ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 剣の舞。。。
- 日時: 2010/01/24 12:11
- 名前: 七瀬 (ID: c.8q4OQv)
ダークファンタジー系の物語書いてみたかったんだ!
未熟者だけど読んでくれると嬉しいかな。
皆がコメントしてくれると書いてて楽しい気持ちに
なるし、書いてて怖くないから。
コメントよろしくお願いします////
- Re: 剣の舞。。。 ( No.40 )
- 日時: 2010/07/01 20:36
- 名前: 七瀬 (ID: VXkkD50w)
#27
「おかしいなぁ。
お前は能力者って聞いてたけど…
こんなのただの、
アブノーマルだ」
背後からの声。
いや、襲撃。
いきなり妾に刃を突き出した。
…殺すつもりか。
妾が目を鋭くさせ、奴の刃を防ごうと右手を
動かした瞬間——
奴の背に、謎の血液が流れていた。
能力者のわりに刀一本だし、こ奴は——。
妾は即急に奴の背後に移動術で
回ってみせた。
「…消え…!?」
「むのう…りょくしゃ?」
なんで、無能力者が、妾に。
「雪海、ちゃん」
強張った雷光の声。
妾は雷光の方へ向く。
雷光は驚いたように「あっち」と
指を指す。
「………たい、ぐん?」
真正面から、次々と人が迫ってくる。
死んだような目をして…。
能力者が操っているのか?
無能力者を?
でもこれは…能力というよりも…。
「人形師…」
妾の世界で知れ渡った
『殺し名』の『人形師』。
殺人法は『騙し討ち』と言われているが…。
でも、父上以外で違う世界に渡来
している奴など…。
「…っ」
もしかして、
父上と同じように世界に放り出された?
あるいは。
『世界も飛べない——』
桃や弓坂のような、
世界をも飛び越える力を添えた——。
「雪海、と言ったか」
「っ!!」
空からの声。
男の姿が、上から見える。
浮かんでいるように見えるが、
糸で建物を固定し、空中でバランスを
保っているにすぎない。
「主は…」
「闇内春人の父」
「!?」
男は、不敵に笑う。
「私は、この世界で能力者と
結婚した。
春人が能力を受け継ぐか、
それとも、私のような人形師に
目覚めるかはわからなかったが、
中位能力者になった」
「中位…能力者?」
「中位能力は極普通の能力段階だ。
高位レベルは文字通り高位。
だが、同じ出身地同士、特別に教えてやろう」
「…」
老いた男は淡々と述べる。
やはり、妾達と同じ世界の、元住人。
いったい、こ奴は妾に何をしに…?
「中位能力者は愚か、
高位能力者は勿論。
低位能力者には絶対に会うな」
ていい…のうりょく。
「とはいえどやはり心配でね。
ここで君を殺せば、
会うこともないだろう」
何が心配してるだ。
余計な、お世話。
雷光や黒安威が刀を抜く音が聞こえる。
遊馬藻は、宿の窓から
状況を覗いている。
「妾がここで死ぬにしても、
低位能力者に殺されるにしても、
同じなんだら問題はないだろ?」
「違う。
そうじゃない。
低位能力者は…弱い。
そして、醜い」
「?」
「誰よりも負けていて、
誰よりも残酷で、
誰よりも哀れで、
何よりも負けていて、
何よりも残酷で、
何よりも哀れで、
だからこそ、
誰よりも強く、
何よりも強い。
そして、
誰よりも弱く、
何よりも弱い」
何を言っている。
何を根拠に、何の経験を元に、
そんなことを言っている。
「醜い。醜い。
卑怯。卑怯。
自分が負けたら、
絶対確率の呪いで、
相手を殺す。
裏でこそこそ卑怯な火種」
「呪い…?」
呪いなんて、
能力でもなんでもない。
ただの…
都市伝説じゃないか。
急接近してくる
操られし者ども。
しかた、ない。
「『解印』」
術を解くが、
「!!!」
妾の術が、効かない。
「おい。
主、どういうことだ」
「それ程
呪いは強いという事だ」
「呪い?
おい。お前の糸で操っているんじゃ
ないのか?」
「断じて違う。
確かに私は人形師だが、
それは人間を操るものではない」
「………ということは…
低位能力者という者は、
無能力者でも勝てる程に、
弱いのだな」
「御明察だ」
「ふん。しかし…
妾はどうやら、
低位能力者と戦う運命にあるらしい」
「ほう?」
血が上る感覚。
鋭くさせてしまう目。
怒り。
モヤモヤする胸に、
呪いを憎む威圧。
憐み。
「低位能力者の野郎共は、
一発ぐらいは殴らないと、
腹の虫が収まらないんだよ」
- Re: 剣の舞。。。 ( No.41 )
- 日時: 2010/07/03 11:37
- 名前: 七瀬 (ID: VXkkD50w)
#28
そのためにも、貴様を倒す。
人形師!!
「雪海ちゃん、
あいつ、僕が倒そうか?」
「雷光…、
ありがたいが、
主を頼るわけにはいかんよ」
「逆に、雪海ちゃんに頼られるのが、
本望なのに?」
雷光の目がいつになく真剣だった。
風で揺らぐ前髪。
嘘でも冗談でもない瞳。
迷いのない手先。
そうだな。
雷光は、そういう奴だったな。
いつもいつも
「雪海ちゃん」「雪海ちゃん」と
言っていてもそれは——
自分の ためなんだな。
「良い、妾が許可する」
「雪海、本当にいいの?
雷光がやっても」
「ああ。
雷光ではないが…『本望だ』」
力強く、そう断言して、
力強く、前へ進む。
それが雷光の選んだ道で、
それが妾が許可した道。
「いいんだ」
「雪海がいいなら、いいけどさ」
黒安威は抜いた刀を鞘におさめる。
「僕たちは…
呪いを解くかかりだね」
「らしいな」
妾は急接近してくる呪いに掛かりし
無能力者に迫っていく。
「呪い——か」
なんとなく、つぶやく。
糸ではない。
なら。
「黒安威っ!
あ奴らをひきつけろ!」
「了解」
黒安威が再度刀を抜く。
そして…、無能力者ではなく、
道路をめがけて、刀を振るう。
見事に道路は一部壊され、
黒安威は一度ならず二度までも、
壊す。
——破壊魔?
いや、今はそんなことはいい。
「『呪われし者ども。
汝の主は唯今から我へと変更になられた。
故に、汝らは我に従い、
我の——犬となれ。』」
呪われし者に刀を向け、
念じる。
術を。
ずずず——と無能力者からは
黒きもの(呪い)が放出され、
ふっ、と人形のように、その場に倒れる。
「雪海」
「大丈夫だ、心配要らぬ、
少し——疲れたのであろう、
無能力者は…呪われたのだから」
それにしても——
呪いを解くのにあんな長文で解く
はめになるとはな。
長文になればなるほど、妾の体も、
疲労が増す。
低位能力者——まったく、
まともじゃないよ。
まったく。
「雷光、戦ってるね」
「当たり前だ」
妾たちは特にやることもなかったので
雷光たちの戦闘を見物していた。
地に舞った人形師。
雷光はそのすきを逃さず一閃いれてくる。
だが、人形師も負けてはいない。
雷光が突出した刀を糸で巻きつけ、
引っ張りあげる。
雷光は舌打ちをし、刀の柄から手を離し、
空中で一回転。
その勢いで人形師の脳天を
かかと落としで負担をかける。
力が一瞬弱まり、
雷光は、糸を踏みつけ、
刀を荒く手におさめる。
そして、一瞬で、糸を切った。
「…人形師は糸遣いとは違うから、
雷光には勝てないだろうな」
黒安威は冷静に言う。
ああ、そうか。
黒安威は糸遣い、なんだよな。
「ま。確かにな。
人形師は糸で人形やらを
操って戦わすんだ。
操ることに糸を利用する人形師。
殺すことに糸を利用する糸遣い。
その差はもう、一目瞭然だ」
「うん。でも、なんであの人形師、
人形を操らないんだ」
「…、むぅ。確かに」
確かに。
なんでだろう?
人形師なのに、なんで糸遣いのように、
戦っている?
「…勝てないな」
冷やかな声に、妾は思考を停止する。
「かて、ない。
糸では、勝てない」
くくくっ、と笑うをこらえる人形師。
「そちらの術者の敵を、
我が人形に選ぼう」
術者——妾のことか?
妾の敵?
まさか——!!
「主、何を言っている!!!
人形だとっ!?
あ奴は!主の!」
「他人だ」
遮られた。
あまりにもひどい。
嘲るような声でっ!!!
他人。
何が他人で!何が家族なんだ!
「闇内春人」
呼ぶ。
冷やかに、
熱く、
身を、委ねるように。
「黒安威っ。
主の糸で操る糸を壊せまいか?」
「わからないけど。
やってみる価値はあるよ」
「お願いする」
「おやおや。予想外の想定外。
闇内春人は、貴様の敵だぞ?
なのに、糸を壊し、奴を倒さずして
いいのか?」
「よくなんてない」
声のキーを下げて、
できるだけ低い声で言う。
奴に、「妾の敵はお前だ」。
そう、伝わるように。
「でも。
妾がこの現在で傷つけるべき相手は
闇内春人じゃない。
奴に罪なんてないからな」
問題なのは——
「我が敵を操ろうと企む
貴様のほうさ。
人形師——いや、
闇内淘汰!!」
「…!!私の名前をご存じか」
「ああ。見たさ。
覚えがある。
『黒の預言書』の創立者」
決めてたんだ。
妾は、『黒の預言書』を読んだときから、
本物の『黒の預言書』の創始者を——。
「世界に飛び回る際、
妾は決めたんだ。
黒の預言書の創立者に
あったら、絶対絶対!
何回も何回も殴ってやるって!」
この世界にあるのは、
白紙の叶え杖。
「現世から、厄介なものがきたものだ」
うっとーしそうに、
人形師——闇内淘汰は言う。
「白紙の叶え杖に隠されているのは、
黒の預言書なのだな。
まったく、世話のやける先輩だな」
- Re: 剣の舞。。。 ( No.42 )
- 日時: 2010/07/04 17:22
- 名前: 七瀬 (ID: VXkkD50w)
#29
「とうさんっ!!」
声。
この声は確か—。
恐る恐る振り返ってみると、
そこには確かに闇内春人の姿があった。
「く。
くるなぁぁあああぁぁぁあああぁ!!!!!」
妾が精いっぱい叫ぶと奴は
びくっと気落とされた。
それで…いいんだ。
妾を軽蔑しろ。
侮蔑しろ。
嘲ろよ。
それこそが、妾のあるべき立場なのだ。
「来い、春人!
お前の力が必要だ!」
「——っ!」
こいつ…。
淘汰の言葉に春人は満面の笑顔で
「うんっ!!」
と嬉しそうに返事する。
馬鹿…来るな。来るな。
そして——バシュッと、
妾の何かに何かがついた。
「え?」
人形師——とは。
人を殺して…。
「え?」
「雪海ちゃん。
どういう…」
『人形だけしか操らない』
「貴様は…」
声が震える。
血液を流し、倒れる春人を見ながら。
淘汰を憎む。
実の息子を、糸で呆気なく殺したから。
「貴様は!死に至った人間を!
人形だというのか!?」
「死んだ人間は死んだ人間だ。
世間でいえばね」
こ奴の声は、
どこか、皮肉げで。
好きじゃない。
こ奴の声は。
こ奴の悪は。
最低すぎる——。
「もっとも、
私から見れば、私だけの人形だ」
「……」
「雪海?」
そんなの間違ってる。
かけがえのない命。
かげがえのない存在。
たった数人の家族。
自分を受け入れてくれる存在。
「『この場に負傷している者の傷を癒せ——。
汝に 妾が命じる——』」
春人の傷が、ふさがっていく。
「な…!
術で傷が治されるのは異常だ…」
妾は、逃げてただけなんだと思う。
怖かったから、
母との別れを知っていながら、
『大丈夫』って言い聞かせて。
動き出さなかった。
馬鹿だ。
大丈夫って言い聞かせて何になる。
誰かが傷つこうとしていたにも
かかわらず…
何故妾は見捨てた。
もう。
迷わない。
もう。
後悔しない。
妾は——私は——!!
「私は貴方の盾となり剣となり
貴方に命を捧げ、
時には無茶を繰り返し、
貴方の臨むがままに赴きましょう。
しかし貴方がそれを望まないというのなら、
私は貴方の為に 自分の為に、
己を傷つけまいと努力しましょう。
貴方と感動し、貴方と倒れ、貴方と悲しみ、
貴方と戦い、貴方と迸り、貴方と笑い、
貴方と運命をともにし、貴方の為に滅び、
貴方の為に命を犠牲し、貴方の為に命を拾い、
貴方の為に黄泉路を逆走し、
貴方の為に死に、貴方の為に生き、
貴方の為にたたえることを
———ここに 誓います」
「ゆき、うみ?」
「聞いたことある。
今の台詞—何かに何かを誓い、
本来の力を発揮できるって
雪海ちゃんの家計の伝統」
「え?」
「雪音ちゃんも——
僕に何かを誓ってた——」
「雪海は誰に何を誓ってたんだ?」
「悔しいけど、それは——」
「闇内春人、私は貴方を救います。
それが、我が主との契約です」
「もう、この世にはいない人——」
「??」
妾は倒れた春人を雷光たちに任せ、
淘汰の前に立ちふさがる。
「淘汰!貴様の芯を砕いてやるっ!!」
「よかろう」
互いの剣と糸が交差する。
先ほどの雷光の如く刀に糸を巻きつかれては、
術で糸を燃やした。
淘汰はヒュンヒュンと糸を回しているが、
私には当たらない。
外れてしまうのか、
当たらないのか。
はてまた——違う何かを狙っているのか。
狙いを読もうとすると正面から
糸が降りかかってきた。
「!!!??」
後ろへ交わし、建物を利用して奴に
とびかかろうとすると——
手に、足に、激痛が走った。
「な、なに…」
ぬるっとした感触、赤く、鉄の匂い。
血液。
そしてこの切れ味。
なるほど。
「建物を利用して見えない糸で
この近辺を封鎖したのか…」
下手に怪我をしないよう動きが鈍くなる。
そんな企みか。
なら。
「小賢しいな貴様は!!」
足の痛みに構わず私は
飛び移る。
実際こんなことしなくても移動術があるが——
こんなところで消費したくはないのだ。
妾は淘汰に急接近し、刀を内臓に
突き出す。
だが極細の糸もが私の内臓の箇所に触れる。
このまま動けば、
互いが互いの内臓を犠牲にして——相討ち。
つまり引き分け。
「くっ」
小賢しい。
どこまでも、どこまでも、小賢しい。
「それでも…妾——私は…」
あの人に…——。
「母に誓ったんだ!!!」
第参の封印 『辰龍火炎砲』。
指を鳴らす。
そして冷やかに——。
「解禁」
王龍が火炎砲を吹き、私は火炎を領域にする。
「チェックメイトっ!!
全面戦争の——」
王龍が巨大な火炎砲を
無限に吹き出し、
私は囲んでいる糸を火炎で包み——。
炎の剣で、奴を喰らう。
「終了だあぁぁああぁぁあ!!!!!」
- Re: 剣の舞。。。 ( No.43 )
- 日時: 2010/07/05 17:38
- 名前: 七瀬 (ID: VXkkD50w)
#30
自分の力を超える力を感じた。
今までのリミッターが解けた
ように軽い感覚。
私の中にある秘められた力——
否、本来の力が——確かに。
「クス。」
嬉しい。
今までの重苦しい私の感情が、
晴れやかに、羽のように、
軽くなっていく。
なんで、こんなに軽いんだろう。
これが、普通の感覚なのかな。
これが、本来の自分なのかな。
「ふっ…」
戦闘中なのに、涙が止まらない。
私の皮膚に涙が伝う。
「う、うぅぅぅう」
母上——心配しないで。
後ろを見ないで。
私は、一人でも大丈夫。
私は微笑んで、
母の姿が見えなくなっても、
誰も通らぬ並木道の遠くに、
手を振っていた。
「う、うぅぅううぅ」
本当は苦しかっただけだ。
母上が気を遣わぬよう、
上手く微笑んで誤魔化そうとしただけだ。
私は なんてバカなんだろう。
ばればれなのにね。
ホントは寂しいくせに
無理に笑ってたなんて…
ばればれなのに、ね。
でも、大丈夫だよって、
君が傍にいてくれるから。
君が私を支えてくれるから。
君が私を必要としてくれるから。
私が、君を失いたくないって思えるから。
「雪海ちゃんっ!
炎に飲み込まれるよ!
こっち来て!!」
ほらまたこうやって、
手をさしのばしてくれる。
私はそっと歩き出す。
君がいる方向へ。
君と共に、行ける場所まで。
「雷光」
「ん?」
「ありがとう…」
主がいてくれて助かった、と。
主に伝わるように。
「水臭いなぁ。
いいんだよ、お礼なんて。
僕は、君の忠犬なんだから」
無邪気に笑う雷光に、
私はふっと笑う。
「本当に…、
変なやつだな」
炎が、燃え盛る。
「………!」
黒安威がつーんとした表情で
つったっていた。
何事もなかったように、
いつもどおり。
でも、わかる。
今の私だからこそ、わかる。
「黒安威、
心配かけてすまなかった」
「心配なんて、誰もしてない」
そうして再びそっぽを向く。
私は仲間を愛おしく思えた。
絶対的存在。
私を支えてくれる貴重な仲間。
「…ふ…」
あの頃の私に足りなかったもの。
優しさや
温もりや
その他もろもろ…。
私は…。
やっと出会えたんだね。
仲間に。
「『空気中に溶け込む冷気よ
水気の多い雑草よ
主の望み通りに
事を終わらせよ』!!」
心が軽いから、
こんな長文の術を練っても、
何も消耗しない。
うん。うん。
それが、本当の私。
やっとできたんだから、
そう簡単には手放さないよ??
『家族』とさえ呼べる、
大切な、大切な、
かけがえのない『仲間』に——。
- Re: 剣の舞。。。 ( No.44 )
- 日時: 2010/07/13 16:29
- 名前: 七瀬 (ID: VXkkD50w)
#31
「ゆ・き・う・みちゃ〜んっ!!」
「う。おあえっっ!?」
後ろからの襲撃。
雷光が私に抱きついてきた。
その眼には涙さえもが浮かんでいる。
「〜〜〜〜〜〜〜っ!!」
言葉につまるがそのままに
しておいた。
…寂しがりやの犬が、
主人にすがっているのだから。
「雪海」
「なんだ?黒安威」
「立ってる」
??
黒安威の視線の先にそらすと
そこには倒れ伏せた老人を胸に寄せる
青年の姿があった。
…闇内春人?
苦しそうに
悲しそうに
自分の父を抱きしめている。
泣きながら。
感情を抑えながら。
何回も何回も 名前を呼んで。
『お母さん…お母さん…』
いつか聞いた台詞が脳に流れる。
曖昧な子供の姿が脳裏によぎった。
……私?
「はるっ…」
あ…。
何も言えないよ。
私も失ったから。
強がって、バカみたい。
こんな心のまま私は
この世にはいない人に契約したんだ。
抱きつく雷光の背に手をまわして
力強く抱きしめる。
「雪海ちゃん?」
仲間。
仲間。
過去さえも羽にする仲間が…。
弱すぎるだろ…。
体が 震える。
ごめん。って。
ごめん。って。
何度謝ったって。
……………え?
また 逃げるの?
同情して黙って無意味に辛がって。
また、見逃すの?
また大切なものをこの目で見逃すの?
同情するんなら悔しがるなら
泣くんなら後悔するんなら
黙って見てないで動き出すしかないんだよ。
誰かが傷つこうとしてるのに
動き出さないなんて卑怯だよ。
失いたくないなら逃げるな。
前を見ろ。
動き出せ。
私の二の舞にさせたくなかったら。
「あはっ」
「?雪海ちゃん?」
「あははははははっ」
「?????」
「ありがとう。
ごめんね」
そう囁いて手を離す。
雷光の優しさは私を満たす。
ねぇ、お母さん。
これが、仲間なんだね。
「はるとーーー!!!!!」
「!!!!!
ゆきう…」
「一緒にやろうよ!」
「え??」
「戦国だからこその、
友達の証を作りにさ」
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