ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- E2(エキストリーム・エキセキューション)
- 日時: 2010/11/26 17:56
- 名前: 林 大介 (ID: .O7WJzbr)
はじめまして。
なるべくリアルに迫力のある小説を書きたいと思います。矛盾点や問題点が多々あると思いますが、素人の勉強不足だと思って見逃してください。
よろしくお願いします。
- Re: E2(エキストリーム・エキセキューション) ( No.38 )
- 日時: 2011/08/17 18:46
- 名前: レッドラム (ID: w1UoqX1L)
剣先を南に向ける美尾。
「やっぱり来たわね。今とても変な気分だわ。殺す相手はそこにいる門田なのに、あなたも殺さないといけないと思ってる。」
南を睨みつけながら、美尾は話す。
「俺を殺せば、あんたはただの殺人犯だ。それに奴は俺にとっての仇。本来標的者であるべき人間は俺だけだ。だから、あんたには何の関係もない。今すぐここから去れ。」
南は刀を下ろし、静かに答える。
「そんな事出来るわけないじゃない。せっかく門田をここまで追い詰めて、おいしいところだけをあんたに譲るなんて。たしかに門田と私は関係がないわ。しかしルールの下でE2の情報が共有できれば、私にもそれに加担する権利がある。その権利はあなたには奪えないわ。」
「じゃー、あんたは俺の権利を奪うのか?」
「南さん...どうでしょう。ここは私にまかせてもらえないでしょうか?こんな殺人犯相手にあなたの手を汚さなくてもよいのでは?」
少し考える南。
その様子を門田はオドオドしながら見ていた。
しかし腹の底では生きる一筋の希望を抱えていた。
それは南と美尾が自分を巡って殺しあうこと。
そうすることで、お互いに致命傷を負いながら結局自分を斬ることが出来ず死んでいく。
そして門田は逃げる。標的者のいない明るい未来へ。
そんなことを門田が考えていると、南は刀を美尾に向かって振り上げる。
「何度も言うが、やつは俺の仇だ。俺が殺す!」
「交渉決裂ね。たしかE2のルールでは標的者同士のぶつかり合いに関しては明記されてなかったはず。だからその時の各々の決断にまかせると考えて良いと思うわ。逃げるもよし、譲るもよし。もちろん戦うこともよしってね。」
美尾は柄を強く握り、構えの姿勢をとる。
「あなたと戦うことを選ぶわ、南さん。構えなさい。」
美尾はここまでは計算通りだった。
きっと南の性格上、処刑を譲ることはないと承知していた。
そうなるとリアルにお互いがその処刑権をかけてぶつかりあうことも予想していた。
しかし、いざ剣先を向け、構えをとり、戦う姿勢を見せれば南の考えは変わるのではないかと考えていた。ようは、土壇場になって怖気づき、血を流したり、死ぬことに対して臆病になるのではないかと。
情緒不安定の男だからきっと色々考えるはず。
実際、美尾自身も本当に戦うことは避けたいと思っていた。
「俺も戦うことを望むよ。門田もそうだがあんたも狂ってる。法の下なら殺人がOKだって?そんなこと狂気だ。そんな狂気は奴とひっくるめて俺が葬る。」
南は美尾にむかって刀を振りかざした。
- Re: E2(エキストリーム・エキセキューション) ( No.39 )
- 日時: 2011/08/19 14:14
- 名前: レッドラム (ID: w1UoqX1L)
その瞬間、瞬きをするほどの一瞬...
南は一気に間合いを詰め、刃を美尾に振りかざす。
美尾は計算というよりも本能で頭上に振りかかる刃を、自分の刀で受け止める。
受け止めた瞬間、南の刀の圧力に押され、美尾は自らの逆刃で額を傷つける。
美尾は一時的によろめくも、必死に南の刀を弾こうとする。
そして彼女は考える。
痛い...
というよりも、こいつマジだ!
マジで私を殺そうとしている!
この剣圧!この形相!
これが戦うってことなの!?
あれほど訓練もしてきたのに、まったく役に立たない!
やだ!やめたい!今すぐここから逃げたい!
今までのこと全部なしでいいから、生きたい!!
美尾の弱さが完全に露呈した。
しかし、南は攻撃の手をゆるめない。
十字に交差した刀を南は滑るように下に引く。
そして、その引いた勢いで刃を思いっきり美尾の顔面に突く。
閃光が美尾を襲う。
彼女は思わず後ろに倒れる。
その刹那、閃光は美尾の右耳を貫く。
「うわぎゃ!!!」
右耳を押さえ、倒れこむ美尾。
痛さに加え、恐怖と絶望が襲い掛かる。
美尾は闇の中で一筋の光を探す...が見つからない。
どうしても希望が見つからない。
そして後悔する。興味本位でE2に参加したことを。
人を殺したいと思って参加したのに、今は殺される側。
これほどの恐怖を門田も味わっていたのね...
死にたくない!死にたくない!!
神様、助けて!
「うっうっ、たっ助けて...お、お願い...」
小さな声で涙を流しながら、南に懇願する美尾。
南は倒れている美尾に刃を向けた。
「あんたのような考えをもつ殺人犯が増えている今、すこしでもその数を減らさなければいけない。そうしなければ俺と同じ悲劇を繰り返す世の中になってしまう。だから、俺は手を汚すんだ...
人を殺すというのは汚れよりも汚れてる下種な所業。それに加担した俺もあんたも一生後悔して死ぬんだ!!」
そのセリフを美尾に吐き捨て、刀を美尾の腹に向かって突き刺そうとした瞬間...マンションの3階全ての部屋のドアが一斉に開き、ライフルを装備した特殊部隊がその場包囲した。
- Re: E2(エキストリーム・エキセキューション) ( No.40 )
- 日時: 2011/08/23 23:51
- 名前: レッドラム (ID: w1UoqX1L)
「美尾さゆりと南晴彦を確保します。」
特殊部隊のリーダーが御堂に無線で報告する。
「了解。作戦Bに入れ。」
御堂はリーダーに指示を出す。
「殺し合いはさせないか...」
神岡は呟く。
「当然です。彼らは犯罪者ではない。あくまでも一般人です。殺し合いはご法度。ギリギリで止めました。」
御堂は神岡に答える。
「ギリギリの理由はやはり狂った犯罪者予備軍の減少を計ったのか?」
神岡が突き詰める。
「その通りです。美尾は仕事の分析と言いながらも人を殺すことに興味を持ち、法の下なら誰の命でさえも奪ってしまう狂気の女。それは現代社会において、いたってノーマルな感情なのでしょう。誰でも何かと条件が揃えば狂気に走る良い見本です。しかし、私は彼女をあくまでも負の見本として、E2の世界に解き放ちました。そしてそれを打ち砕く材料が欲しかった。それが南さんです。そして、証明してくれました。E2の最大の目標の一つ、犯罪率の減少。もっと言えば自分の考えを悔い改める作戦。
本当の被害者と第三者として興味本位にE2に参加した各々の温度差を感じた時、後者は全てを打ち破られる事を証明してくれました。
私はこの光景を必然と感じ、そしてもう一つの目標が必然に起こることを望みます。」
御堂は静かに答える。
「さっき君が指示した作戦Bがもう一つの目標の鍵になるのかね?」
「はい。」
御堂は力強く、そして心を新たに神岡に返事をする。
- Re: E2(エキストリーム・エキセキューション) ( No.41 )
- 日時: 2011/08/24 12:23
- 名前: レッドラム (ID: w1UoqX1L)
門田は呆然としながら、そこに立っていた。
さっきまで殺し合いをしていた標的者たちが特殊部隊に取り押さえられ、連行される光景をただじっと見ていた。
そして、彼らがこの場から去り、今は一人...
結論!!
助かった!!
死の底から三度這い上がることが出来た!
なんたる幸運!俺はやはり生きるべき人間なんだ!!
門田は歓喜した。
しかし、喜ぶのも束の間...
門田は再びルールを思い出した。
21時に所定の住居に到着しなければ射殺されることを。
門田は走った。
とりあえずこのマンションから脱出することを考えた。
マンションから出た時、すでに辺りは暗がりに包まれていた。
予測ではさっきの出来事が1時間くらいだから、5時間をプラスして6時間。刑務所を出発したのが多く見積もって13時くらいだから、そこから6時間プラスすると、現時刻は19時!
あと2時間!いや、それよりも短いかもしれない。
暗闇が死の闇へと変わろうとしていた。
住所を再びチェックすると、やはりこのあたりのようだ。
門田は少し歩きながら冷静に考える。
前回の反省を活かし、なるべく人との接触は避けたほうがいい。
また、いつ標的者に狙われるか分からない。
となると、自力でこの住所に向かわなければいけない。
一体どこにあるんだ、このアパートは!!
...アパート?
俺はもしかしてとんでもない勘違いをしているのか?
住所の語尾に201と書いてあるだけで、部屋番号だと勝手に決めつけているだけなのではないだろうか。
もし、この201が部屋番号ではなく住所そのものだったとしたら...
アパートではなく一軒家の可能性があるということだ。
まさに先入観!俺みたいな死刑囚に一軒家を与えるなんてありえないと思っていた。古臭いアパートで生活すると思っていた。
その先入観が201という数字を部屋番号に変えたしまったんだ。
この考えから脱却し、冷静に周りを見るとここはマンションやアパートというよりも一軒家が立ち並ぶ住宅街。
間違いない!この住所を純粋に導き、その先にある家が俺の目的地だ!
それから10分後。
門田は容易に目的地に到着することが出来た。
そこは車庫スペースのある普通の2階建ての家。
奥には裏庭がある。
表札には「門田」と記されていた。
「ここだ。間違いない。」
門田は玄関入り口に近寄り、ドアノブをゆっくり廻す。
しかし開けることが出来ない。
「どっどういうことだ!」
その時、ふとドアに張ってある紙に気が付く。
紙にはこう記されていた。
玄関入り口の鍵は裏庭にある犬小屋の中にあります、と。
チッと舌打ちをし、とぼとぼと裏庭に向かう門田。
突き当たりの角を曲がり、裏庭に着いたが犬小屋などない。
それよりも気になるのが、うっすら見える人影。
嫌な汗が脇と額から流れ落ちる。
「だっ誰だ!」
門田は人影に向かって叫ぶ。
さっきまで雲によって隠れていた月が再び地上を照らす。
その光によってシルエットだった人影が徐々にその姿を現す。
「俺だよ。忘れたのか?32番 青木勝也だよ」
第7章 秘密 完
- Re: E2(エキストリーム・エキセキューション) ( No.42 )
- 日時: 2011/09/02 01:16
- 名前: レッドラム (ID: w1UoqX1L)
第8章 生と死
「そんな幽霊を見るような顔をするなよ。」
カツは微笑みながら門田に言う。
「そっ、そんなことが...お前、生きていたのか?」
あまりの出来事に動揺が隠せない門田。
門田の心の中はまさにパニックだった。
訳の分からない法律の下、死刑から逃れることが出来たが標的者という奴らから命を狙われ、そして命からがら辿り着いた先には、元同死刑囚のカツが待っていた...一体どういうこと?
この解答が出るまでに、カツは口を開いた。
「実は俺もお前と同じ対象者の一人だったんだ。」
門田は目を大きく開く。
そして、カツは続ける。
「俺も標的者に狙われる立場だった。でもそれはあくまでも俺が犯してきた事件に関わる被害者と情報を共有した第3者が俺を狙う標的者であるということ。それはお前と同じ状況。では、なぜ俺がここにいるのか?その疑問が、お前を苦しめているはず。結論から言おう。俺はお前の標的者だ。」
「どっどうしてだ!!」
門田はあまりのカミングアウトに思わず身を乗り出して叫ぶ。
「さっきも言った通り、情報さえを共有出来れば、誰でも標的者になれるんだ。だから、俺はお前が例の法律に准ずる対象者という情報を手に入れ、標的者となったのだ。ルール上では犯罪者が標的者になってはいけないという文言は記載されていない。という訳で、この場を借り、お前を処刑する。」
「ちょっと待て!一体誰が...誰が俺の情報を流した!?」
「そんなことを知ったところで、すでに刑は執行されている。知って、それを墓場に持っていくのか?」
カツは右手に持っている鞘から、月光が反射する刃を引き抜く。
戦慄が走る門田。
本能的に逃げようとするが...
「どこに逃げる!!この家に入ることが出来なければ、どちらにしろお前は射殺される!この家の鍵はここだ。」
鞘を捨て、右ポケットから鍵を取り出すカツ。
まさに希望のチケット!
ここは一か八か力ずくでも、あの鍵を奪い取り家に入る!
その後のことは知らない!!
門田の目つきが変わった。
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