コメディ・ライト小説(新)
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- フリーバトラーズ
- 日時: 2018/01/04 16:00
- 名前: MESHI (ID: sA8n45UA)
はじめましてー!
MESHI…読み方はそのまま「メシ」です、はい。
でも、そこまでご飯が好きということでも、塩にぎりさえあれば生きていけらァ!!というわけでもありません。1日3食きちんとバランスよく食べます(何の話だ)。
最近、縄跳びをはじめました。後ろとびをしていると、目に縄がバチィ!と直撃し、もう二度と縄跳びはしないと心に誓いました。開始5分のことです。
黙っていると完全に忘れ去られる圧倒的存在感のなさのMESHIがお送りします。
所々文がおかしくなったりすることがあるかもしれませんが、そこのところは生暖かい目で見守ってやってください。(MESHIは存在感が薄い故、メンタルは強いです。いくら存在を忘れられてもへこたれません。ステンレス製の心。)
この小説はオリジナルです。
そしてコメディ・異能力モノです。
たまーに作者の生活記録があります。
1話1話がちょっと長いですが、比較的サラッと読めるかなあ…と思います。
よろしくお願いします!
≪コメントありがとうございました!≫
四季さん
【追伸】
作家プロフィール作りました。書いてある小説の上の方にある「参照」から飛べます。
第1章:『ようこそ、フリーバトラーズへ!』>>1
第2章:>>30
- Re: フリーバトラーズ ( No.9 )
- 日時: 2017/01/04 17:41
- 名前: MESHI (ID: 7aCRDkL4)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=11655
庚は戦闘の構えを取っている緋には目もくれず、蘇比に手に
持っていたスーパーの袋を手渡した。
「何だ?おい、これ・・・」
「一応シェフですよね?」
口調こそ落ち着いているものの、目の奥が笑っていないことから〈人の部屋を勝手に占領した代償〉という言葉が聞こえてきそうである。
「う、腕がなるなあ~」
蘇比の店は人気ではないものの、一応客は来ている。ちなみに、その客の6割はメンバーである。
そそくさとキッチンに消えてゆく蘇比。鴇もパタパタとそのあとに付いていく。
「お子ちゃまはあっちいってろ」
「お子ちゃまじゃないもん!11歳だもん!」
「絶賛お子ちゃま中じゃねえか」
結局、腕に纏わりついた鴇を引きはがすことはできなかった。
あーよっこらせ、と年寄りじみた声と共に床に座る庚。
「おい立て!女の首を全力で締めやがって!寸刻みにしてくれるわ!」
庚は一気に面倒くさそうな顔になった。
「そんな顔すんじゃねえ!」
眉間にシワを寄せる緋。
「あ~、止めといたほうがいいよ緋ちゃん」
足を組んで窓に寄りかかっていたRが言葉を発した。それと共に、メンバーが口々に喋りだす。
「そうそう、1対1の近距離戦じゃあ庚さんに勝てる奴はいない」
と瑠璃。
「それに、庚ちゃんが全力で首絞めたら緋ちゃんの首は一瞬でポッキリよー」
「ちゃん付けしないでくれますかね」
庚が浅葱をジトッとした目で睨む。
「ちょっとした軍隊なら1人で沈められるだろう?」
「・・・寝起きじゃなかったら。」
少女の問いかけに対する答えを聞いて少し怯む緋。
すると、ダメ押しのように少女がポンと手を打った。
「そういえば庚くん、昔夢遊病がちだった時に、寝ながら近所のビル一帯を破壊してたよね」
誰も”そんなわけないだろう”と突っ込まない。
皆、庚ならあり得る、とでも言いたげな顔で頷いている。
「・・・」
無言で部屋の隅に縮こまる緋。
なんだこいつらは。化け物なのか?化け物だな。
緋の頭の中では、自分の中の常識と目の前にいる化け物達の常識との大戦争が勃発していた。
かなり雑な(漫画で言うとシリーズ20巻目くらいに申し訳程度にページの端に書かれているような)メンバー紹介をされ、緋はついていけないままポカンとしている。
「安心して!まあ、ちょっと首に痣ができるかもしれないけど、おそらく?多分?大丈夫かなーって。」
浅葱のゆるふわな診断、全く安心できない。
「大丈夫だって。こいつ医者助手とか言いながら無免許で1人で手術とかガンガンやるから。」
もう助手でも医者でもない。どこのブラックなジャックだ。
「それ全然大丈夫に聞こえませんよ」
「あ、やべ」
一同、スーッと緋の方に視線を向けた。
無言で視線を送り返す緋。
「大丈夫、もっと危険な医者知ってる。」
「良かったな浅葱!お前底辺じゃないってよ!」
「大動脈掻き切るよ」
満面の笑みでRの首にメスを当てる浅葱。Rは引き攣った笑みを浮かべながら壁際へ避難した。
「・・・で」
緋は一向に静かにならないメンバーを見て、自分から話を切り出す。
部屋がピタリと静まった。
「何が目的なんだ」
少女がフム、と少し考えるフリをした。
「強いて言うなら、保護かな?」
「ホゴ?」
素っ頓狂な声を上げる緋。
「うん、まあ今の君は向こう側のワル組織の一員なのに敵側の私たちの方にいるし。」
「緋ちゃんが送ったメールも最終的には嘘の情報提供したことになっちゃうし。」
「あっち側の組織に命狙われてるし。」
「は?」
ポカンと口を開けたままの状態で庚を見る。
「自分達の組織の情報が漏れるといけませんからね、口封じってやつですよ」
緋の顔の血の気がさっと引いた。
「えっ?エッ?ころ・・・」
「だーいじょうぶだってー、護衛には俺らがつくからー」
Rのお気楽な声。
「えっ?ごえ・・・」
「半径5㎞には敵は近寄れないよきっとー」
「5㎞は言い過ぎです」
「じゃあ500m?」
「・・・」
「・・・一生?」
「違います、組織を滅亡させるまでです」
見事な即答であった。
「滅亡も時間の問題だよねぇ」
「そうだねぇ」
ウンウン、と頷き合う少女と浅葱。
「時間の問題って?」
「我がチームの優秀な潜入捜査官、朱殷ちゃんが既に潜入してるからね!」
作者コメ:
(説明しよう!このどう考えてもいらないコーナーは、作者が昨日『小説に関係ない話はナントカ[覚えていない]へ!』という説明書きを見つけ(遅すぎる)、もう今更そこへ書くのは面倒くさいから無理やり小説に関連付けて書こうという何ともお気楽な考えから作ったコーナーである!ちなみに、読み飛ばしても本編には何ら支障はない!)
明けましておめでとうございます。
上記の通り、昨日説明書きをちゃんと読みました。言うまでもなく、新しい家電を買っても説明書を読まずにいつの間にか破壊するタイプです(読め)。
さて、明けましておめでとうございます(さっきも言った)。
今年も何卒よろしくお願い致します。
どうでもいいことだとは思うのですが、作者プロフィールをつくりました、どうでもいいですよね。
どうしても暇で本棚にある本でドミノを作りはじめるレベルに達した時にでも読んでいただければ嬉しいです。
投稿は、1,2週間に1回くらいを予定しております。あくまでも予定です。
- Re: フリーバトラーズ ( No.10 )
- 日時: 2017/01/10 17:48
- 名前: MESHI (ID: 7aCRDkL4)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
『 From:楓花
中山 変装ー敵組織 』
「と、いうことだが?」
廃工場の一角。一人の男が追い詰められていた。————20代後半の女と、中学生くらいの少年に。
中学生くらいの少年の名は翡翠。薄い褐色の髪の片側をピンで留めている。
翡翠は、男———中山の傍にしゃがみ込み、容赦なく頬をつねる。
「いでででででで!!」
必死に抵抗する中山。手と足をロープで縛られているのでのたうち回ることしかできない。
「何もかぶってないよ」
ピンヒールを履いた20代後半の女———碧がカツカツと音を立てて近寄る。
「そんなわけなかろう、情報が回ってきてるんだぞ」
「碧さんご贔屓の楓花なのはわかるけどさあ、その情報確かなの?」
碧がニヤリと笑う。
「そう思うだろう?実を言うと私もだ、翡翠。このマヌケならホームレス中学生でも襲って身ぐるみはがすことは可能だ」
「なんでそこでホームレス中学生が出てくるのか謎だけど、まあそうだよね」
「ひどくないっすか?!」
中山の反論を聞く者は誰もいない。
「このメールから楓花とは音信不通だし・・・ああ愛しの楓花よ・・・」
楓花のメールアドレスは、永久保存に設定してある。
「気持ち悪いよさすがにー」
「おい野郎共!楓花がもう3日も姿を見せてない・・・探しに行くぞ」
◇ ◇ ◇
フリーバトラーズ一同(朱殷を除く)は、狭い部屋で鍋を囲んでいた。
テーブルには2つの鍋。
「うまーさすがシェフの端くれー」
「端くれじゃねえ!まあ端くれだけどお前には言われたくねえ」
蘇比が全力でRを睨む。しかし相手の目がどこにあるのかわからないのでその威力は半減した。
その隣で無言で食べ続ける庚。
「おぅ、今回は何日ぶりだ?」
「5」
「え、5日ぶり?人間って普通、3日食べなかったら死ぬんじゃ・・・?」
緋がへんなものを見るような目で庚を見る。
「だって普通じゃないもん庚さん」
向かい側に座っていた瑠璃が話に入ってきた。
無言で頷くだけの庚。
ゴクゴクと鍋のスープまで飲み干した。
「今回は死ぬかと思いましたよ、最近晴れの日少なかったので」
「は?」
顔中に「?」をくっつけている緋を見て、ため息をついた。
「・・・まず、ラジオを想像してください、あの防災用とかで売ってるやつ。それと、電池(別売り)。」
緋の頭の中に手のひらサイズのミニラジオが現れた。
「最近ではソーラーパネルとか使えますよね?あと、手回し発電もできる物もあります」
脳内ラジオに上部に黒い板と、グルグル回る取っ手を取り付ける。
「でもその日は雨でソーラーパネルが使えません、じゃあどうしますか?」
「どうって・・・手回しで発電すればいい」
もう一つの鍋にも手をつけようとする庚を必死で止めているR。
「じゃあ、手回し発電の取っ手が折れてしまったとします・・・どうしますか」
もはや誰も緋を見ていない。皆、庚から鍋を守ることに必死である。
「最終手段の電池を使う」
「それが僕にとっての”食事”です」
瑠璃が急いで鍋に蓋をかぶせた。
庚は残念そうに腕を下した。
なるほど、と手を打っている緋。ふう、と息をつく一同。
再び鍋の蓋が外される。
「と見せかけての食べる」
目にもとまらぬ速さで具材をかっさらっていく庚。
「うわこの野郎!」
「さっき鍋丸々食べたじゃんー!」
「よりによって肉!!」
皿の中のものは、一瞬で庚の胃に収まった。食事は戦場である。
わいわいと鍋を囲んでいる中、少女は珍しく背を向けていた。
「どうしたんですか」
鍋チームに追い出された庚が少女の手元をのぞき込む。
「朱殷ちゃんからの報告だよ」
白いスマホは、少女の小さな手には収まりきっていない。
「何か進展でも?」
庚がそう呟くと、ニヤリと笑った。
フフフ・・・と一人で笑い出す少女から1歩遠ざかる庚。
「これはチャンスだよ皆!!」
いきなり立ち上がったので、隣で食べていた鴇が驚いて5㎝ほど飛び上がった。
「やはり、向こうの組織は緋くんを探している。そう、動きを見せているんだ!!」
「・・・それが?」
瑠璃が鍋の湯気で眼鏡を曇らせながら訪ねる。
「いや、え、あ、その・・・・・チャンスだ!!」
「解決策思いついてねーじゃねえか」
蘇比が固まった笑顔を浮かべる少女に呆れ返った視線を向けた。
作者コメ:一回分の投稿量を減らして、投稿頻度を上げようとしました。しかし、私の思惑に反してどんどん文が長くなってしまいました。
無駄話が多いんですね、自覚しています。
難しくなくて読みやすい、短くて面白い小説を目指しています。ぐへへ、めっちゃ長い文章書いて時間を浪費させたろう、なんて考えは一切ございません。本当です。甘辛チキン賭けてもいいです。
これからもよろしくおねがいいたします!!
- Re: フリーバトラーズ ( No.11 )
- 日時: 2017/01/16 19:23
- 名前: MESHI (ID: 7aCRDkL4)
「ねえねえお兄さんトウモロコシとか好き?」
「別に」
「あ、マラカス持って踊ったことある?」
「別に」
「好きな子とかいるの?」
「別に」
「タイプの女の子は?」
「別に」
「マカロンとか好き?」
「好きに決まってんだろスイーツなめんじゃねえ」
小さな部屋の中で向かい合っている蘇比と翡翠。
なぜこんなことになっているのか。
遡ること3時間。
「ああーこうなるとビール欲しくなるよね」
「いいねえ、たぎるねえ」
少女とRがジョッキを持ち上げるフリをしてニヤニヤしている。
ちなみに、少女は見た目はどう見ても未成年だが、年齢的には成人も成人、500歳を超えているのでアルコールOKである。
蘇比は聞こえないフリをして庚が平らげた鍋を片付けている。
「「・・・」」
真顔で蘇比に視線を送る2人。
気づかないフリを貫き通す蘇比。
少女とRが顔面10㎝にまで近づいてきたので、その作戦は中止せざるを得なくなった。
「んだよ鬱陶しいな!自分らで買いに行けよ!」
顔を背けて2人を引き剥がした。
「よしわかった、じゃんけんだ!」
「最初はグー!じゃんけんポン!!」
「えっ?はっ?」
とっさのことで、グーしか出せなかった。
「いえーーーーーー!!はい蘇比に決定ーーー!!」
少女とRがハイタッチした。
「いや、さっきのナシだろ?!何喜んでんだよ!!」
————結局、寒い夜道を1人で歩くことになったのは蘇比であった。
「あーくっそ・・・覚えてやがれあいつら・・・」
手にはコンビニの袋。冷えた缶ビールが3本入っている。
突如、蘇比は何かの気配を感じて立ち止まった。
不気味なほどに静まりかえった道路。冷たい追い風が通り抜ける。
ガサ・・・
何かが動く音を捉えた。
「ストーキングたぁ、あんまり良い趣味じゃねえなあ」
地面を勢いよく蹴る蘇比。
背後に立っていた大男は、あっけにとられて視線だけ蘇比を追う。
地上5m。重力を無視するように夜空に跳んでいる。
ただただ立ち尽くす大男が振りかぶっていた金属バットは、蘇比の回し蹴りによって音を立てて飛んだ。
地面に転がって行くバット。大男は素手で殴りかかろうとするが、腕を動かした瞬間には地面に倒れていた。
「あー、いたたた・・・金属蹴ったら痛いって。もうちょっと足に優しい素材にしてくんねえかな。豆腐とか蒟蒻とか。」
足の甲をさする。
蘇比の能力は無条件に発動する。
いつでも発動したいときに発動できるのだ。
高い跳躍力やパワーをもつ両脚。足技だけなら庚と互角、もしくはそれ以上だ。
全力で走れば新幹線にも負けない。主に戦闘に用いられる能力である。
「蒟蒻なら持ち運びにも便利だぜ、豆腐みたいにボロボロ崩れねえし」
蘇比は気絶している大男をつつく。
「そうだね、今後の作戦の参考にするよ」
突然、暗い路地裏から声がした。若い男の声だ。
カチャ・・・
銃の安全装置を外す音。
「そりゃあよかった」
大人しく両手を挙げて音がした方にふり返る。
「ところで、こんなところで銃なんてぶっ放していいのか?警察来るぜ?」
片手に銃を持っていたのは、若い男・・・というより少年。
「大丈夫だよ、お兄さんが大人しく捕まってくれたら撃たないし。」
翡翠である。
「それに、今動いたらウチの優秀なスナイパーさん達がお兄さんの脳天ぶち抜くよ」
にっこりと穏やかな笑みを浮かべあう2人。目が笑っていない。
「ほう?そのスナイパーってのはこっちの瑠璃より優秀なのかい?」
「ルリ?何それ、可愛い女の子?」
「残念、お前と同じくらいの男だ。」
「なーんだ」
口をとがらせる翡翠。しかしすぐに脅すような笑顔に戻った。
「で、行く?逝く?」
「いやあ、まだ死ぬわけにはいかないんだよねえ。このビール飲みたいし。」
「肝臓に悪いよ」
「っるせ」
「あーーーーーーーーーーー」
「うるさいよもう・・・あれ?これどうやって繋ぐの?」
「え?だからそのケーブルをだな・・・」
あの後、無抵抗の蘇比は数人の男たちによって担がれ、目隠しをされてしばらくの間車にゆられていた。
そして途中で猛烈な眠気が襲い、気が付いたらこの部屋にいた。
現在、翡翠はビデオカメラとパソコンと睨めっこをしている。
「違うって、そっちだよ、そうそうソレ。」
手と足を縛られているが、自由にしゃべることはできる。
「あ、コレ?こっちをこうするの?」
全ての配線をつなぎ終えた。
「よーし、通信開始っと。」
データの送り先は、
「あれ?誰かの電話鳴ってない?」
瑠璃が当たりを見回す。
「おっと、私のスマホだ。・・・非通知?」
少女は通話ボタンを押した。
- Re: フリーバトラーズ ( No.12 )
- 日時: 2017/01/22 17:41
- 名前: MESHI (ID: 7aCRDkL4)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=11655
ねえねえねえ!!みてみてみて!!電話がかかってきたよ!!」
「へえ」
スマホを覗きこむR。
「初めてだよー!嬉しいなあ!!皆私に電話かけてこないんだもの」
「別に電話をかけてまで話したいことなんてないですからね。」
庚の言葉に深く頷く一同。
「いつでもかけてくれていいんだよ!」
『もしもしー?おーい?』
「いやだよ、というかあんたが電話かけてきたら1時間くらい切らないだろ?」
瑠璃が顔をしかめる。
「通話料が馬鹿にならないんだってー」
Rが鍋をかき混ぜた。鍋パーティーは未だに続行中である。
『もしもし?聞こえてる?』
「えー、鴇、携帯持たないでおこうかなあ」
「それはいけない!私がスマホを買ってあげよう!お揃いのね!」
「ええー」
一気に悲しい顔になって泣きまねをする少女。
『もしもし?!ねえ?!』
スマホから漏れる翡翠の声。
「出てやれよ、記念すべき第1号。」
Rがスマホを指さす。
「うん、そうだね!はいはい、もしもし?!」
満面の笑みでスマホに向かって声をかける少女。
『やっと出たよ!あんたんとこのボスどうなってんの?!』
『バカなんだよ』
「何か私の悪口が聞こえた気がするんだが?」
『気のせいじゃない?』
電話越しでも想像できるとぼけ顔。
「んー?さっき蘇比くんの声が聞こえた気がするよ?」
『ご名答。今度は気のせいじゃないよ』
少女の周りに群がるメンバー。
「というか誰なんですか?相手」
庚がポツリと呟いた。
「・・・・・・」
口を開けたまま硬直する少女。
「ま、まさか・・・!!」
『そうそう、あんたんとこの蘇比ってお兄さんは僕たちが・・・』
「”気のせい気のせい詐欺”か?!」
『語呂悪っ!!』
隣で見かねたRが少女の手からスマホを奪い取る。
「あー、もしもしー?」
「何するんだいRくん!詐欺犯はしっかり懲らしめないといけないんだよ!!」
手を伸ばすが、身長が足りずスマホを取り返すことができない。
少女はしばらくジャンプをしたり背伸びをしたりして何とか取り返そうとしていたが、諦めて大人しくRの様子を見ることにした。
『ああ、誰かが代わったの?良かった、全然話が進まなかったからー』
ほっとした声が聞こえた。
「面倒くさいから単刀直入に聞くけどさあ、君誰?」
クスクスと笑う声。
『僕は翡翠。あんた達の敵だよ』
「ほう?」
挑戦的な笑みを浮かべるR。
庚が怪訝そうな表情を浮かべる。
『今からテレビ電話モードに切り替えるよ』
浅葱がカメラに映らないよう、緋を部屋の隅に移動させた。
『送信ー!』
Rが持っている少女のスマホに、小さな部屋が映った。
自撮りをするようにカメラを構えた翡翠と、その奥には縛られた蘇比。
一瞬の静寂。
直後、爆発するような笑い声が近所一帯に響いた。
『え、お仲間が拉致されてるんだよ?!何笑ってんの?!』
カメラがぐらぐら揺れている。
Rと鴇はうずくまってバンバン床を叩き、少女と瑠璃は腹を抱えて過呼吸になりそうなほど笑い、浅葱は鼻の穴を膨らませながらニヤニヤしている。
笑っていないのは、呆れた顔をしている庚、そして翡翠と同じように唖然としている緋だけである。
「なぁに捕まってんのー、マヌケだねえーー!!あーっはははは!!!!」
「ぷっ、縛られてる、ハハハハハ!!」
「ひぃ~、おちゅかいも出来ないのかい蘇比くん!ひゃひゃひゃひゃ!!!」
「何やってんのソッヒー!アハハ!!」
「囚われの蘇比・・・イイね、ヒヒ・・・」
テレビ画面を連写する浅葱。
『撮んな変態!』
画面の中で蘇比が吠える。
息切れするほど思い切り笑った5人は、未だニヤニヤしながら画面をのぞき込んだ。
「目的は何・・・ックククク」
瑠璃が聞く。
『なんかさあ、あんた達の誰かがうちらの組織に潜り込んでるらしいじゃん?』
「え?!ええ?な、何のことかなあ!」
白々しく目を泳がせる少女。
『誰に変装してるか教えてくれたらこのお兄さん解放するよ』
少女はフッと息を吐く。
「それはできないね。教えたら、間違いなく殺す気だろう?私はね、皆を友達・・・いや家族のように大切におもっているいるからね。」
そう言うと、一気にメンバーが不服そうな声を上げた。
「僕は貴女の家族になった覚えはありません。」
「おままごとなんてやってたっけ?」
「誰が家族だ」
「友達ですらないでしょ」
「そうね、人体実験の対象のうちの一人ってくらいね。」
庚、鴇、R、瑠璃、浅葱から一斉砲弾を浴びせられ、仰け反りながら床へ崩れ落ちる少女。
手にはボロ布のようなハンカチが握られている。
「泣くもんか!」
『なんか報われない感じだねー』
半開きの目で投げやりに言う翡翠。
『ま、見つけ次第消すのは事実だけどね。さ、どっちを犠牲にする?このお兄さん?それとも変装しているメンバーさん?』
開いている方の手には、小銃が握られている。
『今すぐにとは言わないよ、そうだなあ・・・明後日の夜明けまで待ってあげるよ。』
「ありがとう!」
復活した少女がグーサインをカメラに映す。
『俺に対する心配ゼロか!』
「そんなわけないじゃないですか、・・・・・・・・・・・・・2%くらいはありますよ。」
『さっきの間はなんだ庚?!』
カメラがまた揺れ、蘇比が画面から消える。
『じゃ、そーゆーことだから。じゃーねー』
通話は、一方的に切られてしまった。
「おい、場所は?」
Rが通話が切れたスマホに話しかけるが、当たり前のことながら返事はない。
「拉致ねえ・・・・。」
考え込む少女。
「あのー」
緋が小さく手を挙げた。
6人の視線が一気に集まる。
「さっきのカメラに写ってた場所なら、多分分かるよ」
「どうやって?!」
鴇が聞く。
「能力で。スマホからの声と同じ声がどこから発せられているかを探せばいいから」
自分の耳を指さす緋。
「それで、場所はわかったのかい?」
静かに頷く。
「丁度、ここの15000m上空。」
作者コメ:長い!!!!!
備考程度にメンバー全員。
少女、庚、R、蘇比、瑠璃、浅葱、鴇、朱殷
今のところ8人!!
- Re: フリーバトラーズ ( No.13 )
- 日時: 2017/01/26 18:09
- 名前: MESHI (ID: 7aCRDkL4)
「私がいる・・・いた組織には、さらに上の組織がいて、その組織の本拠地は地上には存在しないんだ。」
栗色の髪がサラリと揺れる。
「上、つまり上空。物凄く大きな飛行船みたいなやつ。」
「あ、もしかして、あれ?衛星にちょくちょくうつってる物凄いでかいやつ!」
鴇が目を輝かせる。
「そう、全長約20㎞。誰が操縦してるのかわからないけど・・・。」
「どうやって浮かせているんだろうね。」
さあ、と首をかしげる。
「そこに、蘇比くんがいると?」
緋は今度は力強くうなずいた。
「間違いないよ。」
ふう、と一息つく一同。
「さて・・・帰ろうか。」
ノソノソと立ち上がっていくメンバー。
「えっ?えっ?!助けに行かないの?!」
そう声を上げた緋は、やれやれといった表情の6人を見回した。
「だって、居場所が分かったなら捜索する必要もないし?」
と浅葱。
「場所さえわかれば何とかなるし」
と鴇。
「眠いし・・・」
と庚。
緋は心の中で蘇比に同情してそっと涙を押さえた。
しばらく真剣な顔で考える6人。
「まあ、うん。救出は早ければ早い方がいいけどね?」
Rが貧乏ゆすりを始めた。
「今からですか?もう夜ですよ?」
「そうだよ、良い子はおやすみの時間だよ」
庚と浅葱がわざとらしく欠伸をした。
「いや、そーゆー問題じゃなくて!ね?!一応仲間なんだよね?!」
バンバンと床を叩いて訴える緋。
「・・・よし、分かった。」
緋は少女の言葉を聞いてパッと顔を上げた。
「あみだくじで決めよう、緋くんが当たりくじを引いたら、私たちは蘇比くんの救出に向かうよ。」
◇ ◇ ◇
「・・・まさか本当に当たりくじを引いてしまうなんて・・・末恐ろしい子だよ全く・・・。」
夜道を歩く7人。
「そういえば、誰かキッチンの電気消してくれましたか?」
皆、一斉に足を止めた。
「俺消してない」
「俺も」
「私も」
「鴇もー」
「わたしも知らないね」
「知るか」
次の瞬間、フッと庚の姿が消えた。
「あ、ちょっと庚君?!」
少女が引き留めようとしたが、もうすでに庚は狭い路地裏に飛び込んで住宅の壁を駆け上っているところだった。
3分後。
「消えてませんでしたよ。」
「やっぱり。」
はあ、とため息をついて再び歩き始める。
「ここらでいいんじゃね?」
「そうだねー」
何の光もない路地の一角。
「何するの?」
緋が尋ねる。
「今から蘇比のところに行くんだよ。」
少女が答えた。
「貴女はいい加減靴を履くということを覚えてください」
足元を見ると、裸足でコンクリートの地面に立っていた。
「いつもいつも汚い足で家に入り込んで・・・」
「私は汚れない体質なんだよ」
「そんなわけないでしょ」
胸を張る少女を軽く睨む庚。
少女は下手な口笛を吹きながら目を逸らした。
「行くよーほらーーー」
鴇が2人を手招きする。
暗闇に輪になって鴇の手に触れる6人。完全に不審者である。
「目、瞑っててね」
最後に鴇の声が聞こえた。
7人はエレベーターが止まる時のような感覚に見舞われる。
鴇の能力、瞬間移動。
自分が触れている物全てを一瞬にして移動させる。
しかし、この能力も万能ではない。
いくつかの条件が必要になるのだ。
光が当たらない場所であること、移動先に移動前に触れている物全てが収まるスペースがあること、そして1㎞以上離れていること。
この3つを満たしている場合のみ、鴇の能力は発動する。
ちなみに、誤差は5m。
「ついたよー」
上空特有の違和感。
「ああーーーー俺この飛行機に乗ってる時の耳が詰まった感じ嫌だわーーーー」
Rが自分の耳の穴に指を突っ込む。
「さってと~、あ、なんか扉みたいなのあるよ」
暗闇の中、少女が不用心にドアノブをひねった。
「どうやら・・・早めに来て正解だったようだね」
ドアの向こうに広がっていたのは、皆が想像してたものをはるかに上回っていた。
上を向けば眩いばかりの光、あたりを見渡せば住宅や高層ビル、公園、噴水。
地面は石畳や土で覆われている。
道路に車までは走っていないが、多くの人々が行きかっていた。
「ここって、空だよね?」
瑠璃の呟きは、響くことなく目の前に広がる空間に吸い込まれていった。