コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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勇者パーティーです。【3話更新中ー】
日時: 2012/12/11 17:35
名前: 桃弥 ◆TylvI6wUQw (ID: sdLb5.Z4)

 雪かきは重労働です。でも不思議と寒くない。
 とか思っていたら予想以上に汗を掻いていてなんか脱水症状になっていたりしました。
 皆さんも気をつけてください(笑)

というのはどうでもいい話。

はじめまして。
つたない文章ですが、ゆっくりと見守ってくれるとありがたいです。
感想、アドバイス等は遠慮なくおっしゃってください。

では以下、プロローグということで。



◆プロローグ

 私たちは偶然か必然か——多分偶然だと思いますが——長い旅に出ることになりました。
 あまりに“それらしくない”人たちの取り合わせ。これも偶然でしょう。

 その偶然が私にもたらしたもの……これが成長というに値するものか、私には分かりません。けれど、それは私にとって大切なものです。これだけは確か。

 だから私は、らしくも無く神様に感謝します。
 それから、今までの仲間にも。

 出来れば誰にも語らず、大切にとっておきたいんですけどね。特別ですよ?
 みんなが知っている、美化された話じゃない、本当の物語。

 それはこんなお話です。


◆◇◆



以下、登場人物。随時更新するかも。
◆フェルート
 勇者の妹。主人公。
◆フィルザッツ
 聖剣の勇者。めんどくさがりでだらしが無くて適当。フェルート曰く野生児。
◆ライクス
 フィルザッツに同行する神官。毒舌家で人嫌い。

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Re: 勇者パーティーです。 ( No.1 )
日時: 2012/11/17 09:24
名前: 桃弥 ◆TylvI6wUQw (ID: sdLb5.Z4)

1話 「聖剣の勇者」

「ソレ」の見た目は、少し大きめの黒い兎です。
ふわふわと触り心地の良さそうな毛に、大きな耳。
赤いガラスのようなつぶらな瞳。
ゆっくりと緩慢な動作で移動するその姿には、「可愛らしい」、あるいは「愛くるしい」というような言葉がぴったりでしょう。

……というのも、ほんの一瞬だけ。
私たちの姿を視認した途端、「ソレ」はぬいぐるみの様な化けの皮を脱ぎ、本性を現します。

柔らかい毛は逆立ち、針のように。
瞳は敵意を燃やし、爛々と輝きます。
よくとがれた刃物のような牙と爪をむき出しにし、威嚇するように低い声で唸り声を上げました。

先ほどまで小動物のような可愛らしさは見る影も無く、今は正真正銘、その動物が「魔物」であることを実感させられる獰猛な姿をしています。
はじめて見る訳ではありませんが、その変わり身の早さには毎度毎度驚かされます。

私がそんなことを考えて突っ立っていると、その魔物は私を標的に決めたようでした。
足に力を込めると、爪を振り上げ私のほうへと跳躍してきます。
こうゆう所は兎みたいですね。
私は何もしません。立っています。することもありませんしね。

だって、視界の端から刃物が迫ってくるの、見えてますし。

その黒兎さんは、横から割り込んできた一振りの剣に両断されました。
文字通り真っ二つになります。
それから、そのまま黒い粒子となり、空中で霧散。
……消滅しました。

見事、と言うべきなのかもしれませんが、それがただただ力任せな一撃だったので、あまり褒める気持ちはありません。
ですが、お礼は言うべきでしょう。

私は剣の持ち主のほうを向いて言いました。

「ありがとう、お兄ちゃん」

くすんだ茶髪に、同色の瞳。私の兄です。
少し痩せ気味な彼は、何でもないように答えます。

「はいはい、どういたしまして」

確かに、彼にとっては何でもないような事なのかもしれません。
ですが礼を欠くのはよくありませんからね。

お兄ちゃんはついでとばかりに剣を一振り二振りしてから、鞘に収めます。
そしてダルそうに伸びをしました。

「あー、弱いなぁ!張り合いが出ないと言うかなんつーかさー」
「張り合いなんて最初から無いようなものでしょ」
「そんなことねーよ。最初はあった」
「今は無いんだね」
「うん」

あっさり頷く兄。
そこへ、さっきから黙っていた人が声をかけてきました。

「フィルザッツ、真剣にやってもらわなければ困るのだが」

声は心地よい低音。フィルザットというのはお兄ちゃんの名前です。
ですが、お兄ちゃんはそれを聞くとあからさまに顔をしかめました。

「分かってるって、大丈夫。やる気は無いがやんなきゃいけない理由はあるから」
「それは大丈夫なのか?」

学校の宿題みたいですね。
お兄ちゃんの適当な答えに、低音の主は呆れ顔です。
彼が着ているのは濃い青の法衣。片手には杖。
そう、彼は教会から派遣された神官さんなのです。

「大丈夫ですよ、ライクスさん。兄は馬鹿ですが本物ですから」

彼、つまりライクスさんに、私は安心させるように言います。
すると今度は僅かに呆れたような顔になり、

「その馬鹿の部分が問題なのだが……」

と呟きます。
まぁ、そうですよね。

そこへ口を挟んでくるのがお兄ちゃんです。

「おいおい、俺が馬鹿だって言うことが前提で話が進んでるのが納得できねぇ」
「じゃあ愚か者かな」
「もっと議論の余地は無いのかよ!」
「……? え?」
「本気で不思議そうな顔をすんな!」

お兄ちゃんはちょっと傷ついたようでした。
そこにライクスさんが追い討ちをかけます。

「薬草と毒消し草を間違うあたり、反論の余地は無いと思うが」
「だってあれ草じゃん」
「色が違うだろう、色が」

はい、その通り。薬草は緑ですが、毒消し草は水色です。
あの時はこの人の目玉の有無を、思わず確認してしまいましたよ。

……まぁ、そうですねぇ。

「強いて言うなら———」


私は心の中でのみ、ポツリと呟きます。



「聖剣の勇者」でしょうかね、と。

Re: 勇者パーティーです。 ( No.2 )
日時: 2012/08/08 19:44
名前: 桃弥 ◆TylvI6wUQw (ID: kVl8fIZD)

「せいけん」

って普通に入力して変換しても聖剣って出てこないんですね。

驚き。新発見です。

Re: 勇者パーティーです。 ( No.3 )
日時: 2012/10/22 18:06
名前: 桃弥 ◆TylvI6wUQw (ID: sdLb5.Z4)

◆◇◆


「はぁ……」

おなかが空きました。

時刻はもうすぐお昼時です。私のおなかの時計は正確ですね。
現在私達がいるの木々が鬱蒼と立ち並ぶ森です。魔物も多く棲んでいて、危険な所。はっきり言えば、普通の人は立ち入らない場所です。

これでは私達が普通じゃないと暗に言っているようですが、そんなことはありません。少々込み入った事情があるだけです。

「おなか空いた……」

私は思わず呟きました。このままではおなかが自己主張を始めそうです。
お兄ちゃんはともかく、ライクスさんの前でそれはしたくないです。恥ずかしいです。

「確かに、そろそろ昼時だなー」

お兄ちゃんは上を見上げながら言いました。太陽の位置を確認しているのでしょう。
けれどライクスさんは、ばっさりと言いました。
「言っておくが、ここで昼は無理だ。雑魚だが敵が多過ぎる」
「……はい分かってます……」

図らずも我侭を言ったようで、申し訳ないような気持ちになります。
ですが、

「ちょっとは我慢しろよ。働かねぇくせに飯だけはよく食うんだからな」
「……誰がよ?」

今のはちょっとカチンときてしまいました。
年頃の乙女になんて言い草でしょう。

「私は丁度育ち盛りなだけだよ!お兄ちゃんのほうがよく食べるじゃない」
「お前、俺と何歳差あると思ってんだ」
「三歳!でも私のほうが働ける!」
「働けるって、お前。可能性を聞いてるんじゃねぇよ。道中はほとんどお荷物だろ」
「もう、馬鹿な癖になんで正論を言うの!?」
「怒り方が理不尽だろ!」
「あぁおい、今日も仲がいいのは結構だが、喧嘩は後にしてくれ」

ライクスさんはめんどくさそうに仲裁してきました。

いや、その言い方もどうなんでしょうかね?
まぁ確かに、今そんなことで無駄に体力を消耗している暇も無いので、私は黙り込んで兄から顔を背けます。
ライクスさんはそれを見て肩を竦めていました。
しかしどんな反応をされても兄弟喧嘩だけはいつでも上等です。
それでこその家族、それでこその兄弟です。

「道なりに歩けばもうすぐ森を抜ける。近くには村もあるからな、そこで休めばいいだろう」
「はーいはい」
「……分かりました」

適当に返事をするおにいちゃんと、ぼそぼそ返事をする私。
なんだかより一層、おなかの辺りが寂しいです……。

けれど悔しいことに、道中私がすることは特にありません。

時々出てくる魔物の類は、お兄ちゃんが瞬く間に殲滅してしまいます。
先ほどの兎のような魔物や、見た目は鳥のようだけど翼の羽がうろこ状の魔物など、動物型の魔物が多く生息しているようです。
中には集団行動をしているものもいましたが、その場合私とライクスさんは後方からの支援となります。
ライクスさんは聖法術が使えるので、魔物を弱らせる術や動きを鈍らせる術を使っています。いかにも「聖術」というような神々しい光が輝きます。
私は……私は、そうですね。
もちろん戦闘能力が皆無というわけではありません。
ただ、私流にやってしまうと、なんと言うか……自滅する可能性が著しく高いのです。
そんなことが分かっているのに戦闘に参加するほど、私も馬鹿ではありません。

ということで、後ろでほぼ静観しています。
ほぼ、というのは、私もずっと見ているだけでは空しいので手近にあった石を投げたりしてみたのです。
まぁ、効果は無かったのですが。
加えて、ライクスさんに残念そうというか不可解な物を見る目で見られてしまったので、途中でやめました。
はい、やめましたとも。
何も言わないのが余計きつかったです。

そんな感じで、私達はお昼の時間を少し過ぎた頃、村に到着しました。


◆◇◆


「あー、着いた着いた」

お兄ちゃんは剣を一振り、二振り、無駄に振ると、鞘に仕舞います。もうすっかり癖になってますね。
なかなか魔物の数が多かったせいか、額には汗が浮いています。
それに対し、ライクスさんは涼しい顔です。
後方支援とはいえ、聖法術は少なからず精神面で消耗するはずなのですが……謎です。聖職者とは言え、そこまで柔な神経はしていないということでしょうか。
性格から考えればそれも頷けそうですが……まぁ、ともかく。

私達は村の入り口に設けられた質素な門をくぐり、中へ入りました。
村はさほど大きくはないようです。
小さな家がいくつも並び立ち、なんだか雑多とした印象。集落の一歩手前といったところでしょうか。

「……田舎だな」

ライクスさん、一言目がそれですか。
確かに私も同じことを思いましたが。

「まぁ、無駄に人が多いよりはいいが」
「えぇ、まぁ、はい……よそ者は目立ちますからね」

彼の神官らしからぬ言葉に、私は半ば無理やり相槌を打ちます。
それで思い立ち、先頭に立って歩いていた兄に、ちゃんと釘をさすことにしました。

「お兄ちゃん、あんまり騒がないでね。ただでさえ存在が騒がしいのに……」
「そりゃどうゆう意味だ!?」

間違えました。

「お兄ちゃんがあの『勇者』だってばれたら、めんどくさいことになるから」
「そうだな。俺も煩い人間に羽虫のように群がられるのは御免こうむる」
「お前、いちいち表現が過激じゃね?」

お兄ちゃんの突っ込みをライクスさんは自然に黙殺。さすがです。

「あーっと、じゃあとりあえず飯食えそうなとこ探すか。いや、あんのかな……?」

お兄ちゃんは気まずそうに一歩踏み出します、と。

「あ……?」

お兄ちゃんはそこで動きを止めました。
私も、ライクスさんも、それに気付きます。

視線。
そう、いくつもの視線です。

外で洗濯物を干したり、遊んでいた子供からはもちろん、家の中からも強い視線を感じるのです。
先ほどまで賑やかとはいかずとも、それなりの活気があった村は、異様な静けさに包まれていました。


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