ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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E2(エキストリーム・エキセキューション)
日時: 2010/11/26 17:56
名前: 林 大介 (ID: .O7WJzbr)

はじめまして。
なるべくリアルに迫力のある小説を書きたいと思います。矛盾点や問題点が多々あると思いますが、素人の勉強不足だと思って見逃してください。
よろしくお願いします。

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Re: E2(エキストリーム・エキセキューション) ( No.8 )
日時: 2010/12/16 17:37
名前: 林 大介 (ID: w1UoqX1L)

「E2のシステムは簡単に言うと法の下加害者をあだ討ちするということです。」

あまりにも衝撃的な言葉をあっさりと言う御堂。

「あだ..討ち?」
言葉に詰まる晴彦。

「その通り。そしてこの法案は現在一般人の中では南さん、あなたしか知りません。政府の中でも私を入れてごく少数の人間しか知りません。よってこの法案を世間に知らしめることができる人はあなたしかいません。」

「ちょっと待ってくれ!」
晴彦が話しに割り込む。

「分からない…なぜ俺が…あだ討ちをしないといけない!?人殺しをしろって言ってるのか!?」
気が動転する晴彦。

「誰も南さんにあだ討ちしろとは言ってないですよ。これはあくまで提案型の法案です。強制制は一切ないです。あなたの気分次第でいつでも施行できる法案です。施行後もあなたのやり方次第で自らあだ討ちしないで済むでしょう。こんな事言いたくないですが、他人を利用するとか、色々考えることが出来ます。」

「ふざけるな!こんな法案ふざけている!何が目的で…ゲームじゃないか!被害者感情を逆なでしてるよ!」
思わず立ち上がり憤りが隠せない晴彦。

御堂は静かに目を閉じ、ゆっくり開く。
そして再び話し出す。

「ふざけてはないです。このE2が成功すれば日本の死刑制度は大きく変わる。被害者の感情が置き去りになっている現在の司法を私は許せない。加害者の人権?命の尊さ?死刑廃止?そんなものはカスだ!被害者の命と加害者の命は大きく違う!価値も違う!だから、それを加害者に真の意味で教えなければいけない!たやすく首に縄を掛けると思ったら大間違いだ!生きるということ…死ぬということ…それを…知って考えて、理解した上で処刑する。これほど究極的な処刑方法はないです!」

息を少し切らし、熱が上がる御堂。
呆然と聞いていた晴彦は我に帰り、御堂に問う。

「このシステムでどうやって被害者感情を満足させる?具体的なことを聞こうか。」


Re: E2(エキストリーム・エキセキューション) ( No.9 )
日時: 2010/12/17 13:47
名前: 林 大介 (ID: w1UoqX1L)

「あなたの妹さん達を殺した門田利行は自分の命に対して執着心がある。絶対に死にたくない、他人は殺しても自分の命は助かりたい…そんな利己主義な男です。まずは門田を再び社会生活に戻します。E2の設定上ルールがいくつかありますが、門田は絶対にルールを守るでしょう。自分の命が大切な分、ルールを守らなければその場で射殺ですから。資料をもう一度見てください。ここでいう対象者は門田のことをいいます。死の淵から再び這い上がり、自由になった奴は生きる喜びに心が震えるでしょう。
しかし、それではただの釈放になってしまう。
そこで奴には常に死の恐怖が付きまとう環境で生活してもらう。奴に死を与えるのは標的者。つまり南さんあなたです。ただ先ほども言いましたが、あなたが直接手を下す必要はない。あなたが情報発信のスタートだとすれば、他人に門田の処刑を任せることも出来る。この意味分かりますか?」

南は頷く。
「インターネットや携帯で情報を流せば、誰でも標的者になれるということか。しかし、そんなことすれば情報が一気に流出して、その一部の団体やマスコミが黙ってないんじゃないか。」

「言葉が悪いですが、圧力を掛けています。マスコミ、経済界、警察。だから、公になることはないです。しかし、インターネット上の掲示板などは止めることができないでしょう。情報が膨大ですから。ただ一般人が最も信用する情報源のTV、新聞、雑誌は完全に抑えてますので、ネット上でいくらE2に関しての情報が流れてもそれはただの噂でしかない。そう…噂で終わるでしょう。」

一息おいて、御堂が再び話す。

「この世は地獄です。人は状況が変われば、狂気に走ることもある。殺すことが合法なら、今まで押さえ込んでいた自分の闇の部分を一気に解き放ち、実行する。この世はそんな人間ばかりだと私は思います。一つ間違えれば、誰でも門田のような殺人鬼になってしまう。そして、今度はそんな殺人鬼に門田は追われる。そして、無残に死んでいく。自分が犯したこと、そして犯されていることを考え、被害者の気持ちを思い出すでしょう。恐怖と絶望。生きようと、更正しようと社会生活に戻っても、結局落とされる死の淵。これが加害者に対し生と死を再び考えてもらい、処刑するということです。私はこのシステムで被害者感情を少しでも緩和できると考えています。そして、今後の死刑制度に大きな変革をもたらすと考えています。」

そう御堂が話し終わると、時が止まったように静まり返るラウンジ。時に強い風が窓を打つ。晴彦は俯き、一つため息をつく。そして顔をあげ、御堂に言う。

「他人が俺の敵に手を下すのはやはり気に入らないな。かといって、妹たちも俺が人殺しになることを求めていないし。殺してしまったったら、俺も結局同じ穴のムジナ…普通に死刑にすることは出来ないんですか?」

「普通に死刑にすれば、南さんの気持ちは満足ですか?奴は最後の最後まで自分の命が中心で、妹さん達の命や気持ちを一切考えてない。反省もしてない。南さん、あなたがこの1年間、この病棟で苦しんだことも。被害者感情は加害者に対してあきらめの気持ちを生み出すことは間違っている。」

「あきらめ…」
一言晴彦はつぶやき、この1年の苦しみを思い出した。

第2章 E2終了

Re: E2(エキストリーム・エキセキューション) ( No.10 )
日時: 2010/12/29 20:59
名前: 林 大介 (ID: w1UoqX1L)

第3章 あきらめの1年間

「こっ…これは…?」

俺は思わず呟いた。

目の前に広がっているのは、血の水溜り。
そこに横たわる二人の妹。
亜紀、純…
二人の顔は青白く、少し不安な表情。
瞬きは一度もない。

俺は悟った。
一瞬で。
何かとんでもないことが起こったのだと。

静かに俺は二人に近寄る。
そそり足で。
二人の元から流れる血が俺の足元に近づく。

「う!」
俺は思わず、足を止めた。
そのどす黒い血を見ると、どこかに連れ去られそうで。
そしてその血に触れると、俺は俺でいられない。
そう思った…
その瞬間、まさに数十秒。
窓の外から偶然にも救急車のサイレンの音が聞こえる。

「あ..」
俺は現実に戻った。
何をしなければいけないか、今初めて思いついた。

俺は二人を抱え上げ、自分のシャツの袖を思いっきり破り、血が最も吹き出てる部分をそれで抑えた。
想いをこめた…
助かってくれ...と。

しかし、血は止まらない。
俺は片腕でどす黒く染まった袖切れを押さえながら、携帯を震えた手で取り出し、119番通報をした。
救急車は15分後に到着するという。
何でこんなことを早く思いつかなかったのか…後悔した。

後悔しても遅かった。
手術室で二人は息を引き取った。
あっけない。
昨日まで元気だった二人が…

そして…誰がこんなことを…

俺の名前は南晴彦
激動の1年間が始まろうとしていた。







Re: E2(エキストリーム・エキセキューション) ( No.11 )
日時: 2011/01/12 19:27
名前: 林 大介 (ID: w1UoqX1L)

ここは警察署内の取調室。

第一発見者として俺は取調べを受けていた。
家族構成、友人関係、職場、学校、二人が普段遊んでいた場所など、事細かく尋問された。
時に、自分が犯人だと疑われているのではないかと勘違いするような質問もされたが、俺は素直に全てを話した。
このような時、人間は二つのタイプに別れると思う。
自分は被害者であり、疑われる余地のない人間だと豪語して逆上するタイプ。そしてもう一つは、俺のように現在何が起こっているのか冷静に判断し、粛々と事に当たるタイプ。
この時まで俺は後者のタイプの人間だと思っていた。
いや、後者でなければ自分を見失ってしまい、未来さえも見えなくなると思った。
自宅に帰るまでは…

取調べが終わり、俺は解放された。
外に出ると辺りはオレンジ色に染まり、夕日が西の空に沈みかけていた。
特に何も考えず、トボトボ歩いていた。
いつもの見慣れた近所の公園を横切ろうとした時、ふと心がざわめいた。立ち止まり、導かれるかのように赤い滑り台に向かって歩く。

「亜紀はこれが好きだったな…」
滑り台の手すりに手を置き、昔を思い出す。
二人とは7歳も歳が離れていて、まだ幼稚園児だった亜紀と純の手を引いてよくこの公園で遊んでいた。
両親が死んで、寂しさを紛らわすように3人で夕日が暮れるまで遊んだ。

「純はだんご作るのがうまかったな…」
滑り台の着地点に広がる砂場の砂を片手で拾い、ゆっくりとまた地面に蒔く。サラサラときれいな砂は夕日が染み込み、あの楽しかった思い出を重ねる。
そして、突然何ともいえない悲しみが押し寄せてきた。
この公園にずっといては自分が押し殺されそうな気がしたので、走ってその場を後にした。

それから数分後、自宅に到着。
何気なくドアを開ける。
ガランと静まり返った玄関には、すでに警察の家宅捜査が終わり、二人の血痕も拭き取られていた。

それよりも二人の声がない。
「お兄ちゃん、おかえり!」
その声が…

「ハルちゃん、おかえり!」
両親がいなくなった時の、心境を思い出した。
いつもの母さんの声がない…

急に涙が止めどなく流れ始め、嗚咽を起こした。
体の骨が一気に砕け、力が入らなくなり、膝が地面に着く。
そして力なく独り言を言い出した。

「一人だよ…母さん…父さん…亜紀…純…一人になっちゃった。寂しいよ…寂しいよ…」

文字通り泣き崩れた。人生にぽっかり穴が開き、底の底まで落とされた心境。
俺は思った。
警察署内で取調べを受けていた時の俺は冷静ではなく、完全に心をどこかに置き忘れていただけなのではないかって。
こうやって二人の薫りが残る場所にいたら、俺も結局前者のタイプの人間なんだって。かっこつけんな!
そう思った。

これから、俺の未来はどうなるのだろう?



Re: E2(エキストリーム・エキセキューション) ( No.12 )
日時: 2011/02/21 12:54
名前: 林 大介 (ID: w1UoqX1L)

上司A「なんか緊張するな〜」
部下B「たしかに。あんまり言いたくないですけど、死んでたりとかしたら…」
(以下から、AとBで表現します。)

A「十分ありえると思うぞ。両親と娘さん二人も亡くして、そりゃ、彼の心境を考えると…絶望的だな。」
B「自分…死体とか見たことないです。」
A「葬式とか出たことないのか?」
B「ありますけど、まだ幼かったので記憶が…」
A「老衰で亡くなる人って、結構きれいな死に顔なんだよ。俺のばぁちゃんがそうだった。ただ、じいちゃんは肝臓の病気で死んだんだけど、やせ細って、相当苦しんで死んだんだな〜って顔だった。」
B「へ〜」
A「ただ、それはあくまでも葬式っていう整った環境での死体との対面だ。今回は違う。ナマだ。ナマ死体だ。それは俺も初めて。」
B「臭いとか、すごそうですね。」
A「二日間音信不通だからな〜。今日で3日目ということは、まだそんなに臭いは…いや〜、分からん。死に方次第かな〜。」
B「首吊りとか、全身からあらゆる体液が垂れ流しらしいですよ。」
A「それ最悪」
B「ていうか、どんな死に方であってもそうらしいですよ。」
A「体液垂れ流し?俺、吐いちゃうかも」
B「自分も耐える自信ないです。ただでさえ緊張してるのに」
A「家にいなければいいな。」
B「それが一番ですよね。後は警察に任せばいいし。」
A「南には悪いが、誰もこんな仕事したくないよ。合鍵持ってさ〜、音信不通の人間の家を捜索するなんて。まぁ、警察沙汰になる前の予防策だとしても嫌だな〜。」
B「死んでないことを願いましょう。」
A「そうだな。どちらにしろ死んでないことが一番だ。お!そろそろ着くぞ。」

社有車が着いたのは、南の自宅。
空は灰色に染まり、いかにも雨が降りそうだった。
二人の社員の気持ちを裏切るかのように。

二人は緊張の面持ちで、チャイムを鳴らすが案の定反応がない。
Aはあきらめて、合鍵に手を伸ばす。


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