コメディ・ライト小説(新)
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- フリーバトラーズ
- 日時: 2018/01/04 16:00
- 名前: MESHI (ID: sA8n45UA)
はじめましてー!
MESHI…読み方はそのまま「メシ」です、はい。
でも、そこまでご飯が好きということでも、塩にぎりさえあれば生きていけらァ!!というわけでもありません。1日3食きちんとバランスよく食べます(何の話だ)。
最近、縄跳びをはじめました。後ろとびをしていると、目に縄がバチィ!と直撃し、もう二度と縄跳びはしないと心に誓いました。開始5分のことです。
黙っていると完全に忘れ去られる圧倒的存在感のなさのMESHIがお送りします。
所々文がおかしくなったりすることがあるかもしれませんが、そこのところは生暖かい目で見守ってやってください。(MESHIは存在感が薄い故、メンタルは強いです。いくら存在を忘れられてもへこたれません。ステンレス製の心。)
この小説はオリジナルです。
そしてコメディ・異能力モノです。
たまーに作者の生活記録があります。
1話1話がちょっと長いですが、比較的サラッと読めるかなあ…と思います。
よろしくお願いします!
≪コメントありがとうございました!≫
四季さん
【追伸】
作家プロフィール作りました。書いてある小説の上の方にある「参照」から飛べます。
第1章:『ようこそ、フリーバトラーズへ!』>>1
第2章:>>30
- Re: フリーバトラーズ ( No.24 )
- 日時: 2017/04/02 17:06
- 名前: MESHI (ID: /uXIwxRd)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
「こっち」
緋に大人しくついていく庚とRと瑠璃。
聴力の長けている緋に頼るしか、何処にいるか分からない相手を探す術がないのだ。
しばらく歩いて道を曲がると、4人に気付いて手を振っている少女の姿が見えた。
「おーーーーーい!!」
Rが指を口に当てて静かにするように促すがその指示に大人しく従う少女ではない。
「さあて、これで全員揃ったね!」
パンパンと手を叩く少女。メンバーは疲れ切った顔でため息をついた。
「早いとこ終わらせてさっさと帰ろうよ…」
瑠璃の意見に少女以外全員が「賛成」と気だるく手を挙げた。
「全く…。しょうがないなあ君たちは。早く終わるかは君たち次第だよ。」
一同は黙って準備運動を始めた。
◇ ◇ ◇
「おい翡翠!そんなところで何をしている!」
低いビルの屋上の柵にもたれかかって居眠りをしていた翡翠は、碧の声で目を覚ませた。
道路を見下ろすとピリピリとした空気を纏った碧が腕を組んでいた。
「ストレスは美容によくないよ」
「うるさい!早く降りてこい!」
はいはい、と伸びをしながら柵から体を離す翡翠。
「どうしたの?そんなに不機嫌そうな顔して。ゴキブリにでも出くわした?」
「ゴキブリよりもっと酷いわ!」
降りてきた翡翠は鬼の形相の碧に思い切り睨まれた。
ポンと手を叩く翡翠。
「ああ、あの侵入者達か。」
「他に何があるというのだ・・・そもそも貴様がこんなところでモタモタしてなければ…」
翡翠は拾い集めた銃弾を再び銃に入れた。
「モタモタなんてしてないよ~?ぼく撃たれかけてたんだからね~?」
若干盛って話しているが、それが分かるのは本人と瑠璃だけである。
チッと舌打ちをする碧。
「それで碧さん。何があったのさ?」
「…思い出すだけでも吐き気がする。よって貴様には話さん。」
ポカンと口をあける翡翠。
「ええ…そんなのアリ?」
「貴様に私の体験談を聞かせるために不快な気分になるのは腹が立つからな」
翡翠はそんなあ、と雨に打たれた子犬のような表情になった。
すると、道路の角から人影が現れた。
2人の前を、一人の男がスキップをしながら通る。
スキップのリズムに合わせてふてぶてしいパンダのフードと背負ったリュックサックがピョコピョコ踊る。___燐である。
「やあやあお二人さん!」
2人とも自分たちの前をそのまま通り過ぎるだろうと思っていたが、その予想に反して燐はクルリと華麗に一回転を決め、2人の前に立ち止まった。
「や、やあ…?」
引き攣った笑いを浮かべながら右手を挙げて挨拶をかえす翡翠。
碧は眉間に皺をよせて口を開かずとも「何だお前は」と聞こえてきそうなオーラを放っている。
「どちら様ですか?」
翡翠は柔らかなほ微笑みを浮かべたつもりであったが、引き攣った笑みにしかならなかった。
「おいら?ヒ・ミ・ツ!」
碧のオーラに少量の殺気が混ざった。
「あのね、君たちさっき入ってきた侵入者達を追ってるでしょ?」
目をパチパチさせながら頷く翡翠。
「止めた方がいいよ。あの侵入者達はただのチンピラじゃない。今のあんた達じゃあ、あいつらには敵わないよ。」
フードの下から細く、金色の瞳が覗いた。
「何を言っているんだ、相手はたかが8人だぞ。」
碧が苛立ちを隠しきれずに腕を組んだ。
「そもそもなんで知ってるの?」
「ヒ・ミ・ツ!」
翡翠にジトッとした目でみられるが、燐は気にしない。
「そうだね…『Reaper di falce』って言ったら分かるかな?」
「何それ?」
翡翠はポカンと口を開けたが、碧は顔を真っ青にして立ち竦む。
「…どうしたの、碧さん」
「まさか…いや、そんなはずは…」
その様子を見て満足そうに頷く燐。
「信じるか信じないはアナタ次第!じゃあねっ!」
燐は華麗に3回転ジャンプを決め、踊るようにその場を立ち去った。
あとに残されたのは呆然としている碧と、何が何だか理解できていない翡翠であった。
作者コメ:い、いやあ…。訂正に訂正を重ねるのですが、終わってないのは『第1話』ではなく、『第1章』ですね!
そりゃあ、椅子から落ちた方が大量発生したはずです。
今ここに書いているのが、第1章24話ですね、はい。
第1章で2ページってどんな感じなんでしょうか。長いんですかね?
まだまだ第1章、終わりそうにないので気長にゆるゆると楽しんでくださいね!!
以上、MESHIでした!
- Re: フリーバトラーズ ( No.25 )
- 日時: 2017/04/09 17:06
- 名前: MESHI (ID: /uXIwxRd)
「こちら!」
テレビの豪邸紹介番組さながら、腕を伸ばして建物を示す少女。
しかしそれは豪邸とは程遠い建物である。
外壁は錆びて所々剥がれ落ち、もとは何か文字が書かれてあったと思われるところはもう何が書いてあったのか分からない。
周辺の空き地にはボロボロになった何かしらの機械が至る所に放置されている。
それがないところには伸び放題の雑草が所狭しと生えている。
「本当にここなの?」
浅葱が露骨に嫌な顔をした。
「よくまあこんなところに…。」
Rが足元に落ちていたビールの空き瓶を蹴って道の端に寄せた。
それがあまり汚れていないことから、それが最近捨てられたものだと分かる。
「汚い~」
鴇は蘇比の背中に、コアラのようにしがみついている。
「The・廃工場だな」
蘇比が呟いた。
「さて…緋ちゃん、中に人が居るか確認してくれるかい?」
少女が緋の肩にポンと手を置いた。
「え?私潜入捜査とか…」
庚は焦る緋をジトッとした目で見ながら耳を指し示した。
「あ…。」
何とも言えない恥ずかしさに見舞われる緋。
まるで頭に眼鏡をのせて『眼鏡がない』と騒いでいる人のようだった、と反省した。
咳払いをして廃工場に耳を向ける。
通常の聴力では、廃工場周辺は人っ子一人いないように静まり返っているようにしか感じない。
目を閉じて集中する緋。メンバーは息を潜めてそれを見守った。
「結構な人数が中にいる。まあまだこっちには気づいてない。」
それを聞いて少女はウインクをする。
「ありがとう緋くん。それじゃあ作戦会議だ!」
「…作戦なんて一度もその通りに進んだことないですけどね。」
「き、気分だよ気分!」
庚がため息をついた。
◇ ◇ ◇
「Reaper di falce…『死神の鎌』、武器を持たずして数々の組織や兵を滅亡させた、あの方…私らのBossと並んで伝説と言われる化物さ。」
碧が髪をグシャグシャとかき回しながら言った。
「そいつを敵に回せば命は無いと思え、これは裏世界で有名な話だ。」
翡翠の頬に冷たい汗が流れる。
「ぼくさ、そのBossとやらと会ったことないんだけど、その人より強いの?」
「…さあな」
◇ ◇ ◇
「鴇ちゃんと緋くんは捕まらないようにとりあえずこの近くで逃げ回っといてね!」
廃工場の壁の隙間から中の様子を覗いていた少女は、鴇と緋に向かってウインクをした。
真剣な顔で頷く2人。
その隣ではもう一つの壁の穴から誰が先に中を覗くか、無言のうちで争いがおきている。
最後には殺傷能力高めの光線が出そうな眼力で睨みをきかせた浅葱が勝利を収めた。
「ほぉ~木箱に銃が詰め込んであるな~」
「あーRさんズルいー」
もっとも、Rは覗き穴などなくても透視で中が見える。
「さてと…行こうか皆!」
けだるげに腕を挙げて「おー」と掛け声をする一同。
「…これが上手くいったら美味しいご飯でも奢ろうじゃないか!」
やる気に満ちた目をして「やるぞー!」「おーーー!」と掛け声をする一同。
その声が思いのほか響き、少女が「しーーーっ!」と慌てて鎮めた。
「さっき言ったこと、忘れないようにね!」
作者コメ:どうも、MESHIです。なんかもう毎回書いてるような気がするこのコーナー。一体何人の方がまともに読んでくれているのだろう…。
花粉症がつらいです。でも、薬はすごいですね。医療はこんなに進歩していたのか!とびっくりします。
あのちっちゃい…ちっちゃい粒を1つ飲むだけでこんなにも人生が楽しくなるなんて。あ、いや、ただの薬ですよ?合法ですよ?
今目の前に杉の木があったら、チェーンソーでぶった切りたいです。
花粉症じゃない人、羨ましい…。
それではまた。
- Re: フリーバトラーズ ( No.26 )
- 日時: 2017/04/16 18:56
- 名前: MESHI (ID: /uXIwxRd)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
上空を漂う飛行船のさらに上には、三日月が冷たい光を放っていた。
リン・・・
鈴の音がどこからともなく鳴り響く。
廃工場の中央でいた男たちは、その音の元を探すが見つからない。
錆びついた工場の機械。突然、ギシギシと音をたてはじめた。
男たち___―街を騒がす銀行強盗のグループだった。
いや、正しくは「組織(親玉)」の中の小さなグループの1つ。
リン・・・
「誰だ、出てきやがれ!」
20人を超える男たちはさらにかたまって思い思いに武器を持つ。
一瞬の静寂。
「〈祇園精舎の鐘の声〉」
ひとりの声が響く。Rの声である。
男たちはすぐさまその声の主を探そうとしたが、その必要はなかった。
「〈諸行無常の響きあり〉」
先ほどとは別の声がする。それは浅葱の声。
「〈沙羅双樹の花の色〉・・・」
反対方向からの声。それは朱殷の声。
「〈盛者必衰の理をあらはす〉」
ザッ!!
瑠璃の声と共に、建物の中に一陣の風が吹いた。
埃が舞う。
「〈おごれる人も久しからず〉」
蘇比の声。
「〈ただ春の夜の夢のごとし〉」
鴇の声。
「〈たけき者も遂にはほろびぬ〉」
庚の声。
薄暗い建物内が、一気に光に溢れた。
思わず目を覆う男たち。
「___〈ひとへ(え)に風の前の塵に同じ〉」
そして少女の声。
次に男たちが目の当たりにしたのは、光と、そして、長く伸びた8人の影。
「お前たちは・・・!!」
爆発したような悲鳴が広がる。一目散に逃げてゆく男たち。
しかし、誰一人として逃げ延びることができた者はいなかった。
8人は、風の如き動きで男たちの動きを封じる。
5分もしないうちに、あたりは再び静寂に包まれた。
「安心して、僕たちは殺しはしないよ。」
影の一人が言った。銀色の眼鏡のフレームが刃物のような光を放った。
「それがあたしたちのモットーだからねえ。」
マシンガンを持った腕は、ゆっくりとおろされた。
「あなたたちは、在るべき居場所に帰るだけです。よい監獄ライフを。」
一言も喋れない男たちは、力なくうなだれた。
「なんか大そうな武器持ってるわりに弱ぇな…。」
伸びている男の頬を突く蘇比。
「…まあここの小さい組織1つ潰しただけでは何も変わらないんですけどね…。」
「そ、それは後々考えればいいんだよ、庚くん。」
ため息をつく庚の肩に手を置く少女。
「おいそこの2人も手伝えよー」
ロープを持ったRの声。
「終わったー?」
外で待機していた鴇もひょっこりと顔を出した。
その後に続いておそるおそる顔を出す緋。
「ふー…これでひとまず催眠は解けてるねえ…」
少女が体を伸ばした。
その間にメンバーはロープでぐったりとのびた男達の手足を縛りあげる。
戦闘の数倍の時間を要した。
「…ところで」
「どうしたんだい?」
ロープを引っ張りすぎて顔が青くなっている男には目もくれず、遠い目をする庚。
「ここ空ですけど、警察はどうやってここまで来るんですか?」
メンバーの顔が固まった。
何かを悟ったように遠くを見る少女。
「どうしようもないね!」
鴇の無邪気な声は、エコーがかかり、やがて消えていった。
- Re: フリーバトラーズ ( No.27 )
- 日時: 2017/04/22 16:41
- 名前: MESHI (ID: /uXIwxRd)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
メンバーが途方に暮れる中、1人真剣な顔をして考え込んでいる者がいた。
「どうした?」
緋が腕を突くが、反応がない。
庚の視線は縛られた男達に向けられているが、焦点が合っていない。
「なんかいい策でも思いついたか?」
Rの呼びかけにも反応しない。
「庚くん…」
少女が庚の肩に触れようとした瞬間、庚はすっと立ち上がった。
そして廃工場の外を真っすぐに見据える。
庚は無言で外へ歩みを進めた。
空を見上げると、厚い雲の隙間からぼんやりと細い月が見える。
少女は何かを言おうとして口を開けたが、結局そのまま口を閉じ、複雑な笑みを薄っすらと浮かべた。
すると庚の姿がフッと消えた。
遅れて、立っていた地面には大きなヒビが入っていた。
「おい…!」
少女は、慌てて追おうとする蘇比を制した。
「庚くん…」
少女は俯いて拳を握りしめた。
◇ ◇ ◇
廃工場から離れた庚は、戦闘中以上の速度で道を走っていた。
髪や服が風に揺られてバサバサと激しく音をたてる。
庚の目には今までのような光は消えていた。
力の制御も構わず走るので、踏んだ地面や建物は、脆い発砲スチロ―ルのようにボロボロと崩れていく。
その顔に、もはや表情というものは消えている。
庚は着地をして走るのをやめた。
「…派手にやってくれたねえ…。」
目の前の1人の男は庚には目もくれず、破壊された建物を眺めてため息をついた。
◇ ◇ ◇
趣味が良いのか悪いのか分からない逆三角形の青がかったサングラス。
男はそれを頭の上へ上げた。
「器物損壊だよ…。ちゃんと弁償してよ。」
大きな亀裂の入った地面を手の甲でコツコツと叩く。
常人なら震えあがるほどの庚の爆発するような殺気を受け流し、建物が壊れて埃の舞う向こう側の景色を眺めた。
庚の固めた拳から青白い雷がバリバリと大きな音をたてて散る。
暗い路地が不気味に照らされた。
「久しぶりだねえ、KN-8。」
「それは僕の名じゃない…ただの識別番号だ」
殺気を絶えず放ちながら押し殺したような声で言った。
「やれやれ…。8年ぶりの再会だというのに、もうちょっと兄との再開を喜ぶべきじゃない?」
肩をすくめる男。
「そうですね…やっとあんたを殺せるから、もっと喜ぶべきなんですかね」
男は茶化すように手をヒラヒラと振る。
「どうして俺がここにいるとわかった?」
庚は肩の力を少し抜いた。
張り詰めた空気がほんの少しだけ緩む。
「こんなに大きなものを浮遊させられるほどの能力者はあんたぐらいしかいませんよ」
おもむろに隣にあるビルに手をつく庚。ビルの壁にヒビが入った。
男は黒髪をかきあげた。
「お、褒めてくれてるの?やっぱりお前はお兄ちゃん大好きっ子だなあ」
「…本来ならこの飛行船を破壊するのが一番手っ取り早いですが、生憎ここには罪のない方々もいるので…ひとまずあんただけでも殺そうと思う」
庚の拳から激しい雷が散った。
男はそれを見てサングラスをポケットに仕舞い、ニヤリと笑った。
「やれやれ…久し振りに可愛い弟の遊びに付き合うのも悪くはないなあ。」
男がそう言った瞬間、2人は常人の目には追い付けないスピードで動き出した。
庚の腕が男の数センチ横に降ろされた。触れずとも風圧で服の袖が破ける。
「ねえ本気で殺しにかかってない?」
男が体を後ろに反らすと、その直後に男の首があったところに手刀が横切った。
「だからそう言ったじゃないですか」
飛んできた自分より大きいコンクリートの塊を造作もなく粉々に砕く庚。
男が後ろへ跳躍した。能力で庚が崩したビルの残骸を集める。
息をつく間もなく、瓦礫が庚を襲う。
「いやあ、ちょーっと遊んであげるつもりだったんだけどさあ…」
男の目がギラリと光った。
ガラスの破片が庚の頬を切る。
「そっちが本気なら俺も本気じゃないと不公平だよね」
- Re: フリーバトラーズ ( No.28 )
- 日時: 2017/04/29 17:16
- 名前: MESHI (ID: wHTCUiXd)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
男が宙に跳んでいる庚へ瓦礫の山を飛ばす。
庚は体の前で腕を交差させるが、衝撃は完全には吸収されない。
そのまま地面へ叩きつけられた。
衝撃で周りにある建物の窓が割れ、傍にあった電灯が倒れる。
しかしその直後、瓦礫の山が中心から爆発するように吹き飛んだ。
ひゅう、と口笛を吹く男。
「さっすが、俺の弟だ!」
「うるさい!」
庚は弾丸のように向かってくる瓦礫の間を縫うように走り、男へ接近する。
突如、目の前に鉄骨の塊が現れた。
「…くっ」
回し蹴りを放つ庚。
鉄骨はぐにゃりと曲がって地面に叩きつけられた。道路の表面のコンクリートが剥がれて飛び散る。
その先に男の姿はない。
振り返ろうとすると、首に冷たい感触。
男が背後からガラスの破片を庚の首に当てていた。
すぐさま首を傾けて肘を男のみぞおちへ引く庚。
しかし感触はなかった。
庚はすぐさま振り返って地面を蹴る。
男は不敵な笑みを浮かべながら空中に浮いて静止していた。
飛んでくる破片を次々に破壊して接近していく庚。拳からあたりが眩く照らされるほどの雷が発せられる。
正面にそびえ立つ鉄の板を、男ごと吹き飛ばした。
男はそのまま建物の壁を貫通し、やっと速度が落ちたころ、飛行船の壁に叩きつけられる。
庚はそれを追った。手刀を構え、跳躍して男に向かって振り下ろす。
「やるじゃないか…まあでもまだまだかな」
背後から、ガラスの破片が矢のように飛び、庚の背中に深々と突き刺さった。
顔を歪める庚。しかしそのまま手刀を目の前の男へ振り下ろした。
辛うじて地面に両脚をつけて着地する。
2人の体から鮮血が吹きだす。
男は右肩を押さえる。数m離れた地面に、ただの肉片となった腕が落ちた。
庚は背中に刺さったガラスを抜き取り、後ろへ飛んで距離を取った。
「いんやぁ…ちょっと油断してたな…」
男は黒いコートの内側から、太い注射器を取り出した。
そしてそれをおもむろに庚に投げつける。
「何がしたいんです?」
飛んできた注射器をあっさりと叩き割る庚。中の透明の液体が散った。
液体が手につく。庚は顔をしかめて服の裾で拭った。
その様子を見て、男はニヤリと笑った。
◇ ◇ ◇
「おいおいおい…何だこの音は…」
蘇比がブルっと身震いをした。先ほどからなぜか鳥肌がおさまらない。
本能的に、殺気を感じているのである。
庚が消えてから、立て続けに物凄い音が飛行船内に響いている。
「怪獣大戦争?」
「そうだなーゴジラ対ウルトラマンかなー」
鴇を適当にあしらうR。
再び地面が揺れた。
7人は廃工場の屋根に座っている。
次々に崩れていく建物。爆弾でもこうも簡単には崩れないだろう。
時々、日が暮れてきている空に、黒い影が一瞬横切る時がある。
「まさか庚が暴れてるわけじゃないよな…」
蘇比が呟いた。
「さあね…」
遠い目をした少女が無感情に言った。
◇ ◇ ◇
庚が目を擦った。
さっきから、目が変に霞む。
先ほどの注射器が頭をよぎった。
「汚い手を…やっぱり変わってないですね」
脂汗を滲ませながら不気味に笑う男。地面には血だまりができている。
早いところ、終わらせる方がいい。
庚は思うように動かなくなってきた体を無理矢理動かす。
目には鋭い刃物のような光が走り、力任せに手を振りあげる。
手刀を男に向かって横に振った。
しかしその速さでは間に合わず、鳩尾に男の拳が打たれた。
「常人ならとっくに死んでるはずなんだけどねえ…」
庚は瓦礫の山へ吹っ飛んだ。
頭が割れるように痛い。口の中に鉄の味がした。
腹部からは淀みなく血が流れだし、体中切り傷だらけになっていた。
体を起こそうとすると、目の前に一際大きなコンクリートの破片が現れる。
避ける間もなく、飛行船の壁に叩きつけられた。
分厚い壁にヒビが入り、崩れ落ちた。刺すような冷たい風が容赦なく吹き込む。
庚はうめき声をあげた。
「死神の鎌も死神には勝てないんだよ」
その声と同時に見えたのは、勝ち誇った笑みを浮かべる兄の顔と、丸ごと地面から折れたビル。
目を見開く庚。目から光がフッと消えた。次の瞬間には、物凄い衝撃が襲う。
腕を伸ばすが、それも虚しく空を切る。
庚は氷のように冷たい風の吹く飛行船の外に投げ出された。
作者コメ:来ました!GW!!
旅行に行こうかなぁ~どうしようかなぁ~とワクワクしていましたが、それはGW前の現実逃避に過ぎず、いざGWになるともう旅行に行く気は失せてしまいました。
長い休み、家でゴロゴロの誘惑に負けてしまいました・・・。
いやあ、いいですね、ゴロゴロ。
飼っている犬(最近飼い始めた)がモフモフでたまりません。
心のオアシスが2つ合体するともう最強です。もう家から一歩も外に出たくない!!
・・・まあそんなわけにもいかないので今から晩御飯の買い出しに行ってきます。