ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

泡沫姫—うたかたひめ—
日時: 2008/11/09 16:32
名前: ころな (ID: Mgo.shQL)

ダーク初進出ですっ!!

めっちゃ不安なんで、応援よろしくお願いしますっ


ここでは、愛と呪いと殺戮が交錯する、どろどろ系をいきたいと思います。


だめな方は、ダッシュで逃げ→

Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11



Re: 泡沫姫—うたかたひめ— ( No.12 )
日時: 2008/11/15 14:37
名前: ころな (ID: Z807Ua8T)

to つかさ さん

また来ていただいてありがとうです^^ノ

Re: 泡沫姫—うたかたひめ— ( No.13 )
日時: 2008/11/15 15:50
名前: ころな (ID: Z807Ua8T)

場面変わるよ〜。

———————————

オギャァ、オギャァ・・・



ベクシエーラはひどく不安になった。



マルカトス侯爵夫人・ルシエーヌに、子供ができたのだ。



マルカトスの養女になってから1年半。それはもう至

れりつくせりの毎日だった。

1ランク上のドレス、1ランク上の食事、1ランク上

の教養・・・良い先生を雇う余裕がなくなったから

と、つい最近にやめてしまった乗馬のレッスンも、上

質な馬と共に再開することができた。

それに、一番ベクシエーラが嬉しかったのは、マルカ

トス夫妻が、本当に自分の娘のように可愛がったこと

だ。


「バルト様、ルシエーヌ様、あの、わたし・・・」

「ごめんなさいねベクシェ、つらかったでしょう
っ?」

ルシエーヌのその言葉と当時に、ベクシエーラは細い

腕で強く抱きしめられた。【ベクシェ】というのは、

いわゆるあだ名で、母以外の人間にはたいていこの名

前で呼ばれている。

「メアリーは最後まで悩んでいたよ。ベクシェを養女

に出すことを。だがこれも仕方がなかったのだ。家の

資金ではもう、ベクシェを立派なレディに育てること

ができないんだ。だから彼女は、やむを得ず養女に出

した」

「そ、そうだったのですか・・・?」

「ああそうさ。君のことを思っての判断なのだよ。分

かるね。さみしいかい?大丈夫。心配しなくていい。

もうベクシェはマルカトスの人間となったのだ。大き

くなれば、いつでもメアリーを迎えに行けるじゃない

か。それまで、私たちが守ってやるさ」

まるで町にいる青年のような言葉をかけると、優しく

頬を撫で、ゆっくりとその頬にキスをした。




ベクシエーラは、これほどに母以外の人間の愛情に触

れたことはないと感じた。それと同時に少しずつ、涙

で凍えた心を、溶かしていったのだ。


やっと、この家での生活に慣れ、気負いなくすごして

いけるようになった頃。




赤ん坊の泣き声が、侯爵邸に響きわたった。

Re: 泡沫姫—うたかたひめ— ( No.14 )
日時: 2008/11/16 14:26
名前: ころな (ID: Z807Ua8T)

「ルシエーヌ様っ、おめでとうございます!可愛らし

い女の子でございますよっ!」

「まぁ、私の・・・、赤ちゃん・・・だわ」

「お、お母様ぁ・・・?」

ベクシエーラは寝室に入ろうかと迷っていた。

「おいでベクシェ。見てごらん、あなたの妹ですよ。

今日からベクシェも姉様となるわね」

それはルシエーヌの腕に包まれるようにして眠ってい

た。小さくて、可愛くて自分も抱いてみたいと思っ

た。

「妹・・・」

それは、この家に来て、一番の贈り物だった。だ

が、ベクシェの心には、わだかまりがしつこく纏わり

ついて、どうしてもぬぐい去ることができない。



もともとベクシェをここに連れてきたのは、子のいな

いルシエーヌを思ってのことだ。ルシエーヌに子がで

きた今、自分はのけ者になってしまうという恐怖があ

った。小さい頃からベクシェと仲がよく、とても可愛

がられていたので、それだけ家に馴染むのも、時間が

かかることではなかった。それだけに、【娘】として

の居場所を、まだ見つけられずにいたのだ。そんなベ

クシェに比べてこの赤ん坊は、生まれながらにして

【娘】の立場を持ち、それ相応の役目を与えられる。

つまり、一人でひょいと入ってきた者は、【自分】の

存在を確かなものにしない限り、いつか追い出されて

しまうかもしれないのだ。

Re: 泡沫姫—うたかたひめ— ( No.15 )
日時: 2008/11/22 14:00
名前: ころな (ID: Z807Ua8T)

「ご主人様、お子様が、お生まれになられました」

「そうか。性は?」

「女の子でございます」

「女か・・・。まぁ、アルデローニがいる手前、

期待はしていなかったんだが。やはり」

「ご主人様——」

本音のところ、男児が欲しかった。前妻の息子は、兄

に任せてあるから心配はないだろう。しかし、気がか

りはベクシェだ。新しい娘に手を取られて、居場所を

なくしてしまうのではないか。だいぶ、この家に慣れ

てきたというのに、なぜ今産ませるのだ——。


実際、ベクシェを一番溺愛していたのは自分の方だっ

た。18で産ませたの息子は、叔父に預けた。そ

う、私はつい何年か前に成人を迎えたばかりの、青年

侯爵。今この家にいる者の中で、一番付き合いが長い

のは、小さい頃から可愛がってきたベクシェただ一人

ということになる。執事も、メイドも、料理人も、庭

師も、成人になったころに新しく雇った。妻も、

貴族として恥じない家柄の女を迎え入れた。


ベクシェは、ベクシェだけは・・・!

「・・ま?ご主人様?」

若き侯爵は、窓を見つめたまま反応しなかったよう

だ。声をかけられていることに気づくと、椅子に掛け

直して軽く咳払いをした。

「あの、お嬢様の命名は、どうされましょう」

「名前か・・・。よし、マリアーヌ・・・とつけるこ

とにするか」

「も、もうお決まりになられてしまうのですかっ?」

「そうだ。この名前は不満か?」

「いえっ、とんでもございませんっ!ルシエーヌ様

にお伝え申してまいりますっ!」

逃げるように部屋を出た行った







顔を見ることなく決めた娘の名は、決して侯爵の胸に

響くことはなかった。

Re: 泡沫姫—うたかたひめ— ( No.16 )
日時: 2008/12/06 15:50
名前: ころな (ID: Z807Ua8T)

「港から吹いてくる潮風も、だんだん冷たくなってま

いりましたねぇ」

「そうね。そろそろシーズン(社交期)に向けていろい

ろ準備しないと・・・。新しいドレスも揃えなくて

は」

乳母は、ルシエーヌにとって心の休まる人物なのであ

ろう。外の様子を窓越しからうかがう乳母の隣で、ア

ールグレイ(紅茶の一種)を口に注ぐ。

「お母様っ!」

「おや、ベクシェ、マリー」

ベクシェが3歳になったばかりのマリー(マリアーヌ)

を連れて入ってきた。マリーは精一杯腕をのばして、

ベクシェと手をつないでいる。10歳も年が違うのだ

から、身長差もかなりのものだ。

「今日は、町へお出かけになられると聞きましたわ。

ぜひ私も連れて行って下さい!」

「そうですね、久しぶりですから。あ、そうだわ、ベ

クシェ。あなたもそろそろパーティーに出てみてはど

うかしら」

それを聞いた瞬間、ベクシェは今にも踊りだしそうな

ほど喜んだ。おもわず、マリーを握っていた手に力が

入りすぎてしまって、マリーがびっくりしてしまった

程だ。

「出ても・・・、よろしいのですかっ!?」

「ええ!ベクシェももう13歳よ。パーティーに出

て、人付き合いも上手くなるといいわ。とっておきの

ドレスを買いましょうね」

「嬉しい!ありがとう、お母様っ!」

パーティーに出て、社交界に入るということは、大人

へ一歩近ずくことであり、これくらいの歳の子ならば

誰でも憧れ、待ち望んだ。

ベクシェのあまりの喜びぶりを、下方から眺めていた

マリーは、自分だけ喜んでいないこの状況にぐずりだ

した。

「お姉しゃま、マリーもパーてィーしたぁいっ!」

「そうねぇ、マリーもベクシェ姉様ぐらいになったら

出られますよ」

「いーやぁっ、パーてィー!!」

お構いなしにぐずるマリーを見かねて、母はある案を

出した。

「ではマリー、来週に大叔父様の別荘を訪ねるので、

湖のほとりでピクニックをしましょう。マリーには特

別に、湖に浮かぶ装飾船にのせてあげますからね」

「ほんとに?マリーだけ?・・・・じゃぁ、パーてィ

ー行かなぁい」

パーティーがあるのは、ピクニックの次の週あたり。

もちろんベクシェも行く。








湖のほとりでの出会いも、彼女の人生の歯車を作る車輪にしかすぎない。


Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11



この掲示板は過去ログ化されています。