ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 包帯戦争
- 日時: 2009/11/29 14:11
- 名前: 朝崎疾風 (ID: VZEtILIi)
またまた消えた。どんだけですか。
えー読む際の注意事項を、ちょっと書きます。
グロイです。グロいんで、そこの所をわかってください。お願いします。
■登場人物■
祝詞
駄菓子屋で厄介になっている。ヒナトとは昔の事件で関わっていた。その被害者。ヒナトに告白されてから付き合う事に。
茅野ヒナト(カヤノヒナト)
人体改造を趣味とするゴスロリ少女。金属バッドを愛用している。祝詞を「少年」と呼ぶ。過去の事件で殺人者となった。祝詞が好き。
小春
駄菓子屋を切り盛りしているお兄さん。元ヤンだが、根は優しい。祝詞の親戚。
天川ナチ(アマカワナチ)
祝詞曰く「性別判断不可能な子」。ヒナトの従兄弟で彼女を「あねね」と呼ぶ。ヒナトの兄に性的虐待を受けていた。祝詞曰く、「まだ人間性がある」。祝詞は苦手らしい。
曳詰ヤシロ(ヒキヅメヤシロ)
女装した少年。祝詞とは同じ精神科患者だった。祝詞が好きで、彼を殺したいと思っている。チェーンソーをご愛用。歪んだサディスト。
志乃岡美鶴
祝詞とヒナトの同級生。無口で独り言ばかり言っている。祝詞とは席が隣で彼が好き。
宮古佳苗
好奇心旺盛な警察官。童顔で美人。メジロとは知り合い。
月泡メジロ(ツキアワメジロ)
志乃岡曰く「スーパーヒーロー」。精神科の先生で祝詞とも面識がある。小春が苦手としている人物。
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- Re: 包帯戦争 ( No.43 )
- 日時: 2009/11/24 15:34
- 名前: 朝倉疾風 (ID: VZEtILIi)
※
「むー。おなか空いた」
長い髪をススキのように垂らしながら、ヒナト起床。僕は何の面白みもないバラエティが映し出される画面から、ヒナトに目を移す。
寝起きなのがよくわかる。あくびをしながら、
「ひは、なんひ?」
「えっと、10時」
「ぬ……。ご飯は?」
「7時に終わっちゃったんだ」
ヒナトが無表情で僕を睨む。何で無表情なのに睨んでるってわかったかと言うと、目が数ミリ細くなったから。
「待っててくれなかったのか?」
無茶言わないで。
「彼女、なのに……」
お。おお?
これはまた珍しいものを見ているな。
ヒナトがだんだん感情を表に出しやすくなっている。
今は、照れてるな。
シーツを両手でがっちり掴んで、僕を見ている。
美人だから、結構可愛い。
「今から売店行く?」
「あたし、パン食べたい」
「決まり。んじゃ行くか」
誰の自腹だ〜?僕のか。
小春ちゃんが念のためにって、千円財布に入れてくれた。
片手に財布、もう片手に点滴を持ち、スリッパの歩きづらさに、ヒナトが多少の苛立ちを覚える。
エレベーターで、二階に降りようとしたその時、
「茅野さん、ですよね」
中に入る前に後ろから意外にもヒナトが声をかけられた。
ムッとした表情のヒナトが、振り向かずに露骨に嫌そうな顔をしている。
僕は声の主が気になり、振り返った。
「私、警察の宮古です」
け、け、け、ケーサツ??
唖然としている僕の横で、ヒナトがため息をつく。慌ててその手を見て、バッドを持っていない事を確認し、ようやく安堵の息をつけた。
「少々お時間宜しいかな?」
「死んじゃえ」
短いヒナトの返事。
それでも宮古さんは気にせず微笑んでる。
「あなた、祝詞くんでしょ?」
「……はい」
警戒しながらも、頷く。
「先日の双子連続殺人事件の犯人を撃退した、茅野ヒナトと、少〜し状況説明させてもらいたいの」
……撃退ねぇ。
まぁ、僕なんだけどね。撃退はヒナトだけど。
で、肝心のヒナトさんは僕の左腕をがっちり掴んで、エレベーターの中に引きずり込もうとしています。微妙に違うけど。
「ヒナトが嫌がっているので、お引取りください」
「無理です」
「……………………………」
ヒナトが穴があくまで宮古さんを睨んでる。
修羅場だ〜。
「帰ってください。邪魔。消えて」
「手厳しいですね、ヒナトさん」
「馴れ馴れしく名前、呼ばないで。気持ち悪い」
「私だって仕事の休暇削ってまでガキに会いに来てるんですから、もう少し愛想良くしてくれてもいいじゃないですか♪」
仕事削ってまで来なくてもいいじゃないですか。
突っ込んでみた。
ヒナトが「ガキ」という言葉にキレたのか、
「死んで。あんたに言う事なんて何もない。消えて、消えて、死んで、死んで!」
廊下を歩く患者さんがヒナトを不思議そうな目で見ている。それでも構わず、ヒナトは宮古さんに食って掛かる。
「死んじゃえば?気持ち悪い。反吐が出るッ!あたしと少年に近寄るな!」
「少年……ですか」
宮古さんが僕を見る。
肌が粟立った。
ヒナトが僕を呼ぶ名前に違和感を感じたんだろう。
「わかりました。今日の所は引き上げますね。じゃあ」
宮古さんが深々と礼をして、去っていく。
ヒナトは敵視していたが、僕と目が合うとまた無表情に笑い、
「あたしは、少年が居ればそれでOK」
- Re: 包帯戦争 ( No.44 )
- 日時: 2009/11/24 19:27
- 名前: 朝倉疾風 (ID: VZEtILIi)
記憶が、また回想されていく。
「祝詞がいない、いない……いない何で?何で?」
僕は、ヒナトの記憶から除外された。
「いない、やだっ、消えちゃやだっ!やだっ、やだあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
ヒナトが僕の胸倉を掴み、悲痛に叫ぶ。
僕は無言でヒナトを抱きしめる。
「いつか、必ず帰ってくるよ」
嘘ばっかりだ。
虚像で自分を創る。
ヒナトは錯乱していた。ガタガタ震え、嘔吐してはその黄色い液体を食えと双子に命令される。
僕は臆病で、ヒナトに話しかけられても曖昧な事しか返せなかった。
「いない、いない、いない、いない、死んじゃえ。みんな、死ねっ。あ、あ、あたしは……っ」
監禁されて、三日目だった。
このときはまだ、ヒナトにも恐怖という感情があったはずだ。言葉も喋れた。
僕にしがみつき、消えた「僕」を求めていた。
僕は、それは僕だよと肯定する事もなく、精神が歪んだヒナトをただ怯えた目で見ていた。
足音が聞こえてくるたびに、ヒナトは激しく痙攣を起こし、嘔吐した。
食事の時間が、一番ヒナトにとっても僕にとっても苦痛だった。
人肉を、生か適当に焼いていただく。
ヒナトの母親も抵抗していたが、どこか奥の部屋に連れて行かれて、帰ってきたときには、左手中指の爪がなかった。
「ぎぃやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!」
何度、殺してくれと願っただろう。
ヒナトは最終的に恐怖も、痛みも、焦りも、不安も、何もかもを失くしてしまった。
空っぽ。
だから、殺せたんだ。
「祝詞……っ、祝詞。祝詞がいない…っ、祝詞がいないっ、いないっ、死ね死ねっ!みんな、みんな死ね」
ブツブツと繰り返される罵倒の言葉。
僕はそれを聞きながら、双子じゃなくてヒナトに殺されるのではないかと身震いしたほどだ。
「パン」
そんな彼女は現在、僕の隣で嬉しげにアンパンを指差している。
「アンパンはヒーローなのか?」
子供向け教育テレビの影響だろうな。
「そうだよ、食パンとカレーもだよ」
「焼きそばもだよな」
焼きそば……?あぁ、そんなキャラクターもいたな、確か。よく覚えてるねー。
「ヒナト、今言ったの全部買うの?」
「ううん。アンパンだけ。アンパンは結構好きだから」
へぇ、初耳。
財布から千円札を取り出しながら、ふと病院の廊下を見ると、
「……………………………」
志乃岡がいた。
虚ろな目で母親らしき人と歩いている。
あいつ、ここの病院だったんだ。
殺人現場に居合わせ、後藤に脅されていた志乃岡は、少し前に学校で錯乱し、窓ガラスを割った。
あれから休んでいて学校に来ないなーとは思ってたけど。
向こうも気づいていなかった為、こちらもスルーした。
パンを買い終え、病室に戻る。
「ヒナト、ベッドの上にパンのカス落とさないでね」
「行儀悪くない」
失礼しました。
苦笑いしながら病室へ入ると、
「お帰りなさい」
「…………………」
宮古さんがいた。
ヒナトが驚いた、というよりは嫌な顔をして、持っていたアンパンを僕に押し付ける。
「帰れ」「嫌です」「死ね」「嫌です」
ヒナトがベッドに立てかけてあるバッドを素早く取った。
「それで、私を脅しますか?」「脅しはしない」
ヒナトが冷徹に言い、
「殺す」
ちょっ、おいおいおい。
脅すのもダメだけど、殺しちゃまずいでしょっ!
「ま、いいですよ。いざとなれば、そちらの彼が全力で腹の痛みをこらえてヒナトちゃんを阻止してくれると思いますから」
こいつ……。僕の嫌いなタイプだ。
- Re: 包帯戦争 ( No.45 )
- 日時: 2009/11/25 11:06
- 名前: 朝倉疾風 (ID: VZEtILIi)
見たところ、二十代前半ほどで私服だった。
今流行しているブーツやらダウンジャケットやらを着こなしている。髪の短いが茶髪で、キレイに整った顔立ちは笑っているのか真顔なのかわからない。
宮古さんは僕のベッドでどかんと居座り、僕と威嚇しているヒナトを満足そうに眺めている。
「あの、何の用ですか?」
「祝詞くん、ですよね。何とお呼びしたらいいでしょう」
この人……。そうか、知ってるんだな。
「何とでも」
「じゃあ。××ちゃんで♪」
耳鳴りがした。
鼓膜がグシュグシュと音をたて、破れる。
思わずその場で突っ伏して、嘔吐するところをグッと堪える。
口の中にたまった胃液をごくりと飲み込み、深く息をした。
「それは……かなり嫌ですね」「では、少年で」
こいつ、僕の一番嫌な呼び方をきちんと知ってる。て事は、前にヒナトの糞兄貴達が起こした事件を知っているって事か。
そして、僕の呼び方を聞いたという事は、ヒナトの精神状態も把握しているって意味だよな。
ケンカ売ってんのか。
「ヒナトさん、それ下ろしてください」「気安く呼ぶな。死ね」
「物騒ですね。では、私が死んだらヒナトさんが犯人という事で決まりですね」
ヒナトがそばにあったパイプ椅子を豪快に蹴る。
小さなタンスにぶつかり、椅子は倒れた。
宮古さんは興味もなさそうに可哀相なパイプ椅子を見て、「病院、行ってないみたいですね」静かに、ヒナトではなく僕に尋ねてきた。
「…………メジロ先生に聞いたんですか?」
「否定はしませんねぇ」
聞いたんだ。
「少年と喋るな」
ヒナトが歯軋りをしてバッドを構える。ボールを打つような構えじゃない。人の頭部に思い切り先端を打ち付ける体勢だ。恐ろしや。
「嫉妬、ですか。初々しいねぇ。あ、少年さん」
「何でしょう」
「また来ます」
「来るな」
僕ではなく、ヒナトが言った。
宮古さんは高そうなバッグを持って、ベッドから立ち上がり病室から出て行った。
メジロ先生には後で苦情を言うとして。ここからはヒナトのランチタイムだ。
「ヒナ」
ト……と、ととととととととととと?????
飛んできた。
バッドが。
頭部に激突する。
そのまま、そのまま、壁に背中をぶつけ、蹲る。
「どして?」
ガンガンする。平衡感覚が鈍る。
「どして、あたしの嫌がる事ばかり、するわけ?」
近づいてくる。
バッドを持って。
殺人犯のヒナトちゃんが。
「少年も、祝詞みたいに消えてっちゃヤダよ?」
消えないよ。
人格が崩壊しない限り。
僕は決めたんだ。ヒナトの側にいるって。
「ヒナト、ごめん。わかったから」
「みんな、みんな、死んじゃえばいいのに」
僕が含まれているのか、定かじゃないけど。
時々、世界には僕とヒナトしかいないと感じて、その虚しさに嫌気がさして、自殺したくなる。
そして周囲に人がいると確信すれば、その恐怖に吐き気がする。
人が、怖いのは前からだ。
「どうすればいい?」
「は?」
キミに聞いてみよう。
「どうすれば、祝詞だってわかる?」
少なくとも今は、それだけで充分だ。
「ヒナトにとっての祝詞って、誰?」
答えられないはずだ。
だって、
ヒナトにとっての僕は、いないんだから。
ただの少年として、デリートされている。
リセットはできない。消去なら、可能でしょ。
「……しょう、ねん」
戻ってきた。
ヒナトが。
僕をか細い声で呼び、バッドを落とす。うっ、鼓膜に響く嫌な音だ。
そのまま、床に座り込んでいる僕を、ゆっくりと抱きしめる。
「少年、少年は祝詞みたいだよ。祝詞みたいだよ」
ヒナトがもし、僕が祝詞だと知ったらどうなるんだろう。昔、中学一年生の時にそう言ったら見事に壊れた事があるから、もうしたくない。
ヒナトは涙をごしごし僕いすりつけて、顔を上げる。
「少年は祝詞の生まれ変わり?」「どして?」「みんな、少年の事祝詞って呼ぶ。そのたびに、お前は嫌な顔する」
へぇ。小春ちゃんや宮古さんの話、聞いてたんだ。
偉い偉い。
「みんな、僕の事を祝詞って思ってるんだよ。不思議だね」「弁解しないの?」「しない。人がそう思っていていいのなら、別にいい」
ヒナトみたいにね。
納得したのか、うんうんと頷き、つぶれかけのアンパンをビニールから出す。
そして、今まで見た事のない笑顔で、
「祝詞が現れたら、まずは殺すのだ♪」
- Re: 包帯戦争 ( No.46 )
- 日時: 2009/11/26 13:00
- 名前: 朝倉疾風 (ID: VZEtILIi)
潰れかけのアンパンに被りついた後、ヒナトはベッドにまっしぐら。すぐに寝息を立て始めた。
できれば、学校に行ってもらいたいのだけど。
テレビをつけて、何気なく机の上を見ると名刺があった。
「………宮古佳苗、ね」
宮古さんの名前と、携帯の番号、そして話したいことがあるから今からチャイルドルームに来れないか、と書かれている。
ぬう。ヒナトは寝てるし、まっ、いっか。
名刺をパジャマのポケットに入れ、僕はまた、病室から出る。
「はい、どーも♪少年くんですねっ」
笑顔を最大にして、宮古さんがチャイルドルームのテレビの前に座っている。ガキか、この人。
読書やぬいぐるみやらで遊んでいる入院中の子供が、不思議そうに宮古さんと僕を見ている。
「ま、そんな所に立ってないでどーぞー」
「………どーでもいいけど」
独り言でそう呟き、スリッパを脱いで裸足で上がらせてもらう。
「少年くん。いえ、どう呼びましょう。聞くところによると、愛称でちゃん付けされると過去の光景が蘇り、痙攣し、発作などを起こすと言いますが」
「さっき、それを理解したうえで僕を呼んだんですか」
「はい♪確かめておきました。発作は起きませんでしたけど、胃液が逆流したそうで」
人事だな、おい。ま、人事だけど。
宮古さんがニコッと笑う。童顔な為か、可愛らしい。
「ヒナトの事、知ってるんですね」
「はい。彼女を保護したの、私ですから」
「……………………」
「あぁ、監禁の方じゃないですよ?彼女、中学生のときに夜中一人で、しかも裸足でウロウロしていて。そこを保護したんです。パトロールして正解でした。てか幽霊かと思って超びびったんですけどねぇ〜」
「ヒナトに結構嫌われてるみたいですね」
「あぁ、あったりまえじゃないですか。あの子は人間嫌いだし。それに私が、ヒナトさんが過去の事件の被害者だと知って、精神に異常があると判断して、病院に送ろうと思ったんですよ」
あー、それで。
ヒナトが怒っちゃった訳だ。
参りました、と宮古さんが舌を出す。
「で、その嫌われている警察さんが、今更何の用ですか?」
「……誰が、双子のお兄さんを殺したんでしょうね」
息が一時的に止まった、気がした。宮古さんは、悪戯っ子のような目で僕を真っ直ぐ見つめている。
「………さぁ。僕は知りません」
「あの事件の生存者は、茅野春瀬さん、茅野ヒナトさん、一条祝詞さん。この三人の誰かが、双子のお兄さんを殺さないと、事件は終わらないんです」
鋭く心を突いてくる。
厄介だ。
「誰なんでしょうか」「わかりません。覚えてませんし」「覚えてるんでしょ?本当は」
じりじりと、迫ってくる。顔じゃなくて。
笑顔が怖い。怖いっすよー。
「宮古さんは、それを知ってどうするんですか?」
「逮捕です!……と言いたいんですが、違います。単なる好奇心てやつでして」
好奇心、ねぇ。
「にしても、不思議ですね」「何がですか?」
宮古さんが視線を僕からテレビの画面にずらす。
丁度、お昼のニュースが流れるときだ。
「どうして、“自殺”だと思わないんですか?」
「……………………」
「覚えてないんでしょう?ならどうして双子さんの自殺ではないんですか?と聞いてこないでしょうか」
僕が答える隙を与えない。
「それは、あなたがちゃんと“覚えている”からです。ミート状になった双子の姿を見ているからです。ですよね?」
「………こっちは狂ってたんですよ。向こうもそうでしたけど」
「人は、追い詰められれば何でもできます」
確かに。ヒナトがいい例だ。
「すいませんが、お答えしかねますね」
「やっぱり、少年さんは覚えてるんですねっ!」
「何そんなに嬉しそうなんですか」
「好奇心旺盛だからです!」
……はぁ。
- Re: 包帯戦争 ( No.47 )
- 日時: 2009/11/26 14:51
- 名前: 朝倉疾風 (ID: VZEtILIi)
こんな無邪気でどす黒い腹の持ち主が他にいるだろうか。全く持って理解不能だ。
宮古さんはキラキラと輝いている目で僕を見て、
「好奇心は、時々危険でもありますがね」と付け足した。僕は興味なかったので、スルー。
「ヒナトちゃんが元気そうでよかった〜。ま、用はそれだけです」「本当ですか?」「もち」
嘘だろうなぁ。
ていうか、そろそろヒナトが気になってきた。
お目覚めで僕を探しながら徘徊中なのかも知れないし。ないか。
「そろそろ、いいですか」
「んー。いいですよ。面白い話もいっぱいしましたし」
人の苦労話を面白い話、か。他人事なんだよね、結局は。
「で、結局誰が双子のお兄さんを殺したんですか?」
「ご想像にお任せします」
「ヒナトちゃん、でしょうね」
「どこでそう確信したのか謎ですが」
「うそ臭いですが……目ですね」
目?ほほう。そりゃうそ臭い。目、ねぇ。
「ヒナトちゃんの目は人を殺した目です」
「…………多分、違いますよ」
「んん?」
誤魔化しておいた。僕だって、最良の妻が警察の手で連れて行かれるのは好ましくない、なんて。
確かにヒナトは人を殺したけど、それ以上に動物の殺戮数がハンパなく多い。
「人、じゃないんで」
「…………さようですか」
僕の曖昧な答えにも納得したように、宮古さんが頷く。
「ま、それが人にならないように見張っててくださいねっ♪のり……」
そこまで言って、ハッと気づいたらしく慌てて口を閉じる。
「……少年くんっ」「わかりました。わかってます」
今度こそ宮古さんは本当に帰った。赤い車に乗って、ひゅ〜っと。
僕は病室に帰らなきゃいけない。てかヒナトが本気で心配になってきた。誰か殺してなきゃいいけど。
「ヒナトー」
「……ぬ?少年かぁ」
ヒナトは起きていた。
起きて赤く染まった腕を気持ち悪そうに舐めている。
「……ヒナト。それ、どしたの」
「スパッて切られた。ムカつく。死んじゃえばいいのに」
「誰にされた?」
今更、ヒナトが刺されても驚かない。そっちゅうだ。
でも人から、っていうのは久しぶりだ。
「変な子。だから、夜に殺しに行く」
「やめなさい」
阻止した。
ヒナトは満足できないように流血している傷口を舐める。
「ダメ。あいつ嫌い。殺す」
「それじゃあ、僕と一緒にいられないでしょ」
「……………っ!」
ヒナトランプが点滅中。
気づいたように首を真横にふり、
「ダメっ。少年と離れるのは、いやだ」
でしょー、とは言わないけど、かなり嬉しいかも。なんて。
「嫌だよね。じゃあ殺しはダメです」
「わかった」
「痛くないわけ?それ」
どー見てもパックリなんだけど。
「痛くない」
「病院だし、消毒してもらう?」
「やだ。舐めてればなおるだろ」
この男みたいな喋り方をどうにかしたい。
容姿に合わないから。
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