コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- ファンタジー(仮)
- 日時: 2015/12/20 10:58
- 名前: 明鈴 ◆kFPwraB4aw (ID: bIAXyXLC)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=16841
■お知らせ■
ひっそりとこの物語をベースに、新たな僕アリを書き直しております。
複雑ファジー板で執筆中のウェルリア続編が完結したら、再アップしようと考えております。
設定に若干の変更がありますが…なんとか完結させますよ(涙)
いつも閲覧くださるそこのあなた、本当にありがとうございます!
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■お客様♪■
・書き述べる様『2次創作(紙)板:AsStory』
・シア様『コメディ板:白銀の巫女姫』
・一ノ瀬美鈴様『コメディ板:Clear the Dimension』
・如月神流様
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『コメディ・ライト板』書き始め日*2014.07.21〜
参照100突破*2014.07.29 参照200突破*2014.08.04
参照300突破*2014.08.20 参照400突破*2014.08.31
参照500突破*2014.09.23 参照750突破*2015.04.01
参照800突破*2015.04.06
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- Re: 僕とアリスと白ウサギ【毎日更新予定】 ( No.43 )
- 日時: 2014/09/04 19:14
- 名前: 明鈴 ◆kFPwraB4aw (ID: KVMT5Kt8)
Chapter3『憂鬱なお茶会』
Ⅰ.
その日1日、僕は憂鬱な気分だった。
朝から黒服の怪しい双子に絡まれたせいだ。
ちなみに高校2年生である僕は『憂鬱』という漢字が書けない。
「……なんだか厄介なことに巻き込まれた気がする」
杞憂だけで終わってくれたら良いのだが。
ちなみに高校2年生である僕は『杞憂』という漢字が書けない。
ーーそれから、特に何が起こることも無く、放課後になった。
部活動へ向かう陸に別れを告げ、僕は1人帰路に着いていた。
朝から大層不審な人物に出くわしたが、何故か今日は、校内でコゴウ先輩と鉢合わせすることは無かった。
珍しいこともあるもんだ。
胸を撫で下ろしたのもつかの間。
僕は前方から鋭い視線を感じた。
ーー油断していた。
そういえば僕は、もう1人【別な厄介なヤツ】に絡まれていたんだった。
「……オイ。頭隠して知り隠さずだぞ……【白ウサギ】」
「ハッ…………!」
数十メートル先の電柱から半分顔を覗かせていたのは【白ウサギ】であった。
顔の半分を占めている大きな瞳がこちらをじっと見つめている。
「お、お久しぶりです。兼人サン!」
「久しぶりも何も、今日の朝玄関先で会ったじゃんかよ」
「自宅がお隣りですもんね。エヘヘへ」
電柱の影から現れた【白ウサギ】は、笑顔で僕の元へやってきた。
相変わらずサイズのあっていない白衣を引きずっている。
「それで? 僕に張り付いて、一体なんの得があるわけ」
開口一番、僕は【白ウサギ】に冷たくそう言い放った。
【白ウサギ】は笑顔でそれに答える。
「兼人サンにくっついていたら、【アリス】が見つかるような気がして」
「なんだそれ」
「だって……」
刹那、【白ウサギ】は僕に近づくなり、少し背伸びして鼻をひくつかせた。
「微かに【アリス】の匂いがします」
「は……?!」
慌てて自分の両腕を代わる代わる嗅いでみるが、別段変わった匂いはしない。
「……なんの真似だよ」
【白ウサギ】はただただ微笑むだけだ。
その表情に対して、僕は何だか罰が悪くなって、更に畳み掛けるように【白ウサギ】を問い詰めた。
「それに、こないだから【アリス】【アリス】ってさ。そもそもどんな子なんだよ。僕の知ってる【アリス】は水色のリボンが付いたカチューシャをしてさ、水色のワンピースにエプロンつけてるイメージだけど」
「それが、私も【アリス】の姿は見たことが無いんです」
「ハイ……?」
「【アリス】と直接対面したのは【女王様】だけ。けど、これだけは言えます。【アリス】は【完璧】だと」
「じゃあ、残念ながら《僕》は【アリス】じゃないね」
今朝、黒服に言われた言葉。
『ーーまさか君が【アリス】だったりしないよね?』
正直、動揺した。
《僕》は《僕》でしかないのに、何処かでそれを疑ってしまった自分がいた。
「僕はどう考えても【完璧】じゃない。つまり、【アリス】じゃない。そう言うことだろ」
「兼人サン……?」
白ウサギが怪訝そうに眉を顰める。
「いきなり何を言い出したかと思ったら……。そもそも誰も兼人サンが【アリス】だなんて、言ってないじゃないですか」
白ウサギは困惑した表情を浮かべていた。
「まさか、『誰か』に『何か』言われました?」
「何を……って……」
別に、と、ぼやいた僕だったが、頭の中では否が応でも双子の顔を思い起こしていた。
黒服スーツに身を包み、勝ち誇ったような笑みを浮かべる東堂 夢と東堂 累。
ーー何なんだ。
そもそも双子は何で僕なんかに【アリス】のことを聞いてきたりしたんだ……?
そこまで考えて、僕は目の前の人物に思わず釘付けになっていた。
ーーそうだ。
心当たりがあるじゃないか。
目の前の人物が《鍵》に違いない。
- Re: 僕とアリスと白ウサギ【毎日更新予定】 ( No.44 )
- 日時: 2014/09/06 10:20
- 名前: 明鈴 ◆kFPwraB4aw (ID: 0T2ECwzo)
【白ウサギ】と出会ってからというもの、僕は自分自身の中の何かが音を立てて崩れて行く気がしてならなかった。
これまでの生活が音を立てて崩壊していく予感。
運命の歯車が回り出したと言うと大げさだろうが、否、そう言っても罰は当たらないだろう。
そうだ。【コイツ】のせいに決まってる。
「結論! 【白ウサギ】、お前が悪いんだ!」
突然、人差し指で差された【白ウサギ】は、驚きのあまり大きな瞳に大粒の涙を浮かべていた。
「突然大きな声を出すだなんて酷いですよお……」
「そもそもさ。なんで僕が【アリス】のことを知ってると思ったんだよ」
「それは、長年の勘です」
「勘……?」
「そうです」
まさに野生の勘と言うやつだろうか。
「でも安心してください。兼人サンに危害が加わるようなことは、決して起きません」
そんなこと、当たり前だ。
「これからも隣人同士、仲良くしましょう! 兼人サン!」
「余計なお世話だ」
右腕にぶら下がるようにしてしがみついてくる【白ウサギ】を引っぺがしながら、僕は【白ウサギ】と共に自宅であるアパートに向かったのであった。
その時の僕は、黒服の忠告などすっかり忘れていた。
『【白ウサギ】の言うことを鵜呑みにしちゃあ、ダメだよ』
去り際に双子にかけられた言葉を、僕は寝床に着いてから思い出したのであった。
+++++
丁度その頃、リビングのコンセントに差しっぱなしにしていたケータイ電話が着信を受けて震えていた。
僕は気づかない。
数秒間鳴り続けた着信は、そのまま誰に聞かれることもなく、ぷつりと途絶えた。
- Re: 僕とアリスと白ウサギ【毎日更新予定】 ( No.45 )
- 日時: 2014/09/06 10:22
- 名前: 明鈴 ◆kFPwraB4aw (ID: 0T2ECwzo)
Ⅱ.
頭の中がごちゃごちゃしていて眠れない。
ベッドに仰向けに寝そべっていた僕はしばらく真っ暗な天井を見つめていたが、そのままゴロンと寝返りを打った。
狭いアパートの一室、薄い壁の向こう側から両親の寝息が聞こえてくる。
すでに熟睡しているのであろう。
枕元の時計を見ると、午前1時を指していた。
……もう2時間近くベッドの上でゴロゴロしていることになる。
眠れない。
目が冴えて、どうしても眠れない。
今日は頭の整理が追いつかないほど色んなことがあり過ぎたんだ。
「喉乾いた……」
水を飲んで、さっさと明日に備えて寝よう。
リビングを通ってキッチンに向かった僕は、薄暗い中で水道水をコップに注いで一気に飲み干した。
もう1杯飲もうと蛇口をひねったところで、ふと夕食前に充電したまま放置していたケータイの存在を思い出した。
水が入ったコップを持ったままキッチンを後にし、リビングに置いてあった黒い二つ折りのケータイを手に取る。
見ると、着信を受けたことを示すランプがチカチカと点滅していた。
相手を確認するためにケータイを開くと、見慣れない番号が数十件に渡ってディスプレイ画面を埋め尽くしていた。
- Re: 僕とアリスと白ウサギ【毎日更新予定】 ( No.46 )
- 日時: 2014/09/06 10:24
- 名前: 明鈴 ◆kFPwraB4aw (ID: 0T2ECwzo)
「…………気持ち悪っ」
しかして、僕にとってこのような事態は初めてでは無かった。
過去にも似たような状況に出くわしたことがあった。
しかもその時は今回の比ではなかった。
たった1日の間に何十件、何百件と着信が来たのだ。
どうやら原因は、「《姫》のファンです」と名乗る複数の人物に《僕》の電話番号が知らぬ間に知れ渡ってしまったから、らしい。
最初は驚いたものの、相手にしなければ害は無いと、放っておいた。
しかしそれが何ヶ月も続いたので、さすがに僕も恐ろしくなって両親に相談した。
その結果、僕はアドレスと電話番号を一新して、その事件以降、本当に必要最低限な人間にしか自分のアドレスと電話番号を知らせないようにしたのだった。
だから今現在、僕のアドレスと電話番号を知っている人物は陸と両親、一部のクラスメイト位だ。
もし誰かが僕のケータイの電話帳を見たならば「お前、友達が少ないんだな」と言うかもしれない。
しかし僕としては、むしろこの方が縛られるものも無くなったので万々歳だ。
まあ、つまり、こうしたことから、僕のケータイ電話の画面には見知らぬ番号が表示されているはずが無かった。
ただの間違い電話か……?
それにしては物凄い量の着信だ。
誰か電話番号を変えたとか?
その可能性は否めない。
とすると、相手は大分焦っているようだ。
間を置かずに、数十回に渡ってコールしているのが着信履歴から見てとれた。
これは、掛け直した方が良いのだろうか。
現在、午前1時過ぎ……
この時間帯に電話をするのは非常識極まりないが、それでも、僕は電話を握りしめていた。
リビングの小さなテーブルに持っていたコップを置く。
何故か不安が胸をよぎった。
リダイヤルボタンに触れる。
『ピッ……』
ボタンを押した音の後に、プルルルっと呼び出し音が鳴る。
誰だ……
誰のケータイ番号なのか……
「…………ハイ」
3回コール音のあと、電話越しに微かに応答があった。
掠れた声だが、その声の主を僕は知っていた。
間違いない、《彼女》だ。
- Re: 僕とアリスと白ウサギ【毎日更新予定】 ( No.47 )
- 日時: 2014/09/04 20:01
- 名前: 明鈴 ◆kFPwraB4aw (ID: KVMT5Kt8)
Ⅲ.
「先輩……?」
『美ヶ原……君……?』
電話越しに聞こえる、いつもと違う弱々しい声。
儚いながらも、凛とした響きをまとっている。
さながら、一輪の花だ。
しかしその可憐な花は、今にも散ってしまいそうであった。
「そうです、美ヶ原 兼人です」
コゴウ先輩の言葉を肯定してから、僕は次に何を言うべきか迷った。
『何で僕のケータイ電話番号を知っているのか』
『イタズラ電話はやめてくださいと怒るか』
『夜分遅くに電話したことを謝るか』
それとも……
「何か、あったんですか?」
先輩にはいつもの覇気がない。
先ほども、僕のことを『名前』で呼んだほどだ。
いつもなら「アンタ」呼ばわりなのに『名前』で呼ぶだなんて、おかしい。おかし過ぎる。
……というかコゴウ先輩って僕の名前知ってたんだな、と考えて、僕は慌てて頭を振った。
それにしても、
何かあったのだろうか。
「もしもし、コゴウ先輩……?」
『美ヶ……君……私……もうヤダ…………』
「え? もしもし?」
ノイズが酷くて、上手く聞き取れない。
「コゴウ先輩? もしもし?」
『美ヶ原君……私、やっぱり……』
「何ですか……? どうしたんですか、先輩……」
『私…………』
プツリと、
嫌な音がして、
電話が切れた。
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