ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

聖歌が響く時
日時: 2010/10/10 17:40
名前: 月華 (ID: SOGiHJ/a)

初。魔法物です。
末永くかければ嬉しいです。
以上!

とにかく久しぶりなんで、更新とりま頑張って期待と思います。

記録
2010.10.10 参照が100に

始まりの歌

私はなんでここに存在するのでしょうか?
少女は問いました。

だれも答えてくれるはずありませんでした。
なぜなら誰もが少女の問いへの答えを知っていたからです。

私はどうすればいいのでしょうか?
少女は問いました。

誰も答えるわけありませんでした。
答えることと死ぬことは同義だからです。

何故私はこんな力を持っているのでしょうか?
少女は問いました。

誰もが優しく笑いかけました。
なぜなら——。


雪の中に血が、まるでグレーテルが落としたパンくずのように点々とついていました。
一人少女はその雪の中、ずっと遠いどこかを見つめておりました。

Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9



Re: 聖歌が響く時 ( No.37 )
日時: 2010/11/05 21:44
名前: 神凪和乃 (ID: aOQVtgWR)

お久し振りですw
暫らくの間に物語がかなり展開し初めてきてる!
よし、大急ぎで読もうw

Re: 聖歌が響く時 ( No.38 )
日時: 2010/11/07 17:17
名前: 月華 (ID: VNDTX321)
参照: http://novelnewwind.zashiki.com/

神凪和乃さん
 きゃぁぁ、久しぶりのコメントありがとうございます。ゆっくりじっくりがモットーだったはずなのに、どんどん加速してしまいました——。
 誰も来ないのでちょっと寂しかったところでした。


あと、このURLは私のお友達の経営している小説のサイトです。もうみなさん書くの本当にうまくて、もしよかったら見てってくださいね。

Re: 聖歌が響く時 ( No.39 )
日時: 2010/11/07 17:39
名前: 月華 (ID: VNDTX321)
参照: http://novelnewwind.zashiki.com/

◆   ◆   ◆

「あぁあ、逃げられちまったな」
「はい、そうですね」

 緑の髪の大男、玄武を目の前にビエッタは——ビエッタの姿をした物は答える。二人とも回りに死体が何個も転がっているはずなのに全く動じていない。それは方や精神力の強さであり、方や意識が無いからである。悪という意識が。

「これから、どうするか?」
「全ては玄武様の願いどおりに」

 感情のない機械のような声。その声はいつだって玄武の望む答えを返してくれる。本当に望んでいることをいつだって操られている人形は知っているから。人形は操るものがいるから動く。だから、人形は操るものの本心にしか左右されない。そのため、人形を使うものが何かに対し敵意を抱いたら、人形はそれを殺そうとする。
 そんな忠実な僕、それが人形。そして、その人形を操れるのは玄武だけ。そんな状況に玄武はよっていたりした。どんな敵意を感じようとも自分の意志一つで人形がそれを解決してくれるから。自分が動く必要など万に一つも無い。だから、大男であっても彼の体には傷一つ無かった。鍛え抜かれた筋肉には様々な戦いの後が普通残っているはずなのに。

「そうか、俺の願いどおりか。お前はどうすればいいと思う?」
「ご主人様に意見するなどということできるはずございません」

 そういって少女は目を少し伏せた。それを見て玄武は一つ溜め息をつく。

 この人形たちに不便なところがあるとすればひとつ、自我というものが全く無いことだろう。だから、召使になれても参謀にはなれない。そのことは自ら反乱を起こさないということで忠実であるというメリットにつながるのだが、何かを選択したりするのに迷った時、心のそこで答えが決まっていないのなら人形は決して何も答えてくれない。

 それが真の忠実というものであり、その間には無論人間関係などできるはずが無い。
 人間と人間以下の間にコミュニケーションが成立するはずなどあるわけないのだ。

「そうか、ならあいつを追おう。俺はあいつを許せない。俺の大事な弟を殺しやがって!」
「私もあの人が許せません」

 玄武と同じように怒ったようなセリフを少女は言うが、その言葉は相変わらずの棒読みで顔は冷静なままである。気味の悪い、ものすごく気味の悪い光景だ。

 刹那、教室の後方の扉がダガッという大きな音をたてて開く。二人とも一瞬それに気を取られる、けれどその時にはもうことは終っていた。


 飛び込んできた少年は運悪く教室の扉の目の前に立っていた大男、すなわち玄武の首をいきおいに任せナイフでさしてそのまま全体重をかけ、崩れる玄武とともに床に転げ落ちてしまったのだ。

 そして、少女はただそれを見つめていた——……。

Re: 聖歌が響く時 ( No.40 )
日時: 2010/11/13 20:50
名前: 月華(リア充ではないです) (ID: VNDTX321)
参照: http://novelnewwind.zashiki.com/

◆   ◆   ◆

 好き……か。
 そんなこと真剣に考えてみたこと無かったかもしれないわ。

 好き。といってもいろんな種類があるわよね。親に対する好き、子どもへの好き、食べ物とかへの好き、動物の好き、色の好き、友達の好き、信仰の好き、憧れの好き、目上の人への好き、目下の人への好き、

——そして恋愛の好き。

 どこがその感情の区切り目であるかなんてわかるはず無いから、友情と恋愛を間違えたり妄信と信仰を取り違えたりね。そんなこと私には無いって言い切る人もいるかもしれないけれど、けれど私は言い切れないわ。今でもセイルへの好きは本当の恋愛の好きだったかはよく分からないから。けれどね、私はそう信じたい。ただそれだけなの……。

 言ってみたはいいけどだから何って思うのが半分、この後どうなるんだろうが半分。
 期待と不安が入り混じったとでも言うような、ってそれは新入生の挨拶でしか言っちゃいけないんだっけ。

 期待と不安——……。

 クスリクスリ、その時辺りにおかしさを必死でこらえたような笑が響き当たった。そして、笑の元となるセイルはいつの間にか私と彼の間に会ったはずの道を渡っていて、それがまるで私とセイルの間にあった何か断絶を乗り越えてしまったような気がして——頭の中で警告音が鳴り響く。

 そして、セイルはやがて笑うのをぴたりと止めて、下を向いていた顔を真っ直ぐ私へと向けた。緑の瞳をも真っ直ぐと私を冷静に見つめている。無表情、そこには完全なる無表情が浮かんでいた。

「好き……そう言ってくれるよ嬉しいよ」

 バサリバサリ、黒い烏が羽をばら撒きながらいっせいに飛び立つ。そして、烏たちはセイルを避けるように宙を舞い街へ降りて行った。
 また、それを何かの合図にしたのかまわりの動物達の気配も息吹も全てが離れて行く。大移動、この森の動物たちがセイルから、私たちから逃げるように野を走る。

 今までこんなこと無かった。気味がワルイ。

「どうして、動物たちが……?」
「僕のことが嫌いなのかな?」

 セイルは手で口を隠し、嘲る様に呟く。そして、私の周りをゆっくりと回り始めた。

 名探偵は推理をみんなに言う時に関係者の周りをゆっくりと回るらしい。
 悪魔のような存在のものは対象の周りを回りながら交渉を行うらしい。

「そうなのかもしれないわね。それで、どうしてここに現れたの?」

 するとちょうど目の前でぴたりと動きをとめ、また含み笑いをし、そうだったねと呟いた。
 
 こっちが本題。好きなんてこと本当は話す必要さえ無かった。
 ——無駄話をもうちょっと続けたいたかったとも思うんだけどね。だって、大好きなセイルと二人っきりで喋れるなんて嬉しすぎるわ。

「まぁ、どうして現れたかってね。それは君に言伝をしようと思って」

Re: 聖歌が響く時 ( No.41 )
日時: 2010/11/20 13:46
名前: 月華(更新不定期ですみません) (ID: VNDTX321)
参照: http://novelnewwind.zashiki.com/

(シーン続いてます)

「……言伝?」

 おかしい、だって私がここに戻ってくる可能性なんて一体どれくらいあったかしら? 学校であんな事件がなければこの家に帰ってくることもなかったし、事件があったとしてもここに帰ってくる確率はどれくらいあったのかしら? これじゃぁしくまれた偶然見たいじゃない。まぁ、そういうものを必然というのだろうけど。

 私に伝えたいことがあるなら学校で待っていたほうが絶対に確実なはず……けれどセイルはここで待っていたわ。もしかして、

 セイルは知っていた?
 私がここに戻ってくることも、クラスメイトが殺されていることも。

「気づいた? そうだよ、僕は全てを知っている」

 そのにっこりと笑った顔は学校でたまに見せていた優しそうな笑顔そのもので、この異常すぎる状況とはあまりにもミスマッチだった。全てを知っているということを本気にするならば、今教室内で起こっている惨劇のことも全て知っていて、その上で平和そうな優しい笑みを浮かべているということ……、なんでそんなことができるの?
 人が死んでいる、それが当たり前のようになんで笑っていられるの? 平和そうな優しい笑みを浮かべられるの? どうしてどうして何故何故何故!!

 きっとこれは偽者のセイル君なんだ。私が知っているセイル君は正義感と優しさがあって……けれど、目の前にいるセイル君からはいつもの優しさとぬくもりを感じられて、その顔に浮かぶえくぼの感じまでも全てまるっきりそのままで。

「だからこそ伝えにきたんだ」

 セイル君は確かに微笑んだままそう言った。けれど、その言葉は私にとって氷のように鋭かった。

 優しさは残酷さの上に生きている。

「僕はね本当は全てを知らない。けれど、二三年以内の未来くらいなら見ることができる。君がこの後どうなるかも、教室で起こっていることがどうなるかも全て知っているんだ。面白いよ、世界が馬鹿らしく見える。生きていることがあまりにもつまらないけれど、それでも大人たちが君は天才なんていうの見るのは本当に面白いよ。僕はそれだけのものになる気にはないけれど。
 それで、言伝の内容を伝えるのが本題だったね。誰からかというと未来の君からさ。どうやら未来の君は現実を変えたがっているようだね。内容は1度しか言わないからよーく聞いてくれよ。
 'セイル達はいつでも見方だったのにどうして信用できなかったんだろう? 嗚呼、昔の自分に合えるならそう忠告してあげたい’
 これだけ。この言伝を聞いて君がどうするかは僕の知ったこっちゃない。けれど、くれぐれも注意して鼓動してくれよ」

 それだけ言うとセイル君はサッと私に背を向け山を降りていってしまった。私はやっぱり無力で追いかけることも声をかけることもできず、ただただ雪の中に一人立ちすくんでいた。


Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9



この掲示板は過去ログ化されています。