ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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E2(エキストリーム・エキセキューション)
日時: 2010/11/26 17:56
名前: 林 大介 (ID: .O7WJzbr)

はじめまして。
なるべくリアルに迫力のある小説を書きたいと思います。矛盾点や問題点が多々あると思いますが、素人の勉強不足だと思って見逃してください。
よろしくお願いします。

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Re: E2(エキストリーム・エキセキューション) ( No.28 )
日時: 2011/06/29 12:16
名前: レッドラム (ID: w1UoqX1L)

第5章 E2開始

「これより刑を執行する。対象者は門田利行。この紙に記されたルールを読みなさい。」

ここは釈放される者達が通る刑務所の裏口。
夢のような出来事に唖然とする門田に看守は一枚の紙を渡す
そこには以下の事が記されていた。

①対象者は都内から離れてはならない。
②対象者は公共交通機関を使用してはならない。
③対象者は政府認定の住居以外の場所に住んではならない。
④対象者は携帯電話を使用してはならない。
⑤対象者はパソコン、その他の通信ツールを使用してはならない。
⑥対象者は21時までに自宅に戻らなくてはならない。
⑦対象者は個人でグループ、団体を組織してはならない。
⑧対象者は標的に狙われた場合、反抗、反撃をしてはならない。

以上のルールを守れなかった場合、その場で射殺します。


「なっなんだ、これ?…」
さらに夢の中に引きずり込まれたような気分になる門田。
そんな門田を尻目に看守は一言。
「その紙は君の物だ。そして、その紙の裏には君の新しい住所が記されている。さぁ、行け。刑は執行中だ。」
看守は裏口の扉を閉ざした。

完全に一人になった門田。
牢も看守も首吊り縄もない世界に解放された。
どんなに神経を研ぎ澄ませても感じる現実味のあるこの雨上がりの空気。
小鳥たちの声。遠くから聞こえるクラクションの音。ここに立っている地面の感触。自分自身の心臓の音。
何もかもが現実。夢では到底感じることのない超現実!

門田はようやく現状を理解した。
そして今までどこか忘れかけていた意識を呼び戻し、再び紙に目を向ける。

喜ぶのはまだ早い。
このルールを守らなければ、どの道俺は射殺される。
日本の刑法が変わったのかどうか分からないが、これが新しい死刑の形。現にさっき看守は刑は執行中だと言っていた。
ということは、すでに俺は何者かに、恐らくは多数の人間に見張られていることになる。そしてルールを破ればその場で殺される。
しかし、逆にルールを守れば俺は死なない。一生安泰だ。しかも、政府が住居まで用意してくれてる。
ルール内容も一部は厳しいところもあるが守れない訳ではない。無理すれば守れる。いや、守れなければ俺は死ぬ。死だけは絶対に避けねば、この未曾有のチャンスが無駄になる!

ただ…

8項目が気になる。標的って何だ?しかも狙われるって。俺は誰かに狙われる立場なのか?だとして、反抗反撃出来ないという事は、逃げるだけ。ひたすら逃げ切る事しか出来ない。
まるで、ゲームだな…俺が必死の形相で逃げ、狙われている姿を見て、笑う者がいて、興奮する者がいる。くやしいが俺がその姿を見る立場ならひたすら笑い転げているだろう。
それだけ、俺はゲスな人間…そう簡単に狙われてたまるか!!

門田は足元に落ちている石を拾い、思い切り掴み上げる。
「いっ痛い!石のゴツゴツが皮膚に突き刺さる!」
拳の中から少しずつ血が流れ、痛みに我慢できず石を刑務所の外壁に打ち付ける。

「はぁ、はぁ、恐らく標的は俺の居場所を…分かっているはず。俺は逃げるしかない。だが必ず死を避ける突破口があるはず!俺は見つけるぜ!一度死んだ身だ!死ぬ気で生きてやるぜ!」

E2と共に門田の新たなる人生が開始された。


Re: E2(エキストリーム・エキセキューション) ( No.29 )
日時: 2011/07/14 16:52
名前: レッドラム (ID: w1UoqX1L)

「まっ、まずは21時までにこの住所に着かなくては!」

門田は頭の中で計算した。
刑の執行が12時。
そして今に至るまで15分少々。
今は12時15分頃。

そして、この紙に記されている住所に着くまでの時間。
公共交通機関が使えないとなると歩くことになる。
徒歩だと…少なく見積もっても5時間。
それにアパートを探すとなるとプラス1時間。
合計6時間。
門田がアパートに着くまでに掛かる予定時刻は18時15分。
十分過ぎる程、時間は余る。

しかし、それはあくまで一般人の時間の考え方。
門田にとっては十分ではなかった。
これから起こりえる不測の事態が門田の足を止めた時、その1分、2分
が門田の寿命を縮める。そして何より恐ろしいのは標的者の存在。
襲われて、逃げ切ったとしても21時を超えればその場で射殺。

ということは、なるべく人通りを避け、隠れるようにアパートに向かわなければいけない。時間を上手に使い、かつスピーディーに行動!

門田は走った!頭で色々考えながら走った!
雨上がりの空の下、久しぶりのシャバの空気はさわやかだった。



Re: E2(エキストリーム・エキセキューション) ( No.30 )
日時: 2011/07/14 17:27
名前: レッドラム (ID: w1UoqX1L)

「はぁ、はぁ、くそ、はぁ、はぁ」
とある住宅の一角で門田は立ち止まった。
電柱に手を付き、膝を落とす。
かれこれ30分以上走った。

「のど渇いたな…金もないし…公園があればな。」

辺りを見回すと偶然にも公園がある。
門田はヨタヨタ歩きながら、そこへ向かった。

公園に設置してある給水機で喉を潤すと、近くのベンチに座る。
門田の目の前には砂場で遊ぶ親子がいる。
それを見てると、何とも言えない異常な感情が沸き上がろうとしていた。

引き裂きたい!
壊したい!
今、お前たちの前には死刑になるほどの怪物がいる。
それを知らずに平和な笑顔。その平和をぶち壊したときの狂気。
快感!快楽!
やりたい!今ナイフを持って刺し殺したい!フフフ…

門田の心の中の闇が膨らもうとしたとき、理性がそれを止めた。
「さて、行くか。」

門田は再び走り出す。
彼は疲労と暑さで忘れかけていた。
標的者の存在を。

Re: E2(エキストリーム・エキセキューション) ( No.31 )
日時: 2011/07/21 22:55
名前: レッドラム (ID: w1UoqX1L)

かれこれ1時間以上、門田はアパートを探していた。
「くそ!どこだ!どこなんだよ!」

門田は焦っていた。
5時間程走って、ようやくアパートのある町まで着いたが紙に記されている番地がなかなか見つからない。
「もう近くまで来てるはずなんだが…くそ…分からん」

門田はキョロキョロと余所見をしながら歩いていた。
その時突然、前方の女性にぶつかる。
二人は一瞬よろめくも、すぐに姿勢を整える。

「す、すみません。」
女性はぎこちない声で門田に対し謝る。

その女性は少し長めの杖をついていて、どこか元気のない様子。
見た目は40代後半当たり。

すぐにでもアパートの場所を知りたい門田は、グッドタイミングと言わんばかりに、その女性に尋ねる。

「こっちこそ、ごめんなさい。い、今よろしいでしょうか?このアパートを探してるのですが、ご存知でしょうか?」

門田はアパートの記されている紙を女性に見せた。
女性はそれを見て、少し考える。
そして閃いたように、彼女は言う。
「知ってます。ただここはアパートではなくて、たしかマンションだったような。」

「どっちでもいいです。この場所が早く知りたいんです。」
くい気味で門田が言う。

「わっわかりました。ちょうどこのあたりを通る予定なので案内しましょうか?」
女性は少しオドオドしながら答える。

門田は即決で答える。
「お願いします!」

Re: E2(エキストリーム・エキセキューション) ( No.32 )
日時: 2011/07/21 23:33
名前: レッドラム (ID: w1UoqX1L)

目的のマンションに着いた門田と女性。

門田は内心少しホッとしていた。
これで部屋に入れば自分は射殺されずに済む。
時間も余裕を持っての約3時間前に到着出来た。
全て予定通り!

しかし…気になる。
結構大きなマンションだ。てゆーか、豪華だ。
数えるだけで10階建て。1階の周りには大理石と観葉植物。そして、意味不明の入り口前に流れている小さな滝。
こんな下種な死刑囚に政府が、こんなマンションを用意するか?

門田は疑問に思ったが逆に死を常に前にしている人間だけにこのくらいの配慮は当たり前かな?と思う。
考えても仕方がない。とにかく21時までに部屋に入らなくては!

門田は女性にお礼を言い、マンションの入り口の自動ドアに足を入れる。
その時、ふと幻聴が聞こえた。
しかし、その幻聴はだんだんと自分の耳に近づいてくる。
後ろを振り向くと杖をカツカツついたその女性が何か言いながら急いで向かってくる。
そして、女性は門田と一緒にマンションの自動ドアをくぐる。

「どっどうしたんですか?」
門田は驚きながら彼女に問う。

「はぁ、はぁ、忘れ物してるわよ。いや、はぁ、はぁ、忘れ事かしら。」

門田は自分が何を忘れたのか分からない。

「はぁ〜、思い出せない?8項目目。標的者の存在を。あなたは無防備すぎるわ。これほど簡単に死の塔に引き込めるなんて。はぁ、やっと落ち着いた〜。」

目が大きく開く門田。
そして呟く。

「あ、あんたが…」

「そうよ。私が標的者。あなたを処刑する標的者よ。私の名前は美尾さゆり。邪魔者が来る前にあなたを殺すわ。」

第5章 E2開始 完





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