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スパイは荒事がお好き——第一章完結
日時: 2010/11/14 21:21
名前: agu (ID: gzQIXahG)

スパイ物です。
舞台は1940年代のフランス。ナチス・ドイツに占領されています。

一応、現実の歴史ではなくそのパラレルワールド設定しておりますので、
現実の歴史とは色々と違う場面が出てくると思います。


そこら辺はご容赦ください。





【スパイ名簿】

*持ち出し厳禁!


・ハンニバル・アンダーソン

・ニコラス・ブロウニング >>2

・クラウザー・シューダー >>4

・イヴァン・カルメフスキー >>9

・メル・アルス・エネルス >>38

・サミュエル・ジョンソン >>43

・テレーゼ・ライリー >>65




「序章」>>11



一章【スパイ・コネクション】

>>13 >>19 >>20 >>24
 >>28 >>49 >>59 >>64
 >>68 >>69 >>72 >>88



二章【大西洋からの来訪者】

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Re: スパイは荒事がお好き—— ( No.84 )
日時: 2010/11/09 19:03
名前: agu (ID: gzQIXahG)

>>83
なんと、それはもしやかの死神メンゲレかなw
確かに怪しいですねw

どうぞ、こんな駄作で宜しかったら本のお供に……

Re: スパイは荒事がお好き—— ( No.85 )
日時: 2010/11/09 19:04
名前: Agu (ID: gzQIXahG)


三人は足早にそして慎重に、足を前へ動かす。
時折、横転したトラックに運転席から呻き声が聞こえる。彼らはそれを苦々しく思いながらも無視して進んだ。

今にもレジスタンスが襲撃を仕掛けてくるかもしれないのに、無駄な時間は使えない。

周囲は全て針葉樹で囲まれている。
木の間から一斉掃射なぞされてはひとたまりもないのだ。


そんな思考を繰り返しながら、自らの足の速度が早くなることに心中で苦笑しながらも、ゴードン・ゴロプは掌にあるルガー拳銃をきつく握り締めた。

不意に前方に見えるトラックの荷台から、誰かが降りてくる———黒いコートに同じ色の軍帽。

アプヴェーアの制服だ。


ゴードンはそれを発見した途端、走り出す。二人の部下も少々慌てながらそれを追った。


三人を発見したアプヴェーアの軍人は手に持った木箱を下に降ろすと、親しげに手を振る。


「やぁ、君らか。我々の為にこの危険を潜り抜けてきてくれたのだな。うん?」


場違いすぎる程な明るい声をいぶかしみながらも、ゴードンは早口で捲くし立てた。


「レジスタンスの襲撃です、大佐殿!!何故、作戦が失敗したのかは分かりませんが、まずはこの場から脱出……!」


「何故か?——知りたくはないかね?」


途中で押し入った異常なまでの冷静なその声に、ゴードンの口が止まる。
大佐は続けた。


「それはだな、中佐殿。これが全て“仕組まれた”ことだからだよ」


「は?それはどういう………」


パンという銃声が連続してその場に轟く。
明らかに背後の、それもすぐ近くから聞こえた音だとゴードンの脳が告げていた。
彼は手元のルガー拳銃を構えながら咄嗟に後ろへ振り返る——


そこには先程まで付き従っていた部下が二名。
頭部から血を並々と流し、地面に伏せている。その後ろには黒いコートの男が三人。

彼らの手にはワルサー拳銃が、そしてその銃口は間違いなくゴードンに向けられていた。


刹那、背中に硬く、そして細い“物”が押し付けられている感触をゴードンは感じ取る。
理解するのに数秒もかからなかった。それは“銃口”だ。


彼の背後にいるはずの“大佐”が静かな声で、言葉を紡ぐ。


「今回、君は良く役に立ってくれた。ここにいる全員を代表して言おう。Guten Tag(ありがとう)……」



また一つ、銃声が鳴り響く——

Re: スパイは荒事がお好き—— ( No.86 )
日時: 2010/11/11 12:57
名前: 杵島 茄武 ◆wWr1IKfGtA (ID: EUGuRcEV)

ワルサーをつかっとる……

ワルサーが大好物なんですn(ry

キャラクターを出すか出すまいかと迷っております
出すんだったらP99にしようかH&Kにしようか…
でもアメリカ人がH&K使っていたらヒンシュクですよねェ

女スパイも悪くはないですよ、うん

Re: スパイは荒事がお好き—— ( No.87 )
日時: 2010/11/14 21:15
名前: Agu (ID: gzQIXahG)

>>86
そうなのですか、ワルサー系列は自分も好きです。

キャラでしたらいつでも大歓迎でございます。
しかしP99やらの現代火器はどうかお止めくだされw
世界観が吹っ飛ぶのでw

女スパイ、良いです(じゅるり

Re: スパイは荒事がお好き—— ( No.88 )
日時: 2010/11/14 21:16
名前: Agu (ID: gzQIXahG)







目の前で崩れ落ちた男、ゴードン=ゴロプを見て、“大佐”はその顔を歪め、軍帽を脱いだ。
いつだって殺しは気持ちの良い物ではない……


「スパイって酷な仕事だよね……」


その口から出てきた言葉は先程の威厳ある“大佐”の声色ではなく、寧ろ、人が良い好青年が出しそうな声であった。
今まで軍帽を深く被り、あまり人前に見せなかったその顔。

癖毛が混じったプラチナブロンドの髪にあまり見かけない紫色の目には涙を溜めている。
全体的に猫の様な、何処か温和な顔付きだった。

彼が先刻まで厳格なる軍人であったなど誰も信じないだろう——ただ、名残を示すものも確かにある。その約2mもの身長と屈強な体つきがそうだ……


「辞めたくなったか?」


ドイツ国防軍情報部、通称“アプヴェーア”の制服と黒いコートを纏っていた男の一人が、そう“大佐”に告げる。
“大佐”はもはや物言わぬ死体となったゴードンから男の方向へ視線を滑らせた。


「僕はいつもそう思ってるよ」


半ば苦笑しながら答えた“大佐”に、黒コートの男も微笑する。


「私もだ、“イヴァン”」


ドイツ国防軍情報部大佐、ではなくソ連国家保安委員会、所謂KGBのスパイであるイヴァン・カルメフスキーは、その返答に少し頬を緩ませた———

不意に、そんな彼らに声が掛かる。


「ハンニバル、イヴァン」


二人を呼んだのはやはり黒い制服に身を包む男。
軍帽から、特徴的なトゥヘッドの髪がはみ出ている彼の顔付きはかなり整っていて、身体もスラッとしている。
何処かの雑誌でモデルでも務められそうだ。

彼は呼びかけた二人、イヴァンとハンニバルが自分に視線を向けるのを確認すると、少し早急に話し始めた。


「襲撃部隊の連中が呼んでるぜ、“感謝の意”を表したいだとさ」


それを聞いた黒コートの男、ハンニバル・アンダーソンは静かに軍帽を脱ぎながら、イヴァン、そして呼びかけてきたトゥヘッドの男の顔を相互に見る。

彼は答えた。


「個人的にはサッサと“帰宅”したいんだが………まァ、連中と“パイプ”を持っておいても、損はないだろうよ」


それに続いて残りの二人も言葉を漏らす。


「……疲れてるけど、仕方ないかぁ〜」


「うっおっほん。ま、エールでも奢ってもらおうじゃないか、ええ?」


「ニック、君は調子が良いんだから!まったく……」


何処ぞやの尊大な老人を皮肉っぽく真似したトゥヘッドの男、ニコラス・ブロウニングにイヴァンが笑いかける。
ハンニバルもそれに微笑しながらも、静かに言葉を放った。


「先に行ってくれ。まだ用が残ってる……」


ハンニバルの言葉に彼らは少し真剣な表情になるが、すぐにそれを崩すと、手を振りながら横転するトラックの間に消えていった。

二人の後姿を見届けながらも、ハンニバルは少しだけ考える。人殺しの後に笑える自分達は、市民から見ればもはや化け物と相違は無いではないのかと。
彼は口元を歪めながら、手元にあるワルサー拳銃を地面に放り投げた。


「くだらないな」


余計なことを考える暇などない、私は軍人で工作員なのだから。そう自分に言い聞かせながらも、彼は自問自答せずにはいられないのだ。
戦争という生き物は、暴力という生き物は、こうまで人を醜くしてしまえる物なのか。

まだ自分がほんの子供だった頃、純粋なる愛国心を胸に抱いていた頃。

彼はその時の思い出を脳裏に蘇らせながら、死体となったドイツ軍兵士達を見下す。
その中でも、一番奥にうつ伏せとなって倒れていた、そう生前はゴードン・ゴロプという名であった死体へと、彼は近づいていった。


ハンニバルはその場にしゃがみ込み、うつ伏せとなった死体を動かす。
ゴロンと回転し仰向けとなったゴードンの顔には、はっきりと驚き、そして絶望の表情が焼き付いていた。


“スパイ”は嗤う。

彼の手はゴードンの軍服の襟元に伸び、そこで光っていた鉤十字を乱暴に取り去った。


そうして“スパイ”は立ち上がり———








「Schones Wöchenende(良い週末を)」





その口元から一つの言葉が紡がれる。


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