ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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包帯戦争。
日時: 2009/12/05 08:37
名前: 朝倉疾風 (ID: VZEtILIi)

……ぬーがー。
もうダメだ。消えてしまったぁ……。死亡。
あー、じゃあ続きから。
コピるの大儀なんで、

http://www.kakiko.cc/novel/novel2/index.php?mode=view&no=12380

ここで読んでからどうぞ。

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Re: 包帯戦争。 ( No.17 )
日時: 2009/12/07 16:34
名前: 朝倉疾風 (ID: VZEtILIi)

……向坂謳歌……


セミになりたい。
姉はいつもそう言っていた。
私が8歳の時、あの人は遂に待望の自殺を犯した。まぁ、未遂だったけど。
口を開けば、セミ、セミ、セミ。冬でも、春でも、あの人はセミになってみたいと言っていた。
姉の話を少ししよう。
姉は、一言で言えば『透明』な人だ。
肌も白かったし、髪も明るい色で、何を考えているのかよくわからない人だった。

トキオが死んでから、姉はおかしくなった。
いや、その前からおかしいのかも知れないけど、とにかくおかしい。
苛められていたみたいで、(っていうか知ってたど)、家の中に夜中ウロウロしたり、冷蔵庫の前で丸まって寝ていたり、突然吐いたりしたり。
精神がどうかなっちゃってんのは、わかっている。
トキオを殺したのは姉だなーって、それも私はわかっていた。
本人に確認はしてないけど、多分そうだ。
『キレイに死にたいですね』
家族にも敬語だった姉は、そう言っていた。
自分は汚いと、そう語っていた。

そして12歳のときに勢いよく飛び降りデビューして、そのままお陀仏にはならずに意識不明の重態で植物状態だというわけで。
本当に、死ねない人だと思ったけど。
そして、私もセミになりたい。
別に苛められてるわけじゃない。そこまで知り合いもいないし。
鬱、でもないはずだ。
地味で、少し頭のいいって事だけ。
だから、セミになってみたい。

その民宿に行くと、私は一番ノリだった。
とりあえず、一番大きな部屋で待つ事にした。
しばらくすると、
「誰か、いるの?」
玄関の方で声がした。
「いますよ」
「ごめんだけど、手を引いて?」
妙なお願いだった。不審にそう思って玄関に出てみると、彼女がいた。
両目のない、彼女が。
「ごめんなさい、手を引いて?」
「はい」
特に驚く事もなく、差し伸べられた細い腕を掴む。冷たい体温だった。姉のような。
「名前は?」
「えっと、謳歌です」
「オウカちゃん……か。私、ナゴミ。年は、謳歌ちゃんの方が下かな」
「中学生です」
「んじゃ、私高校生でっすねー」
高校生にしては、小さいと思ったけど。

Re: 包帯戦争。 ( No.18 )
日時: 2009/12/08 17:32
名前: 朝倉疾風 (ID: VZEtILIi)

両目のないナゴミという人は私のすぐ横に座った。
「私、今日知り合いに誘われてきたんだよ。自殺サイトで調べて。なんか同類?みたいな」
「私はサイトを見つけたので」
一応敬語で話した。ナゴミは空洞になった目をこちらに向ける。正直、気味悪い。
ピンク色に塗った爪を弄りながら、
「何かワクワクしてきたな。これから死ねる。ラッキー」「失礼ですが、何で死のうと思ったんですか?」
少々不謹慎だったか。
「んー、悪い事いっぱいしちゃったから」
悪いこと……想像はつかないけど。
「逆に謳歌ちゃんは?」「セミになりたいからです」
はぁ?という顔をして、それから、
「あははっ、変な子だねー」
笑われてしまった。
自覚してる。変な子だって。姉もそうだったから。

「前世、セミだったのかもよ?来世、セミがいーわけ?」「いや、そーゆー意味じゃないです」
セミになって、姉みたいな人間にぐしゃりと潰されてみたいから。あっけない命の中で、痛みを感じる前に死んでみたい。
「ただ、早く死にたいなーって」「そっか」
てか、この人本当に自殺したいんだろうか。天然爛漫で、全然そういう風には思わないけど。
「どこに住んでるの?」
突然、そう聞かれた。言ってもどうせ死ぬのだから、別にどーでもいいと教えた。
「ここから少し離れてるんだねぇ」「小さい頃、転勤があったんです」
本当は、姉のせいなわけだけど。
納得してくれたらしく、ナゴミが頷く。
「悲しいよねぇ、友との別れ!」
そこまで親しい友人は全く居なかったけど。

「うぬ?誰か来たんじゃないか?」
玄関から、かすかに音が聞こえた。
「もうそろそろ集合の時間ですから」「なーるー」
さぁ、誰が来たんだろう。

Re: 包帯戦争。 ( No.19 )
日時: 2009/12/09 16:01
名前: 朝倉疾風 (ID: VZEtILIi)

…相沢ヒロム…


俺には双子の妹がいた。
いた、って言うくれーだから、過去形だ。
数ヶ月前の春に起こった、双子ばかりを狙う連続殺人事件の標的となって、殺された。まだ高校生だった。
犯人は地元の高校生らしい。
人の妹を散々玩具にしてよくもまぁ鑑別所に逃げ込んだもんだ。
悲しくは、なかった。
昔から俺は「人情」っつーもんが無いらしく、飼い犬が死んでも、友人が事故に遭っても、はたまた母親が男を見つけて簡単に俺らを捨てても全く悲しくなかった。
どうしたら、悲しくなれるのか。
社会人になってもまだまだそれが全然わからず、ひらめいた。
自分の大切な人が悲しんだら、俺も悲しくなるんじゃないかって。
名案だって思ったよ、俺は。

んで、俺に超優しくしてれる、会社の上司の子供を誘拐した。
名前は『イナミ』らしい。
まだ顔に幼さが残る小学生で、公園で遊んでいるところを車に乗せて、誘拐した……んだよなぁ。
「ぬぬっ、とーさまが死んだのー?」
「病院行くぞ」
「むー。ねみー、まー行ってやってもいーけどぉ」
「……そーっすか」
「つかー、ゆーかいだよねーこれー」
「……………………」
「いーよー、ゆーかいされてもー」
誘拐だと承諾し、何をされるかもわからないままイナミは簡単に俺の車に乗った。
いーわけ?俺。
何かコイツ嘘だけど父親が死んだって言っても何の反応もなかったぞ。

そして、今。
誘拐されて一週間したイナミは俺の隣で呑気にあくびをしている。
サイトで見つけた『自殺志願者』の集まり。
特に自殺する予定は無いが、どういう奴らがどういう終わり方をするのか、興味があった。
それを見れば俺の気持ちもちょっとはしょげるかなーっと思い、只今バスでユラユラ中。
「ねみーよー。ちょーねみー」
さっきからコレしか言ってない。俺はとことん無視する。
しっかし山ばっか。俺は田舎じゃなくてもうちょい中心区域に住んでるから、まぁ近くにゲーセンとかはあるけど、へぇ。ここらってこんな風になってんだな。
山までは言ったことねーわ。
バス停でバスが一旦止まり、二人の男女が入ってきた。
どちらも美形で、特に女の方は人形みてーな髪の色をしてる。染めた、にしては黒色が見あたらねぇ。
白髪っつーか、少しだけ青っぽい。服もなんか人形みてーだし。
男の方はなー。ま、格好いいんじゃないんですか。あーゆーの見てると傷つけたくなる。あーあー。
なんか女にも男にもモテそうな奴だ。あ、恋愛的な意味で。

二人は俺らの前に座った。
カーテンの事でなんか話してる。
「まじねっみー」
あぁ、また始まった。ホントにこの子は五月蝿い。誘拐しなきゃよかった。
しばらく猫みてーに、ねみーねみーと言いながら、でも何故が寝れないイナミは足をバタバタさせて明らかに前に座っている男には不快であろう睡眠妨害を成し遂げた。
しばらくはイナミの独り言とか色々聞きながら、ゆられる事10分。
やーっとバスは目的地でもあり、終点でもある和風の屋敷に到着した。
あの男と女も降りるっつー事は、あいつらも自殺志願者なんだろうか。
……違いそう。トランク持って旅行気分だし。
「ヒナト、何それ」
「ここ、自殺する人が集まる場所なんだって」
「……ヒナ、自殺するの?」
「しねーし」
「何でここ来たわけ」
「タダだからっ!」
こいつらの会話を聞いてわかったのは、女が『ヒナト』という名前と、とんでもないバカだってゆー事。
「うぬ。カップルとはいえ礼儀は守れ」
やっぱカップルだったんだな。お似合いだ。
「入るっぺー」
イナミが思い切り戸を開く。
そして、

「およっ」
「あら」
一人の女が立っていた。年齢は中学生くらい。髪が長い。真っ黒。
「えっと……サイトの、方々ですか?」
「ああ」
短く返事をしてみる。相手は少しだけホッとしたような安堵の表情を浮かべた。
後ろからちっこいイナミが、
「ねみーからさー、布団敷いてもいーかー?」
「いいと思います」
「ならよーし。はいろーぜー」
トタタという効果音が似合いそうな仕草で靴を脱ぐ。
俺も無言で靴を脱いだ。
「僕らはどうする?」「部屋に行く。誰とも話さない。あたしちょい疲れたから、部屋適当に」「じゃあ、そうしますか。あのー」
後ろで結論が落ち着いたのか、男が声をかけてくる。
「僕ら部屋行くので、自殺したいなら、ご勝手にと言ってくれませんか?」
「あー……いーよ」
「では、サヨウナラ」
どーゆー意味だ、ゴルラァ。俺は自殺する気ねーんだよ、蹴り飛ばすぞ、おい。
俺を無視して、二人は廊下を真っ直ぐ行き、突き当たりで左に曲がった。

俺はというとイナミが向かって行った方に足を運んでみ、「あら「……?」
目が、ない。
三人の女がいて、一番最初に向き合った(と思われる)ソイツは、両目がなかった。
左側に座っているイナミは既に眠りにつき、右側に座っている、さっき玄関に迎えに来た中学生の女が呆けているはずの俺の顔を食い入るように見ている。
「えっと……男の人、かな」
「あ、あたりです」
「ごめんなさい。驚かせたのなら、謝ります」
両目のない女は深々と頭を下げてくる。
「あぁ、別に驚いてはない」ただ、眼帯くらいしろやーいと突っ込んでみたかっただけ。

Re: 包帯戦争。 ( No.20 )
日時: 2009/12/09 20:31
名前: 藍羽 (ID: ASdidvAt)

びっくりですよね。
両目ないのは・・・。
そりゃ、まあ眼帯しろ、と思いますよね。汗

Re: 包帯戦争。 ( No.21 )
日時: 2009/12/10 14:56
名前: 朝倉疾風 (ID: VZEtILIi)

どうして眼帯をしないのか、後で少しずつわかります。


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