コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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【完結】脇役にもなれない君たちへ
日時: 2015/01/25 03:29
名前: みもり ◆EcL409OyWY (ID: DYDcOtQz)

 「脇役にもなれない君たちへ!」


はじめまして。懲りない人です。
タイトルは長いので「にもなれ」って略します。なんか上から目線なタイトルですんません。


※ついっつぁー @iromims

※1/8 2014年小説大会3位入賞ありがとうございます。
※1/25 完結しました。ありがとうございます。(´▽`)

 1/1 参照200突破
 1/3 参照300突破
 1/5 参照400突破 
 1/8 参照500突破
 1/10 参照600突破
 1/?? 参照700突破
 1/21 参照800突破

 episodeA 「私の小さな沈丁花」
 >>1 >>2 >>3 >>4 >>5 >>6 >>7 >>8
 episodeB 「公開処刑的RMT」
 >>9 >>10 >>11 >>12 >>13 >>14 >>17
 episodeC 「汚れた夜に銃声を」(R15くらい 注意!)
 >>18 >>19 >>20 >>21 >>22 >>23 >>24
 episodeD 「落ちこぼれたちのロックンロール」
 >>25 >>27 >>30 >>31 >>32 >>33
 episodeX 「脇役ではいられない俺たちへ」
 >>34 >>35 >>36 >>37 >>38 >>39 >>40
 episodeE 
 >>41


登場人物 >>26


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Re: 脇役にもなれない君たちへ ( No.23 )
日時: 2015/01/04 01:27
名前: みもり ◆EcL409OyWY (ID: DYDcOtQz)

 運ばれてきたオムライスを美味しそうに食べる三好くんを見ながら、ハンバーグを切り分ける。「あっ、夢乃さん風邪だったよね。食べきれなかったら、僕が食べるからっ」と三好くんは笑う。食い意地を張りすぎだと思う。そんなところも、私は嫌いではないのだけれど。三好くんも、本当はいっぱいご飯が食べたかったに違いない。ああ、ゲームのせいでろくにご飯も食べられなかったなんて可哀想。ソーシャルゲームは人を狂わせるんだなあと、しみじみと感じています。

 「私のなんか食べたら、風邪移っちゃうよ」
 「い、いやっ、そんなの全然気にしないし! むしろ欲しいって……あ、なんでもない」

 一口サイズに分けたハンバーグを口に入れ、水を飲む。「ごっくん」する時に、喉が痛んだ。これはかなり酷いレベルの風邪だ、明日は学校を休みたいな。
 半分以上なくなった向かいのオムライスをチラ見する。食べ方が非常に丁寧。ちくしょう、負けた。

 「三好くんってさ、なんでゲームに課金しようって思ったの?」
 「……っえ、なんでだろ? ……他に趣味がないから、かな」

 ご丁寧に口の中のものを飲み込んでから、三好くんは言う。そして私に、「逆に夢乃さんは、どうして援助交際なんかしようと思ったの?」みたいな事を聞いてきた。言い方が遠まわし過ぎて解りそこねるところだった。いくら食事中とはいえ、「援助交際」くらいはOKワードじゃないのか。え? 違う? ごめんなさい。

 「笑ったりしない?」
 「もちろん」

 魔法少女になりたいからだよ。そんな事言ったら三好くんも笑うかな。でも、私は真剣だった。5歳の頃から私の夢は変わらない。第一希望は、ずっと魔法少女のままだ。第二希望は市役所で働くことで、第三希望は女優。三好くんはなんとなく中学生くらいまでサンタクロースを信じていそうなイメージがあったので、(我ながら勝手すぎるイメージだと思う)私はオムライスを口に運ぶ三好くんに意を決して言ってみることにした。


 「ま、魔法少女になりたいの……!」


 オムライスの入った皿が、がちゃんと音を立てた。
 口元を抑えて、震えている三好くんが、慌てて水を手に取って一気に飲み干す。げほげほと咳き込んで、涙目で私を見る。

 ……さいってい。わかってくれると思ったのに。

 「ゆ、夢乃さんっ、いま、食べてるから、笑わせな——」
 「笑わせてなんかないもんっ! 私、ずっと魔法少女になりたかったのっ! 脇役で終わる人生なんて、ぜったいぜったいぜったい嫌!」

 三好くんだってそうでしょ、一番になりたくて、ゲームにお金入れてるんでしょっ。一度しかない人生なんだから、人と違うことをしたいって思うことは、普通じゃない。遠山夢乃として生まれた以上、遠山夢乃として、この世界で思いっきり暴れてやるんだから。革命を起こしてやるんだから。この世界を変えてやるんだから。三好くんなんかには、わからないでしょうね。

 「……魔法少女か。いいんじゃないかなぁ」
 「ぜったい引いてるでしょ。200万も課金してる分際で何言ってんのよ」
 「ごめん……」

 ああ、今のですっごい疲れた。何人かの客がこっちを見ている。そりゃあ突然立ち上がって「魔法少女になりたいの」なんて言い出す高校生の女の子を見たら、誰しもそっちを向くよね。痛い子ですよ、わかってますよ。

 三好くんは、まだ肩を震わせて笑っている。それを見ていると、なんだか私も笑えてきた。


 こんなに感情的になったのはいつ以来かな。クラスでも、「援助交際をしている私はみんなに悪く思われている」っていう意識が離れなくて、おとなしく、人当たりがいいように振舞うしかなかった。仕事でも、おじさんたちの気を損ねないように気ばっかり使っていた。家でも「どうか援助交際がバレませんように」って祈って、思えば私は一時も心が休まる時がなかった。誰かにこんな夢を語る日がくるなんて思いもしなかった。

 私は、本当にバカでアホで、聞き分けがなくて、自制心がなくて、人の気持ちがわからない、みんなに迷惑ばかりかけている、正真正銘のクズだ。でも、援助交際を辞めたら、普通の女の子になれるのかな。いや、普通の女の子じゃ物足りない。魔法少女になるのだ。世界に革命を起こすのだ。援助交際なんて、もうやっていられない。さよならネオン街、とびっきりの銃声をぶちこんでやるもん。

 私のことを笑った三好くんを、いつか絶対見返してやるんだから。それまでは、おとなしく私に金銭管理させられていてください。

 「……もうそろそろ、笑うのやめてよね」

 私はそう言って、もうすっかり冷めてしまったハンバーグにフォークを刺した。

Re: 脇役にもなれない君たちへ ( No.24 )
日時: 2015/01/04 18:16
名前: みもり ◆EcL409OyWY (ID: DYDcOtQz)


 月に代わって、お仕置きよ。そんなフレーズに憧れるのは、大抵10歳にも満たない女の子だ。16歳にもなって、魔法や奇跡を追い求め、ネオン街をふらつく私に、ようやく制裁が下りたらしい。会計で1万円を出した三好くんの横で、私は月5千円のお小遣いでどうやって生きていこうかな、と考えていた。あまり沢山ものを買いすぎると家族にバレると思って、密かに財布に忍ばせていたこの札束で頑張るしかないのかな。

 店を出たとき、「家まで送るよ」って言った三好くんは、いつからそんなに生意気になったのだろう。雪も降ってて寒いし、三好くんは絶対夜道を一人で歩いてたらお金とか取られるタイプだと思う。もう暗くなり始めているからここでお別れしたほうがいいと思うんだけどな。そんな私の思いとは裏腹に、体感5分ほどの話し合いの末に、「駅まで一緒に行こう」って事になった。

 文化祭はできるだけ何もしたくないという話、高校体育の必要性についての話、三好くんがこの前のテストで現国と英語が0点だった話(白紙で出したらしい)をしているうちに、駅が見えてきた。この駅は無駄に広くて幼い頃はよく迷ったな。しかも治安の悪いネオン街が近くにあるから、暴力事件や窃盗が多発している。酷いものだと、私が生まれるちょっと前くらいに、コインロッカーに赤ちゃんが捨てられていたんだとか。やっぱり、一人で来なくてよかった。

 駅のライトが、石造りの道を照らす。私は気になっていたことを聞いてみることにした。

 「三好くんって、サンタクロースいつまで信じてた?」
 「んーと……5歳かな」

 随分現実的な子供だな、5歳の三好晴賀。お父さんもお母さんももう少しくらい騙したかったんじゃないのかな、私なんて小5まで信じてたからね。朝起きると枕元にプレゼントが置いてあるのが奇跡みたいで、12月に入るとクリスマスが楽しみで楽しみで。今やもう、クリスマスなんてカップルが目に入って嫌になるだけなんだけど。そんなことを言ったらまた笑われそうだったので、私は何も言わなかった。

 定期を使って改札を抜け、私たち以外に数人しかいない、肌寒いホームに出る。電車が来るまでもう少し。「あと10日くらいで、冬休みだね」と私は言う。三好くんの携帯を返すのは13日後だから、携帯を没収されたまま冬休みに入ることになる。いつだってスマホに目を落としている現代っ子な私たちにとって携帯を取られるなんてことは死刑宣告に近い。ましてやゲーム廃人の彼からしたらもう、想像もできないくらい辛いんじゃないかな。スクールバックの中に入っている三好くんの携帯がやけに重い気がする。

 「……今までのお礼。誰にも言ったらダメだよ」

 私は風紀委員失格だ。バックの中の、一番わかりやすい場所に入れてあった携帯を持って、歩き出す。駅のホームに佇むタッチパネル式の自販機を物珍しそうに見ていた三好くんは、こっちを向いて、「え、なにかな」なんて呑気に困っている。

 ゼロ距離という言葉には、ロマンを感じる。でもお酒の入っていない私はそこまで積極的にはなれない。ここまで近付いたのなら、キスの一つでもすればいいのかもしれないけど、今はこの中学生のへたくそな恋愛みたいな距離感が私たちにとってはベストだと気付いた。
 三好くんのコートのポケットに、返して欲しくて仕方なかったであろう携帯を入れる。

 「えっ、けいた……え、いいの?」
 「誰かに言ったら、もう二度と課金させてあげないんだから」

 絡まれた私を助けてくれて、ご飯代を出してくれて、私をちゃんと更正させてくれて、こんなにいっぱいドキドキさせてもらったお礼にしては安いものだと思う。
 嬉しさ40パーセント、驚き30パーセントくらいの顔で、三好くんは、ありがとう、って言うからずるいな。残りの30パーセントは、うーん、なんだろう。これからわかっていけたらいいかな。

 「課金するなら一ヶ月一万円までねっ。私がちゃんと、見張ってるから」
 「……夢乃さんも、え、援交しないでよ」
 「わかってるよっ! これからは、ちゃんと、まっすぐ生きるもん」

 そしていつか、三好くんの右手を握って歩くの。
 電車が来る。この時間は降りる人なんて居ないから私は一番に乗り込んで、ボタンを押してドアを閉めた。本当は帰りたくないけど、今は笑顔じゃなきゃいけない場面だ。

 息も絶え絶えで追いかけてきた三好くんが、私に手を振っている。

 急に今日あったことがいろいろこみ上げてきて、辛くて、胸が締め付けられて、少しだけ嬉しい、そんな気持ちになる。
 これも全部、風邪のせいだな。今日は早く寝たいけど、寝られそうにもないよ。

 揺れる電車の中で、私は誰にも聞こえないように、「ありがと」と呟いた。

Re: 脇役にもなれない君たちへ ( No.25 )
日時: 2015/01/04 22:14
名前: みもり ◆EcL409OyWY (ID: DYDcOtQz)
参照: 終わりに近づいてきました。終わりのはじまり(ドヤ顔)

 「私、将来は医療に携わろうと思ってるんです」

 放課後になると俺とエリカは毎日この空き教室に来て、スナック菓子を食べたりPSPをしたりという名のバンド活動をしているのだが、将来の夢について話すのは初めてだった。そういえば、俺は3年だったな。今は冬休みを目前に控えた時期で、クラスで大学の受験先も就職先も決まっていないのはもう俺しかいない。この逃げ場のない焦りは中学3年生の頃に似ている。

 笹村涼太郎少年、中学3年生。成績は悪くはなかったと思う。親が口うるさかったから、テスト前だけはちゃんと勉強する奴だった。テストが終わった瞬間に全部忘れるのだが。
 範囲が決められている定期テストは良かったけど、範囲がない模試や実力試験はボロボロで、さすがに心配した母の手によって中3の10月頃に塾に行かされて、毎日嫌になるくらい勉強したな。受験生だから勉強しなくてはいけないのは当たり前だし、みんなもやってるから俺もやらなきゃいけないのはわかっていたけど、俺はどうもそのシステムに不満があった。なんで勉強で全て決めつけられなきゃいけないんだ。

 ある日塾をサボって、河川敷をチャリで走っていると、汚い服装の若い男に会った。
 彼は自分のことを「バンドマン」と名乗り、俺は音楽で世界を変える、なんて恥ずかしい言葉を空に向かって叫んでいた。モラルに抑圧されていた俺は、どこまでも自由なそいつが羨ましくなったんだっけ。


 「……って、聞いてます? 私ですね、保健委員の仕事を押し付けられるうちに、なんだか人を看病するのが楽しくなってきて……」

 どんな性癖だよ、と突っ込みたくなる。俺の前の席に座ってコンソメ味のポテチを食べているエリカは、将来への期待たっぷりな目線を、俺が持ってきた「2014年度就職案内」に向けていた。

 「そのためには、大学行かなきゃいけませんねぇ。でも私、前回のテストとっても順位上がったんですよ」

 栗色の綺麗な髪が、窓から入ってきた風に揺れる。真冬なのに窓を開けているのは、「あったかいとどちらかが寝るから」という理由だった。他にも換気なんていうもっともらしい理由をつけてみる。2時間換気するのもたまにはありだろ、うん。

 ……将来の夢か。音楽で世界を変える、というあのバンドマンの言葉にインスパイアされて、俺も今こうしている訳だけど、そろそろ就職か進学くらいは選ばなくてはいけない。俺、カラオケのタンバリンなら得意なんだけどな。音楽学校さん、いつでもスカウト待ってます。

 「今日金曜じゃん。バイトじゃないっけ?」
 「あ、そうでした! わわ、急がなきゃ」

 花屋でアルバイトをしているエリカは、もう時刻が5時をまわっているのを見て、急いで帰り支度を始める。偉いと思う。俺はバイトを始めても2週間続いたことがない。最近は「青い薔薇が欲しい」などとふざけたことを抜かすクレーマーが増えているらしくて、ストレスもあるだろうに。健気に頑張っているエリカの邪魔はできないので、俺も今日は教室から出て帰ることにした。


 エリカと別れて電車に乗る。エリカのバイトしている花屋があるのはめちゃくちゃ騒がしいネオン街の近くで、なんでそんな場所選んだんだよと言いたくなる。「ほかの花屋さんは高校生NGなんですよお! ごめんなさい!」と謝る姿が脳裏で再生される。あの街は本当にやばい。妖精みたいな服装をして援助交際に街を走る俺の学校の夢乃という女(ちなみに俺のご近所さんである)を筆頭とした、キチガイみたいな連中ばっかりだ。俺は静かな河川敷の方が好きだな。冬はつまらないけれど、春は花が咲いているし、夏は釣りができる。秋の日差しを浴びながら寝っ転がるのは至福だ。

 この電車に乗って帰宅する生徒は多い。いつもは座れないくらい混んでいるのだが、帰宅部の生徒はもうとっくに帰宅し、部活のある生徒はまだ校内にいる、この時間の車内は空いていた。俺の学校の制服を着た奴は数えられるくらいしかいない。

 「あっっれ、三好くんじゃーん」

 その中に、俺の見知った後輩が居た。中学の時からの付き合いで、委員会や文化祭でなにかと同じグループになるから仲良くなってしまった、大人しくてゲームオタクで某トークの芸人並みに運動神経がないこの後輩は、三好晴賀という。おめでたい字面だな、俺なんか最近「あの号泣県議と名前が似てる」と弄られるのに。それも持ちネタにしてしまえば、こっちの強みになるから本当はありがたい。

 「……うわ、どーも」

 明らかに嫌そうな顔をした三好は、俺から目をそらしてスマホを弄る作業に戻った。否定しないということは隣に座っても良いのだろう。そういえば三好はテストの日携帯を取られたらしいが、もう返してもらったのか。テスト中、特に英語のリスニングの時間なんかで携帯を鳴らされたら、俺はそいつの携帯を窓から投げ捨てる。
 動き出した電車の窓から、ゆっくりと学校が見えなくなっていく。

 「涼太郎、就職どうなったの」
 「しらねーよそんなの。魔法少女にでもなるわ」

 そう言うと三好は何を思い出したか吹き出しそうになっていた。魔法少女の何が悪いんだよ。
 三好は俺のことを涼太郎と呼ぶ。俺も中学の頃は晴賀と呼んでいたのだが、高校に入ってからは辞めた。俺の元カノの名前も「はるか」というのである。本当にこいつは、名前すらも迷惑な奴だ。

 三好が何かを噛んでいるから、凝視していたら「……ハイチュウだよ、いる?」と聞かれた。
 いらねえ、童貞が移る。そう返そうと思って、踏みとどまる。こいつは意外とちゃっかりしている所があるし、金を払って夢乃と済ませているということもありえる。いやあ、俺は昔から物事を深く考えないで喋るくせがあるって、おばあちゃんも言ってたしな。軽率な発言はやめておこう。ありがとう、俺やったよおばあちゃん。

 わけのわからないゲームに熱中する三好の横で、俺に向いてるのはなんの仕事かなあなんて、暖かい電車のせいで朦朧としてきた意識の中で考えていた。



 episodeD 「 落ちこぼれたちのロックンロール 」



 この時は、まだ知らなかった。
 エリカが俺から離れていく事も、三好が学校の屋上から飛び降りようとすることも、夢乃が夜の街に銃声を浴びせることも。
 脇役にもなれない俺たちが、小さな革命を起こすことも。

Re: 脇役にもなれない君たちへ ( No.26 )
日時: 2015/01/14 19:48
名前: みもり ◆EcL409OyWY (ID: DYDcOtQz)
参照: アク禁になってたマンです

暇なときに微調整入れていくつもりです。


西澤エリカ(にしざわ -)
年齢 17歳、高校2年生(2014年12月時点)
身長 160.0cm
体重 50kg
BMI指数 19.53
誕生日 9月30日
家族構成 父(会社員)、母(専業主婦)、兄(国立大学生)、姉(高校3年生)
好きなもの 図書館、動物、買い物、お菓子、料理、花
嫌いなもの 良識のない人、魚
出身校 青鳥第一小学校→青鳥東中学校→青鳥高校特別進学科在学中

2年2組名簿19番。「ごめんなさい」が口癖の女子。本心ではあまり謝罪心がなく、まあ謝っておけばいいよね、という感覚。我侭な兄や姉を見て育ったので控えめな性格。
普通の女子高生らしく可愛いものが好き。
クラスの目立つ女子たちに役割を押し付けられることがあるが、ほかのクラスメイトたちとの関係は良好。
成績は学年260人中38位。図書委員時々保健委員。
人を看病するうちに医療に興味を持つようになる。しかし生物と数学が苦手で点数が低いのが悩みどころ。 運動神経は良くはないが、悪くはない。
「クレーマーが少なそう」という理由で花屋でアルバイトをしている。しかし遠山や涼太郎など変な客ばかり来るからもう辞めたい。
家族とは仲がいい。特に母親とは休日一緒に買い物に行く。基本的に誰にでも敬語を使う。


三好晴賀(みよし はるか)
年齢 16歳、高校1年生(2014年12月時点)
身長 166.4cm
体重 46kg
BMI指数 16.69
誕生日 4月21日
家族構成 母(ホテルの清掃員)
好きなもの ゲーム、少年漫画、アニメ、地下アイドル、オムライス、一人カラオケ、みかん
嫌いなもの 非処女、体育、焼きそばパン
出身校 青鳥第二小学校→青鳥中央中学校→青鳥高校普通科在学中

1年2組名簿28番。携帯アプリゲーム「パズル&モンスターズ」に数百万のお金を注ぎ込む男子。5歳の頃に両親が離婚し、東京都中野区から引っ越してきている。大人しい性格で、人に頼るのが苦手。本心では頭の軽い不良や節操のない女子など主に遠山以外のクラスメイトを見下している。
何かにハマるとそれしか見えなくなる、ということは自分でも理解しているが、課金をやめようという考えは今のところ無い。携帯ゲームにハマる前はアイドルの総選挙に投票するためCDを買い集めていた。
不良に絡まれることが週に3回のペースである。学内での友人は1年3組の神巫くんという男子のみ。中学3年生の頃に家計の都合で習っていたピアノを辞めている。
成績は学年258人中70位。文系。運動神経は見ていて可哀想になるレベルで壊滅的。
好きなゲームは某龍クエスト。フローラ派。ホラーゲームと恋愛シュミレーションゲームは苦手らしい。


遠山夢乃(とおやま ゆの)
年齢 15歳、高校1年生(2014年12月時点)
身長 161.2cm
体重 48kg
BMI指数 18.51
誕生日 12月23日
家族構成 父(弁護士)、母(化粧品会社社長)、兄(自称バンドマン)
好きなもの 魔法少女、少女漫画、福沢諭吉、現代社会科、焼肉、マカロン
嫌いなもの 処女厨、数学A、きのこ類、小銭
出身校 青鳥学園大学附属小学校→青鳥学園大学附属中学校→青鳥高校普通科在学中

1年2組名簿18番。魔法少女志望。厳しい両親の元真っ当に育つと思いきや、兄と二人揃って夢見がちで残念な性格になる。中2の頃から未成年飲酒、援助交際を繰り返す非行少女。好きなタイプは年上で身長180cm以上で優しい人。
人の性格や思考を決め付ける癖があり、勘が良いのでほとんど当ててしまう。
「まゆの」という名前で活動している有名なコスプレイヤーでもある。友人は多いが、裏では陰口を叩かれている。
成績は学年258人中7位。文系。責任感皆無な風紀委員。運動神経は人より少しある程度。
最近した一番大きな買い物は財布を買ったこと。憧れの魔法少女はセーラームーンのうさぎちゃん。乙女ゲームが大好き。
援助交際している自分が大嫌いで、「こんな私がお付き合いなんて申し訳ない」というスタンスなので彼氏がいたことはない。


笹村涼太郎(ささむら りょうたろう)
年齢 18歳、高校3年生(2014年12月時点)
身長 175.3cm
体重 66kg
BMI指数 21.55
誕生日 8月1日
家族構成 父(銀行員)、母(美容師)、妹(中学3年生)、祖母
好きなもの ご飯、フライドポテト、スポーツ、カラオケ、お笑い番組、釣り
嫌いなもの 心霊映像、修学旅行
出身校 青鳥西小学校→青鳥中央中学校→青鳥高校普通科在学中

3年5組名簿12番。内向的な上3人と比べたら明るく人当たりがいい性格。誰とでもすぐ打ち解ける。テンションが高く、クラスに一人はいるうるさい奴タイプ。
人付き合いがうまく、友人が多い。しかし本人はあまり大勢でわいわいすることは好まず、河川敷で釣りをしたり自転車で散歩するのが趣味。エリカをバンドに誘った人物で、三好の中学の頃からの友人で、夢乃のご近所さん。
「はるか」という元カノがいて、1年前に飛び降り自殺。このはるかは人付き合いがあまり上手くなく、同じく河川敷で転がるのが好きなマイペースな性格だった。
成績は学年275人中132位。理系。生徒会への誘いを蹴っている。
父と母は女の子が欲しかったらしく、物心着いた時から妹ばかり可愛がっていたので、おばあちゃんっ子である。猫よりは犬派でゲームや電子機器には疎い。
将来の夢はバンドマンになって世界を変えること。もしくははるかにもう一度会うこと。進学か就職かはまだ未定。

Re: 脇役にもなれない君たちへ ( No.27 )
日時: 2015/01/08 17:53
名前: みもり ◆EcL409OyWY (ID: DYDcOtQz)

 「今日、休みだったんだよ」

 揺れる電車の中で、三好は唐突にそんなことを言った。飽きたのか、はたまたポイントが尽きたのか、さっきまで映し出されていたゲーム画面は暗転している。
 主語がないので誰が休みなのかはさっぱり解らない。心当たりといえば、今日の朝夢乃を見なかったぐらいだ。いつもは俺と同じ、遅刻ギリギリの時間に眠そうに通学路を歩いているのだが。

 「……夢乃が?」
 「僕のせいかなって……」

 なんでそうなるんだよ、としか言えなかった。三好はコミュニケーション力が足りないと思う。もう少しうまく会話して欲しいし、さっさとこの話を切り上げて文化祭の話をしたいのだが、三好と俺のご近所さん遠山夢乃の関係は傍観者の俺からしたらとても面白いので積極的に首を突っ込んでいきたいのだ。
 どうやらエリカによると、この三好という奴は夢乃と不自然なくらい仲が良いらしい。この前は一緒に保健室でサボってたみたいだしな。はい怪しい、確定。で、何が面白いかというと三好は夢乃が援助交際していることなんか知らないし、夢乃は三好がそのわけのわからないゲームに大金を注ぎ入れていることを知らない、ということだ。どんな昼ドラだよ。まさか身近でこんな事が起こるとは思わなかったので、俺もその脇役の一人として乱入したいと思った。

 三好に話を聞くと、昨日の放課後一緒にファミレスに行ったせいで、夢乃の風邪が悪化してしまったかもしれない、という事だった。馬鹿だな、普通ファミレスまで誘えたら自分の家に連れ込むだろ。というか、もうそんな仲まで発展していたとは。俺が2年の時ツイッターで知り合ったはるかという女は、やたらガードが硬かったからデートに誘うのでさえ半年かかったんだぞ。
 そんな武勇伝を語っても三好はたぶんなんの興味も無いと思うので、俺はずっと前から気になっていた課金額を聞いてみた。かなりのゲーマーだから、5万円ほど入れていてもおかしくない。

 「でさぁ、お前そのゲームに何円入れてるんだっけ?」
 「……20万くらいかな」

 俺の予想は見事に外れたようだ。にじゅうまん。それは俺のお年玉20年分にあたる。やっぱりこいつは、本物の馬鹿だ。データにそんな大金注ぎやがって。20万もあったら、俺なら旅行に行く。クラスの友達とは前行ったので、今度はエリカを誘おうと思う。二人で行けば勘違いされそうだから夢乃も連れて行こう。慈悲で三好も誘ってやるよ。
 20万という金額に驚いて言葉も出ない俺を、複雑な表情で三好は見る。「20万なんて別に普通だよ、世の中では百万単位で課金してる人だっているよ」と言うが、ゲームに百万単位はもはや病気だと思う。将来は三好もそうなってしまうのだろうか。
 ……いやはや、携帯ゲームに20万の三好くんと、援助交際で稼いでる夢乃さん。悪いけど絶対うまくいかないだろ。もしこのままいって、将来娘が生まれたとして、援助交際で稼いだお金で携帯ゲームに課金するろくでもない娘になるのが目に見えている。こいつらの子供なら、顔だけは可愛くなりそうだし。


 けっこう大きな駅で三好が降りてからも、俺は電車に乗っていなくてはいけない。俺の家は学校からは遠い。学校の周りにはあのネオン街とか娯楽施設も多いのだが、少し離れたらここは完全に田舎だ。流れていく景色からも建物が徐々に減っていく。
 ふと目に入った電車の広告は、大学の案内だった。

 その大学に入っただけで、将来が約束されるほど世の中甘くないんだよな、と思った。俺が約束された将来で収まる程度の人間じゃないことは自分が一番よくわかっていたはずなのに。
 携帯を見ると、エリカから連絡が入っていた。「ローソンのキャンペーンでもらえるお皿が可愛いので、シールを見かけたら集めてほしい」という内容だった。俺は急遽近所のローソンに行くという予定を追加し、人も次々減っていく電車の中で愛用のイヤホンを取り出した。


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