コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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俺様メイド?!!-無事完結しました!!-
日時: 2011/05/29 16:34
名前: 山下愁 (ID: GlvB0uzl)

「お帰りなさいませ、お嬢様」

 今、私の前にいる奴は。

 メイド服を着た、男です。


***** ***** *****

初めまして、の人も。

見たことあるって人も。

こんにちはー、山下愁です。


今から書く小説は、恋愛4コメディ6の『あほのような恋愛小説』です。
ではでは、注意書き行っちゃいましょう!


そのいちです!☆誹謗、中傷的なコメントはマジで止めてください。

そのにです!☆荒らしもマジで止めてください。

そのさんです!☆恋愛無理、コメディ無理、山下愁無理な人はUターン。

そのよんです!☆神的文章が読みたい人もUターン。

そのごです!☆何でもあるけど、それでもOKですか?


はい、残った人は手ぇ挙げて!
……よく残ってくれました。ありがとうございます。
では。読んじゃってください!

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☆発表系〜
オリキャラ募集用紙>>14 ※終了! ありがとう!
リクエスト募集&お大募集&キャラへの質問>>53
人気投票実施中>>108

お客様↓  ありがとうございます!
野宮詩織様 メデューサ様 菫様 まりも様 だいこん大魔法様 らら*゜ 様 ゆめねこ様 友美様
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☆目次的な物

プロローグ>>01
登場人物>>02
第1話>>03 2部>>04
第2話>>07 2部>>08 3部>>09
第3話>>10 2部>>13 3部>>22
第4話>>23
第5話>>24 2部>>25
第6話>>26 2部>>27
第7話>>30 2部>>31 3部>>32 4部>>33
第8話>>34 2部>>35 3部>>40
第9話>>41 2部>>44
第10話>>45 2部>>46 3部>>49
第11話>>50 2部>>51 3部>>52
第12話>>62
第13話>>65 2部>>66 3部>>67
第14話>>68 2部>>69 3部>>70 4部>>71 5部>>72
第15話>>82 2部>>83 3部>>84 4部>>85
第16話>>87 2部>>88 3部>>89 4部>>90 5部>>96
第17話>>100 2部>>104 3部>>107 4部>>116 5部>>120 6部>>127
第18話>>151 2部>>152 3部>>153 4部>>154 5部>>155 6部>>156 7部>>157
第19話>>158 2部>>159 3部>>160
最終話>>161 2部>>162
あとがき>>163


☆小ネタ小説
バレンタイン>>46
夏休みなのに宿題が終わってない…(メデューサ様より)>>59
卒業式>>63
番外編『俺様メイド×おいでませ、助太刀部!!』>>73 >>74 >>75 >>76 >>77 >>78 >>79
俺様メイド?!! で、悪ノ娘、召使。お知らせ>>111
本編>>130 >>131 >>132 >>133 >>134 >>135 >>138 >>139 >>143 >>145 >>146 >>147

☆プロフィール
瀬野翔>>47
相崎優亜>>64
深江恵梨>>80
結城博>>81
堂本睦月>>86

裏設定>>119

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Re: 俺様メイド?!!-クライマックス突入!!-更新再開 ( No.151 )
日時: 2011/05/22 14:13
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)

第18話


 燐は翔が住む部屋の前に立ち、チャイムを何度も連打する。
 しかし、部屋に居るはずであろう優亜の声が聞こえてこない。それどころか、部屋からは人の気配がまったくしない。

「チィッ!」

 燐は舌打ちをして、ドアから数歩下がる。どうやら蹴破るつもりのようだ。
 足を上げ、そしてドアに思い切り叩きつける。
 ドゴンッという鈍い破壊音がして、ドアが真っ二つに割れた。

「優亜様!! 優亜様、いらっしゃいますか?!」

 返事はしない。玄関に目を落とすと、優亜の靴はちゃんとある。
 燐は靴を脱ぎ捨て、部屋の中へ入って行く。
 リビングへ通じるドアを思い切り開けると、広いリビングにはへたりと座りこむ翔の姿が目に飛び込んできた。

「翔! 優亜様はどこへ——!!」

「多分、連れて行かれたよ」

 慌てた燐の言葉とは対称的に、翔の声は至って冷静だった。
 燐は座りこんでいた翔の顔を自分の方へ向けさせる。
 茶色がかった瞳は少しだけ赤くなっていて、頬には涙の跡がある。今まで泣いていたのだろうか。

「自分が情けない。優亜を守れなかった」

 翔は燐の腕を振り払い、立ち上がる。

「だったら何故、追いかけようとか探そうとか思わないんですか!!」

「誰がさらったかも分からねぇのに追いかけられるかよ!!」

 苦しそうな悲鳴が、部屋に響き渡る。
 泣き腫らした瞳に涙をため、翔はどなる。

「マジで情けねぇよ……。嫉妬して、それで釣り合わないとか言い出して……それで連れさらわれたら泣くだけかよ……。マジで情けねぇ」

 ソファに倒れ込み、すすり泣くように翔は言葉を紡いだ。
 燐は翔の胸倉を掴み、思い切りその頬を拳で殴った。
 テーブルをふっ飛ばし、床に叩きつけられる翔。殴られた頬をさすりつつ、燐を見上げた。

「あぁ情けないですね。それでも優亜様が好きなんですか、それでもあなたなんですか!!」

 燐は1枚の——睦月からひったくって来た写真を、翔へ投げ渡した。
 ひらりと床に落ちた写真を見て、翔は目を見開く。
 そこに映っていたのは、紛れもない自分の兄だったからだ。

「兄貴……ッ!」

「その人の名前は『東』——あの最強の不良であるあの人と同じ名前です」

 その名前を聞いた瞬間、翔の肩がビクリと跳ねあがった。

「おそらく、この人が不良の東なんでしょうね。年齢でも偽っているのでしょう」

「……だから何なんだよ。何で今、その話をするんだよ!!」

 翔はいきり立ち、燐の胸倉を掴んだ。
 掴まれて、睨みつけられていても燐は平然と笑っていた。静かに翔の腕を振り払い、襟を正す。

「もしかしたら、この方が優亜様を連れさらったのでは?」

「……何だと?」

「言ったとおりです。優亜様は、おそらくこの方にさらわれました」

***** ***** *****

 優亜が目を覚ましたところは、天蓋付きのベッドの上だった。
 ホテルか何かのベッドの上。優亜は1人で、だだっ広い部屋に居た。

「ここは……」

 まだくらくらする頭で考える、が何も出てこない。
 すると、優亜が居る部屋のドアがノックされた。

「え。あの……」

 優亜が返事をする前に、ノックをした本人——大地が入って来た。

「よっす優亜ちゃん。目が覚め——ぐほっ」

 大地が笑顔で寄って来たので、優亜は枕をひっつかんで大地に向かって投げつけた。
 顔面にジャストヒットした枕を床に叩きつけ、大地は苦笑を浮かべる。

「酷いなー、ここまで運んできてあげたのに」

「一体どういうつもりですか。大地さ——」

 ハッと優亜は気付いた。
 電話で言っていた、『東さん』——もしかして、それは大地の事?!

「あなたの名前は、本当は何なんですか?」

「うん? あぁ、瀬野か東か——って事? もしかしたら、東は偽名かもしれないし瀬野が偽名かもしれないし……そんなとこだよね」

 あはは、と楽しげに笑う大地。
 優亜はもう1個枕を投げつけてやろうかと思ったが、何とか止めておいた。

「だったら、翔は——」

「あはは。それは本人に訊いてみないと分からないんじゃないかな? まぁ、もっとも。ここには来ないだろうけど」

「……どういう意味ですか」

 優亜は大地を睨みつけながら、静かに低い声で訊いた。
 大地は近くにあったカーテンを開け、外の景色を優亜に見せてあげる。
 窓の外は高い高層ビルがいくつも並び、それぞれが色とりどりに輝いていた。

「ここは七尾財閥の本社——君の婚約者の家さ」

Re: 俺様メイド?!!-クライマックス突入!!-更新再開 ( No.152 )
日時: 2011/05/23 17:37
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)

第18話 第2部


 夕日が差し込む華月学園1−Aの教室。そこには、恵梨達がきちんと居た。

「優亜が連れさらわれたって……それ、本当?!」

 恵梨が燐に向かって叫ぶ。ちなみに、この場に翔は居ない。
 燐は苦しそうな表情を浮かべ、小さくうなずいた。
 その途端、雛菊が恵梨を押しのけて燐の胸倉を掴んだ。

「あなたは……優亜さんと一緒に帰っていたんじゃないんですか? 1人で優亜さんを帰らせたのですか?!」

「違います。優亜様は……元々家に居た人にさらわれたんです」

 燐は雛菊の腕を払いのける。

「どーゆー意味だよ。誰なんだよそいつ、ぶっ殺してやる!!」

「俺の兄だ」

 博の言葉が終わると同時に、タンッという音がして夕焼け空を背負った翔が現れた。
 さっきのような泣き腫らした瞳ではなく、今にも誰かに襲いかかりそうな感じの目をしていた。

「どういう……事なの?」

 零音が翔に訊く。
 窓枠から飛び降り、翔はハッキリとした口調で答えた。

「俺の兄がさらっていったんだ。どうしようも出来なかった、あの場に俺は居なかったから……」

「ちょ、待ってください。翔さんのお兄さんと翔さんとどういう関係が、あれ?」

 混乱する頭で博は言葉を紡ぐ。
 翔は不安そうな表情を浮かべる皆に、笑顔を見せた。


「兄がやらかした事を始末するのは、弟の役目ですから」


 そう言い残し、タタッと教室を出て行く。
 皆の時が止まった————。


「……ねぇ、燐さん。訊きますけど、翔さんって」

「ハイ。正真正銘の男ですよ?」

「……嘘でしょ」

「本当ですよ。でしたら、今度彼に確かめてください」

***** ***** *****

 日が落ち、睦月は今日の晩御飯の支度をしていた。
 すると、台所でテレビを見ていた弟が、いきなり声を上げる。

「兄ちゃん電話ー」

「ん? 誰からや? 直樹ー、ちょっと取って」

 弟から携帯を受け取り、睦月はコールボタンを押す。

「ハイ、もしもし。堂本ですー」

『睦月か?』

「あ、東さん……?」

 少し声が震える。あの写真に写っている『東』ではなく、自分が知る『東』からかかってきたのだ。
 最強の不良『東』——言わずもがな、正体不明の謎の不良だ。
 どんな姿で居るのも分からない。この街最強の不良——自分から電話をかける事はあっても、相手からかかってくる事はなかった。
 もしかしたら、あの写真に写っていた東がかけているのかもしれない。

「どないしはったん? 東さんから電話をかけてくるなんて、珍しいな」

『あぁ。ちょっと頼みたい事があってな。俺の家の場所を教えてやる、俺の制服を取ってこい』

「制服? まぁいいけど、どこへ届ければいいんや?」

 睦月は電話越しに首を傾げた。
 電話の向こうに居る東は、至って冷静な声で場所を告げた。

『七尾財閥のマンションさ』

 プチッと電話を切り、睦月は立ち尽くした。
 七尾財閥と言えば、あの写真の東が雇われている場所だ。そんな所にわざわざ行きたくない。行きたくないが、

「……ハハッ。おもろい事を考える人やな。ホンマに」

 何故か睦月は笑っていた。それはもう、楽しそうに。

「直樹ィ!! 兄ちゃん、これから出掛けてくるわ! 閉じまりしときィ!」

「え、ちょ。兄ちゃんいきなり?!」

 睦月は家を飛び出し、東が住んでいる家までのルートを頭に描き出す。
 走って行ける距離だ。この前、鍵ももらった。

「やってやる……。東さん、おいはあんたについて行くで!!」

***** ***** *****

「なぁ、優亜ちゃん。こっちのドレスの方が可愛くない?」

「可愛くない」

 ベッドの上でぶすくれている優亜は、短く冷たい言葉を発した。
 大地はピンクのドレスを手にしてにっこり笑っていたが、優亜の言葉を聞いてドレスを床に叩きつける。

「ねぇ、まだご機嫌斜めな訳ですか。俺が七尾坊ちゃんに雇われてるからそんなに機嫌が悪いの?」

「えぇそうよ。あたしに黙ってた訳ね。それで無理矢理結婚させる気なのね!!」

 優亜は目にいっぱい涙をためながら、金切り声でどなった。
 対する大地は肩をすくめて見せる。

「だって言う必要もないじゃない。何で俺の仕事を言う必要があるの?」

「……教えてほしかったよ。こんな事になるなら、いっそこの恋を諦めた方が良かった……」

 すすり泣く優亜。大きな瞳からポロポロと涙がこぼれる。
 この恋を諦めたくないと決めたのに、好きだと言うはずだったのに。そう思った時だ。

「あ、あ、あ、東さん!!」

 いきなりドアをばタンッと開き、黒ずくめの男が飛び込んできた。

「何よ、一体」

「し、侵入者? いえ、客です!」

「客? 追い返しなよ」

 男は首を振った。
 大地の頭に、ある仮説が浮かぶ。その事を考えると、見る見るうちに顔が青ざめて行った。

「め、メイドが1人で……乗り込んできました!」

Re: 俺様メイド?!!-クライマックス突入!!-更新再開 ( No.153 )
日時: 2011/05/23 19:04
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)

第18話 3部


 翔は自分の目の前にそびえ立つビルを見上げていた。
 空につくんじゃないか、と思うほどに高いビル。傍にある表札には、きちんと『七尾』と彫られていた。
 この七尾家のどこかに優亜が居ると考えると、とてつもない疲れが全身を襲ってきた。

「仕方ありませんね……」

 翔はため息をつき、閉まられた自動ドアに近付く。
 それで動かない事は分かっていた。だから翔は、とある行動をすると決めていたのだ。
 すぅ、と息を吸い精神を落ちつかせる。そしてゆっくりと目を開き、ドアに向かって足を振り上げた。

「とぉッッッッ!!!」

 普通なら可愛い掛け声だが、ドゴンッという盛大な破壊音と共に埃が舞う。
 翔は飛び散ったガラスの破片を踏み砕きながら、ロビーの中へと入る。
 音を聞いたのか、ロビーにはいつの間にか5人のボディーガードが集まっていた。

「お初にお目にかかります」

 翔は丁寧にお辞儀をして、言葉を紡ぐ。

「私、相崎家のメイドの瀬野翔と申します。こちらにお邪魔しております、優亜お嬢様をお迎えにあがりました」

 丁寧な口調で用件を述べ、翔は身構えた。
 その途端、ロビーに居るボディーガード全員が、翔へと襲いかかって来た。

「まったく、なんて野蛮なんでしょう。……まぁ、俺も野蛮なんだが」

 ニヒルな笑みを浮かべた翔は、フッと姿を消した。
 目の前から居なくなった翔を探す為、ボディーガードは急停止する。
 ロビー全体を見渡すが、メイド服のフリルすら見当たらない。

「こっちだよ」

 突如、声が降って来た。
 上を見上げてみると、天井に下がるシャンデリアにぶら下がる翔が居た。
 翔はシャンデリアから飛び降り、両足を広げて近くに居た3人のボディーガードの顎へ蹴りを入れた。
 床に着地し、残った2人のボディーガードには1人に脇腹への右ストレート、もう1人には左の足底での蹴りを顎へ叩きこむ。
 ロビーに居るボディーガードを撃退し、翔は一息ついて手を払う。
 すると、パチパチという拍手が聞こえてきた。

「いやぁ。お見事お見事」

 ふと視線を声の方向へ移すと、オレンジ頭の男がのん気に手を叩いていた。
 翔は怪訝そうに目を細め、相手が誰なのか記憶を探る。そして思い出した。

「お前——遊園地の?」

「そうそう。正解正解」

 男はもう1度拍手をすると、にっこりとした爽やかな笑みを浮かべて手を差し出した。


「俺、樫月って言うんだよねー。よろしく?」

Re: 俺様メイド?!!-クライマックス突入!!-更新再開 ( No.154 )
日時: 2011/05/24 18:21
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)

第18話 4部


 樫月と名乗ったオレンジ頭はニコニコと笑っていた。
 翔も同じように笑顔で対応する。両者とも笑っているのに、殺気が半端ない。

「優亜様をお返しください」

「それは出来ないな。優亜ちゃんは、坊ちゃんとお楽しみ中だからね」

 樫月は笑顔を崩さず、言ってのけた。
 翔の顔が引きつる。額に怒りのマークが浮かびあがり、口元はヒクヒクと痙攣を起こしたように動いていた。

「まぁ、返してほしければ通れば?」

「言われなくてもそうさせてもらいます」

 翔は樫月の方を一瞥もせず、スタスタと横を通り過ぎた。
 だが、樫月は翔の腕をガッシリと掴んで引き止める。

「……何でしょうか?」

 鋭い眼光で睨まれたと言うのに、樫月はまだ笑っていた。笑い続けていた。
 翔は1つため息をつくと、腕を捻り樫月の腕を払おうとした。
 しかし、思ったより樫月は握力が強いらしく、いくら捻っても振りほどけなかった。

「何者、ですか?」

「大した奴じゃないけどね。東さんの1番弟子かなぁ、簡単に言っちゃうと」

 ポリポリと自分の頬を掻きながら、恥ずかしそうに言う樫月。大地の事を尊敬しているのだろうか。

「……あの馬鹿の弟子か。どのくらい強いんだろうな?」

「アハハハハ。東さんほどじゃないけど、結構強いよ?」

 樫月は軽く笑い飛ばしながら、翔の腕を引く。
 バランスを崩した翔は、前に転びそうになってしまう。が、反動で蹴りあげようとしたのか、足を振り上げた。
 しかし、樫月にはそんな攻撃が効くはずもなく、片手で受け止められてしまう。

「やっぱり男でもメイドさんみたいに弱いのかね」

「放し……やがれ!!」

 翔はどなり、足を無理矢理樫月の手から引き抜いた。そしてバック宙で距離を取る。
 樫月は感心したように、ひゅぅと口笛を吹いた。

「舐めてんのか!!」

「嫌だな。君なんか舐めたところで美味しくないじゃないか」

 樫月はからかうようにヘラヘラと笑う。
 翔はイライラしたような表情を浮かべ、強く歯を噛みしめた。だが、直後にため息をつき、戦闘態勢を解く。
 おかしいと思ったのだろうか、樫月は後ろを向いた。

「こんばんは」

 明るいロビーには不釣り合いな、漆黒の髪。1人はメイド服、もう1人は執事服を身につけた男女が居た。
 メイドの方は身の丈を超える太刀を握っており、執事の方は小さなナイフを数本まるでカードを見せるかのように持っていた。
 樫月には分かっていた。彼らが誰なのか、分かっていた。
 遊園地で自分がボコボコにされた奴らだ。

「燐、雫……来たんですか」

「ここに来る来ないは僕らの自由です。あなたはやる事があるのでしょう?」

 燐は樫月を睨みつけながら言った。
 翔は「ふざけんな!」とどなって立ちあがる。

「俺が最初に戦ってたんだ。俺がやる!!」

「でしたら、優亜様は僕が救いましょうか?」

「……断る」

 燐は翔に向けてにっこりと笑う。そして肩をトンッと軽く押した。

「行ってあげてください。僕では、役者不足なんですよ」

「……あぁ。ここは任せたぜ。燐、雫!」

 翔は樫月の横をすり抜ける。
 そんな翔を邪魔しようと、樫月は腕を伸ばしたが燐が投げつけてきたナイフによって拒まれた。

「邪魔すんなよ……マジで」

「するなと言われると余計にしたくなります」

 燐が答えるよりか早く、雫がビシリと言い放った。
 樫月は面倒くさそうに舌打ちをすると、翔を追いかけようと身を翻した。が、いつの間に移動していたのか目の前には燐が居た。
 燐は楽しそうに笑うと、表情を無へと移す。

「さぁ……喧嘩をしましょうか?」

***** ***** *****

 備品やら食品やらがある暗い倉庫の中。その中に、恵梨、博、雛菊、零音は居た。
 段ボールから身を乗り出し、閉まられたドアへと向かう。
 ドアを開け、辺りの様子をうかがった。
 誰も居ない事を確認すると、4人はぞろぞろと壁伝いに移動する。

「何か……スパイみたいで面白いな!」

「喋んないでよ。気付かれるわ」

「まぁ、もう十分妖しいですけど」

「……どこ。優亜」

 その時だ。
 彼らに迫る、1人の影————。


「おい、お前ら」

Re: 俺様メイド?!!-クライマックス突入!!-更新再開 ( No.155 )
日時: 2011/05/25 20:23
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)

第18話 5部


「ちくしょう……何でエレベーターまで見張りが居るんだよ」

 翔は舌打ちをして、何とか階段でビルの10階まで来た。
 額ににじむ汗を拭い、翔は廊下に視線を巡らせる。
 誰も居なさそう、と確認すると階段の物陰から飛び出した。

「チッ……。このビル、何階まであるんだ!」

 廊下を走りながら、翔は再度舌打ちを洩らす。
 その時、翔の頬を弾丸がかすめ、壁に穴を開けた。

「これはこれは、相崎家のメイドさんではないですか」

 スキンヘッドのサングラスをかけたボディーガードが、ハンドガンを構えて立っていた。
 翔はものすごい嫌そうな顔を作り、ボディーガードと向き合う。

「何ですか、ハゲですか」

「聞き捨てなりませんね。スキンヘッドと言ってください」

 ボディーガードは肩をすくめて見せた。
 こんな奴を相手はしてられないので、翔はさっさと通り過ぎようとした。
 すると、翔の横を弾丸が通り過ぎて行った。
 面倒くさそうにボディーガードに視線を移すと、ボディーガードは柄にもない笑みを口元に浮かべていた。

「相手してくれますでしょうか?」

「面倒ですね……」

 そんな事を言いつつも、翔は戦闘態勢を取った。

「桜井と申します。お手柔らかに」

「ご丁寧に名前を名乗って下さりありがとうございます。ですが私、物覚えが悪いので忘れますけど」

 そう言った瞬間、2人は同時に床を蹴りぶつかり合った。
 翔は右手に拳を作り、桜に向かって放つ。
 しかし、桜井は翔の攻撃を片手で受け止め、逆の手で攻撃を仕掛ける。
 反射的に翔は空いている左手で、桜井の攻撃を防いだ。
 2人の実力は、ほぼ互角。

「やりますね……。ならば、これはどうでしょうか?」

 桜井は翔の足を引っ掛け、転ばせる。
 思い切り床に叩きつけられた翔は、体勢を立て直す為に身を起こした。
 だが、それよりも速く桜井が反応して、銃を翔に突き付けた。
 そのまま2人の動きが止まる。

「惜しいですね。あの俺様なメイド様が足を引っ掛けただけで転ぶなんて……」

「何ですか、俺様なメイドって!」

 翔は苦笑いを浮かべて、桜井を睨みつけていた。
 桜井の指が、引き金にかかる。ゆっくりと力を込め——

「……?!」

 桜井の目が見開かれた。
 何故か? そこに翔が居なかったからだ。

「どこへ……!」

 その時、突然桜井の脇腹にまるでダンプカーにはね飛ばされたような痛みが突き刺さった。
 視線を移すと、翔が後ろから回し蹴りを放っていた。

「おま、え……!!」

「ん? あんた、急に言葉遣いが悪くなったな」

 翔は楽しそうなものを見た子供のような笑顔で、桜井に笑いかけた。
 桜井は舌打ちをすると、脇腹にめり込んでいる翔の足を弾き返す。そして翔から距離を取る為に、バックステップで後退した。
 だが、翔はそんな桜井を逃がさなかった。
 ダンッと床を蹴り、天井につくのではと思わせるほどに高く飛び上がると、足を鉈のように振り下ろした。
 桜井は頭の上で腕をクロスさせ、翔の攻撃を防いだ。

「……何なんですか、あなた」

 桜井は翔を睨み上げながら、言葉を吐き捨てた。
 翔は黒い笑みを桜井に見せる。

「何だろうね? 強いて言うなら……お前らの上司の弟さ」

 翔は桜井の足を踏み台にして、また天井に飛び上がる。
 桜井は宙に居る翔を売ってしまおうと思い、銃を構えた。

「そんなおもちゃで、俺を殺せるかよ」

 翔は器用に身を捻り、天井を足場にして桜に向かって蹴りだす。
 弾丸のような速さで桜井に飛んでいき、ピカピカに光るスキンヘッドに頭突きを叩きこんだ。
 寺の鐘がなる擬音が聞こえてきそうな音を立て、桜井は床に倒れ伏した。

「眠ってろ、ハゲ」

 翔は嘲笑を残し、上の回を目指す為エレベーターの方を一瞥する。
 だが、エレベーターにも見張りが居た。ここもか……。

「あいつら、今なら倒せそうだな」

 そう呟いたが後で面倒な事になるので、翔は諦めて階段を上りはじめた。

***** ***** *****

「何や、お前さんらか」

 恵梨たちの前に現れたのは、何と学ランを持った睦月だった。
 途端に、恵梨と零音の目が輝く。

「盾ゲットです!」

「ハァ? ちょ、何で人を盾代わりにしとるん? お前、おいは先輩やぞ!」

「後輩を、守って?」

「零音ちゃん可愛く言っても大阪人はごまかせません!」

 2人の拘束を振りほどき、睦月はずんずんと奥へ進む。壁に隠れると言う行為をせずに、廊下を歩きだした。
 その後ろに、恵梨達は続いて行く。

「……あのさ、何でおいの後ろに居るの? 博。お前さんは空手やらなんやら習ってんやろ?」

「無駄ですね。睦月先輩よりか弱いんで、俺」

 博はペコちゃんのようにウインクする。
 睦月はそんな博に1発、拳を叩きこみ廊下を進んで行った。

「おいは東さんに用があって来たんや。お前さんらを守る余裕はない」

「そんな事を言わずにさー」

「えぇい! 離れんか、お前らー!!」

 4人に1人をプラスして、にぎやかになった。
 ……早く助けに行ったれよ。


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