ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- E2(エキストリーム・エキセキューション)
- 日時: 2010/11/26 17:56
- 名前: 林 大介 (ID: .O7WJzbr)
はじめまして。
なるべくリアルに迫力のある小説を書きたいと思います。矛盾点や問題点が多々あると思いますが、素人の勉強不足だと思って見逃してください。
よろしくお願いします。
- Re: E2(エキストリーム・エキセキューション) ( No.33 )
- 日時: 2011/07/28 19:02
- 名前: レッドラム (ID: w1UoqX1L)
第6章 死の塔
「いよいよ始まったな。御堂氏」
ここは警視庁国家公安委員会、局長室。
御堂に話しかけたのは公安局長、神岡新造。
室内を改造し、至る場所に液晶モニターを設置。
神岡、御堂、その他3人程の部下が映像を見守る。
「以外に接触が早かったようですね。私の予測では今日は何もないと思ってましたが。」
御堂が神岡に言う。
「美尾さゆりのことは調べさせてもらったよ。なんと勉強熱心な女性だ。本当に先日君の事務所から帰宅する途中、剣術道場に寄っていたよ。しかもそれからは毎日4時間以上はその道場で剣術の修業をしていた。
それだけではない。その道場の流派も知っていて、型に囚われないより実践向きな流派を選んでいる。素晴らしい。
このように努力する女性は性格上、すぐにでも自分の実力を試したくなるものだ。
私は今日彼女が門田を襲うことに対し、何の疑問も抱かない。
まさに必然。必然の強襲だよ。」
「そうですか。これでは南さんの出る幕はなさそうですね。」
俯き加減に御堂は話す。
「あの男に人は殺せない。以前、私は直接彼にそれを言った。そしたら案の上、土壇場で殺すことが出来なかった。十分余裕があったのに。」
神岡はたばこを口にし、火をつける。
「あの裁判所の事件のことですか…」
「フー、恐らくは今日美尾さゆりが門田を処刑するだろう。南には悪いが彼女と比べるとメンタル面が大いに弱い。」
「私の事務所で彼女と話したときは逆の印象を持ちましたが。彼女のほうが人を殺すことに臆病になっていましたけど。」
「女は土壇場に強いよ。特に負けず嫌いで、努力家で、プロフェッショナルの塊のようなあの手の女はな。」
神岡は灰皿にまだ少ししか吸っていないたばこを押し付ける。
「まぁ、見てみよう。結果がどうであれE2の正体を俺たちも早く知りたい。吉とでるか、凶とでるか…」
- Re: E2(エキストリーム・エキセキューション) ( No.34 )
- 日時: 2011/08/03 11:08
- 名前: レッドラム (ID: w1UoqX1L)
静まり返るマンションのロビー。
そこに二人が立っていた。
対象者 門田利行
標的者 美尾さゆり
マンションの入り口の自動ドアがガシャン!と大きな音を立てる。
「さぁ、もうこれであなたはこのマンションから出ることが出来ない」
美尾はどや顔で微笑む。
そして左手に持っている杖の持ち手の部分に備えられたロックを解除する。
「銃刀法って本当にやっかいよね〜。これを隠すのに色々考えたけど、最終的に杖の中に隠すことに落ち着いたわ。特注なの、これ。」
そして、美尾はゆっくり持ち手の部分を上に引く。
そこから出てきたのは綺麗に磨きぬかれた刃。
門田はその刃を見るなり、少し腰が引く。
しかしながら、なかなか現実感を掴むことが出来ず、身動きが取れない。ただ、美尾の行動を傍観してるだけであった。
「虎鉄っていう名刀らしいわよ。この日本刀であなたを処刑するの。切れ味は抜群よ。あなたが素直に死を受け入れたら、一瞬で終わるわ。私は処刑される側のことも考えて、今まで剣術の訓練もしてきた。介錯を成功させる自信もある。やはり素人だとこんな刀は使うことが出来ず、斬られるだけ斬られて無残な結果になると思うわ。でも、私は違う。だから、あきらめて死を受け入れなさい。」
刀をカバーしていた杖を投げ捨てる。
大理石の地面に落ち、その音がロビーに鳴り響く。
変な汗が脇から滴り落ちる門田。
頭の思考回路をフルオープンにし考える。
何が得策かということを。
恐らく、どう足掻いて助命懇願してもこの女は許してくれないと思う。
それだけ美尾の瞳の奥には処刑の2文字しかないほど迫力に満ちていた。
それならば抗うか?そんなことすればあのルールの文言に反することになる。したがって、俺は射殺される...
となると、第3の思考...逃げる!
門田は後ろを振り向き、走って奥の階段に向かう。
美尾はそれを黙って見ていた。
そして呟く。
「思った通り過ぎるわ。やはり下種な男。まぁ、階段に向かうのは結構だけど、どちらにしろ袋のネズミ。あなたには死しか待ってないんだから。」
- Re: E2(エキストリーム・エキセキューション) ( No.35 )
- 日時: 2011/08/03 18:39
- 名前: レッドラム (ID: w1UoqX1L)
門田は無計画に逃げている訳ではなかった。
2階に行けば、ベランダがあることに気づいていた。
そして、そこから飛び降り、多少己は傷ついても逃げ切ることが出来る。
はずだった...
「なっなんだ、このバリケードは!」
見渡す限りの鉄製のバリケードがベランダと外をシャットアウトしていた。これでは飛び降りるどころか、体を入れる場所もない。
「たしかこのマンションに入る前に2階にこんなものはなかったはず。」
その時、電光石火の如く閃いた。
あのガシャン!という大きな音は入り口を閉ざす音ではなく、このバリケードがシャットダウンした音...
やられた...
「ふつうこんなバリケードないわよね〜。」
門田の30メートル離れた場所に美尾が立っていた。
驚きと恐怖に顔が引きつる門田。
「ここはね。政府が認定したあなたの処刑場なの。それにプラスで私がバリケードのアイデアを出した、まさに死の塔。でも安心して。どこかのスプラッター映画のように色々な痛い仕掛けとかないから。あくまでも、あなたを処刑するのは私。」
万策尽きたかのように、絶望が走る門田。
「さっ三階にもバリケードを?」
「三階にはないわ。普通のベランダよ。」
美尾はきっぱりと答える。
一か八か、門田は3階に続く階段に走って向かう。
こうなれば計画もクソもない。
3階から飛び降りるしかない!
- Re: E2(エキストリーム・エキセキューション) ( No.36 )
- 日時: 2011/08/04 02:57
- 名前: レッドラム (ID: w1UoqX1L)
3階に辿り着いた門田。
息を切らし周りを確認する。
たしかに美尾の言う通り、バリケードはなく外を見渡せる。
ただ...
高すぎる!!
2階と3階はこうも違うかと言わんばかりに高すぎる。
門田は恐る恐る3階から下を見た。
地面には無常な鉄筋コンクリート。
観葉植物が植えられている出っ張ったベランダ。
目測しても高さは15メートル以上はある。
こんな所を飛び降りるなんて、ただの自殺!
助かったとしても、両足骨折または人体損傷で再起不能!
そうしてる間に美尾によって処刑!
良い事のない結末!!
門田はビル底から流れる風を一身に受け止めていた。
少し前に目線を向けると、見慣れたデパートが見える。
たしか、じいちゃんと一緒にあのデパートによく玩具を買いに行ったけ...
そんなことを考えてると、美尾が再び3階に現れた。
「どう?飛び降りる準備は出来た?」
美尾は門田に言う。
「なぜだ!俺はあんたに何もしていない!あんたどころか、あんたの身内にも何もしてない!それなのにどうして、どうして、俺を処刑するんだ!」
門田は美央に向かって、叫ぶ。
「法律がそうなのよ。たとえあなたの被害者じゃなくても、この法律さえ情報共有出来れば、誰でもあなたの被害者になれる。もっと言うと、被害者になることによって、あなたを「あだ討ち」出来るのよ。」
美尾は静かに答える。
「そっそんな世の中があるか!人の命を何だと思っているんだ!」
自分の言ったことに、少し違和感を感じる門田。
門田自身、自分の都合や悪意によって殺めた二人の被害者の気持ちを考えると、今の状況がごく当然かのように思える。
しかし、美尾という女はただの他人。
そんな他人に殺されてたまるかと、大きな声で叫ぶ。
「覚悟しなさい。門田利行。」
美尾は相手の首を狙った構えで、日本刀の先を門田に向ける。
「やめろ、やめてくれ、一体あんたに何の恨みがあるんだ!」
門田は懇願しながらも、後ろに足を進める。
「覚悟!!」
必死の形相で美尾は門田に刀を斬りつける。
その距離わずか10メートル。
あまりの俊足に門田自身も逃げることはなく、ただ両手を前に差し出すだけ。
その瞬間、壁面の誰もいるはずのない302号室が開き、その暗闇からもう一つの刃が現る。
そして美尾の刃を弾き返す。
「なっ、何!!まっまさか!」
美央は弾かれた刀を手前に戻し、体勢を整える。
「あんたが名のるこの死の塔にバリケードを加えたのなら、俺も加えさせてもらうぜ。俺自身が、この死の塔302号室で敵を待つということを。」
暗闇の中から現れたのは南晴彦だった。
第6章 死の塔 完
- Re: E2(エキストリーム・エキセキューション) ( No.37 )
- 日時: 2011/08/11 14:01
- 名前: レッドラム (ID: w1UoqX1L)
第7章 秘密
「みっ南!」
モニターに向かって呟く神岡。
「どういうことだ、御堂氏。美尾のバリケードの件は聞かされていたが、南がすでにマンションで待機していることは聞いてなかったぞ。」
神岡は冷静な口調ながらも、眼光を鋭く御堂に向けた。
「申し訳ございません。このE2を成功させるために、あえて秘密にしていました。このことを知っていたのは私と南さんだけです。」
御堂は答える。
「なぜ、秘密にした?」
神岡は御堂に問い詰める。
「情報は拡散すればする分、当初の計画と大きくずれてしまう。そして結果的に失敗する。このE2は南さんのものだと私は考えています。だから絶対に成功してもらいたい。そのためには計画の根本となる部分を出来る限り隠さなければいけなかったのです。それがたとえ公安委員会局長の意に反するとしても。」
「なかなか思い切ったことを言うな、御堂氏。組織よりもあくまで個人を尊重するか。そうなると君自身も危ないぞ。」
脅しともいえる発言をする神岡に御堂は静かに答える。
「覚悟の上です。そもそも私はみなさんに黙って、このE2に2つの秘密を隠しました。その一つが南さんがマンションで待機していたこと。そして、もう一つの秘密が明らかになった際には、私は職を辞し、逮捕されるでしょう。」
「もう一つの秘密...」
神岡はあごに手を当て、御堂を睨む。
そして、御堂に尋ねる。
「逮捕されると分かってまで、なぜあかの他人に協力する?」
「それも秘密です。」
御堂は微笑む。
モニター上には対峙する二人の標的者が映っていた。
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