ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 泡沫姫—うたかたひめ—
- 日時: 2008/11/09 16:32
- 名前: ころな (ID: Mgo.shQL)
ダーク初進出ですっ!!
めっちゃ不安なんで、応援よろしくお願いしますっ
ここでは、愛と呪いと殺戮が交錯する、どろどろ系をいきたいと思います。
だめな方は、ダッシュで逃げ→
- Re: 泡沫姫—うたかたひめ— ( No.22 )
- 日時: 2008/12/30 19:35
- 名前: ころな (ID: Z807Ua8T)
続き。。。
「帰りが遅くなってしまい、申し訳ございません、叔
父様」
「おおアル、帰ったか。さ、早く着替えて来なさい。
皆さんお待ちかねだ」
外はすっかり暗くなっていた。冬の夜がおとずれるの
は早い。
「わたくしも支度をしてきますわ」
「早くするのですよ、ベクシェ」
この男の子は、どうやら使用人ではないようだ。もし
かしたら、この男の子に対する自分の今までの態度
は、少し失礼だったかもしれない。晩餐の間に集
まっている方達の中に、見かけない人がいた。丸い眼
鏡をかけた細身の男性だ。階段を登りながら、そちら
を伺っていると、それに気づいたルシエーヌに、急か
されてしまった。
晩餐は厳粛な空気で始まった。だがジャヌーは、話好
きのようで、終始ジャヌーの一人笑いがグラスの水を
響かせた。それに半ばあきれるようにして答えるルシ
エーヌとバルト。話の聞き役は、いつもこの二人なの
だとか。フォークとナイフの使い方がまだ心もとない
マリーは、夢中で食事中だ。何度かベクシェが自分の
屋敷のほうで見かけたことのある、モアーネ(ジャ
ヌーの妻)は、夫の話に耳も貸さずにせっせと、ディ
ナーを口に運ぶ。
「そうだそうだ、まだこの二人をベクシェに紹介して
いなかったな」
自分の話にキリがついたのか、ジャヌーは持っていた
グラスを置いた。
「こっちが、私の弟の息子のラドッセだ」
「・・・よろしく」
バルトは、すかさずベクシェに付け加えた。
「ベクシェ、私の兄だ。つまり、お前の叔父にあ
たる」
「まぁ、叔父様だったのですね。どうぞよろしく」
ラドッセは、笑顔を見せないが、ジャヌーはにっこり
とうなずいていた。だが、もう一人を紹介する時に
は、少し空気が変わった。笑顔はそのままなのだが、
何度もバルトやルシエーヌの顔を伺っているようだ。
「で、えー、こっちがだな、そのー、・・・」
「アルデローニと申します」
アルデローニは、はきはきとしていた。
バルトが、バツが悪そうに話した。
「ベクシェ、アルは、アルは・・・、ジャヌー叔父様
の弟子・・、いや、孫・・・みたいなものだ。ああ、
ハハっ」
「弟子?・・ですか」
ジャヌーが続ける。
「あ、ああ。私はな、一科学者でもあるんだよ。それ
で、彼にはいろいろと教えているんだ」
「叔父様には本当にお世話になっております」
「そうだったの。あ、だから土壌の成
分・・・、とか行ってらしたのね」
ベクシェはそれでもう納得した。仲良くできたらいい
な、と思った。
その様子を見るルシエーヌの瞳は陰っていく。
嘘のあぶくは、儚いから美しい
- Re: 泡沫姫—うたかたひめ— ( No.23 )
- 日時: 2009/01/20 19:23
- 名前: ころな (ID: aicm.51Q)
この屋敷は、結構な重量感を感じさせるが、そんなに
年数は経っていないようだ。階段も、ドアも、古い家
屋の面影を見せない。
それにしても、とベクシェは思う。そこらじゅうに絵
画が飾られてある。しかも肖像画ばかり。美しい壁が
見えなくなってしまうほど、ぎっしりと掛けてある。
それも、見目のいい子供や女性の絵ではない。みな、
しかめ面した老紳士ばかり。そんなに古い人そうでは
ないので、政治家や科学者といったところだろうか。
ベクシェのベッドルームは、二階の東側の部屋だとモ
アーネが案内した。しかし、こんな薄気味悪い廊下で
は、夜中トイレに行きたいときに困ってしまう。
だが、もう自分は13歳で、こんなことで怖がってい
ては夜会は遠いと自分に言い聞かせる。
成長したのだ。
- Re: 泡沫姫—うたかたひめ— ( No.24 )
- 日時: 2009/01/22 13:47
- 名前: ころな (ID: aicm.51Q)
「さあ、準備はできましたね」
これから、それぞれの馬に乗って、近くの湖を目指
す。馬は、ジャヌーの厩舎から借りてきたものだ。ベ
クシェはひとりで、マリーはルシエーヌと一緒に乗っ
た。バルトは、ラドッセ(バルトの兄)と話があると、
ピクニックに参加しなかった。これではレディーだけ
になってしまうので危ないという、ジャヌーさんのは
からいで、
「それでは行きましょう!」
この男、アルデローニが付いてきたのだ。
あまり外にでないベクシェにとって、アルは数少ない
友達になるかもしれないのだ。聞くと、やはり歳もそ
んなに変わらないとか。気が合いそう。
アルは、くねくねとした野道を軽快に進んでゆく。普
段、レッスン場でしか馬を歩かせたことがなかったベ
クシェにとって、難解な道のりだった。操縦がなかな
か上手くいかず、イライラしてくる。
「こらっ!そっちじゃないってばっ。ほらっ、戻りなさいよ!」
だんだん手つきも荒々しくなってきた。馬は、人の微
妙な感情の変化も感じ取る。ベクシェのイライラが通
じてしまったのか、あるいは普段と違う乗り手だから
なのか、落ち着きがなくなって、ベクシェの言うこと
を聞かなくなってきた。まるで、初心者のようなこの
状態に、自分自身が恥ずかしくなってくる。一番後ろ
を歩いていたベクシェは、心細くなってきた。だんだ
んみんなが遠ざかってゆく。目に、涙が・・・。
もうずっとここに立ち尽くしてしまおうかとあきらめ
ていた時、駆け足調の蹄の音が近づいてくるのがわか
った。アルだ。
「大丈夫かい、ベクシエーラ。蹄の音が少ないと思っ
て戻ってきたんだ」
「あ、馬が・・・」
「ああ、言うことを聞かないんだね。そらっ、動け!
今の主人はベクシエーラ様だぞ!」
アルはベクシェの馬に2,3発鞭を入れ、ようやく動
くようになった。
「ありがとう、アル」
「いや、慣れるまで時間がかかるのはみんな同じさ」
「それと、私のことはベクシェと呼んで。みんなそう
呼ぶわ」
「わかった。行こう、ベクシェ」
ベクシェはアルの馬に続いた。
あのまま、気づかれないでいたら、ほんとにずっとあ
そこに居続けたかもしれない。アルには、感謝しなけ
れば。
でも、その反面、悔しい気持も隠しきれない。蹄の音
を聞いた時、アルだということがわかった。助かっ
た、と思った反面、来ないでほしい、と一瞬強く願っ
たことを忘れられない。こんなかっこ悪いところを、
昨日今日知り合ったばかりの人に見られたくないとい
うプライドがそうさせたのかもしれない。いままで、
こんな感情を抱いたことはなかった。今回のこれで、
自分がプライドの高い人間なのだということを認識し
なければならなかった。
自然と、手綱を握る手に力がこもっていた。
それさえも、馬は感じ取っていたのかもしれない。
湖は、まだ遠い
- Re: 泡沫姫—うたかたひめ— ( No.25 )
- 日時: 2009/02/15 16:13
- 名前: ころな (ID: aicm.51Q)
ぎゃーひさしぶりだぁぁ!!
よっかた;消されてなかった(笑)
では、続き!!!
それからまた何時間か馬上の旅路が続いた。わりと朝
早くに出たので、朝の霧で少し視界が悪く、朝露がし
っとりとする程度だったが、だんだん木漏れ日の強さ
が増し、軽く汗ばむ程になってきた。まだ夏の暑さを
十分思い出せるくらいしか、秋は深まっていないの
だ。昼食前にお腹を空かせるためにもいい運動になっ
た。
馬が踏みしめてゆく土の種類も少しずつ変わってき、
動植物も豊かになってきた。
「さあ、もうすぐそこですよ」
アルが言うのが早かったか遅かったか、なんともいえ
ない深碧の湖面が、秋風が吹くと同時に姿を見せた。
「まぁ・・・。いままでうっそうと茂る樹ばかりだっ
たのに」
「ここの土地一帯がまだ開けてなかったとき、ある旅
人がこの森をさまよって、水もなく死にかけていたと
ころ、突然目の前に湖が現れてその旅人が助かったと
いう言い伝えがあります。それがこの湖です。こんな
に大きいのに遠くからでは全く分からないので、神出
鬼没、まさに神の水瓶と呼ばれていたそうですよ」
「ほんとだわ。突然現れたもの」
「ジャヌー叔父様は随分とあなたにいろいろなことを
教えて下さるようね」
「あ。へへ、そうですね」
ルシエーヌには、全てジャヌーのうけうりだというこ
とがバレているようだ。ルシエーヌはにっこりと言
う。アルは肩を窄めて恥ずかしそうに笑った。
ぎゃー時間が!! ではまた次回!!!
サーセン!!;
- Re: 泡沫姫—うたかたひめ— ( No.26 )
- 日時: 2009/02/18 12:28
- 名前: ころな (ID: aicm.51Q)
バスケットの中にはいている、色鮮やかなランチと、
水を豊富に含んだ芝のあおが対象的で、心躍らせるも
のがあった。
十分な睡眠をとったマリーは食い気に勝てず、飛び跳
ねるようにシートの上に座り、おいしそうにサンドウ
ィッチを頬張る。
「マリー、急いで食べてははしたないですよ」
「まぁいいではないですか、ミセス。マナーハウスで
もありませんし、今日はどうかリラックスして楽しん
でください」
そう言うが、ルシエーヌはあまりよく思わないよだ。
アルはルシエーヌを、あえて“ミセス”と呼ぶ。彼の
ルシエーヌに対する遠慮や虞がそうさせるのかもしれ
ない。そしてルシエーヌ自身も、自分をそう呼ぶアル
の内心は分かっているつもりだ。お互いにはどうやっ
ても埋められない溝がある。二人はねじれの位置にあ
るようにたがいを避けてきた。これからも、必然的に
そうなるだろう。なぜこのような関係になってしまっ
たのか。その答えは、言い合って確かめるまでもなく
分かり切っていることだった。
「なんて綺麗なのかしら!マリーもそう思うでしょ
う?」
マリーはくりくりとした瞳をいっぱいに開かせて、小
さな頬で満面にほほ笑んだ。
ランチが済んだら、ここから10分ほど行ったところ
にある入江に船舶中の装飾船へ向かう。
アルは、懐中時計をパチンと鳴らした。
湖面の魚は音もなく跳ねた。
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