コメディ・ライト小説(新)
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- フリーバトラーズ
- 日時: 2018/01/04 16:00
- 名前: MESHI (ID: sA8n45UA)
はじめましてー!
MESHI…読み方はそのまま「メシ」です、はい。
でも、そこまでご飯が好きということでも、塩にぎりさえあれば生きていけらァ!!というわけでもありません。1日3食きちんとバランスよく食べます(何の話だ)。
最近、縄跳びをはじめました。後ろとびをしていると、目に縄がバチィ!と直撃し、もう二度と縄跳びはしないと心に誓いました。開始5分のことです。
黙っていると完全に忘れ去られる圧倒的存在感のなさのMESHIがお送りします。
所々文がおかしくなったりすることがあるかもしれませんが、そこのところは生暖かい目で見守ってやってください。(MESHIは存在感が薄い故、メンタルは強いです。いくら存在を忘れられてもへこたれません。ステンレス製の心。)
この小説はオリジナルです。
そしてコメディ・異能力モノです。
たまーに作者の生活記録があります。
1話1話がちょっと長いですが、比較的サラッと読めるかなあ…と思います。
よろしくお願いします!
≪コメントありがとうございました!≫
四季さん
【追伸】
作家プロフィール作りました。書いてある小説の上の方にある「参照」から飛べます。
第1章:『ようこそ、フリーバトラーズへ!』>>1
第2章:>>30
- Re: フリーバトラーズ ( No.34 )
- 日時: 2017/08/14 17:38
- 名前: MESHI (ID: j.vAWp8a)
えっ、あっ、えっ?!(混乱中)
あああああありがとうございます!!
めちゃくちゃ嬉しいです!
四季さんの素敵な作品、いつも読ませていただいてます^^
いつも長々と書きまくってるので正直読んでくれてる人いるのかなあ…と思っていたのでめちゃくちゃ嬉しいです(2回目)!!
はい!頑張ります!!
- Re: フリーバトラーズ ( No.35 )
- 日時: 2017/08/14 17:50
- 名前: MESHI (ID: j.vAWp8a)
「あぁ~…くっそ…」
自動販売機に向かって土下座をしているR。
__いや、正確には土下座ではない。自動販売機の下をのぞき込んでいるのだ。
床との間に、金色に光るコイン。
「なんでよりによって500円玉…」
手を伸ばしても届きそうにない。
__いや、正確には埃だらけの自動販売機の下に手を突っ込みたくない。
深いため息をついて立ち上がった。
身を削るような思いで再び財布をあけるR。
「ついてねえなあ…。」
間違えてボタンを押して落ちてきた缶コーヒーを片手で投げながらつぶやいた。
そして屋上へと続く階段を上がる。
◇ ◇ ◇
「剣道やってるの?」
得意げに木刀を担ぐ少年に、女の子は目を輝かせながら言った。
「まあ一応。父さんの作った流派。」
「すごい、カッコイイね!」
花の咲くような笑顔。
少年は照れ臭そうに頬を掻いた。
「じゃあさあ、私の騎士になって!」
「ないと?」
「私を守ってってこと!ほら、私、すっごく可愛いでしょ?だから守ってくれないと危ないじゃない?」
「う、うぅん…?」
悪びれもなく言う女の子。
何か言いたげだが、引き攣った笑顔を返す少年。
「じゃあ、約束!」
差し出された細い小指。
少年は嬉しくて自然と上がる口角を無理矢理下げようとして変な顔になった。
「しょうがないなあ、全く」
少年も小指を伸ばす。
女の子は白い歯を見せて笑った。
「よろしくね、」
「りっくん」
◇ ◇ ◇
Rが病院の屋上に出ると、コンクリートで固められた地面が見えた。
所々に配置された木のベンチは長い間雨風にさらされてボロボロになっている。
申し訳程度の柵は、高さこそ胸のあたりまであるが、少しでも押せば崩れてしまいそうだ。
隅の方には雪がまだうっすらと積もっている。
遠くに目を向けると、街が見えた。あまり良くない天気のせいか、沈んで見える。
地平線の近くにまばらにガラス張りの高層ビルが建っていた。
冬の冷たい風が通り、Rはぶるっと身震いをしてマフラーを持ち上げた。
「寒みぃな…」
まだ温かい缶コーヒーを両手で包み、あたりを見回した。
すると、ベンチの一つに人影が見えた。
顔は見えないが、ほっそりとした線や髪の長さからして女性だろうか。
冷たい風が吹くなか、薄着のまま独りで鈍い色の空を見上げている。
「邪魔しちゃ悪いな」
Rは再び階段への扉に手を掛けた。
その時___下から吹き上げるような突風が巻き起こる。
「あっ」
ベンチに座っていた影が動いた。
曇り空に帽子が舞う。
女性がそれに向かって走り、手を伸ばした。
その先には柵。
柵に女性がぶつかり、嫌な音をたてた。
Rはそれを見て地面を蹴る。
「危ない___!」
手を伸ばすR。
女性が驚いた表情をする。
数m下の地面に、錆びた柵が落ち、ボロボロに砕ける。
その上に、目の穴のない仮面が軽い音を立てて落ちた。
ふーっと長い息を吐くR。
そのの手には、細い腕が掴まれていた。
女性を引き起こし、声をかけようとすると、自分の面がないことに気が付いた。
「あれ…」
地面を見下ろすと、中心で真っ二つに折れた仮面が見える。
慌てて眼を隠そうとしたが、遅かった。
女性は目を見開いて、Rの目に見入る。そこには色もはっきりと映った空と自分の姿。
「りっくん…?」
驚いた表情のままの女性の口から零れ落ちるように出てきた声。
風がRのマフラーを揺らした。甘い花のような香りがする。
Rの口が僅かに開かれた。しかし驚きのあまり、声が出ない。
「…りっくんだよね?」
色素の薄い肩ほどの髪。
あどけなさが残るおっとりとした雰囲気の目。
すぐぽっきり折れてしまいそうなほど線が細く、どこか儚さを感じさせる美しい女性である。
「凜乃…?」
Rの口からやっと発せられた声を聞き、女性__凜乃はにっこりと笑った。
その笑顔はあの時と全く変わらない。
茜色の空とシロツメクサの丘が蘇るようだった。
作者コメ:閲覧数500突破!ありがとうございます!!
毎度おなじみ(?)知り合い・御笠さんのお祝いイラストや、応援のコメントをいただいてすっかり調子に乗っているMESHIです。
いやあ…嬉しいです…!
さてさて…第2話はなんとしてでも恋愛に持っていくぞー!!
と、言いましても、2話に入ってこんだけ引きずって庚くんが生きてることが分かって緋ちゃんが加入しただけという…。あ、あと幼馴染の再会と。
が、がんばるぞーー!(笑)
- Re: フリーバトラーズ ( No.36 )
- 日時: 2017/09/10 16:29
- 名前: MESHI (ID: FqCQxaZS)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
「さってとぉ~」
少女が大きく伸びをした。
目元を赤くして寝息を立てる緋の頭をそっと撫でる。
そして庚の寝ているベッドの端に腰かけた。
「ほぼ無敵の君をこんなにボロボロにできる犯人の心当たりが1人だけあるんだよねえ」
庚の頬を突く少女。反応はない。
それを確認し、少女は庚の手を取った。
「ごめんよっ」
庚の爪を自分の手の甲に押し当て、スライドさせる。
少女が少し顔をしかめた。爪が通った痕から細く血が滲む。
しかしその傷はすぐに消えてなくなった。その間に少女に情報が流れ込む。
庚をボロボロにした犯人の顔。
青いサングラスを押し上げ、ニヤリと笑う男が見えた。
「やっぱりか…。まだ諦めてなかったんだね」
力なくため息をつく少女。庚の手をそっと元の位置に戻した。
患者用の薄い緑色の服の襟元を見る。
そこから覗く庚の首には、文字が彫られた細いリングがつけられている。
『KN-8』
それにそっと触れる少女。
リングが蛍光灯の光を受け、鋭く光った。
「君はいつも…危なっかしいなあ。」
◇ ◇ ◇
「え、氷砂糖テーブルに置いてないの?レストラン失格じゃない?」
木目調のカウンターを不満げに叩く瑠璃。
「お前の中のレストランの基準がおかしいんだよ」
カウンターの奥で皿を拭いている蘇比。
「ソッヒー、メロンソーダ頂戴!上にアイスクリームのってるやつ!」
カウンターから身を乗り出して目を輝かせる鴇。
「ここファミレスじゃねえんだよ」
蘇比はぴょんぴょんと跳ねる鴇の頭を押さえつけた。
その隣では朱殷が座っているが、先ほどから1㎜も動いていない。
「何で俺がちびっ子達の御守なんかしなきゃいけねえんだよ…。」
「おれはちびっ子のうちに入らないでしょ、15歳だよ?」
「年齢の問題じゃねえ。」
蘇比に一瞥され、口を尖らせてスマホを取り出す瑠璃。
「あー!るりっちまたゲームしてるー」
横から画面を覗き込む鴇。
「最近結構やりこんでるなそれ。」
レストランに来る度にスマホを開いて同じゲームをしている瑠璃。
蘇比はそれを見て、飽きないのかといつも不思議そうに見ているのである。
「遂に世界ランク2位まで食い込んできたんだよ」
自慢げに小鼻を膨らませる瑠璃。
「何のゲームだよこれ…」
蘇比は画面をカウンターの向こう側から覗き込む。
瑠璃が画面をタップすると、大砲からピエロの服を着た小太りのおじさんが飛び出していった。
「見て分からないの?オンラインのバトルゲームだよ。」
ピエロは標的であった城へ頭から突っ込み、華麗なコサックダンスを踊り始めた。
「分かるかっ!」
食い気味にツッコミを入れる蘇比。
「おれがこの相手に勝てば世界ランク1位になるんだ。」
瑠璃の眼鏡がキラリと光った。
スマホの中の『RURI』の文字と鷲のマークが描かれた白黒の旗がなびく西洋風の城。
そこへ乱入してきた可愛らしい顔をしたウサギが、笑顔で釘が刺さったバットを振り回し、門番をなぎ倒している。
「あ、くそ…流石1位…」
全くゲームについていけない鴇と蘇比。すこし離れた場所で座っていた朱殷ははなから興味がないようで、遂に寝始めた。
やれやれ、といったように肩をすくめ、皿洗いへ戻る蘇比。
「ソッヒー、イチゴパフェとプリン頂戴!」
鴇が懲りずに蘇比に訴えかける。
「だからここはファミレスじゃねえ!メロンソーダもイチゴパフェもプリンもねえんだっつの!」
「いいじゃん…鴇、一番働いたんだよ?」
目をウルッとさせて子犬のような目で見てみるが、まるで効果はなかった。
庚が落ちていくのを見た後、鴇はすぐにの(一応)医者の浅葱を落下地点へ送り届けるように言われた。
それが終わったあと、廃工場にいた男達を数人ずつ光の当たっていない庚の部屋を中継地点として交番の前へ運んだのだ。
「あれ2時間くらいかかったんだよ!」
「へいへい、よく頑張ったなー」
棒読みの蘇比の声。
「イチゴパフェ!!今すぐ!!!生クリームとアイスとポッキー刺さったやつ!!!」
バンバンとカウンターを叩く鴇。
蘇比は、鴇が店が崩壊しそうな勢いでカウンターを叩き続けるので、結局根負けして冷蔵庫から冷凍イチゴを取り出した。
しばらくの間、スマホからの爆発音や何を言っているのかよく分からない掛け声だけが店内に響く。
蘇比がキッチンの台に皿を重ねる。
すると、鴇が「あっ。」と短く声をあげた。
「あぁ?どう…し…」
途中で言葉を失う蘇比。
瑠璃のスマホの画面が砂嵐状態になっている。
そして画面の端からアニメのようにデフォルメされた虫歯菌のようなものがヒョコヒョコと現れた。
『ニシシシシシシ』
白い歯を見せて不快感を煽る笑い声を発する。
明らかに先ほどまでしていたゲームとは関係なさそうだ。
「…。」
ピシッと音をたてて、瑠璃の眼鏡のレンズにヒビが入った。
「これ何?」
鴇が画面の中心にいる虫歯菌のようなものを指さす。
すると、それはこちら側の動きが見えているかのように目を赤く光らせた。
気味が悪そうに眉を歪ませる蘇比。
「最近被害が急増している新種ウイルス…突然画面が砂嵐状態になり、『Ω』と呼ばれるキャラクターが現れ___」
機械的に口を開く瑠璃。目が完全に死んでいる。
「おーむ?」
鴇が首をひねる。
画面の中では『Ω』が背中から先端が3又に別れた銀色のフォークをとり出した。
「自動的に再生されるアニメーションに合わせて…」
ニヤリと笑う『Ω』。
フォークを頭上まで大きく振りかぶり、画面の奥から手前側へと投げた。
ブチッと短い音をたて、画面が真っ黒になる。
「使っているコンピュータのデータを根こそぎ奪い取って再起不能にする」
長い静寂が流れた。
瑠璃の細く開かれた口から乾いた息がこぼれる。
「は、はは…ははは……」
眼鏡の奥の目は全く笑っていない。
静かにスマホをテーブルに置く瑠璃。
そして何の前触れもなくすっくと立ちあがった。座っていた椅子が音をたてて倒れる。
「いいよぉ!?そっちがその気ならこっちだってやるよぉ!?」
真っ黒な画面に向かって叫ぶ瑠璃。鴇が驚きのあまりひっくり返った。
地団駄を踏む瑠璃を羽交い絞めにして押さえる蘇比。
「いや…ゲームなんだろ?それならまた違う方法でログインすれば途中から…」
瑠璃の眼鏡のヒビが大きくなった。
「これオンラインゲームなんだよ…しかもさっきのウイルスでデータ全部持っていかれたの…!分かる!?あとちょっとで世界一だったんだよ!?いや、ランキングなんて関係ない!おれのちょこちょこ課金してた分の金を返せ!金を!!」
こりゃ駄目だ、と諦めてカウンターの内側へ避難する蘇比と鴇。朱殷は何事もなかったかのようにそのまま椅子に座っている。
「こうなったらウイルス製作者を叩きのめしてやる…そしてデータを何が何でも復旧させてやる…」
そのまま不気味な笑い声をあげながらレストランの扉に手をかけた。
「少女に伝えといて…新しい任務ができたよって…皆で協力してぶちのめそうねって…」
瑠璃から発せられる真っ黒な負のオーラに、蘇比と鴇は冷たい汗を流しながら頷くしかなかった。
- Re: フリーバトラーズ ( No.37 )
- 日時: 2017/10/01 17:07
- 名前: MESHI (ID: uSdQ/xFE)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
「…?」
緋はゆっくりと目を開けた。
窓から見える空は、雲が晴れて青くなっている。
暖かい日差しが緋を照らす。
緋はぼーっとした頭のまま、涙を拭き、座ったままうつ伏せに顔を埋めていた白いシーツから離れた。
すると、そこに寝ていた庚の姿がないのに気づく。
まるでそこに元から誰もいなかったかのように綺麗に整えられたシーツを見ていると、
『…独りにするとどこかにふらっと消えてしまいそうでね。』
少女の弱々しい声が頭のなかで響いた。
良からぬ方向へと想像が広がる。
緋は椅子を跳ね除け、病室を飛び出した。
人々が行き交う広いロビー、患者がずらりとソファーに座って待っている廊下。
忙しなくあたりを見回しながら庚の姿を探した。
不意に涙が込み上げてくる。
___なぜ泣きたいんだろう?
そんなことも分からない。
すると、目の前に見覚えのある後ろ姿が見えた。
右手には松葉杖、左手には点滴の袋がぶら下がった銀色のキャスター付きの棒を持っている。
咄嗟に声を出そうとするが、なかなか出ない。緋は大きく息を吸い込んで叫ぶ。
「庚!」
人が沢山いる中、思ったよりもその声が響いた。
庚が声のした方をを振り返る。
緋はすかさず駆け寄って、庚の胸倉を掴んだ。
「消えようなんて考えるな、この馬鹿!!」
「…は?」
手に力を込める緋。庚の声など聞こえていない。
「何勝手に自分で解決しようとしてんだよ!何独りで抱え込んでんだよ!…そんなやり方しかできないから頭カッチカチの冷徹男って呼ばれるんだよ!!」
「僕をそう呼んでるのは貴女だけなんですが…。」
「うるさい!!」
怪我人の肩ににお構いなしにグーを叩きこんだ。
「格好良く生きようなんて考えんな!どんなに無様でもいいから生きろ!!…お願いだから、」
駄目だ。
全部言いたいのに、どうすれば伝わるのか分からない。
堪えていた涙がまたこぼれそうになった。
「お願い…だか…ら…っ」
指の先が白くなるほど強く、叩き込んだ拳を広げて服を掴む。
「どうしたんです、突然のデレ期ですか?」
返ってきたのはあっけからんとした声。どうにも深刻な状況にあった者のトーンには聞こえない。
「…は?」
顔をあげると、わけが分からない、といった表情の庚。
「何か勘違いしてません?消えるとか生きろとか。」
緋は庚の服から手を離した。
「僕はただお腹が空いたので、あそこに何か買いに行こうとしてたんですが。」
服に寄った皺を手で広げる庚。
「…へ?」
庚の指がさす先には小さな売店があった。
長い静寂が流れた。
冷静になって考える緋。
もしかして、勝手に早とちりして、とんでもなく恥ずかしいことをしでかしたのではないか___という考えが頭をよぎる。
いや、そうに違いない。
汗がぶわっとふき出し、みるみるうちに顔が赤くなる。
「…や、何でもない」
くるりと庚に背を向ける緋。診察室の前に座っている患者の視線が痛い。
すると、頭に軽く庚の手がのった。
驚いて振り返る緋。
しかし庚はもう背を向けて歩き出しているところだった。
「…ふん」
緋は顔を赤くしたまま、ぷくっと頬を膨らませた。
- Re: フリーバトラーズ ( No.38 )
- 日時: 2017/10/28 17:21
- 名前: MESHI (ID: uSdQ/xFE)
大きな木の下は日差しの強い日にはもってこいの場所である。
「見て見て」
女の子__凜乃がポケットから何かを取り出した。
少年__Rはその小さな手の中を覗き込む。
「鈴?」
団栗より一回りほど大きい鈴が握られていた。所々細かい傷が入っている。
「拾ったの。」
「へえ」
凜乃は手を伸ばして鈴をRに近づけた。
「あげる」
ぽかんと口を開けるR。
「え、これ拾い物…」
なおも鈴を差し出している凜乃。Rは渋々受け取った。
「綺麗でしょ?」
凜乃が歯を見せて笑った。その笑顔に見とれそうになり、ハッとする。
さっと目を逸らすと、鞘に収められた日本刀が視界に入った。
小さな体に見合わないほど立派な、Rの宝物である。
Rはそれを手に取り、鞘についた背負い紐に括りつけた。
「…ありがとう」
目の高さまで持ち上げて、揺らしてみる。
その鈴の澄んだ音色が不思議と耳に残るのであった。
__少年は知らない、その鈴は、わざわざ凜乃が少ない小遣いで買ったものだということを。
プレゼントと面と向かって渡すには恥ずかしくて、わざと表面に傷をつけて拾い物を装っていたことを。
「大事にしてね。」
◇ ◇ ◇
「どこか調子悪いのか?」
「え?」
凜乃が首を傾ける。
「いや…ここ病院だからさ。」
「あー。」
さっきからずっと上の空だ。
Rは手に持った缶コーヒーを揺らした。
「りっくんこそ、何か病気になっちゃったの?」
「いや、知り合いがここに入院してるから、そのお見舞いに来たんだ。」
「そっか」
優しく微笑む凜乃。
しかしその笑顔はどこか弱々しく感じた。
そう思うと、肌も昔より一層白く___いや、青白い気がする。
「何か顔色悪くないか?」
Rが凜乃の顔を覗き込むようにして聞いた。
「…ちょっと風邪をこじらせて検査に来ただけ。だからすぐ治るよ、きっと。」
「本当か?」
「もー、ちょっとは私のこと信用してくれてもいいんだよ?」
凜乃が可笑しそうに笑った。
「さっきはありがとね、お面…落ちちゃったけど。」
「別にいいって。あとで拾いに行けばいいし。…お前が無事でよかった。」
躊躇いがちに付け加えてみたが、何とも言えない感情に見舞われる。
他に言葉が見つからなったので缶コーヒーに口を付けた。
「なあに、そのイケメン発言!」
「っるせ」
言ったことを後悔するR。
「ちょっとドキドキしちゃうじゃ~ん!」
Rが激しく咳き込む。
「あれ、大丈夫?」
「いや…」
背を向けてなおも咳き込んでいる。
凜乃がRの背を摩った。
すると、その手を止め、目を細める凜乃。
「大きくなったねえ。」
「なんだそれ、母ちゃんかお前は。」
「この可愛い女の子に母ちゃんなんて失礼ねっ」
バシッと音がするほど強く背中を叩かれた。
「変わってねえなやっぱり」
Rがふっと笑った。
「りっくんこそ」
凜乃も歯を見せて笑った。
「照れ隠しが壊滅的に下手なとことかね。」
「余計なお世話だ」