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包帯戦争
日時: 2009/11/29 14:11
名前: 朝崎疾風 (ID: VZEtILIi)

またまた消えた。どんだけですか。
えー読む際の注意事項を、ちょっと書きます。
グロイです。グロいんで、そこの所をわかってください。お願いします。

■登場人物■

祝詞ノリト
駄菓子屋で厄介になっている。ヒナトとは昔の事件で関わっていた。その被害者。ヒナトに告白されてから付き合う事に。

茅野ヒナト(カヤノヒナト)
人体改造を趣味とするゴスロリ少女。金属バッドを愛用している。祝詞を「少年」と呼ぶ。過去の事件で殺人者となった。祝詞が好き。

小春コハル
駄菓子屋を切り盛りしているお兄さん。元ヤンだが、根は優しい。祝詞の親戚。

天川ナチ(アマカワナチ)
祝詞曰く「性別判断不可能な子」。ヒナトの従兄弟で彼女を「あねね」と呼ぶ。ヒナトの兄に性的虐待を受けていた。祝詞曰く、「まだ人間性がある」。祝詞は苦手らしい。

曳詰ヤシロ(ヒキヅメヤシロ)
女装した少年。祝詞とは同じ精神科患者だった。祝詞が好きで、彼を殺したいと思っている。チェーンソーをご愛用。歪んだサディスト。

志乃岡美鶴シノオカミツル
祝詞とヒナトの同級生。無口で独り言ばかり言っている。祝詞とは席が隣で彼が好き。

宮古佳苗ミヤコカナエ
好奇心旺盛な警察官。童顔で美人。メジロとは知り合い。

月泡メジロ(ツキアワメジロ)
志乃岡曰く「スーパーヒーロー」。精神科の先生で祝詞とも面識がある。小春が苦手としている人物。

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Re: 包帯戦争 ( No.73 )
日時: 2009/12/02 18:40
名前: 朝倉疾風 (ID: VZEtILIi)

    ここから番外編書いていきます
  

  あ、終わりではないです。
  ただ祝詞くんが歩んできた今までを色々な人の
  目線で書いていきます。
  春瀬編は、ちょい休みます。

Re: 包帯戦争 ( No.74 )
日時: 2009/12/02 19:13
名前: 朝倉疾風 (ID: VZEtILIi)

       <番外編>
    =殺したがり屋の脇役くん=


 僕を好きになってくれたのは、
       あまりにも危険で壊れた人だった。


        
           ※



何回も言うけど、マジでガキは大嫌いの分類に入る。
何なわけ?あの泣き声。豚でもあるまいし。
うぜぇ。がちうぜぇ。
良くて高校生ぐらいがいいよな。幼稚園・小学生はもう生理的に受け付けない。鬱陶しい。
でも、俺が初出勤して1年くらい経った頃、そいつは現れた。

何でも仲良しのじょーちゃんの兄貴に監禁され、心身共にふかーい傷を負ったらしい。
んで、自分の名前の二文字を取って『ちゃん』をつけられると、いかんらしい。
禁句用語。
しっかり覚えておけと小春っちに言われた。
アイツ、あんな不真面目で不良のクセによく義務教育受けたよな。教室で暴れ、高校は行かなかったらしいけど。ご立派ご立派。
んで、そいつと嫌々ながらのご対面。
「…………………………」
俺は正直、その糞ガキが気に入ってしまった。
「あの、何ですか」
何ですかじゃねーよ、阿呆。コイツ何?
監禁されて性的暴行と暴力受けたって聞いたからどんな壊れた奴だと思ってたけど。
普通じゃねーか。
あ、いや。目が死んでるわ。うん。濁ってる。
「おめー、入院しろ。病院で」
「いいですけど……はい、わかりました」
「おう、いい返事だ。糞ガキのクセに」
「…………えっと、先生「先生っつーな。メジロさんでいいわ。俺、基本的に『先生』とか無理」
普段ならガキに名前んも呼ばせねーのに、コイツにだけは呼ぶように言った。

ヒナトっつー奴はマジで気に食わない。嫌いの分類だ。でも、アイツは『大事な子だから』って抜かした。ヒューヒュー。お熱いねぇ、羨ましいわい。
んで、ヒナトの方は入院を三日して終了。
それを言ったら糞ガキは、
「多分、嫌なんだと思います。ヒナちゃん、病院嫌いだから」
いやいや。
病院じゃなくて人間嫌いだろ。あんだけわやにされれば。

カウンセリングは一番めんどいけど、糞ガキの時はさほど気にならなかった。
「んで、ここに絵ぇ書いてー」「何のですか?」「んっと、『自分』を表現してみろー」
真っ白な画用紙に、色鉛筆やらクレヨンやらを渡してみた。
数十分後。
「………………………………………………」
糞ガキの画用紙は真っ白のままだった。
「書けつってんだろ」
「出来ました」
「は?」
「怒られるかも知れないけど、これ、僕なんで」
そう言って画用紙を渡してきた。
へー。
真っ白。つまり「無い」って事か。
「ヒナちゃんに、言われたんです」
聞いてもないけど、糞ガキは口を開いた。
「『祝詞が、いない』って」
「……………………」
「ヒナちゃんにとって、僕はもう『いない』んです。僕は消されたんです。記憶から」
「あいつだけだよ。俺は覚えてるし」
「…………でも、ヒナちゃんの世界は僕なんだって。だから、僕がいなくなったらヒナちゃんはいなくなるんだって」
意味がわからん。
でも、アレだ。
泣きそうな声だけど泣いてないって事だけはわかる。
自分の存在を認められないって事か。

「じゃあ、お前にとって世界は何なわけ」
「イメージで、ですか?」
「そーだよ」
しばらく何かを考える糞ガキ。ホントにキレイな顔だよな。そりゃ男にもモテるわ。ま、気に入られた相手が悪かったけどな。
「濁った、灰色」
灰色……か。
「何でそう思ったわけ?」
「真っ白で何もないけど、汚れてるから」
声が震えている。泣くかと思ったけど、泣かなかった。いや違う。
涙が、出てこねぇんだ。
「汚れ、てるから。……汚い。トイレとかお風呂の時、一番やだ、です。嫌いだ。だって、だって」
「もういい。みなまで言うな」
これ以上は壊れてしまうと思い、止めた。
多分、これからこいつは女とでもしねーんだろうな。
怖くて。
「ヒナちゃん、もです。だから、ヒナちゃ、がナイフ、てじ、自分の、を切ろうとして、そ、そこ、血が出て、変形して、て」
「目閉じろ、何も考えるな。別の、何か別の考えろ」
下半身、グロテスクだったんだろうな。
ヒナトも風呂入って絶叫してたくらいだし。

「…………………先生」「メジロさん」「……メジロさん、苦しいから。苦しいから早くどいてください」
こんの糞ガキ。
人がせっかく心配してハグしてやってんのによお。
そっと離すと、糞ガキは迷惑そうな顔で
「メジロさん、本当に先生ですか」
「お前、大人からかってるだろ」
「いえ、メジロさんは何ていうか……ヤンキーっぽいんで」
コイツ、すげぇ。何で分かったんだよ。
小春とかと同じ匂いすんのかねぇ。
「小春、知ってる?」
「………小春、さんですか?あぁ、知ってます。高校生の人、ですよね。親戚の」
あいつ、高校行ってねーけどね。働いてるけどね。
実家の駄菓子屋で。ププッ。

Re: 包帯戦争 ( No.75 )
日時: 2009/12/03 16:31
名前: 朝倉疾風 (ID: VZEtILIi)

また、厄介なのが来た。
今度は殺したがり屋で女装した少年。
色素の抜けた白い髪で、目は濁ってはいたがイキイキしていた。
「ノリトは?ノリトはどこなわけ〜?」
俺に延々と尋ねてくる。
「ソイツの名前は?」「紅桜ノリト」
どんな洒落た苗字だよ。アイツじゃねーな。全くの別人だ。アイツ一条だし。
「どっかの宇宙で生きてんじゃねーの?」
嘘。死んだよ。
ニュースで見て、印象的な名前で覚えてんだよ。つかコイツだったんだな。
その子供が死んで発狂した奴。
変わり者だよな。ホモではねーんだけど、何ていうか。変態嗜好みてーな。
「ノリトがいーの!ノリトがいないぃぃぃぃっ」
「あーもーうるせぇ。黙れ、只でさえ頭いってーのに。二日酔いだ。あークソ」
真面目に今日仕事休めばよかったー。
ん?あ、いい所にいい奴がいた。んー、子供をからかうのは好きじゃねーな。でも、まいーや。

「祝詞」

曳詰ヤシロがその名前に敏感に反応する。
これで彼の記憶が少し狂ってくれていたらいいんだけど。
「何ですか」
糞ガキがヤシロの髪の毛を見ながら聞いた。やっぱめだつからか。
「調子は、どう「ノリト?」
ヤシロが椅子から立ち上がり、糞ガキに近づく。
小刻みに震えながら、糞ガキの頬にそっと触れた。冷たかったのか、それとも驚いたのか、怯えたのか、糞ガキがびくっと震えた。
「ノリトなのかなぁ…………?」
か細い声で確認する。でも、それは公認してくれという意味もあるのかも。
「う、うん。はい。祝詞です」
ズレた。完璧に、完全に。
「ノリトっ!ノリトノリトノリトノリトノリト!!」
名前を連呼しながら、糞ガキに抱きつく。
案の定、糞ガキは呆然として泣きつくヤシロを見ているだけだが。
まぁ、二人には何も言わずに黙っておこう。
いつバレるのかもわかんねぇしな。
あ、あと。
ヤシロが男だって事も。

Re: 包帯戦争 ( No.76 )
日時: 2009/12/03 17:14
名前: 朝倉疾風 (ID: VZEtILIi)

「だーいーすーきー♪マジで超好きー♪もぉノリト無しでは生きられませーん。僕好きだからぁ」
「そこのバカップル。気持ち悪い。死ね」
糞ガキのカウンセリングなのにヤシロが邪魔でしょうがねぇな、おい。
「死ねとかー、酷いなぁ。ね、ノーリト♪」
「うん」
糞ガキも慣れたんだろうな。そりゃトイレまで一緒だったら鬱陶しさも消えて現実を認識するわな。
「えっと……ヤシロ君もカウンセリングする?」
「ヤシロでいーよぉ♪何『くん』づけしてるのさ。ずーっとヤシロだったのにぃ」
「……そうだね」
おや。糞ガキも話を合わせてきた。徐々に自分の置かれた立場を理解し始めたか。良い事だな。
「ノリトの大切な人って誰かなぁ?」
冗談ぽく、糞ガキに聞いたヤシロの目は爛々だった。糞ガキはしばらく考えて、
「…………ヒナちゃんかな」
まずい。
「………………………ひーなー?」
ネジが外れたような発音でヤシロが首をぐいっと傾ける。そして、
「どーしてどーしてドーしてドーしてどーしてどーしてどーしてどーして何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故」
疑問を連呼し、首をガクガクと上下に揺らす。
ぶらぶらぶらぶらぶらぶらぶら。
「何で、ヒナ?ヒナ?ひよこ?僕が……僕が先に見つけたのにぃぃぃぃっっ!!」
奇声。
糞ガキがぼんやりとヤシロを見ている。
「ヤシ「ギイヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」
暴れだす。
糞ガキの頬に爪を引っかいて、数ミリの傷口から血が少量でてきた。
それでも糞ガキは無表情だ。
ヒナトの発狂の方が恐ろしいんだろうな。
「ヤシロっ、こいつはノリトだからっ」
嘘、ごめん。
本当は違うわけ。
ノリトなんてどこにもいない。
この地球上で、どこでも。

でも、皮肉だよな。
糞ガキは地球上にいるのに存在を認められず、ノリトはいないのに存在を認められるなんて。
「ごめん、ちょっと意地悪してみたかったんだ」
そう言ったのは、糞ガキだった。
だ。
暴れていたヤシロが動きをピタリと止め、じっと糞ガキを見る。
「ヤシロ、が好き。世界で一番、大好き、だよ」
途切れ途切れにそう言い、ゆっくりとヤシロに抱きついた。
「だから、ね、落ち着いて」
「ノリト、ノリト、ノリト、ノリト」
「僕はここにいるから」
ポンポンと、幼児をあやすようにヤシロの背中を軽く叩く。俺の方を見ず、淡々と。
ヤシロが二コツと笑い、そして涙を糞ガキの服に付着させながら、顔を埋めた。
「好き、僕もノリトが世界で一番、好き。だーいすき。もしノリトに近づく人間がいたら、殺す。そいつらぜーんぶ。だって、ノリトがそいつの事好きになっちゃうかもだから。だから、嫌い。嫌いだ。みーんな死ねばいいのに。僕とノリトだけの世界になっちゃえばいいのに」
そして、俺。
俺を見る。
ヤシロの、鋭い目が。
「こっちに来るな」
先ほどの態度とはうってかわり、どこから手に入れたのか、パジャマのポケットからナイフを取り出す。
あー、やばいな。
「死ね。ノリトに近づくな。ノリトは僕と遊ぶの。お前は嫌いだ、死ね。死んじゃえばいい」
糞ガキはぼんやりとどこかを見ている。
ヒナトの事を思い出したのか、悲しげな……あ、いや訂正。全く何の感情も入ってない目だった。



「お宅の子、えらいのに好かれちゃってますが」
「………………………話しかけんな」
ひっでー。
「殺したがり屋に懐かれちゃって。可哀相に」
「………………………黙れ」
本当に好かれてねーのな。
てか、ここ禁煙だから煙草吸うな。未成年だろ、こら。
「お前、糞ガキ養う金あるわけ?」「駄菓子屋ナメんな。いーとこのお坊ちゃんが」
先輩に対しての口の聞き方、んまになってねーな。
高校生だろ、今。
「で、ヤンキーくんが何でまた糞ガキの面倒見るって宣言したわけ?」
「人の子供を糞糞ぬかすな」
「失敬。で、あの少年を引き取る動機は?まだ高校生の糞ガキが」
うっわ、怖。睨まれた。目つき悪ぃなー、もう。俺みたい。
「同情?」
ピクッと眉が動く。
煙草を灰皿に押し付け、さも心外そうに。
「そんなんじゃ、ねーよ」
「じゃあ、何でなわけ?興味ありあり」
糞ガキが糞ガキ養うってどんだけだよ。そういう意味じゃねーけど。
だって、コイツ根はいい奴だけどどー考えても説得力ねぇし。ましてや親戚の子供を食わせて行くって宣言しちゃってぇ。
「そんな、甘くねーよ?」「んだよ、3歳年上だからってえばんな。胸糞悪ぃ」
立派な社会人ですから。

「で、何で?」
興味本位じゃないはずだ。
「…………………………目が、気に入った」
…………………。
「濁ったような、白。灰色、みてーなのが気に入った。そんで、似ていた。俺の、母親に」
従兄弟だからな。
当たり前だ。
「同情じゃねーよ。そんなんでガキ預かる訳ねーだろ。そんな生半可なツラしてねーだろ」
「ごもっともです。でも、奇遇だな」
「何が」
「俺も、アイツの目が気に入った」
うげっと嫌な目をされた。かなしーなぁ。


でも、まぁ。
こいつなら安心だろ。
ヤンキーだけど。


「じゃあ、糞ガキは頼むぜー、小春っち」
「その呼び方、本気でうぜーから」


殺し屋は何て言うだろう。
興味ありありだ。

Re: 包帯戦争 ( No.77 )
日時: 2009/12/03 17:22
名前: 朝倉疾風 (ID: VZEtILIi)

     =セミ、セミ、セミ=


いつからだろう。
     僕が人間嫌いになったのは。
          あの日から?それとも────


          ※



僕が精神科から退院して、小春ちゃん(そう呼べといわれた)のやっている駄菓子屋で居候し始めて、一週間経った。
「ねっみー」「……そうですね」「おい、んで敬語なわけ?水臭い」「年上、だから」
未成年のはずだけど、煙草を平気で吸っている小春ちゃんは、かなり優しい。
「年上、じゃなくて家族だから。そこんところ、注意しとけ」
家族……。
家族って言われてもあんまり実感ないなぁ。お婆ちゃんの葬式の時に二言三言話しただけだし。
その時は、髪の毛は茶色だったはず。
「それ、何で染めてるんですか?」
「金ぴか。すげーだろ♪」
「……髪って、ストレス以外でも染まるんですね」
「けーご直せ。…っと、そりゃ当たり前だろ。つかストレスで色素抜ける方がやべーよ」
ヤシロは、どうなんだろうか。
どーでもいい事が頭を過ぎった。なんて。

「もうそろそろで、学校じゃねぇの?」
「明日から」
敬語使わずに言えた。よかった。
「学校、行かなくてもいーけどな」
「ダメ、だと思うけど」
小春ちゃんは小学校は行ってなかったんだっけ。


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