ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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包帯戦争。
日時: 2009/12/05 08:37
名前: 朝倉疾風 (ID: VZEtILIi)

……ぬーがー。
もうダメだ。消えてしまったぁ……。死亡。
あー、じゃあ続きから。
コピるの大儀なんで、

http://www.kakiko.cc/novel/novel2/index.php?mode=view&no=12380

ここで読んでからどうぞ。

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Re: 包帯戦争。 ( No.27 )
日時: 2009/12/12 10:19
名前: 朝倉疾風 (ID: VZEtILIi)

…相沢ヒロム…


部屋は湿っぽく、家具はベッドと机ぐらいしかないような部屋だった。殺風景だなーこりゃ。
「くせー」「我慢しろ」
にしても、いつあいつら死ぬんだ?死んだら死んだで何も感じないような気がするんだが。
「ヒロム」「あ?」「死体があーるぞ」「……どこに?」「ほれほれ」
イナミが、一つしかない窓の外を指差す。
見ると、その窓のすぐ下に死体が一つ。ホラーかよ。
「あー……あるな」「だしょ?どーするー?」
これ見ても叫ばないか、イナミは。
「どうしたらいいと思う?」
普通なら、一般庶民の義務として警察にお届けするのがいいだろう。
でも、場所が場所だしなぁ。
「あたしはー、死体さんがいても、どーでもいー」
「んじゃ俺もどうでもいいから、そのままにしとくか。死体も、居心地いいからそこにいるみてぇだし」
嘘に決まってんだろー!
「……ヒロム、意外とバカちゃんですか?」
「だあほ。俺はこれでも国立出てんだよ」
自慢です、はい。
死体さんは一応スルーして、イナミが眠たげにベッドに直行。
「俺も寝ようかな」「んー、横に来なさい」
つか、小学生の女と添い寝かよ。前付き合ってた彼女ともした事ねーのに。
「お邪魔します」「変な事したら、殺すからね」
しねーよ。
そんなぺチャパイ、誰が興味あるか。失敬な。

しかし、ねぇ。
この子がどんな大人になるのか、少し興味ある。高校生とかになって、「はらへったー」とか授業中にほざいてるんだろうか。
ははは、少しみてみたい。
……高校、生。
なれるのか?小学生の頃に誘拐されて、連れ回されて、授業も受けずに、高校生に。
昔の監禁事件と違い、俺はイナミに暴行も、性的虐待も加えていない。
しかもイナミは『誘拐』だと確信して付いて来てる。トラウマとかそういうのは残ってないはず、だ。
「なあ、イナミ」
「ほっほーい」
「お前…………ウチに帰るか?」
イナミの顔が、固まった。
「あ え?」「このまま俺とフラフラしてたら、授業も遅れるし、進学もできねーだろ」
俺が、イナミの人生を苦しめているのなら、「帰ろう。家に」イナミを解放してやらなきゃ、

「ヒロくん、ヒロくん、ヒロくん、ヒロくん、ヒロくん、ヒロくんヒロくんヒロくんヒロくんヒロくん」
俺の愛称を初めて連呼する。
しかし、それは不安定なものだった。
「ヒロくん、わわわ、わた、し 私?ヒロくんはここに居て、私はここに、い、いない?いない?」
「イナミ……?」
「ヒロくんヒロくん、ちゃ、ちゃんとここ、に」
「いるから。大丈夫だから」
震えていた。
俺は、何かこの子の心に土足で進入した。
今思えば、単純な事じゃねーかよ。望まれて『誘拐』されるなんて、家が嫌いだからに決まってる。尋常じゃないほど。
そんな事にも気づかずに、能天気に。
「ヒロ……?ホントに、に、にぎいぃぃぃぃぃ」
低くうねり声をあげて、俺の胸元に顔を埋めてくる。
しばらくその状態を固持していた。どれくらいだろう。イナミの震えがおさまるまで。

「ねぇ、ヒロム」
「どうした?」
「私、ヒロムと死ぬまで一緒にいたい」
「…………うん。それでいいのなら、それでいい」
よくは、ないと思うけど。
でも、どす黒い闇につかってるよりは、いい。
「なんか、すげーねみーから……寝るね、もうちょいで……ねる。寝たら、早く明日になるから」
「おやすみ」
イナミの瞼が閉じられる。なげーな、睫毛。ホントに美人になるよ、お前は。
恋愛的に好きには絶対なんねーけど。

Re: 包帯戦争。 ( No.28 )
日時: 2009/12/12 10:20
名前: 朝倉疾風 (ID: VZEtILIi)

ヒナトは、卵嫌いなんです。
だって、『ヒナ』だから、共食いになるんです。
なんてね。
>ラビs

Re: 包帯戦争。 ( No.29 )
日時: 2009/12/12 10:40
名前: 朝倉疾風 (ID: VZEtILIi)

イナミがすぐに夢に堕ちたから、俺は暇になった。
さて、どうしようか。
部屋から出てみる。誰もいなかった。ちょい探検してこよーかな。
物音をあまりたてないように歩く。
あーダメだ、こりゃ。ギシギシいってる。俺が出歩いている事、あの両目のない奴なら気づいてるんじゃねぇのか?
かび臭さに顔をしかめながらも、玄関の方へ。
さっき死体があったから、何年か前にもこの屋敷で集団自殺が行われたんだろうか。いや、それなら死体はゴロゴロ転がってるよな。
個人的に死にたかったから、死んだのか。
まぁ、別にどっちでもいいけど。
ギシギシと遠慮もへったくれもない廊下を歩いて、目に映ったのは、

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」「・・・・・・・・・・・・・・・・あ、どうも。遅れました」
遅刻した生徒みてーにペコリと頭を下げる奴。
どうやら、集まりに遅れた生徒くんらしい。
「皆さん、どーしてますか?」
「各自部屋でおのおのやってます」
「俺の事、待ってましたか?」
「いえ、特には」
正直に言ってみた。そいつが少し苦笑する。
大学生か、高校生。童顔でよくわからん。
「えっと・・・・・・・・・・・・・・どう、し、ますか?」
んで年下なのに敬語使っちゃってんの?俺。
実はけっこー礼儀正しい奴だったりして。わーお。
俺って真面目っこ?
「部屋、開いてますか?」「むちゃくちゃありますけど」「では、勝手に選ばせていただきますね」
勝手にしろやーい。何で俺がおめーの部屋わざわざ選らばんといかんのじゃ。ゴラ。
がらにもなく少しだけイラついた。
何だコイツ。

見るからに『自分はダメ人間っす』的な態度出しやがって。あー、イライラするわ。
髪もご立派に茶色に染めやがってよぉ。俺はどっかのヤンキーかっ!
一人つっこみしてみた。俺って正直者ー。
さて、これで全員揃ったかな。イエーイ。
自殺パーティーするっぺよ!田舎だぜー、いえー。

……ちょーむなしい。

Re: 包帯戦争。 ( No.30 )
日時: 2009/12/13 13:44
名前: 朝倉疾風 (ID: VZEtILIi)

何か面白いものでもないかと、さっき発見した死体の方へ行ってみた。
木がむっちゃ植えてあって、こりゃ駐車場から死体は見えねーだろうな。死斑がポツポツできているそいつを見る。当たり前だけど、反応はなかった。
「ちょい、失礼」
両手を合わせて南無〜と唱え、ちょいっと頭を触ってみた。少しだけパサパサしてる。
性別は……どっちだ?年齢はイナミよりちょい上ぐれーか。ハエがうぜぇ。
自殺か、他殺か。まぁ、他殺だろうな。
今気づいたけど、背中に傷跡があるし。背後からぐさっといかれたんかねぇ。
「犯人はー、誰でございましょうかー」
悲鳴が、聞こえた。
甲高い悲鳴が。
面倒くさいなぁ。イナミが起きたらどうしてくれるんだ。あいつ、すっげー寝起き悪ぃのに。
死体から離れ、屋敷の中に入る。

自分の部屋に戻ろうとしたら、美人中学生が無表情で立っていた。かすかに、手が震えている。
「何なわけ?」
「し、死体が…………ありました」
『あった』とは失礼な。きちんと『いた』って言いなさい。なんて注意する気にもなれず、実際どうでもいい事なのでスルー。
てかさっきの叫び声、コイツだったんだな。意外と感情あるんだ。
部屋の中を覗き込むと、正座していらっしゃった。
ハゲた親父だろうか。こちらもさきほどの死体と同じみたいだ。
「ここ、キミが使う部屋っすか?」
「違います。戸が開いてて、中見たら、座ってて」
あらまぁ。
そりゃリアルなお化け屋敷ですこと。
「あー、俺もまぁ外だけど見たよ。死体」
「本当ですか?」
「ああ。子供だったけど」
「自殺、でしょうか?」
「いやー、あの子は他殺だと思うぜ?背中に傷あったから」
あくまで推定ですが。
っていうかこの子、怖がってんのか冷静なのかわっかんねぇ。
「あ、えーと。あの子は大丈夫なんですか?」
「イナミの事か?大丈夫だろ。寝てるし」
多分だけど。
「なら、戻ってあげてください。私も、戻りますから。これ以上、騒ぎを大きくせず、死ぬ事が大切ですから」
俺は、死ぬ気ねーよ。
誰が死ぬかよ、ボケ。
あ、でももし死んで、棺おけの中で俺に対する悲しみの声とか聞けたら、俺は感動するだろうか。些か興味がある。
でも誘拐犯だからなぁ。
イナミが死んだら…………どうするだろうか。
あいつが死ぬとかマジ考えられねーわ。

中学生と別れて、自分の部屋に戻る。
目をこすりながら、イナミが上半身を起こしていた。
「ねっみー」
じゃあ寝ろよ。
「どこ、行ってたー?」「部屋の外でウロウロしてただけ」「だけー。んーつーか、いつまでここに居るーんかなー」「みんなが死ぬまで」
理解できる?
「ほへー。自殺ー?」
できた。えらいえらい。
「ヒロムも、するのー?自殺〜」「しないよ」「だよねー。ふわー、ねっみーよ」
何度寝たら、気が済むんだろう。
「イナミは、大きくなったら何になりたい?」
「…………ならなくていい」
「は?」
「大きくなんて、ならなくていい」
ピーターパンじゃねぇんだから。そんな事、不可能なんだよ。
子供はなんで、不可能な事を願うんだろうか。
魔法が使いたいとか、空を飛びたいとか、四次元ポケットがほしいとか、勉強なんてしなくていいとか。
「それはー……無理だねぇ」
「わかってるよ」
大人になっていくに連れて、その願いはだんだん薄くなり、現実を見るようになる。
その現実は、とても辛く、過酷なものもあるはずなんだけど。
「そんな事無理だって、わかってる。大きくなる事も、絶対に死んじゃうって事も。ピーターパンになりたい」
あえて、何も言わなかった。
イナミが長い髪を整える。一度触った事があるけど、本当に気持ちよかった。

「でも、イナミが大きくなったら、ヒロムはどっかに行っちゃうんでしょー?」
「そうだね」
元々、俺は容疑者でキミは被害者だから。
捕まるのも、時間の問題かも知れない。
「だから、ネバーランドの時間は、もうすぐでしゅーりょー。イナミは、フツーの大人に戻る」
「そうなんだ」
「そして、あの場所に戻る。吐き気がして、発狂しそうで、気持ち悪くて、べとべとしてて、暗いくらーいあの場所で、イナミはずぅーっと一人ぼっち」
それがどこを指しているのか、今ならわかる。
「俺となら、死ねる?」
「ナメんな」
怒られた。そして腹を蹴られた。いってー。
ホントに、どんな誘拐だよ。不可解すぎて、笑い出しそうになる。
あはははははははははははははははは。
笑おうぜ、思い切り。笑わなきゃ損だぜ。
「まー、死ぬ気はねーけどねー」

Re: 包帯戦争。 ( No.31 )
日時: 2009/12/13 14:05
名前: 朝倉疾風 (ID: VZEtILIi)

…向坂謳歌…


死体を見つけてしまい、ああ、早く死にたいと思う。
セミのようにぐしゃりと、潰されてみたい。
乾いた音、バラバラに散った羽、粉々の胴体。
あの愛くるしい死に方は、きっとセミにしか出来ないだろうから、憎らしい。
姉はいつも、自分は汚いと言って最後くらいはキレイに死んでみたいとぼやいていたけど。
その気持ちはわかる。
部屋に戻って、死体を見ただけで叫んでしまった自分はまだまだだと少し落胆する。
気分が暗い。
暗いまま死ぬのは嫌だ。気分をまぎらわせましょうか。
どこに行けばいいのやら。あー、カラオケで叫びたい。『死にたいでーすっ!!』って。
即アブナイ奴だと思われるだろうけど。
部屋にいても全然面白くないから、ナゴミさんの相手でもしようか。
でも、あの人孤独になりたいって言っていたから、あまりお節介は焼かない方がいいかもね。

適当に廊下をウロウロして、自分が死んだらどうなるか考えてみる。
きっと、両親は何とも思わないだろうなぁ。
親しかった友人も姉が溺死させちゃったし。
視界の隅に人の気配を感じて、目をそちらに移す。
一人の男がいた。
高校生くらいのそいつは、すごく関わりあいたくない雰囲気をかもし出している。
顔は美形だけど、近寄りがたい。
でも、姉が気に入りそうなタイプだ。
向こうがこちらに気づく。
「あ、どうもです」
自殺志願者だろうか。目が死んでいる。光が灯っていない。こっえーオカルトじゃん。
そいつは私を見て、つかガン見して、じっくり顔を見て、
「・・・・・・・・・・・・・へぇ」
ため息のような声を出した。『へぇ』って、何が??
私は、どこか謎のような顔立ちをしてるんだろうか。
「何、してるんですか?」
「あー・・・・・・・・、何か着替えしてるんで」
「? 彼女さんですか?」
「まー、そんな感じです」
愛する人と一緒に・・・・・・・・。美しい死に方ではあるわね。
「あの、どっかでお会いした事、ありました?」
本当に、なんだか懐かしい思いがこみ上げてきたから。そいつは少し、いやかなり驚いた顔をして、
「・・・・・・・・・・いや、会ったことない」
「そうですか。何だか、懐かしいと思ったんで」
「そう」

何だか、不安定な人。
私は、質問をしてみた。
「セミのように死ねるって、どう思う?」
そいつは今度こそ、真面目に驚いた顔をした。食い入るように私を見つめ、目を見開く。
しかし、
でも、
それは全部最初で、
最後にははにかんだ様に、
「個人的価値はそれぞれ違う、だろ?」
まるで、私が昔にそう言ったかのような言い方だった。
そっか。
こいつは、アレか。そうか、そうか。
「バイバイ、向坂さん」
その別れの言葉をどういう意味で言ったのか定かじゃないけど、
だけど、

「一回、あわせてみたかったなぁ」

姉の大切な人だと気づいたから。


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