コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- ある日の放課後の魔科学 更新再開っ
- 日時: 2011/03/17 13:51
- 名前: 遮犬 (ID: Q2XZsHfr)
クリックありがとうございますw遮犬と申しますw
えーとコメディではー…2作目、ですかねwシリアスは見て見ぬふりをしておきましょうw
さてさて…今回は非日常コメディファンタジーでございますw
とか言っておいて思いっきり学園モノとか入ってもいいじゃない!萌えキャラいたっていいじゃない!
そんな願望の物語ですけどもw立ち読み程度にどうぞb
…つきまして注意事項…
・亀更新とか、ないな(笑)という方はご遠慮をw
・遮犬の小説を見ているとアレルギー反応が(笑)という方はご遠慮をwてかいっそ苦しみなさい(ぇ
・ファンタジーとか言ってるけどコメディ学園入ってるじゃん(笑)っていう人もご遠慮をw
・多少スパイシーシリアスとか入ってますけど…何か?(殴(蹴
作品イメージソング【】…
ヒロイン的イメージソング【WORLD'S END UMBRELLA】…>>31
〜目次〜
プロローグ…>>1
第1話:ある日の放課後の雇われ救世主
♯1>>7 ♯2>>8 ♯3>>9 ♯4>>10 ♯5>>15
第2話:ある日の放課後の憂鬱
♯1>>16 ♯2>>17 ♯3>>18 ♯4>>19 ♯5>>20
第3話:ある日の放課後の白き小さな王女
♯1>>21 ♯2>>29 ♯3>>30 ♯4>>35 ♯5>>36 EX…>>38
第4話:ある日の放課後の銀髪王子
♯1>>37 ♯2>>41 ♯3>>42 ♯4>>44 ♯5>>45 EX…>>46
第5話:ある日の放課後の学園非日常
♯1>>49 ♯2>>50 ♯3>>51 ♯4>>52 ♯5>>55
第6話:ある日の放課後の休日今日この頃
♯1>>56 ♯2>>60 ♯3>>62
〜【キャラクターデザイン担当】〜
〜【お客様方】〜
月鈴さん
むーみんさん
真珠さん
夜兎〆さん
ハッチしゃnさん
優舞さん(凛さん)
陽風さん
玖織さん
瑠乃さん
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- Re: ある日の放課後の魔科学 第2話スタート ( No.17 )
- 日時: 2010/12/07 00:12
- 名前: 遮犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: XvkJzdpR)
俺たち三人は目の前にどんぶり草を置いて(言っておくが飲み物だからな?)話を聞き入った。
「この世界は一つの王国によって成り立っています。そこには、もちろん王様と貴族がいて……
先代の王様はものすごく優しく、国民を第一に考えるとても素晴らしい方でした」
先代の王様のことを話す白雪はとても嬉しそうに話した。だが、それも一気に暗い表情になる。
「ですが……秘書でもある大臣が反乱を起こし、先代の王様が捕らえられてしまいました。
大臣だけならまだよかったものの……ご子息5人の中の3人が大臣の味方についたのです」
「……ずずー……」
「アンタ、タイミング悪すぎるわよっ!!」
ゴスッ!
またしても殴られた……。すみませんね! 寒くなってきたものでお茶啜らないとやってられんのですよ!
「ちゃんとわきまえろ! バカ!」とまで言われた。そこまで言わなくてもいいじゃないすか……。
「それで……その大臣たちの政治はとても乱暴で、自分たちのことしか眼中にないようなものでした」
「ひどいわね……」
「確かにな……」
ゴスッ!
「何でぇっ!?」
「アンタが相槌打つんじゃないわよっ!」
「俺って何してもダメなんですねっ!?」
同感して頷いて返事することすら許してくれないとは。もう何も言わずに黙っておこう……。
「王様は、今現在城の牢屋に閉じ込められています。その王様を助けるべくして立ち上がったのが反乱軍。
反乱軍は、今現在もなお王国と戦い続けています」
瀬菜は何か考え込むように「うーん……」と、唸るとその次の瞬間、言葉を口に出した。
「ということは、白雪は反乱軍なの?」
すると白雪は首を横に振る。
そして次の言葉は何とも衝撃の走る言葉であった。
「私は……反乱軍ではなく、王国の人間なんです」
「え……?」
意味がお分かりになっただろうか?
反乱軍ではなく、王国の人間。つまりは王国側ということだ。
王国側だというのにああやって襲ってくる理由は別のものにあるようだ。俺がさっきから気になるのは——
「その、お前の首にかけてるその綺麗な銀と青色をしたネックレス……それが秘宝とやらか?」
「ッ!? どうして……!?」
体を一気に硬直させると、驚いた顔で俺の顔を見てくる。
戦闘前に秘宝やら何やら言ってたしな。まあでもまさか適当に言った物が図星だったとはな……。
「秘宝?」
瀬菜はそのことを知らなかったので首を傾げるのも無理はない。
先の戦闘だって襲われていたから助けてやったという感覚なのだろうな、瀬菜からすると。
「……これは、王国代々伝わる伝説の秘宝なんです。これをとある場所で使うと、あるものを召喚でき、
その召喚されたものは正義にも悪にも世界を染めることの出来るほどの力を持っているらしいです」
——んなバカな。と、ここに来るまでの俺は言っていただろうな。
だがしかし、目の前であんなゲーム世界見せられたら信じざるを得ないだろう。
この世界自体が、俺にとってはありえない、ゲームの世界であるのだから。
「その秘宝を何で白雪が? 普通の王国側の人間といえど、そんなもの手に入らないでしょ?」
瀬菜の言葉はもっともだった。
普通の人間ならば、そんなもの手に取る、目で見ることすらも叶わないはず。
だがこの白雪という少女は平然とその秘宝を持っている。それはつまり"普通じゃない"ことを意味していた
「私は……」
白雪は思いつめた顔で顔を俯ける。
どうやら、あまり知られたくないことでもあるようだった。
あまり強引に聞きたくないが、この白雪という少女が何者か分からないことでは
この先どうすればいいのかまるで分からない。だからこれは絶対に聞いておかねばならないことだった。
「私は……王国の、ご子息なんです……!」
「……えーと、それは王国の5人しかいないご子息の一人ってこと?」
「はい……」
「………」
俺と瀬菜は思わず顔を見合わせた。
えーとあれか。王様のご子息で、女の子だから……この子、王国の姫か。
んじゃあれだな。俺は王国の姫に腹を跨れてのしかかりされてたってことか。……。
「「ええええええっ!!」」
俺と瀬菜は二人して驚きの声をあげた。
目の前に、この世界の姫ともいえる人物がいる。
まあなんていうかだな。それなりの覚悟はしていたがそれほどの人物だとは思わなかった。
「ご無礼をお許しくださいっ!」
俺はとりあえず謝っておいた。
タメ口、そして心の中でこの小娘……! っと、思ってしまったりしたこと。
今となっては後悔の材料でしかない。
「え、え!? いきなりどうしたんですか? 木葉」
「あぁ! だから敬語だけど名前だけは呼びつけだったのはそういう位だったからか!」
ガンガンと床に握りこぶしをぶつける俺の姿はさぞかし怖い絵だろうに。
瀬菜は俺より早くに落ち着きを取り戻し、話を戻した。
「えっと……? じゃあ貴方は王国のお姫様ってことになるわね?」
「あ、はい。一応そうですね……」
「……なるほどね……結構、大変かもしれないわね……」
何かボソボソと瀬菜は言っているが俺の頭は既にパンク状態だ。
「それで? 貴方の目的は一体何?」
瀬菜の次の問いに白雪は決心したような目で唐突に話し出した。
「私は……! この秘宝を使って召喚できるという召喚獣を召喚したいと考えています!」
つまりは、白雪はこの秘宝を使って出てくる召喚獣で世界を救おうというのだ。
王国の姫といえど、今は敵とみなされているようだった。
それほど秘宝には価値があるということは効果は本物だろう。
たった一人で、王国の少女といえど、このか弱い体で、一人考えて戦っていたのだ。
それはどんなに辛いことだろうか。一人で戦うということは。
「——分かった」
「え?」
俺は立ち上がる。何だか今なら何でもやれそうな気すらした。
「俺たちが手伝う! もうこうなったらやってやる。俺たちも世界を救うアルバイトをさせてくれ!」
一瞬、アルバイトという言葉で首を傾げた白雪だったが、すぐに笑顔となり
「はいっ! 宜しくお願いします! 救世主!」
と、返事をしてくれた。
- Re: ある日の放課後の魔科学 ( No.18 )
- 日時: 2010/12/08 23:08
- 名前: 遮犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: XvkJzdpR)
「何でアンタに仕切られないといけないのよっ!!」
「ぶへぇっ!」
情けない俺の断末魔と共に体が宙に浮く。
今回は蹴り。凄まじい速度で蹴られたために蹴られた胸辺りがものすごく痛い。
一瞬、母・姉・妹の姿が順々に俺の脳内を駆け巡ったが……あれが噂の走馬灯ですか?
「でもまあ……私も同意よ。貴方の覚悟はよく分かったから」
「本当ですか!? ありがとうございます!」
俺の時は一言返事だったのにな……瀬菜の時は頭下げてまで……。
でも……いい笑顔だったな。今までとは格が違うようなとびっきりの笑顔。
こんな無邪気な女の子が、王国の姫なんだよな……。
そう思うと、白雪の凄さが分かった。
何事も一生懸命にやる、そんな熱意と思いやりを持っている。そう感じ取れるには充分だった。
「それで? まずはどこから向かうんだ?」
もう冷めてしまったドンブリ草を飲み干しつつ、白雪に聞いてみる。
「まず……目星がついているのは、魔獣の谷と断罪の塔と降臨の峡谷と覇王の狭間と——」
「まてまてまてぇっ!! だんだん物騒になっていっている気がするのは俺だけかっ!」
それと数が多すぎる。5つも回っていたら時間はいくらあっても足りないだろう。
「どれかに絞ったほうがいいわね……」
瀬菜がそう呟くと白雪は深刻そうな顔で頷く。
「実は、反乱軍が押され気味で……このままだと、本当に負けてしまうかもしれません」
つまりはタイムリミットは一刻と近づいていっているということだった。
本当、ゲームの世界だよな……これって。
「じゃあ急がないと……。どこか一つに絞らないと間に合わないわね」
「そうですね……」
しばらく白雪は黙り込んだ後、何かひらめいたかのように話し出した。
「……降臨の峡谷……! 降臨! そう、降臨ですっ! お父様がいってました!」
何をだ。
「降臨は召喚獣のあらゆる召喚の仕方を示すものとしてあると! つまりは……」
「そのキーワードの降臨のある峡谷が一番納得できるというわけね?」
「はいっ! その通りです!」
なんともまあ単純な考えだとは思ったが、言ったら即座に壁に頭がめり込んでいることだろう。
「なんていうか……単純な考えだとは思うけど、そこしか目星はないから……行くしかないわね」
言った。言いやがったよ、この野郎。
俺が言ったら壁に顔面めり込ませるくせに……!
「では早速準備をいたしましょう!」
てなことで準備が始まった。といっても俺は荷物運びをさせられたぐらいだが。
荷物の多いこと多いこと。食料やら玩具らしきものやら……本当にいるのか? これ。
馬車のようなものに乗せていく。そういえばこの馬車のようなもの、見覚えがあるな……。
馬車というほど大きくはなく、小さめの馬車のようなもの。
一体何が運ぶのだろうか、と思っていた時にその答えが自らやってきた。
「わんっ! わんっ!」
遠くの方から狼以上にでかい体の大きさを誇る二匹のハスキー犬みたいなのがやってきた。
どうやらあの二匹が引きずって運ぶようだが……
「ライ! レイ! ありがとう! ちゃんと届けてくれた?」
「わんっ! わんっ!」
嬉しそうに飼い主である白雪の手に甘えている二匹の犬で本当にこの荷物の量と三人運べるのかと思う。
「あぁ、大丈夫ですよ。これでもライとレイはかなりの力がありますから」
と、わざわざ白雪は説明してくれた。ちなみに王国から逃亡してきた時もこの二匹のおかげなんだそうだ。
「二人とも! もう出発できるわよー!」
瀬菜の声が聞こえてくる。その格好はコートやらなにやらを着て完全に防寒服装である。
対して俺は……
「ヘックショイッ!!」
「うるさいっ!」
「くしゃみぐらい許してくれよっ!!」
防寒服装など、全くなかったのである。
白雪は女の子ということもあって荷物は皆女性物。なのでマフラーだけ貸してもらった。
俺の装備、マフラーのみって……。
馬車こと犬車に三人とも乗り込み、荷物も完備してようやく出揃う。
まだ辺りは明るく、昼頃なのだろうか、俺のお腹がさっきから鳴いていて正直キツい。
「わんっ!」
一声、泣き声が前方から聞こえたと思うと、ものすごい勢いで犬車は走り出した。
「うわっ!」
あまりの勢いに転げそうになる。
白雪の言ったとおり、見た目以上にかなりの力があるようだった。
「そういえばさ。今気付いたんだけど、瀬菜——」
ゴスッ!
「何故叩きますかねぇっ!?」
「い、いきなり名前で呼ばないでよっ! バカッ!」
わけがわからん……。てか教えてもらったのは瀬菜っていう名前だけだ。
ちゃんと自己紹介もしてないだろうが。俺のことだけ知ってるクセに。
「……お前、あの蒼い剣どうしたんだよ」
何故か少し赤面していた瀬菜は我に戻ると、俺の質問に無愛想な顔に戻って答える。
「あぁ、あれ? もちろん、なおしたに決まってるじゃない」
「なおしたって……あんなバカでかいもん、どこになおすんだよ?」
すると瀬菜は自信に満ちたような顔をして人差し指を立てる。
「それが魔科学よ」
そういえばここに来る前に魔科学とかなにやら言ってたのを思い出す。
「それ、一体何なんだ?」
この世界に来たとしても何が何だかわからなかったんだが。
「魔科学っていうのは、その言葉通りに魔術と科学を合わせたものよ」
「えっと……つまりどういう意味だ?」
魔術と科学を合わせたものといわれても、いまいち実感が湧かないというものだ。
「そうね……例えば、剣の刀身に炎が宿ってるとか。科学によって生み出された物に魔法がついてるの。
そのようなものを魔科学と呼ぶし、魔法と科学を合わせ持つ異能の能力とか……種類は様々ね」
「へぇ〜……なんとなく分かった気がするよ」
珍しく瀬菜は分かりやすく説明を始めてくれた。
つまりあれだな。ゲームでいうRPGの特技か何かである奴だよな。
「その魔科学を使うものを総称して魔術師とも呼ぶわ」
何だかそれっぽくなってきたな。犬車に揺られながらも思う。
横では白雪も瀬菜の説明に夢中だった。だからだろうか、瀬菜がここまで丁寧なのは。
「魔術師には魔術師の専用の名前も付くの」
「へぇ……お前は何て魔術師名なんだ?」
まさか自分が言われると思ってなかったのか、少々驚いた顔をして自分を指をさす瀬菜。
「私? 私の魔術師名は……"憂鬱"っていうの」
「憂鬱……か」
——何ともお似合いな魔術師名だな。なんて言ったら何されるかたまったもんじゃない。
それより"横暴"の方がいいだろう。そっちの方が似合ってそうだが。
周りは一面雪景色。これが世に言う銀世界というものなのだろうか。
ガタゴトと猛スピードで駆けていく犬車の目指すは——降臨の峡谷。
そこには何が待ち受けているのか。それはこの世界の物語が急展開に差し掛かるものだとは
誰も思っていなかっただろうな。
- Re: ある日の放課後の魔科学 ( No.19 )
- 日時: 2010/12/09 19:42
- 名前: 遮犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: XvkJzdpR)
「寒っ……!」
寒さにより、目が覚める。
どうやらいつの間にか寝入ってしまっていたようだ。速度はこんなにも速いというのによく寝れたな。
あ、そうか。寒いからか……。寒いとすぐに眠気くるもんな、うん。
とはいってもマフラー一つだけの防寒では寒いのは当たり前だろう。
何か無いかと寝ぼけた顔で少し暗い犬車の中を手探りで探す。
「ん……」
すると、近くからとても甘い匂いと共に色っぽいような声が。
男からはまず発しないこのダブルパンチに俺は少々寝ぼけた頭で考える。
「えっと……?」
そういえばさっきから肩が何か重いような気もする。だけどもいい匂いがするので離したくない。
ついでにいうと少し温かい。これはまるで人間の体温のように——人間の体温?
「……マジでか……!?」
今の状況。
それは、その温もりのする方向へと横目で見ると分かった。
——肩の上に、美少女こと瀬菜の顔がある。
「すー……すー……」
静かな寝息をたてている。少し薄暗いとはいえ、その寝顔はハッキリと見ることが出来た。
まてまてまて。この状況は一体なんですか?
(う、動くに動けねぇ……!)
少しでも動くと、肩から頭が離れて目が覚めてしまうだろう。
それにしても甘酸っぱい匂いはおいといて……すごく寝顔は可愛かった。
「大人しい性格だったら大層モテるだろ……これ」
10人に聞いて8、9人は瀬菜のことを美少女と総称することだろう。
その美少女は……今現在俺の肩の上で睡眠中です。
対して、白雪の姿を探してみる。すると真正面でこれまた可愛らしい顔で眠りに入っていた。
横になっており、荷物を抱き枕代わりに抱きついている姿からみて、到底王女などとは思えない。
「つーか……健全な男子高校生をここにおくなよ……! 今更だけど、この組み合わせダメだろ!」
美少女二体と健全な男子高校生。それが一つ犬車の中で眠りに入っている。
……この世界に警察なんかがいたら間違いなく俺は掴まるだろうて。
「ふぅ……まあいいか」
温かいものを探す気がだんだんと二人の寝顔を見ていると失せてきた。
てか今は素直に健全な男子高校生としてこの幸せの温もりを感じていたい。
起きたらまたどうせ俺にとっては猛獣となりうるのだから。
「わんわんっ!」
犬の鳴き声がしたかと思いきや、いきなり犬車はその場に停止した。
「うぉっ!」
急ストップするわけだから、その不可抗力で俺はよろける。
そのよろけた先には、瀬菜。
「きゃっ!」
可愛らしい叫び声と共に俺はすごい勢いでもつれていく。
「いてて……ん?」
何だか柔らかいものが俺のおでこに。
何だろうと思い、顔をあげてみると——イッツ、太もも。
「あ、えっと……その」
視線をゆっくりと上の方にあげますと、そこにはまさしく10人中10人が呆けた顔と言える顔をしていた
その顔は段々と綻んでいき、とんでもない赤面状態になる。
「イヤアアアアッ!!」
「ぐへぶぁっ!!」
ものすごい勢いで俺は犬車から吹き飛ばされ、地面一面埋もれている雪へとダイブした。
「ふんっ!」
「ぞんなおぼんばいべぶばばい(そんな怒んないでください)」
俺の頬は上手く喋れないほどに膨れ上がっていた。
もしかしてこれ、顔の骨歪んでる?
「木葉、こっち向いてください」
「べ?」
バキッ!
目の前が真っ白になる。そしてその次に真っ黒に。頬を思い切り殴られたと知るのに時間がかかった。
てか音がひどくないですかっ!? 絶対これ俺の顔半端ないことになってるよねぇっ!?
「何するんだよっ!」
「ほら、治りましたでしょう?」
「え? あ……そういえばそうだな」
白雪に蹴られた衝撃に治るって……俺の顔はギャグマンガか何かか。
ていうかあんだけ膨れてたものが治るってどんな蹴りを喰らわせたらそうなるんですか。
「大体、アンタが悪いんじゃないのっ! 思い出しただけで気持ち悪い……!」
「やかましいっ! 俺は好きでああなったんじゃないわっ! それにお前——!」
と、言いかけて直前で黙る。
これを言ったらそれこそ思い切り殴られる、というか原型をとどめてはいないだろう。
俺の肩に頭をのせて寝ていたことは瀬菜自身も知らないことなのだった。
「な、何よ?」
寒さのせいか、少し頬が赤くなりつつも瀬菜が俺に睨みを利かせて聞いてくる。
なんて答えようか……? 相手を怒らせない、そして機嫌がよくなる言葉といえばっ!
「お前の寝顔の可愛さに見とれてたんだよ——ぶはぁっ!!」
またしても俺は宙へと舞い、白雪に殴られ、なんとか原型をとどめた。
蹴る直前の瀬菜の顔がさっきよりもかなり赤かったのが謎だが気にしないでおこう。
降臨の渓谷というのは想像以上に綺麗だった。
一面、銀世界というのもあると思うがそれ以上に渓流がものすごく透き通っていて綺麗であった。
この場所ならば伝説の召喚獣の一体か二体かはいてもおかしくはないだろうと思えるぐらいだ。
「ライ、レイ。ありがとうね」
「わんわんっ!」
嬉しそうに目を細めて主人の白雪の手に甘えるバカ力の犬二頭。
「それじゃあ、いきましょうか」
白雪の言葉に俺と瀬菜はゆっくりと頷いて答える。
自分用の荷物——といってもほとんどは瀬菜と白雪の荷物を持つ、荷物持ちでしかないのだから。
「だってアンタ、まだ魔科学とか使えないじゃない」
反論、全く出来ません。そんな力、昨日今日でいきなり使えといわれても出来るわけがない。
よって、俺の荷物持ちは確定となった。
身軽な瀬菜と白雪は意気揚々と綺麗な渓谷を歩む。
俺も後ろで鼻息の荒い犬二頭と共に歩く。
渓谷に入る瞬間、何故だか入ってはいけないような気がした。
それは危険を察知するのか、それとも別の何かかは全く分からない。
とにかく、入ってはいけないような気がしてならなかった。
- Re: ある日の放課後の魔科学 ( No.20 )
- 日時: 2010/12/11 01:31
- 名前: 遮犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: XvkJzdpR)
歩くこと数分。
目の前で呑気にも談笑しながら歩いている美少女二人を見ながら重たい荷物を背中に背負う俺。
何たる格差とも思うが仕方ないことだとため息を吐く。
(それにしても……あれから何時間経ったんだ? 夜は更けて朝みたいだし……)
日の光で輝かしく銀世界が輝いている。だが、どういうわけか"太陽自体が見えなかった"。
普通、光は太陽から発せられるはずである。だがしかし、この世界は太陽がない。
地面が光っている。そう言った方が正しいのかもしれない。
薄暗くなっていた時はこの光は消えていたのか。いや、かすかに見えたので光が全て消えたわけではない
この世界の正体がますます分からない。何がどうなっているかもわからない。
ただただ、この世界を綺麗と形容する他はなかった。
「いつになったら帰れるんだろ……」
目の前をさっさと行く美少女二人に聞こえない程度の声で呟く。
聞こえたら無論、瀬菜に吹き飛ばされ、白雪に顔を治されるだからだ。
……何か言ってて悲しくなるなぁ……。
ふいにあれだけ嫌だった母と姉の姿、そして唯一の味方だった妹の姿が目に浮かんだ。
(今頃あの三人は俺がいないことでパラダイスしてんだろうな……)
何せ、俺が一番食事代を消費していたからである。
食べ盛りなのだからこれはまた仕方ないことだろう。だがしかし、母と姉は許してはくれない。確かに家計が厳しいというのは分かるのだが……
この空腹に代えられるものはないだろう。健全な男子中学生からすると空腹は一番の敵だった。
そういえば今現在も腹が減っていることに気付く。
こっちに来てからまだドンブリ草ぐらいしか食うというより飲んでないからな。
母と姉の食費削減のおかげ大抵は飯をあまり取らずにはいられることはいられるが……。
さすがに一日茶一杯だとキツいって。
「何かないのか……?」
ガサゴソと荷物を探ってみる。
この荷物はほとんど白雪と瀬菜のものだと知っているがそれは承知の上だ。
食べ物の一つか二つぐらい年頃なのは同じだし、持ってきているだろう。
気付かれないようにこっそりとまずは瀬菜の荷物を探る。
軽めの小型ナップサック形状だった。さて、中身は……。
今の俺にはプライベートなどというものがなかった。かなり腹も減ったことだしな。
中を覗くと——お菓子が予想通りありました。
クッキーだった。非常食程度のようなものなのだろうがこれでも腹の足しになるのだから食う他はない。
他にもかなりの量のお菓子があるので一つや二つ食ってもバレないだろうと思った。
クッキーのお菓子の袋を開け、口へと放り込む。
……上手すぎる。こんなにも質素なクッキーが上手いと感じたのは今までの中で初めてのことだろう。
よく噛み締める。そしてもう一枚を手にしようとした時だった。
「……何だこれ?」
ナップサックの中から一枚、紙のようなものがあった。
隠していたのだろう。よく見なければ見つけられない。自分でもよく気付いたなと思う。
「もしかして……」
瀬菜の秘密か何かか? ……だとすると立場を逆転することだって可能だろう。
……よしっ! プライベートだろうがこれは俺の権力そのものっ!
俺を信用しすぎたな! コキを使ったのが仇に——
紙のようなもの。それは写真だった。
その中に写っていたもの。それは目を疑うようなものだった。
「何で……
俺が……いるんだ?」
その写真の中には、優しそうに微笑む瀬菜の姿と——俺の姿。俺の姿がそこにあったのだ。
俺は確かに瀬菜とは一つも顔を合わしたことなどないはずだ。だというのに。
「どういうことなんだ……?」
俺は、瀬菜を知っている? 高校という場で会う前から、瀬菜のことを。
俺が忘れている? 俺とアイツの関係は一体?
その他に写ってる人は、俺の姉と妹。そして知らない綺麗な女の人の姿。
「……気のせいだろ。俺に似ている別人。それしかありえない」
そういって写真をナップサックに戻そうとした時
「——何立ち止まってんの?」
「うぉぁっ! な、何でもねぇよっ!!」
こちらに歩いてくる瀬菜の姿を見て咄嗟に写真を押し潰すような形でポケットの中にしまいこむ。
不思議そうに首を傾げ、表情は呆れた顔で俺を凝視する。
「何してたの?」
「い、いや……」
そこでハッと気付く。
(クッキー隠すの忘れたああああっ!!)
手をナップサックとクッキーごと後ろに隠したが時既に遅し。
「………」
クッキー凝視。ナップサック凝視。
「えーと、これはその——」
「見た?」
「……え?」
一瞬、何を聞かれたのか全く分からなかった。
そして、あの写真をふと思い出す。ポケットの中に押し込んだ写真を。
「な、何をだよ……?」
「………」
黙って、さっきまでの呆れた顔などとは違い、鬼の形相などというものでもなく
——不安気な、今にも泣きそうな少女の顔がそこにあった。
「……"逢風"?」
「ッ!!」
苗字で呼ぶと急に目の端に瀬菜が少しの涙を浮かべたような気がした。
そしてどんな野獣よりも速い速度でナップサックとちゃっかりお菓子までもを取る。
「……写真。この中に入ってた写真」
やはり、あの写真のことだった。
白雪が「どうしたんですか?」と、不安げな顔で近づいてくる。
あぁ、こんなことなら空腹を我慢しておくべきだったと今更ながらの後悔。
これはきっと、瀬菜にとっての何かなのだろう。そこに俺似の男が写っているとして……。
あぁ、じゃああれか。昔にフラれたとか? この男に。だから俺に因縁を持つわけで……なるほどな。
「……見てない」
俺は、嘘を吐いた。
それは良い嘘なのか悪い嘘なのかは分からない。ただ、言えることは
今此処で、このことを話すべき時じゃないということだった。
「……まあいいわ。先を急ぎましょう」
俺を少々睨み付けた後、何故か怒った足取りで前を歩きだした。
この行動が、果たしてよかったのだなんて、俺には分かりっこない。
瀬菜とは、つい昨日今日に会ったばかりなのだから。
- Re: ある日の放課後の魔科学 2話完結 ( No.21 )
- 日時: 2010/12/12 01:07
- 名前: 遮犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: XvkJzdpR)
一方その頃。
この銀世界の中心部に位置する巨大な白銀の色をする城では、逃げ帰った公爵おっさんが報告を告げていた
「ふむ……救世主が現れた、と?」
いまや大きな顔をして偉そうに王座に居座っている男が報告を受け、髭を撫でながら答えた。
「は、はい! 確かにあの者たちは救世主と! さらにはあの恐ろしく強い力! 本物かと!」
城の中といえど寒いこの雪の世界で脂汗まみれて必死に先の戦闘のことを話す公爵おっさん。
その様子はただ事ではないことは明らかに見えた。周りを囲む兵士たちはざわつく。
だがしかし、王座に座っている今現在城を制服している最高責任者である大臣は動じない。
右手を挙げるだけで兵士は押し黙る。何も言わなくても既に王としての風格が出ていた。
そして、表情一つ変えないのである。それは我がこの国の王と言っているかのようであった。
「案ずるな。それが本当だったとしてももう遅い。反乱軍はほぼ壊滅に近い。
残りは最後の拠点たる降臨の渓谷を潰すだけだ」
「しかし! あそこには代々封印されてきたとされる伝説の召喚獣が……!」
「黙れっ! ワシに指図するか!」
兵士は大臣の一言で黙る。それほどの迫力があった。
昔から本当の王のために仕えて来た兵士たちだったが大臣の方が魅力的であった。
大臣は、人を使うのが上手く、なお財政などにも積極的でまさに王たる風格を持つ男だった。
それに比べ、普段穏やかで平和な王は大臣のような野心がなかった。
誰にでも甘かったのである。普通ならば打ち首という厳しい処罰を与えるべきものを救うほどである。
正直、兵士たちの大半はそんな甘い王についていけないという部分もあった。
そして、大臣が反乱を決断し、現在は大臣が王の立場に立っている。
財政などは暴政で、いや元から暴政だったのである。
大臣が王の立場について見てようやく兵士たちはわかったのだ。
——あの王がいたからこそ平和だった。野心などとバカなことを考えるのではなかったと。
「さぁ……支度をせよ! これより降臨の渓谷より進行を開始する!」
現在の王、大臣は聖獣とも呼ばれる伝説の召喚獣が封印されているとされる聖なる地をも
——踏み潰そうとしていたのであった。
「追えーっ!」
「そっちに行ったぞっ!」
騒々しい声と鉄と鉄の擦れる音が普段は穏やかな森を想像しく荒立たせていた。
「クソ……!」
少年は木の陰から騒々しく音の響く方へと向く。
王国の紋章を鎧に描いているものを装備した兵士が何人もいた。
手には槍や剣やら武器を持たれている。
キョロキョロと周りを見た後「こっちだっ!」と言ってどこかへ走り去ってしまった。
「ふう……」
ようやく落ち着いた静寂の時に少年は首にかけてある小さな写真入れを開いた。
中には、幸せそうに笑っている穏やかそうな男と少年の姿。そして、可愛らしい白き少女——白雪がいた。
「白雪……どこにいるんだ……!」
写真を強く睨むようにして見た後、少年は立ち上がる。
その端正な顔立ちに綺麗な銀色の髪をし、格好はいかにも剣士といった格好。
後ろ腰には長く、少々大きめの長剣が携えられている。
「父さん……! 白雪……!」
いまや敵となった写真の中に写っている兄弟の姿を見る。
どうしてこうなってしまったのか。大臣が反乱を起こしたかといって此処までなるものなのか。
——何かが裏で動いている?
そう、感じ始めていた。
この少年、王国の子息の内の一人であるシヴァンはいまや子息の中で唯一の味方である白雪を探す。
ただ一つの目的地である、降臨の渓谷へと向かっていった。
「つきましたっ!」
白雪が大きな声で言った。
そこは巨大な石……じゃないな。堅い何かの物質で作られた柱が聳え立っていた。
「ここが……その召喚獣が眠ってるという場所?」
その巨大な柱を見上げる形で瀬菜は白雪に言った。
「はいっ! そうです!」
白雪はその言葉に笑顔で返事をする。そして、決意したような顔を見せる。
「……俺を忘れていませんか?」
「……あ、生きてたの?」
「死んでたまるかっ! ていうか人に荷物持たせてたクセして何その態度っ!」
俺は息切れしながら瀬菜に思い切りツッコむ。
今現在瀬菜は荷物を持っているが白雪の荷物は未だ俺が持っていた。
正直、この重たい荷物の内で瀬菜の荷物は10分の1程度の重さである。
全く重さなど変わるはずはなく、少しは減ったかもしれないが全く関係なかった。
だというのにあの言い様。この野郎……少しは感謝しやがれっ!
「それで? ここで一体何を——」
ヒュン!
目の前を風が切るような音が通過した。いや、音ではなく、正確に言うと——弓矢である。
「……え?」
ダメだ。俺の脳内が事の事態に追いついていけない。
弓矢の放たれた方向をゆっくりと向いてみると、そこにはゴツいおじさんが10、3人ほどいた。
手には物騒な武器がわんさかと。
「お前ら……何者だっ!!」
その中でも特に若い男が怒鳴った。
瀬菜はいつの間にか剣は出していないが動じることなく、相手を見据えていた。
白雪は「あっ!」とでも言いたげな顔をしている。
「あっ!」
本当に言ったよこの子。
「違うんですっ! 将軍! 私です! 白雪です! この者たちは救世主です!」
ちょっと待てええええっ! あんな怖い人らにこんな少年少女が救世主っていっても……!
「な……! そうとは知らず! 申し訳ございませんでした!!」
え、えぇ〜〜……。
今更ながらこの世界の人って皆信じやすくないか? 基本いい人だからなのだろうか……?
「私の言葉は反乱軍の方たちには絶対なのです」
白雪はこっそりと俺に言った。
そうか、そういえば白雪は王女だったな……。
何ともこの光景は滑稽だった。年端も行かない少年少女に頭を下げているゴツいおっさん達。
「申し遅れました。反乱軍総司令官、エルゲート・グランセルと申します」
どうやらこのゴツい男の人たちは反乱軍だそうだ。
その爽やかとも言える笑顔を放つエルゲートはどこか親近感が湧いた。
「ようやく……我らの反撃の時でございますか!」
エルゲート将軍は白雪に興奮した様子で言った。
その言葉に大きく頷く。
それだけで他の兵士、反乱軍は大きな歓声をあげた。
白雪は本当に王女なんだとこの時ハッキリと認識できたほど、どこか小さき少女に風格が出たのだった。
——戦いの時は一刻と一刻と迫っていた。
……俺は果たして生きて帰れるのだろうか。
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