コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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俺様メイド?!!-無事完結しました!!-
日時: 2011/05/29 16:34
名前: 山下愁 (ID: GlvB0uzl)

「お帰りなさいませ、お嬢様」

 今、私の前にいる奴は。

 メイド服を着た、男です。


***** ***** *****

初めまして、の人も。

見たことあるって人も。

こんにちはー、山下愁です。


今から書く小説は、恋愛4コメディ6の『あほのような恋愛小説』です。
ではでは、注意書き行っちゃいましょう!


そのいちです!☆誹謗、中傷的なコメントはマジで止めてください。

そのにです!☆荒らしもマジで止めてください。

そのさんです!☆恋愛無理、コメディ無理、山下愁無理な人はUターン。

そのよんです!☆神的文章が読みたい人もUターン。

そのごです!☆何でもあるけど、それでもOKですか?


はい、残った人は手ぇ挙げて!
……よく残ってくれました。ありがとうございます。
では。読んじゃってください!

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☆発表系〜
オリキャラ募集用紙>>14 ※終了! ありがとう!
リクエスト募集&お大募集&キャラへの質問>>53
人気投票実施中>>108

お客様↓  ありがとうございます!
野宮詩織様 メデューサ様 菫様 まりも様 だいこん大魔法様 らら*゜ 様 ゆめねこ様 友美様
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☆目次的な物

プロローグ>>01
登場人物>>02
第1話>>03 2部>>04
第2話>>07 2部>>08 3部>>09
第3話>>10 2部>>13 3部>>22
第4話>>23
第5話>>24 2部>>25
第6話>>26 2部>>27
第7話>>30 2部>>31 3部>>32 4部>>33
第8話>>34 2部>>35 3部>>40
第9話>>41 2部>>44
第10話>>45 2部>>46 3部>>49
第11話>>50 2部>>51 3部>>52
第12話>>62
第13話>>65 2部>>66 3部>>67
第14話>>68 2部>>69 3部>>70 4部>>71 5部>>72
第15話>>82 2部>>83 3部>>84 4部>>85
第16話>>87 2部>>88 3部>>89 4部>>90 5部>>96
第17話>>100 2部>>104 3部>>107 4部>>116 5部>>120 6部>>127
第18話>>151 2部>>152 3部>>153 4部>>154 5部>>155 6部>>156 7部>>157
第19話>>158 2部>>159 3部>>160
最終話>>161 2部>>162
あとがき>>163


☆小ネタ小説
バレンタイン>>46
夏休みなのに宿題が終わってない…(メデューサ様より)>>59
卒業式>>63
番外編『俺様メイド×おいでませ、助太刀部!!』>>73 >>74 >>75 >>76 >>77 >>78 >>79
俺様メイド?!! で、悪ノ娘、召使。お知らせ>>111
本編>>130 >>131 >>132 >>133 >>134 >>135 >>138 >>139 >>143 >>145 >>146 >>147

☆プロフィール
瀬野翔>>47
相崎優亜>>64
深江恵梨>>80
結城博>>81
堂本睦月>>86

裏設定>>119

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Re: 俺様メイド?!!-クライマックス突入!!-更新再開 ( No.156 )
日時: 2011/05/26 19:10
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)

俺様メイド 6部


「睦月先輩って、優亜の居場所を知ってるんですか?」

 戦闘で廊下を歩く睦月は、「あー?」と答える。
 しばらく間が開き、

「知らん。おいは東さんを探してるだけやから。届け物をしたら帰るで」

「そんな!! 優亜はどうでもいいんですか!」

 恵梨は金切り声で睦月にどなりつけた。
 しかし、睦月は睦月で「さっさと帰るから」と言う。あくまでも、彼は東の命令だからここに居るらしい。

「どうしても……ダメ?」

 零音は、上目遣いで睦月に訊いた。
 普通の男ならイチコロのはずなのに、睦月は「ダメ」と答えた。何、女の子に興味無いんですかあんた。

「ともかく、おいはお前らのお守りをしてる場合じゃないんや。つか、帰れ。使いもんにならん坊ちゃん」

 しっしっと追い払う仕草を見せ、睦月は4人に背を向けた。

「……嫌です」

「あぁ?」

 睦月は振り向く。
 嫌だと答えたのは、恵梨だった。
 睦月を睨みつけて今にも襲いかかりそうなオーラを醸し出している。

「私は、優亜の友達なのよ!! 友達が友達を助けないでどうするの?」

「……お前、それでええんか?」

 睦月は、鈴鹿な声で訊いた。目つきは冷ややかな色を帯びている。
 零音が後ろでヒッと悲鳴を上げた気がしたが、それでも恵梨は負けなかった。

「良いわよ。覚悟は出来てるから!!」

「そうじゃない。優亜ちゃんを助けたいのは、燐や雫、瀬野さんだって居るんや。お前らは、あいつらの邪魔になるけどそれで良いのかと訊いている」

 流石に、この言葉には答えられない恵梨。
 実際にそうだから。自分達は、彼らに迷惑をかけるだろう。
 だがそこで、黙りこむ恵梨の代わりに博が答えた。

「自分の身は自分で守ってやるよ! 俺は空手も習ってるしな!」

 自信を持って言い放った。
 睦月は呆れたようにため息をつき、身を翻す。

「ついて来いや。東さんを探すついでに優亜ちゃんを救い出す」

「本当ですか?!」

 恵梨は確認するように言った。
 何だか疲れたような感じの「あぁ」が返って来た。

「じゃ、よろしくお願いしますね!」

「うるせぇよ黙りぃな」

 やっぱり止めればよかったと心から思った睦月だった。
 すると、ズルリという何かを引きずるような音がした。
 少しだけ香血の匂い。まさかと思い、5人は一斉に後ろを振り向く。

「おや、皆様お揃いで。優亜様探しですか?」

 燐がにっこりとした笑顔を浮かべて、廊下からやって来た。
 後ろには雫が相も変わらずの仏頂面で、燐の後ろをついて行く。その手にはボロボロにされた樫月の足が握られていた。
 樫月の方は、顔からつま先に至るまで満身創痍の状態で、雫に引きずられていた。

「ちょぉ燐さん!! どないしはったの、この兄ちゃん!」

「少し邪魔をされましたので、返り討ちにしました」

 燐より早く、雫が答えた。樫月を引きずっていると言うのに、重そうな表情すら見せない。
 睦月と博は、何も言わずにただ合掌した。

「それはそうと、恵梨様達がここに居る理由は大体分かります。何故、睦月が居るんです?」

 燐は怪訝そうに眉をひそめ、睦月を見やる。
 睦月は、自分は東に頼まれてここに居る事を伝えた。

「……なるほど。そうですか」

「あ、せやけどあの写真に写っとった東さんとは違うと思うんやけど」

「声ならいくらでも変えられます」

 雫はピシャリと言い放つ。そして樫月の足を放り出し、スタスタと廊下を1人で歩いて行ってしまった。
 燐は苦笑を浮かべると、雫の後ろに続いて行く。

「どこに行くんですか」

 雛菊が燐に訊く。
 燐は、まるでついて来いと言うように5人に視線を渡した。

「……行ってみようか」

「そ、そうだよね」

 ————瞬間。


「あれぇ、どうして優亜ちゃんのお友達が居る訳ぇ?」


 ゾクリと思わせるような、ゆっくりとした殺気を含んだ声。
 嫌な予感が体中を駆け回り、逃げろと本能が告げていた。
 皆はゆっくりと、後ろを振り向いた。

「やぁ」

 そこに居たのは、瀬野大地だった。
 皆は息を詰まらせたみたいな表情を見せる。

「わ、私達を捕まえに来たんですか?!」

 雛菊は叫んだ。もちろん、大地を睨みつけながら。
 大地はガシガシと自分の頭を掻きまわし、そして可愛く笑って見せた。

「正解ぃ」



 途端に、鈍い音と悲鳴が廊下に響き渡った。

Re: 俺様メイド?!!-クライマックス突入!!-更新再開 ( No.157 )
日時: 2011/05/28 19:09
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)

第18話 7部


 優亜は大地に押しつけられたピンクのドレスを着て、渋々身に着けていた。
 ふと、窓の外を見ると明るいネオンの色がガラスから溢れている。
 不意に涙が目に溜まるような感じがした。

「会いたいよ……」

 頭に思い浮かべるのは、いつも助けてくれた『彼』——。
 その時、部屋のドアがノックされる音が響く。

「優亜ちゃん。入るよ」

 入って来たのは大輔だった。白いスーツに身を包み、髪を七三に分けている。
 優亜は大輔をまるで虫でも見るかのような目で睨みつけ、視線をそらす。

「う〜ん、やっぱり可愛いね。僕のマイスウィートハニー」

「うざい」

 優亜は辛辣な言葉で一蹴する。大輔の方を一瞥もせずに。
 大輔はため息をつき、優亜の隣に立ち彼女の細い肩に手を乗せる。

「大丈夫だよ……僕は優しいから、ね」

「何をする気?」

 優亜は乱暴に大輔の手を振り払い、逃げるように距離を取る。
 払いのけられた腕をじっと見つめ、大輔は笑った。

「何って……僕と優亜ちゃんはいずれ結婚するんだから、既成事実に決まってるじゃないか」

「キモい」

 優亜は苦々しい顔でバッサリと言い捨てる。
 流石にこれには大輔もムカついたらしく、パンパンと2回手を叩いた。
 すると、大地がドアを開けて入って来た。優亜が誰よりも知る友人達を背負って。

「恵梨、博、雛菊、零音!! 燐さん、雫さんに睦月先輩まで……!」

 自然と声が震えているのが分かった。
 大地は、優亜に笑いかけて背負っていた恵梨達を床に落とす。
 ドサドサと鈍い音がして、皆が床に叩きつけられた。

「どうして……」

「決まってるじゃないか。害虫退治だよ。僕らの愛を邪魔する奴は、誰であろうと許さない」

 何も言わない大地の代わりに、大輔が答えた。
 優亜は大輔を睨みつけ、

「酷いわ……!」

 と、言った。
 だが、大輔は笑うのを止めなかった。
 優亜の腕を引き、抱き寄せようとする。

「東。誰も来ないように見張っていろ」

「分かりました」

「嫌ッ!! 誰か助けて!!」

 だが、その声は誰にも届く事はなく、むなしく宙に浮いているばかりだった。

***** ***** *****

 大地はしめられたドアに背を預け、ゆっくりと天井を見上げる。
 最上階のスウィートルーム……そこが、優亜達が居る部屋だ。
 大地は、静かに天井へ手を伸ばす。
 先程、優亜の友人達をボロボロにする時に言われた言葉を思い出す。

(……君は、弱いんですよ)

(それだったら……東の方がよほど強い)

「誰だよ、東って」

 大地はから笑いを浮かべる。
 どうせ戦うならば、彼とが良い。
 メイドであり、そして自分の弟でもある『彼』——

「んぁ?」

 突如、大地の前に足が見えた。
 ただの足じゃない。振り上げられた、蹴る為の足だ。
 避けようと思ったが、足の方が早すぎて避けられなかった。

「ぐぁ」

 すごい勢いで腹を蹴られ、木製のドアを破壊して部屋に転がり込む大地。

「東?! い、一体どうしたのだ!」

「蹴られただけッス、大丈夫……多分」

 埃が舞い、部屋を煙だらけにする。
 その煙の向こうに、誰かが居た。
 シルエットから見えるのは、ワンピースみたいな何かを着ている女の人。やがて、煙が晴れると誰かが姿を見せる。
 白と黒を基調としたメイド服。頭には純白のヘッドドレスをつけ、漆黒の髪を左下に結んでいる。
 細い足で飛び散ったドアを踏み砕き、広い部屋に踏み込む彼——。

「お、お前は……!!」

 優亜の顔が自然と明るくなる。
 大輔は苦々しげに舌打ちをして、大地は苦笑を洩らす。

「どうも。相崎家のメイド、瀬野翔です。優亜様をお迎えにまいりました」

 翔は、にっこりと笑顔を見せた。

Re: 俺様メイド?!!-クライマックス突入!!-更新再開 ( No.158 )
日時: 2011/05/28 20:49
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)

第19話


 蹴られた腹をさすりながら、大地は立ちあがった。埃にまみれたスーツを払い、翔を睨みつける。
 一方、翔は面倒くさそうに頭をガシガシと掻きながら立っていた。最早女の欠片も感じられない。

「お、お、お前……僕を殴り飛ばした……!」

 大輔はプルプルと震える指で、翔を示す。
 自分が指されてる事に気付いたのか、翔はにっこりと笑った。
 もし大輔が翔に殴り飛ばされてなければ、完璧翔に惚れていたはずだろう。だが、その笑顔に大輔は震えあがった。

「さぁ、優亜様をお返し願います。10数える間に優亜様をこちらへお渡しくださいませ」

「出来ない事だね。翔、分かってるの? 君の大事な大事なお友達が人質として居るのに」

 大地の言葉に、翔は床へ視線を移す。
 赤いカーペットが敷かれた床に転がっていたのは、恵梨達だった。
 だが、そんな恵梨達が居るのに、翔は

「知るか。そんなもん」

 と、バッサリ言い放った。
 大輔、大地、もちろん優亜も呆気に取られる。
 あれほど仲が良かったじゃない。なのにこういう局面に立たされると途端にホイと投げ出すの?!

「俺はご主人様だけ居ればどうでもいいし」

「いつから君は忠犬タイプになっちゃったの? まぁ、いいや」

 大地は腰を低く落とし、身構えた。

「戦えば、優亜を返してくれるんだ」

「勝てたらね。ご褒美として返してあげるよ、でも——」

 スッ、と大地の目が細くなる。冷気を浴びた瞳になり、ゾクリと何かが背中を這いあがるような感覚が貫く。

「お兄ちゃんに勝った時って、なかったよね? 翔」

「そんなの昔の話だ。やってみなきゃ分からねぇだろ!!」

 翔はどなり、床を蹴りだす。
 同じように大地も床を蹴りだし、同時に2人がぶつかり合った。
 翔の拳が大地の腹に突き刺されば、大地は翔の脇腹を蹴り上げる。翔の蹴りが大地の顎に炸裂すれば、大地は翔の頭へ肘鉄を叩きつける。
 両者とも1歩も退かない熾烈な戦いが繰り広げられていた。

「翔……!!」

 優亜はギュッとドレスの裾を掴んで、翔達の戦いを見守っていた。だが、その腕を大輔に掴まれる。
 そのまま大輔の方に顔を向けられた。

「な、何を——!!」

「優亜ちゃん。今は誰も邪魔はしないんだ……。さぁ、誓おうか」

 大輔がまるでタコのように唇を突き出してくる。
 優亜はそんな大輔の顔に、平手打ちをした。パンッという乾いた音が部屋に響く。

「あたしに、触らないでッ……!」

「くそっ……。女の分際でェ!」

 殴られてムカついたのか、大輔は優亜に殴りかかろうとした。
 すると、突然大輔の腹にひざ蹴りが叩きこまれ、大輔は体をくの字に曲げて吹っ飛ぶ。
 優亜の目の前に現れた黒白のメイド服、紛れもなく翔の姿だった。

「優亜、無事か?!」

「うん!!」

 翔は優亜の方へ振りかえり、慌てた様子で訊く。
 優亜は反射的にうなずいた。心なしか、表情が嬉しそうだ。

「今のうちに避難しとけ。あの馬鹿ナルシストが来る前に! 燐でも叩き起こせ!」

「え、でも……翔は?!」

 翔が優亜の問いに答える前に、大地のひざ蹴りによってベッドに叩きつけられる。
 すぐに立ちあがり大地に対応しようとしたが、大地は翔の上に馬乗りになり首へと手を伸ばした。
 細い首に指をからめ、そして締め上げる。

「このまま彼岸へ行ってきなよ……。今度こそ、さよならだ」

「くっ……は、」

 苦しそうに息を漏らす翔は、首に自分の指を入れて何とか振りほどこうとしている。
 優亜は翔を助ける為に大地の後ろに飛び付き、ポカポカと背中を殴りつけた。

「翔を放してよ!!」

「うるさいな。邪魔しないで!」

 大地は優亜を振り払う。
 ベッドから振り落とされた優亜は、そのまま床に尻もちをついた。

「ゆ、あ……!!」

 翔の苦しそうな声が聞こえてきた。
 優亜は急いで立ちあがり、もう1度大地に殴りかかるが振り払われた。
 今度はかなり強く払われたらしく、床に思い切り叩きつけられた。
 翔は力を振り絞り、大地を蹴り上げる。

「おっと」

 大地は翔の蹴りをよけ、ひらりと空中へ逃げる。
 激しく咳き込みながら、翔はベッドから這い出た。そして体勢を立て直す。

「いくらやっても無駄なんだから」

 大地は楽しそうに言った。
 だが、そんな大地の声を叩き落とすかのように、冷たい翔の声が部屋に響いた。

「それは、どうだろうな?」

Re: 俺様メイド?!!-クライマックス突入!!-更新再開 ( No.159 )
日時: 2011/05/29 14:32
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)

第19話 2部


「……俺は、昔の『俺』とは違うんだ……。ただ、破壊するだけの、奴とはもう違う……!」

 ゼェ、ハァと肩で息をしながら、途切れ途切れに言葉を紡ぐ翔。
 大地は怪訝そうに眉を寄せ、首を傾げる。

「どう違うの? 現に、翔は今にも負けそうなんだけどさ。相棒も居ないようじゃ、俺には勝てないよ」

 まぁ、居ても勝てないけどねと大地は付け足す。そしてスーツの裏から折りたたまれた棒みたいなのを取りだした。
 その棒を真っ直ぐに直し、先端に曲がった刃を取りつける。
 柄が銀色の、立派な鎌になった。

「さぁ、翔。これで終わりにしてあげるよ。大丈夫、殺すとかそういう真似はしないから。その長い髪をバッサリ切ってあげて優亜ちゃんの隣に居れなくなるぐらいに恥ずかしい姿にしてあげる」

 黒い笑みを浮かべながら、翔に歩み寄って行く大地。

「翔、逃げて!! あ、あたしはどうせ……このナルシストと結婚するんだし……!」

「俺が嫌だ」

 優亜の言葉に、翔は短く否定する。

「どうして……翔は女装メイドなのに……。というか、翔が女装している理由も分からない……」

「隠し通さなきゃいけないものもある。貫きとおさなきゃいけない嘘もある。だが、」

 翔は睦月が握りしめている黒い学ランに目をやり、フッと口元に笑みを浮かべる。そしてもう1度、大地の方を一瞥した。
 じりじりと寄ってくる鎌を持った大地——その姿はまるで東のようだ。
 優亜はドレスの胸の部分をギュッと握りしめる。
 緊張でドキドキする心臓を押さえ、翔に逃げてほしいと願っていた。

「今の状況で、そんな事は言ってられないな」

 言葉が終わると同時に、翔は駆けだした。
 大地の横を通り過ぎ、優亜を抱きかかえる。そして部屋の隅に追いやられていた恵梨達の元へ駆け寄った。

「おい。おい、睦月。起きろ」

 翔はペシペシと睦月の頬を軽く叩く。
 睦月はうっすらと目を開け、ボケーとした様子で翔を見上げた。

「あれ、瀬野さん……? どうして? 何で?」

「そんなのはどうでもいい。学ランを渡せ」

「ハイ? これ、東さんのやけど……」

「いいから!」

 翔は睦月の腕から学ランをひったくった。
 メイド服の上から学ランを羽織り、スカートの下から折りたたまれた柄の赤い棒を取り出す。真っ直ぐに伸ばし、先端に鎌の刃を取りつけた。
 皆は目を疑った。
 壁に埋め込まれていた大輔も目を覚まし、翔の姿を見て息を詰まらせた。
 鎌を持った大地は、翔の姿を見て軽く笑い飛ばした。

「あはは。よく俺が間違えられる訳だよ。不良の東って」

 ニット帽をかぶり、そして邪魔な髪を学ランの外へやり準備は完了した。
 黒い学ランに赤い鎌、髪を左下へ結びニット帽をかぶった翔。まさにその姿は、不良の『東』——。

「なっ……。翔、さんが?」

「……嘘だろー」

 恵梨や博、雛菊、零音も目を見開き。
 燐と雫も息を飲み。
 睦月も呆然とした様子で翔を見上げていて。
 そして優亜も、口を大きく開けて翔を見ていた。

「翔が、……東?」

Re: 俺様メイド?!!-クライマックス突入!!-更新再開 ( No.160 )
日時: 2011/05/29 15:28
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)

第19話 3部


 東……否、翔は大地を睨みつけ、鎌を持ち直す。

「この街に来てから、良く間違えられるんだよね。『お前、不良の東か?』ってさ。違うのにね」

「俺と兄貴は容姿が似てるからな」

 大地の言葉を一刀両断し、翔は鎌を構えた。
 軽く言い捨てられた大地は、ふぅと深いため息をつく。そして眼光に冷たい色を宿らせて肉食獣のように笑う。

「昔の『俺』じゃない、か。何なに? 恋をしたから学校に行きたくなかったとかー?」

 大地は優亜の方を一瞥する。
 唖然としたような顔をしている優亜を見て、軽く笑い飛ばした。

「あははは、優亜ちゃん。翔がこんな子だって知ってさ、嫌いになっちゃった?」

「え、あ、」

 いきなり自分に振られ、優亜は反応に戸惑う。
 翔は優亜の方に視線を移し、そして柔らかい笑みを浮かべた。ポン、と優亜の頭に手を乗せ、ぐしゃぐしゃと掻きまわす。

「嫌われても良い。俺の事、覚えてて」

「しょ、う?」

 温かい手のぬくもりが離れるのを、優亜はずっと見ていた。
 翔は持っていた鎌の刃を、地面にスレスレになる所まで落とす。ギュッと柄が折れそうになる程に握りしめ、大地に向かって駆けだした。
 大地は鎌を持ち直し、翔の攻撃を押さえる。だが、意外にも力が重すぎて少しだけよろけてしまった。

「う、うわわわ! あ、東! こっちに来るな!」

 大地の後ろで大輔が叫ぶ。
 翔は大輔を睨みつけ、大地の鎌を振り払う。
 ギャリッと金属のこすれる音がして、大地がよろける。すぐに体勢を立て直そうとして鎌を持ち直したが、遅かった。

「大丈夫だ、兄貴」

 高い天井に舞う翔。明るいシャンデリアを背負い、逆光で表情が良く見えない。


「東は、人を殺さないからよ」


 まるで野球のバットを振るうかの如く、翔は大地の腹目掛けて思い切り鎌をスイングした。
 鎌の柄が大地の腹に当たり、大輔を巻き込んで壁に叩きこまれる。
 コンクリート片が辺りに飛び散り、2人は気絶した。

「……あ、と……」

 優亜達の事に気付いた翔は、ゆっくりと皆が居る方へ視線を向ける。
 何か、本当に呆けたような表情を浮かべる皆。東が翔だって事が意外だったのか。

「ばれちまったもんなー」

 翔はそう言うと、近くにあった大きな窓のガラスを素手でぶち破る。
 ガシャンと破壊音がして、びゅぅと風が部屋に入り込んできた。冷たい風が、部屋に居る全員の髪を揺らす。
 目下に広がるネオンの色と暗い空。風が耳元でビュービューと鳴っている。

「翔! 戻って、戻りなさい!!」

 優亜は翔の背中にどなり声を当てる。
 翔は優亜の方へ振りかえり、そして駆けよる。ボロボロの腕を伸ばし、優亜を思い切り抱きしめた。

「優亜。1度しか言わないから良く聞け」

 耳元で、愛おしそうに翔は優亜へ言葉を紡ぐ。
 離したくないと、優亜は翔の背中へ腕を回し、同じように抱きしめた。

「俺はお前が好きだ。誰が何と言おうと、神が俺を殺そうとも、永遠に愛してる」

 優亜の頬に伝う涙を手で乱暴に拭い、翔はくるりと身を翻した。
 そのまま真っ直ぐ窓へと向かい、サッシに飛び乗る。そして舞台俳優のように綺麗な一礼をした。

「お前ら、刮目して見よ! 耳の穴をかっぽじって良く聞け!!」

 部屋に翔の声が響き渡る。
 まさか、と思ったのか燐が「止めなさい!」と叫んでいた。雫も翔を止めるべく、傷ついた体に鞭を打って立ちあがった。

「俺の名前は東翔。あの最強の不良『東』にして——相崎家のメイドである!」

 それだけ言い残し、翔は夜の世界へと飛び立った。
 ネオンの中に吸い込まれていく翔。全員は、窓に駆け寄り、下を見下ろした。
 だが、輝く街の中にはもうすでに翔の姿は見えなかった。

「……翔」

 優亜はペタリ、と地面に座りこんだ。
 出来る事ならば、直接本人に伝えたかった。

「あたしも、あたしも翔が好きだよ————」




 次回、最終回!! 皆、見逃すな!


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