コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- ある日の放課後の魔科学 更新再開っ
- 日時: 2011/03/17 13:51
- 名前: 遮犬 (ID: Q2XZsHfr)
クリックありがとうございますw遮犬と申しますw
えーとコメディではー…2作目、ですかねwシリアスは見て見ぬふりをしておきましょうw
さてさて…今回は非日常コメディファンタジーでございますw
とか言っておいて思いっきり学園モノとか入ってもいいじゃない!萌えキャラいたっていいじゃない!
そんな願望の物語ですけどもw立ち読み程度にどうぞb
…つきまして注意事項…
・亀更新とか、ないな(笑)という方はご遠慮をw
・遮犬の小説を見ているとアレルギー反応が(笑)という方はご遠慮をwてかいっそ苦しみなさい(ぇ
・ファンタジーとか言ってるけどコメディ学園入ってるじゃん(笑)っていう人もご遠慮をw
・多少スパイシーシリアスとか入ってますけど…何か?(殴(蹴
作品イメージソング【】…
ヒロイン的イメージソング【WORLD'S END UMBRELLA】…>>31
〜目次〜
プロローグ…>>1
第1話:ある日の放課後の雇われ救世主
♯1>>7 ♯2>>8 ♯3>>9 ♯4>>10 ♯5>>15
第2話:ある日の放課後の憂鬱
♯1>>16 ♯2>>17 ♯3>>18 ♯4>>19 ♯5>>20
第3話:ある日の放課後の白き小さな王女
♯1>>21 ♯2>>29 ♯3>>30 ♯4>>35 ♯5>>36 EX…>>38
第4話:ある日の放課後の銀髪王子
♯1>>37 ♯2>>41 ♯3>>42 ♯4>>44 ♯5>>45 EX…>>46
第5話:ある日の放課後の学園非日常
♯1>>49 ♯2>>50 ♯3>>51 ♯4>>52 ♯5>>55
第6話:ある日の放課後の休日今日この頃
♯1>>56 ♯2>>60 ♯3>>62
〜【キャラクターデザイン担当】〜
〜【お客様方】〜
月鈴さん
むーみんさん
真珠さん
夜兎〆さん
ハッチしゃnさん
優舞さん(凛さん)
陽風さん
玖織さん
瑠乃さん
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
- Re: ある日の放課後の魔科学 ( No.33 )
- 日時: 2010/12/14 22:26
- 名前: 陽風@元・リコ☆ (ID: R.xAT8FB)
こんちゃ!お久しぶりです!
陽風です!
なんか遮犬s、文章力あがってませn?(
まだ読んだばっかですが、ゆっくりよんでいきたいです。
(´・ω・`)出遅れましたね。。。
- Re: ある日の放課後の魔科学 ( No.34 )
- 日時: 2010/12/14 23:49
- 名前: 遮犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: XvkJzdpR)
>>ハッチしゃnさん
あーはいwやっとこれからです…w
一応、白雪の世界は第3話で切り上げるつもりですのでw
木葉と瀬菜に関しましては謎が多い感じですかねw
自分は必ず作品の中に裏設定やらなにやらを仕掛けますのでwお楽しみにw
頑張りますwこれ更新するの楽しいのでww
描いてくださってますかwありがとうございます;
あぁwwレールガンですかw
いえwえっと、描いたとおりに機械ですからw大砲みたいなのを描いていただいたらb描くのでしたらねw
大砲みたいなところからガンダムのビームライフル的なものが発射される感じですかねww
結構レールガンとか言っておきながらホイホイという感じになっちゃいますのでw
別に描かなくてもおkですよbこれはw
実際、描いて欲しいなぁという部分は少しはありますが…w
それはリク依頼の方で話しましょうb
>>陽風さん
おぉおおおっ!!ww復活していただけましたかっ!w待ちに待ったかいがあったというもn(ぁ
文章力ですか?wあーはいwシリアスを通して色々と勉強させてもらいましたw
基本的な三点リーダーとかそういうルール等も鑑定屋さん当で教わりましたしw
色々と苦労しました…wでもまだまだ駄作なんですけどねw
ありがとうございますw読んでくださるというか、来てくださったというか…!
とにかく戻ってきてくれたことに対して嬉しさがやみませんww
ありがとうございます;頑張りまする〜!お互い頑張りましょうb
- Re: ある日の放課後の魔科学 ( No.35 )
- 日時: 2010/12/15 22:51
- 名前: 遮犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: XvkJzdpR)
しばしの沈黙の後、王国側の指揮官辺りの怒声によって戦いは始まった。
「打てええええっ!!」
騒音と共に放ち飛ばされる火の玉。それを必死に大きな盾のようなものでガードする反乱軍。
「魔導師か……いいだろうっ! 俺が相手をしてやろうではないか!」
エルゲート将軍は自分が指揮官という立場だということを忘れたかのように敵陣へ歩いていく。
味方は——誰も止めない。それは彼にとって無謀ということばでも勇気という言葉でもなく
信頼という思いがエルゲート将軍を、兵士たちを突き動かしていた。
エルゲート将軍は背中の大剣を抜き、構えるとその場で静止する。
王国の無数の軍勢は止まることなく猛進してくる。
動じることもなく、恐れることもなく、エルゲート将軍はその場で止まっていた。
「構わんっ! 突撃しろぉっ!!」
エルゲート将軍には遠すぎて届いていないが、ジースが立ち上がり、叫んだのだ。
王国の兵士たちは勢いをそのままにしてエルゲート将軍に斬りかかっていく。
「——ぬんっ!!」
たった一振りだった。
エルゲート将軍のたった一振りの攻撃で敵数人は吹っ飛ばされる。
大剣を軽々と振り回すとそれを王国兵士に向けて斬り付ける。
「ぐああああっ!!」
様々な叫び声と共に王国兵士たちは吹き飛んでいく。その姿はまさに将軍という名にふさわしかった。
「今は王国を離れているが……俺の忠義は未だにかつての王へと忠誠をくだしているっ!!」
大剣をまるで槍のようにして振り回し、敵を圧倒していく。
その姿を見て王国兵士たちはたちまち恐ろしく、畏怖することになる。
「こ、これが……! 元王国の将軍……!!」
「か、勝てっこねぇっ!!」
終いには逃げ出す兵士さえもいた。
戦場の中に煌く白い鎧。そして黒々と、そしてまた白々と光る大剣。
それらがエルゲートを将軍たるものに彩る。
「さぁ……どうした? かかっこいっ! 小童共がっ!!」
味方にとっては何たる心強さか、そして敵にとっては何たる畏怖すべき化け物か。
「は、放てええっ!!」
次にエルゲート将軍に飛んできたのは——火の玉の連続である。
一斉に魔術師にエルゲート将軍のみを狙うように指示したのだろう。
「ッ!! ……はああっ!!」
エルゲート将軍は構うことなく、その火の玉を切り裂く。
だが次から次へと火の玉が襲ってくる。これでは幾らなんでも防ぎきれるはずはなく、いくつか直撃する。
「くっ……!」
直撃した後から火傷の損傷が少しはあった。鎧のおかげなのか随分とダメージは少なかった。
この鎧は——自らが忠義を誓ったかつての王からいただいたものであった。
『この鎧は、おぬしのために使った最高峰の鎧じゃ。魔法さえも威力を半減する力を持つ——』
ふと、忠義を交わした王の言葉と姿が目に浮かんだ。
その王は、今は城の牢屋に一人寂しく閉じ込められているのだ。
どういう扱いを受けているのかも分からない。それだけでも心が苦しかった。
(王様……! お待ちくだされっ! 私は……白雪様とシヴァン様をお守りし、貴方様を……!)
心でもう一度忠義を交わす。あの優しき王の笑顔がもう一度見たかった。
自分の大切な守るべき白雪やシヴァンのとびっきりの笑顔も、また。
「かかってこいっ! 貴様らごとき、このエルゲート・グランセルが葬ってやろう!!」
「走れ走れっ!!」
俺たちは一方——王国兵士に追いかけられていた。
「そこから先へは行かせんっ!!」
兵士の一人が俺たちに叫びながらも全速力で追ってくる。
俺と瀬菜、白雪が向かっている場所は無論、あの柱の立っている場所である。
戦場と幾分離れた場所でも、この綺麗な渓谷では高い場所から見ると一目瞭然に見つかってしまうわけで。
「はぁ、はぁ……!」
白雪の顔はものすごく辛そうである。
見た目と同じぐらいにか弱かった。そんなか弱い体でたった一人頑張ってきたのだ。
それだけでもかなり苦痛だというのに。
「大丈夫か? 白雪」
「は、はい……はぁ、はぁ……大丈夫です……」
口ではそう言うが、言いぶりといい、また様子からして辛いのは見ただけで分かった。
本来ならば「休むか?」と、言いたいところだが生憎後ろからは追っ手が全力で向かってくる。
重い鎧をつけているが速度的には疲れている白雪には申し分ない。
「くそっ……! 犬コロっ! まだか?」
俺は隣をせっせと走る標準サイズではない白い犬、ライとレイに話しかける。
だが双方して小さく唸るだけで、まだ先のようであった。
「どこも同じ風景だから見分けつかねぇよ……!」
綺麗すぎて、見分けが付かないということがあった。
それに、丘が思った以上に多く、大きな柱といってもそのいくつもの丘で隠れてしまっている。
これでは柱に着く前に白雪がパンクしてしまうだろう。
「あっ——」
そしてその時は突然にして現れた。
白雪がコケたのである。
「白雪っ! 大丈夫か?」
「はぁ……はぁ……すみません……迷惑をおかけして……」
もう、限界のようだった。
白雪を俺は腕で抱きかかえる。今の状況は俺が白雪をお姫様抱っこしているような形だ。
「やっと観念したかっ!」
王国兵士たちはすかさず俺たちに追いついた。向こうも息切れをしているが圧倒的にこちらは不利であった
疲れている上に弱っている女の子を抱きかかえているのだ。
「ッ……!」
何故だか瀬菜が怖い顔をして俺の方を睨んでくる。
後ろでは王国兵士がだんだんと近づいてきているというのに。
俺は、ある決心をした。
この目の前で、辛そうにしている女の子も覚悟を決めているのだ。
俺も、覚悟を決めないと見せ場ないだろ?
「瀬菜」
「な、何よっ!」
ゆっくりと王国兵士たちが近づいてくる中、俺は出来るだけ真剣な顔で瀬菜に言った。
「瀬菜の力で、足止めしてくれないか?」
「それって……身代わりってこと?」
瀬菜の声は震えていた。
あぁ、俺は最低な奴だとは思った。だけどこれしかない。
これしか、エルゲート将軍との約束が果たせない。
——ごめん、こんなアホ頭で。と、何回も何回も心の中で謝った。
「必ず戻る。だから……瀬菜! お願いだ。こいつは今必死で頑張ってる。
エルゲート将軍も、反乱軍の人たちも、皆! 瀬菜の力が必要なんだっ!」
「ッ!!」
瀬菜はその顔と口ぶりによって顔を思わず驚愕させてしまう。
『頼む。お前の力が必要なんだっ! 瀬菜!』
——まるで、あの時と同じように。
「……分かったわよ」
「本当かっ!?」
俺が瀬菜に感謝の礼を言おうとした時、既に王国兵士たちは俺たちの元へと駆け寄っていた。
「何を呑気にお喋りしてやがる!」
そんな王国兵士の声も耳にせずに瀬菜はそっぽを向いて俺に言う。
「は、早く行きなさいよっ! ここは任しなさい!」
顔を何故か真っ赤にしつつ言う瀬菜に感謝でいっぱいだった。
俺はその言葉を受け取ると、白雪をお姫様抱っこしながら駆け出した。
「何してんだっ! 逃が——!」
王国兵士の言葉が詰まる。
何故かというと、答えは明確だった。
顔を真っ赤にして今にも泣き出しそうな瀬菜の姿があったからだ。
そしてその顔の他に、右腕から蒼い魔方陣が発動されていた。
「木葉なんて……木葉なんて……! バカああああっ!!」
瀬菜は自分でもよく分からない感情に任せて剣を振るうのだった。
「大丈夫だからな……! 白雪!」
俺はただひたすら走る。
腕の中で苦しんでいる小さな少女を抱えながら、ただただひたすらに
——俺の、出来ることはこれぐらいしかないだろ!!
そんな気持ちを胸に駆けていく。目指す伝説の場所へと。
- Re: ある日の放課後の魔科学 ( No.36 )
- 日時: 2010/12/19 22:04
- 名前: 遮犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: XvkJzdpR)
瀬菜は困惑していた。
変わっているはずだと思っていた人は、全く昔と相変わらずの性格だったからだ。
なんだかんだいって誰にでも優しい性格。だが人の気持ちにすぐに気付けない鈍感な奴。
面倒臭がりだけど、やる時はやってくれる奴。
「別に……! 何とも思ってないわよーっ!!」
「うわぁああっ!!」
瀬菜の怒号と王国兵士の叫び声が木霊する。
蒼く煌く大剣は猛威というにふさわしいほどの暴れぶりであった。
剣が大きく振るえば王国兵士も大きく宙を舞う。
「あのバカっ! いくら待ったと思ってんのよっ!!」
いくら叫んでも、何をしても自分のことを思い出してくれない相手に対して叫ぶ。
それは王国兵士に向けてではなく、鈍感でバカで面倒臭がりで……でも優しい男に向けての言葉であった。
「絶対に許さないんだからぁ〜!!」
「うわぁああ!!」
その後、瀬菜のストレス発散的なものに王国兵士はこっぴどく付き合わされたのであった。
どれほど走っただろうか。
そろそろ足も限界が来ている頃だろう。
いつもの俺ならば、とっくにぶっ倒れていてもおかしくないはずだった。
「はぁ……はぁ……!」
苦しそうに腕の中で息を吐く白雪。
喘息のようなことになっていた。限界など、とっくに超えていたに違いなかった。
そんな少女は、すごく小さく、儚げなものに見える。
「俺が……! 諦めてどうすんだよ……! はぁ……はぁ……!」
必死で足を動かそうとする。だが、その気持ちに肉体と体力はなかなかついてこない。
多少フラついたりするのを横で共に走っているレイとライが支えてくれるのは非常に助かった。
実際のところ、この二匹の犬に任せて自分は楽をしたかった。
——でも、それじゃダメだと思った。
それでは、エルゲート将軍との約束が守れないではないか。
『姫様を……どうか、どうか、貴方様がお守りなさってください』
『え? 俺が?』
『貴方様ならば、きっといけます……。頼みましたぞ、木葉様——』
俺と瀬菜の名前を既に白雪が知らせていたというのにも多少驚いたが、俺に騎士にとって最も大切な姫君を
ついさっき会ったばかりの俺に託すのだ。王国兵士より身寄りが分からない俺に。
俺はずっと母と姉に縛られた生活が嫌だと思っていた。
それはもう、ずっと。そのせいかあまり家庭内では笑顔は少なかったと思う。
中学の時に死んだ親父のこともそうだけど、色々と忙しくなった。
丁度その頃からだろう。母がうるさくなり、姉が大学の合間合間に家事をするようになっているのは。
実のところ、俺ではなく姉が別居する予定だった。
それが何故俺になったのか。その理由は妹にあった。
——木葉はまだ未熟で頼りない面がある。母さんと木葉だけで妹の面倒を見て家事なんて出来ない。
そんな思いを、俺は知らず知らずの内に姉にさせていたのだった。
それを知ったのは本当、別居が決まってからの頃だろう。
俺は反対しようとした。だけど、出来なかった。
俺は、自分自身で未熟だと思っていたから。だから母と姉にいつまでも迷惑がかかるのだと。
とにかく、家を出たかった。母との対立もあるが、俺の頼りなさにも問題はあったのだった。
それで——今、俺は何をしている?
異世界に行って、この腕の中にいる少女に出会い、事情を知り……
ついこの間まで頼りないといわれていた男が、だ。
おかしなものだろう。この世界に来て、救世主という呼ばれ方をこの腕の中にいる少女は俺に言った。
俺を、こんな俺を頼ってくれている。それはどれだけ嬉しかったことか。
「わんわんっ!!」
突如として、ライとレイが鳴く。
呆然としつつ、目の前を見ると目的の柱があった。
見れば見るほど綺麗で、純粋なものに見えた。
「つ、着いた……!」
思わずそこでへたりこんでしまう。膝に雪が当たり、冷たいが今はそんなことなどどうでもよかった。
この寒さの中、ここまで汗をかくものなのかというほど俺は全身汗でびしょ濡れであった。
「白雪……」
ただ、一つ気になることがある。
それは、白雪の状態だった。
この状態で、果たして召喚とやらは出来るものなのだろうかと。そう考えていた。
「よしっ! どんどん押し返せええっ!」
「「おおーっ!!」」
妙に活気づいているのは反乱軍である。
数は王国の方が圧倒的に有利なのだが、これは明らかに兵士の経験の差であった。
エルゲート将軍率いる反乱軍はほとんどが王族直下の有能な部下。
対して王国側はほとんど戦闘経験などつんだことのない若造の集まりともいえるものであった。
力でダメなら数で押せというが、反乱軍は力の他にもう一つ有利にするために策を仕掛けていた。
「ま、また罠だああっ!!」
王国兵士たちは反乱軍の策、遠距離魔法型の罠に引っかかっていく。
魔方陣を仕掛けて発動させるという言えば簡単なものだが、なかなかしてこれは難しい。
これぞ、熟練された経験からというものであろう。
戦況は一気にひっくり返り、反乱軍が優先となっていた。
「ぐぐぐ……! 臆病者共めっ! あんな小童に負けおって!」
右手に持っていたワインの入ったグラスを床に投げ捨てる。
ガラスの破片が散らばる音が戦陣の中に響く。その側近の兵士は困惑した表情で反論に出ることにした。
「し、しかし——!」
「えぇいっ! 黙れ黙れ! こうなったらレールガンを用意せいっ!」
無情にも側近の兵士の言葉など耳も傾けず、最終兵器ともいえるレールガンを出すように命じる。
これまで王国側が優勢を保っていたのはこのレールガンという秘密兵器のおかげである。
「どれだけ有能な奴でも兵器には敵わん!」
側近の兵士は傍に近寄ってきた伝令係を務める兵士にレールガンの用意をするように告げた。
「くっくっく……! これでネズミ共を全滅してやるわっ!」
そう高笑いを始めようとした時、伝令係が再び戻ってくる。
「レールガン! 用意が終わりました!」
「随分と早いな」
側近の兵士がそう言うと伝令係の兵士は耳打ちでそっと話す。
——こうなることは戦っている兵士側でも充分予想が出来た、と。
「おぉっ! そうか! 早速、標準を——ん?」
その時、ジースの眼にある物が写った。
それは、聖獣が眠っているとされる柱である。その近くでなにやら動いている者が見えた。
「もしや……?」
ジースは、その瞬間ニヤリと顔を歪ませた。
そして、傍にいた兵士に命じる。
「おい! ……あの柱の前にいる奴らを狙え」
「……は?」
傍にいた側近の兵士は思わず口を大きく開いて呆れたような返事をしてしまった。
「聞こえなかったのか? ——あの柱にいるものを打てっ!!」
二度、同じことを言った。つまりは本当に命令なのだろう。
困惑した表情で側近の兵士はジースへと駆け寄る。
「ジース様! あそこは聖獣が眠る場所。それに姫様がおられるのでは……?」
「構わん! それに貴様らが白雪から秘宝を奪い返せなかったのが悪いのだろう!」
ジースの言い振りからすると、白雪本人など大切なことではなく、まるで秘宝の方が大切なようだった。
その言葉に思わず恐怖する。
——この方は、人ではないと。
「打たねば……貴様らもどうなるか、知ったことではない」
ジースは言葉の一つ一つに重みをかけていった。それだけで側近の兵士たちには充分だった。
結局のところ前に仕えていた白雪より、自分の命を選んでしまったのだ。
なんとも、皮肉なことだろうか。
「はぁ……はぁ……」
白雪は、いつまで経っても苦しそうにしている。
もしかすると、風邪なのではないだろうか? と、思うが額を触っても特に熱は無く感じる。
これは、この世界ならではの病気か何かかと思ったが分かるはずがない。
「どうすればいいんだ……?」
その場でひたすら考える。
追っ手が来ないことを見れば瀬菜が止めていてくれているようである。
ということはまだ考える時間はあるはずだ。
だがしかし、考えてもどうすることも出来なかった。
「くそ……! 俺はやっぱり——」
——その時だった。
ものすごい光景を見た。戦場をふと見た瞬間だった
巨大な大砲のようなものが、こちらに砲口を向けて今にも発射されそうに電撃のようなものが迸っている。
「え——」
その電撃のようなものは、俺が声を挙げることをも叶えてくれず、体が痺れたように固まらせ——
無情にも発射された。
——目の前が、真っ白になった。
- Re: ある日の放課後の魔科学 ( No.37 )
- 日時: 2010/12/16 23:42
- 名前: 遮犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: XvkJzdpR)
シヴァンは走っていた。
白雪を探すためということもあるが、近くから戦いの音が聞こえてきたのである。
武器と武器が触れ合う音。魔法が地面を壊し、破壊している音。
この丘を抜けた辺りにから聞こえる。
息を荒げながら、丘を越えていく。そして、見つけたのだった。
——倒れこんでいる白雪と、その傍で見守る少年。その少年の目線の先に巨大な大砲があることを。
——しまった。瀬菜は後悔の念と共に焦りが出ていた。
木葉に任せるべきでは、やはりなかったのだ。
これは守る守れないの問題ではない。
守るといっても加減というものがある。いわば相手の隠し持っているとされる兵器とやらのこと。
それで狙い撃ちをされるとなると——結果は頭に浮かべるだけで恐ろしい。
そんな恐ろしい出来事が今目の前で起ころうとしていた。
「木葉っ!!」
再び出会って、ちゃんと木葉宛に名前で呼んだの初めてだろう。
その"二度目の初めて"がお別れになるということは考えたくなかった。
(どうして自分は……!)
そう考えてももう遅い。
昔のような人柄のままで安心したということが招いたことだった。
確かにあの状況はこうしたほうが効率が良かったかもしれない。でも、離すべきではなかったのだ。
また失うのだろうか。大切な人を。
大切な、今は"亡き姉"の姿が瀬菜の目に浮かんだ。
「木葉〜〜ッ!!」
虚空へと、目の端に涙を寄せた瀬菜の叫びが戦場を響いた。
「……ッ!」
その事実はまた、エルゲート将軍にも壮絶が走った。
木葉は普通の人間。それは知っていたことだ。
だがしかし、エルゲート将軍は木葉に全てを託した。自分が守るべき主君、白雪を。
それは救世主としてではなく、男として頼んだことだった。
——きっと、木葉殿ならば白雪様を……!
エルゲートはそう信じていた。
「どうか……どうか……!」
エルゲートは、戦場の最中で祈りを告げる。
——ご無事でいますように、と。可能性の限りなく低いことをただひたすらに。
その二人の行動は、一瞬だった。
無情にも、レールガンは発射される。
「木葉〜ッ!!」「白雪様っ!!」
二人の言葉が虚空を舞う刹那、
「はああっ!!」
レールガンは、直撃する。
だが、その直撃する瞬間に——少年らしき声が響いたことも知らずに。
俺は何が起きたのか全く理解不能だった。
ただ、目の前が真っ白になった。そんでもって今は真っ暗である。
——あぁ、これ死んだのか?
そう思った。だが、手元に温もりが感じられる。
その温もりを感じた時、自分が目を閉じているということが感覚で分かった。
おそるおそる、目を開けてみた。
そこにいたのは、白銀の色をした髪とマントを煌かせ、両手剣を握り締めている——美少年がいた。
「はぁ……はぁ……」
その少年は見ると鎧を着ているが既にボロボロの状態で、満身創痍に近かった。
ふと、横を見ると息切れが少々収まった白雪がいる。
少しばかり柱から後ろに遠ざかっているということは吹き飛ばされたか何かしたのだろう。
そういえばさっきから耳がキーンってなっているのにも今更だが気付く。
とにかく、今分かっているのは——助かったのだった。
「あんた……一体?」
俺は、目の前の美少年に呟くようにして言った。
見る限り、この少年がレールガンとやらを止めたと見て間違いなさそうであった。
だけど、どうやって?
「こっちが逆に聞きたい」
その美少年は後ろを振り返ると俺を睨むようにして見る。
「お前は、白雪の何だ? 場合によっては……」
め、目が怖い……! 美少年というより、今は鬼人のように見えるのは目の錯覚だろうか?
口に溜まった唾を一気に飲み込む。俺は目の前でチラチラと見える剣から目を外し、美少年の顔を見る。
「俺は……」
決心したような顔で、立ち上がり、言った。
「この世界の救世主だっ!」と。
「………」
美少年は、そのまま黙って数秒間、俺の顔を睨むようにして見つめるとため息一つ吐く。
「俺が来なかったらどうなっていたか分からないのにか……?」
「うっ……」
それを言ったらお終いでしょうよ……。
俺は不思議な力が使えるわけでもなく、また飛びっきり強いわけでもない、通常の男子高校生なのだから。
俺が思わず言葉を詰まらせてしまうと美少年は何故か手を俺の方へと差し伸べてきた。
「俺の名はシヴァン。お前は?」
美少年が言った。表情はクールといった表情のままだが、それがこのシヴァンという奴のキャラなんだろう
俺は、相手の手を握り締めると出来るだけ顔を綻ばせながら言ってみる。
「俺は杜坂 木葉。救世主だっ!」
「二度も言わなくていい。それになんだその表情は。やめておいたほうがいいぞ」
あっさりと斬り捨てられた俺は呆然と美少年の顔を見る。だが、それも一瞬であった。
「白雪っ!?」
美少年はものすごい速度で傍で眠っているに近い状態の白雪に声をかけた。
そして、体を揺さぶり始める。
ていうか、今まで気付いていなかったのかよ……。それこそ、問題だと思うが。
クールに見せかけて実は天然とか? ……そんなまさかな。
「ん……おにい、様……?」
少し激しいとも思えるシヴァンの揺さぶりに目をゆっくりと開ける白雪。
そしてその可愛らしい口から出た言葉に俺は驚愕しないわけがなかった。
「お、お兄様!? てことは……5人いるご子息の内の……一人?」
「あぁ、そうだが? それより、どうして白雪にここまで無茶をさせたんだっ!」
当たり前のように言われる。そして最後の方の言葉に多少ムカついた。
お前こそ、今まで何をしていたんだと言いたかった。
お前がいない間、白雪はずっと頑張っていた。それを悪く言われているような気がしてならなかった。
だが、すぐにシヴァンは顔を俯き、歯を食いしばった。
「そうか……。俺が、悪いのか……」と。
気付いていたのだ。自分が一人にさせたからということを。
だが、白雪はゆっくりと手を挙げると笑ってシヴァンの顔に触れる。
「お兄様……? 私は、大丈夫です。聖獣を召喚し、この戦いを治めて……また……」
白雪はゆっくりと呟いていく。
その言葉でシヴァンは震えていたが、それを堪えてなにやら瓶を取り出す。
「これを飲むんだ、白雪。きっとすぐに良くなる」
そうして、シヴァンに渡された薬を飲む。ゆっくりと、慎重に。
すると、白雪の体が光ったような気がした。RPGのゲームの回復魔法みたいに。
この時、そういえばあのライとレイの姿がないことに俺はこの時、気付かなかったのだった。
俺たちがそうこうしている間、王国側は騒然としていた。
「ば、バカな……! 防いだ、だと?」
ジースは予想外の出来事に開いた口を閉じることが出来なかった。
双眼鏡で確かめてみるに、止めたのは美少年。それもハッキリと見覚えのある美少年であった。
「し、シヴァン……! あの剣は……まさか……"破魔剣"……!?」
「破魔剣? それは一体何なのですか?」
ジースの言葉に側近の兵士が近寄り、尋ねる。
「魔法を防ぐ唯一の剣だ。伝説の剣とも呼ばれる……魔法を破壊する剣のことだっ!」
ジースはやけくそになったかのようにして再び新しく持ってこさせていたグラスを床にたたきつける。
床に響く鋭い音はまるでジースの怒りを示すかのようだった。
だが、その次の瞬間、ジースは狂ったように笑い出した。
「じ、ジース様……?」
側近の兵士たちは強張った表情でジースを見る。
あの冷静かつ、政治に頼れる元大臣の姿などもはやどこにもなかった。
「破魔剣には、一つ弱点があるのだっ!」
「弱点……と、言いますと?」
側近の兵士が呆けた声で聞くと、ジースは一つ深呼吸をした後、元の椅子へと座りなおす。
「魔法を破壊するためには自らの魔力も必要なのだ! あれは諸刃の剣。すなわち……繰り返しレールガンを放つとあやつの体の方が先に壊れてしまうということよっ!」
と、言って邪悪に、不気味に笑い声をあげる。
兵士たちはそんなジースをただ不気味な顔をして見つめるばかりであった。
「よかった……」
瀬菜は、その場で脱力して冷たい雪の地面にへたり込んだ。
少しだけだが、見えたものがあった。
それは、突如として別の丘から舞い降りてきた美少年の姿。
そして、信じられないことに剣を振るうだけで美少年はレールガンを消え失せさせたのだった。
つまり、これが意味することは
——木葉は、生きている。それを知った時に不意に力がだんだんと抜けてきたのである。
それから数秒経った後、瀬菜は立ち上がる。
——その瞳には、怒りの炎が燃えていた。
瀬菜は猛烈な走りを繰り出し、エルゲート将軍のいる戦場下へと舞い戻る。
「おぉっ! 神よっ! 貴方様は私たちを、姫様を、木葉殿を見捨てなかった!」
エルゲート将軍もまた、喜びの声を挙げた。
その声と共に傍にいた兵士たちも歓声を挙げる。
そして、同時に別の何かの感情が不意に湧いてきた。
それは、怒りだった。
「許せん……! 許せんぞっ! ジースっ!!」
「心配して……損したじゃないのよ〜〜ッ!!」
「「ひぃっ!!」」
王国兵士たちは、そんな瀬菜やエルゲート将軍、反乱軍の兵士たちの様子に恐怖するのみであった。
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
この掲示板は過去ログ化されています。