? 救世主だ! なんて答えたら笑われるだけに違いな——

「救世主ですっ!」

「……え?」

俺が何を言おうか戸惑っていた最中、隣にいた白雪が大きく、透き通るような声で言い放つ。
この小娘は出会った傍からそうだ。何でもかんでも突拍子もなく物事を言う。
救世主! とか言っても笑われるのがオチ——

「な、何っ! 救世主だとっ!?」

「そこ驚くところかっ!?」

ざわざわと王国の兵士たちも公爵みたいなおっさんに続いて騒ぎ出す。

(え、えぇ〜……あまりに予想外〜……)

この世界だと救世主だ! といっただけで何でももう免除されるんじゃないだろうか。

「あ、貴方様が……っ! 予言の救世主様ですか!?」

いきなり公爵おっさんが俺に敬語を使ってきた。今さっきまでのとは大違いだな、コノヤロウ。

「いや……俺はわからないが、どうやらそうらしい」

と、答えておいた。
俺は一般人だったんだぜ? いきなりこの世界にきて救世主ーだなんていわれても実感なさ過ぎる。
するといきなり高笑いが聞こえてきた。それは王国の兵士の方からだった。

「まあそうかっ! こんな小僧が救世主なわけあるまいか!」

と、公爵おっさんが笑う。何か妙に腹が立つことこのうえないのだが。
そして次に公爵のおっさんは右手あげ、不気味な笑顔を見せる。

「どうしても渡さないというのなら……その救世主とやらと一緒に地に眠らせてやろう! ——いけ!」

その掛け声と共に何か光るものが兵士の一部から見えた。
あれってもしかして——

「木葉! 避けてください!」

「——へ?」

目の前からは無数の火の玉。マジでか……?

「うわああああっ!!」

俺は目を瞑ることしか出来なかった。動けなかったのだ。
あぁ、もう当たって粉々になったのか、溶けたのかも分からない。
このままずっと目を瞑っていよ——

バチッ!

「いってぇっ!!」

何か強烈なものが俺の頬にぶち当たった。これが火の玉ですか?

「何寝てんのよっ!」

ぼんやりと目の前に立っていたのは——瀬菜だった。

「お、お前っ! どうしてここに!? てか帰らせてくれな——」

バチッ!

「ぶへぇっ!」またも殴られる。

「次そんなこと言ったらこれだけじゃ済まさないからね?」

その言葉にところどころ殺気のようなものが湧いて出ていることが分かったため、必死に頷く。

「な、何だお前はっ!」

公爵おっさんが瀬菜を指さす。
そういえば、瀬菜の腕になにやらとてつもなく物騒なものが握られている気がする。

それは、かなり大きく、長い、まるでガ●ダムが持っていそうな蒼く光る長身の剣のようなものだった。

「ま、魔術を切り裂いた……?」

横に寝転がっていた、といより避けていたのだろう。白雪が驚いた表情で呟いた。
一体コイツ……何者なんだ?


「さて……と。弱い者イジメは私の辞書にない。ということで……ここからは私が相手になってあげる」


どういう展開だ? これ。

Re: ある日の放課後の魔科学 ( No.11 )
日時: 2010/12/04 12:00
名前: むーみん ◆bbb.....B. (ID: 20F5x0q3)

出 遅 れ た っ !
更新お疲れ様です、先輩。


……大好物パターンktkr!
魔術だとどうしてもだいぶ現実離れしやすいと思うんですが、遮犬さんの場合は物語に入りやすかったです。流石です。面白いです。

ではでは、変なテンションで失礼いたしました。
がんばってください。


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