ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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E2(エキストリーム・エキセキューション)
日時: 2010/11/26 17:56
名前: 林 大介 (ID: .O7WJzbr)

はじめまして。
なるべくリアルに迫力のある小説を書きたいと思います。矛盾点や問題点が多々あると思いますが、素人の勉強不足だと思って見逃してください。
よろしくお願いします。

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Re: E2(エキストリーム・エキセキューション) ( No.3 )
日時: 2010/11/26 19:33
名前: 林 大介 (ID: .O7WJzbr)

コッツ、コッツ、コッツ…

あへゃ!!マジで!マジなのか!?
死ぬ!今日刑が執行される!!この音は間違いない!
刑を言い渡す時の奴らの靴音!

根拠もある!

このフロアーは2つ牢があり、俺ともう一人の死刑囚がいた。名前はカツ。カツも小動物さながら奴らの足音に震えていた。木曜日になるとカツは一人でブツブツ何かを唱えていた。
「コツコツ、コツコツ、異常なし。いつもといっしょ。」

俺は少しカツを不気味に思いながらも、その独り言の意味を尋ねた。カツは答えた。

「木曜になると看守の靴音を聞き分けてるんだ。今のところ同じ靴音だから問題ない。いつもの点呼さ。」

向かいの牢で小さくなりながら、カツは答えた。なるほどと思いながらも、少し疑心暗鬼だったがその日は
本当に点呼だけだった。

それからもカツの靴音論は成果を発揮し、俺たちはその靴音を聞くだけで奴らが来る前から安堵を謳歌していた。

しかし、あの日は違った。
カツが処刑された日。
たしかに音が違った。カツ自身もその違いに気が付き、俺と目を合わせて、そして再びうつむき一言放った。

「どっちなんだろう?俺?お前?」

俺は当時上告中で、死刑確定ではなかった。はっきり言って、カツの靴音論は参考までにしか聞いてなかった。奴らが牢に来るのも、俺にとっては別に問題なかった。しかし、カツは違う。カツは死刑が確定している。言い渡されるとしたら100%カツだ。

そんな時、二つの選択が浮かび上がった。さっきカツが放った一言に対し、俺はどう答えるべきなのか?

「自分は上告中だから死刑は確定してない。だからお前だ」
もしくは「さぁ、どっちだろう?」

前者はあまりにも配慮がないというか、しかし少し早めに覚悟を持たせることが出来る。
後者はカツに少しでも生きる希望を与えることができるが、俺としてはそれよりも生きる希望を持ってる人間が闇に落とされる瞬間を客観視できるということななのだ。

俺は邪悪だ。罪を犯した時も、自分は常に安全で、苦しんでいる者たちを上から見下ろしていた。その度に感じていたえもいえぬ快感。
まるで神をも凌ぐ悪!神ならどうにか出来たはずのことも、糸も簡単に破壊してしまう。人間の尊厳、優しさ、労わり、そして愛を。
俺はそれをしたからここにいる。開き直ってるといえばそれまでだが、性分なのだろう。
悪は、どこまでいっても悪だ。

俺は迷わず言った。

「さぁ、どっちだろう?」

Re: E2(エキストリーム・エキセキューション) ( No.4 )
日時: 2010/11/27 22:31
名前: 林 大介 (ID: .O7WJzbr)

「32番 青木勝也」

その看守はカツの牢の前に立ち言った。
その後ろにはさらに二人の看守。
いつもの点呼ではない。
なぜなら、いつも点呼のときは看守一人だからだ。

二人の看守が邪魔で、カツの様子を見ることが出来ない。牢のドアには10平方センチメートルの小窓があり、俺はいつもそこからカツと話をしていた。しかし、この日ばかりは完全に二人の看守の背中に阻まれている。ただ、声はたしかに聞こえる。

「法務大臣認可の下、本日12時に刑を執行します。別室に移っていただきますので、立ってください」

続けさまに、その看守がカツに言い放った。

カツはどうなった?様子は?
看守たちは少し首を振り、顔を見合わせた。
そして、再び言った。

「別室に移ってもらいます。立ちなさい。」

何とも言えぬ、緊張感がフロアーを支配した。凍りついた時が溶けたのは、カツの一言だった。

「はい。立ちます。」

カツはゆっくりと立ち上がった。そこでやっと看守の頭と頭の間にカツの顔が現れた。
戦慄が走った。
まるで化け物か幽霊を見てるかのように、カツの顔は衰弱しきっていた。
さっきほどまで何でもなかったのに。看守の二言で、カツの人生は終焉を向かえ、自身の精神もすでに死んでしまったのであろう。

そして、看守は鍵を取り出し、ゆっくりドアを開ける。抵抗しないように二人の看守がカツの背中に手を当て、同時に手錠を掛けた。

事が淡々と進んでいく。まるで業務のように。
俺はもっと抵抗したり、暴れたり、泣きまくって命乞いしたりするかと思いきや、そんな素振りも見せない。
何とも、おもしろみに欠ける。

いつの間にかカツは看守と一緒に牢から出て、別室に向かって歩き始めた。俺はカツの背中を見た。

そして自分を重ねた。

絶対に死にたくない。
そう、思った。

その2週間後、上告は棄却され、俺の死刑が確定した。


Re: E2(エキストリーム・エキセキューション) ( No.5 )
日時: 2010/12/02 20:36
名前: 林 大介 (ID: .O7WJzbr)

「33番 門田利行」

俺の名前が呼ばれた。
とうとう宣告の時。

死ぬ!!!!
そう強く感じたとき、看守が続けて言った。

「法務大臣認可の下、本日12時に刑を執行します。別室に移っていただきますので、立ってください。」

カツを思い出した。
この言葉を聞いたときの、奴の心の内が分かった。
絶望、孤独、闇、そして死。この世のあらゆる否定したい事柄が、人間の心の周りを支配して、最終的に握り潰す。
心を握り潰された人間は、もはや皮だけの木偶。
考えることを忘れ、あきらめ、開き直り、死に向かう。

俺も今心を握り潰されている。
額から気味の悪い汗が垂れ始めた。ゆっくりとしたたり落ち、鼻の先にたどり着いた時、俺は再び戻った。

木偶から人間へ。

死に対する恐怖心が脳から目、鼻、口の神経を刺激し、俺は思わず叫んだ。

「やだ、やだ、マジで!?死にたくない!どうにかしてよ!!何で!?やだ!無理、無理!死!?死にたくない!!」

目からは洪水のような涙を、鼻からは滝のような鼻水を、口からは決壊したダムのようなヨダレを撒き散らし、看守たちに命乞いをした。
俺はこんな姿をカツの時に見たかった。さぞかし、笑えておもしろい光景なのだろう。

俺は床をのた打ち回り、便器にしがみつく。
看守たちがすぐさま部屋の鍵を開け、背後から鷲掴みにする。無理やり立たせようとしたが、俺はそれを断固拒否。しかし、3人の看守の力に勝てず、無理やり牢から引き釣り出され、地べたに倒れてしまう。

見るも無残な姿。体中の体液を下敷きに、俺は地面に落ちている石を一つ一つ見た。
こんな無機質な物でも生きているのだろうか?感情があるのか?死は怖くないのか?
震えた手で小石を掴み、皮膚の感触で生を感じる。
何だかホッとした。

まだ生きている。

すると突然、力ずくで立ち上がらされた。
両脇に看守が付き、腕を組まれ、完全に束縛された。
とうとう、別室へ。
足早に看守が歩く。俺は引きずられるように闇へと進んでいく。とうとう死の底へ。
俺は全力投球で看守たちに懇願した。

「お願いだから!お願いだから!死にたくない!たのむ!見逃して!金…金好きか!?金をやる!助けてくれたら金をやる!何でもやる!死だけは!」

無表情の看守たちは、いっこうに俺の話を聞かない。
暗い通路は時に不可解な音を立てながら、俺の奇声が混じる。
体中が震え上がり、もはや自分ではコントロールできない状態。肉体も精神も。

奥に黒い扉が見えてきた。あれが恐らく別室。
あそこが俺の死に場所。棺おけ。
入ったら最期。

手前の看守が別室のドアをゆっくり開ける。
徐々に光が差し込む。希望の光ではない、絶望への光。俺は手で自分の顔を隠した。

俺もこれで終わり…

ドアが完全に開いた。そこには信じられない光景が広がっていた。雨上がりの澄んだ空気に、曇り空から差し込む太陽の光。
あっけに取られすぎて、思わず黙り込んでしまった。
外に出るのは2週間ぶり。

刑は外で行われるのか?
現実に戻ったのは、そう長くはなかった。この一つの疑問を解消しない限り、俺はどちらにしろ死ぬ。
しかし、いつからこの国は処刑が外で?
そんなことしたら死刑のタブーが破られてしまうだろう。
いや、別室はちがう棟にあって、そこに向かっているのか?そっちのほうが確率が高い。ひとまず中継で外に出ているだけ。

そんなことを考えてるうちに、俺は看守たちに刑務所の出入り口まで導かれた。よく釈放された者たちが使用する出入り口。

なぜ?俺、釈放?
ますます分からない。俺はこれから死ぬのに。いや、死にたくないけど、釈放なんてアリ?

夢?夢なのか?

第一章 夢のような木曜日  終了




Re: E2(エキストリーム・エキセキューション) ( No.6 )
日時: 2010/12/02 23:15
名前: 林 大介 (ID: .O7WJzbr)

第二章 E2

E2(エキストリーム エキセキューション)
目的 犯罪率の減少と死に対する考えを改めさせる
手段 対象者に再び社会生活に戻ってもらう。
   その際以下のルールを守ってもらう。

①対象者は都内から離れてはならない。
②対象者は公共交通機関を使用してはならない。
③対象者は政府認定の住居以外の場所に住んではなら ない。
④対象者は携帯電話を使用してはならない。
⑤対象者はパソコン、その他の通信ツールを使用して はならない。
⑥対象者は21時までに自宅に戻らなくてはならな  い。
⑦対象者は個人でグループ、団体を組織してはならな い。
⑧対象者は標的に狙われた場合、反抗、反撃をしては ならない。

以上のルールを守れなかった場合、その場で射殺します。

標的者に対するルール

①標的者は20歳以上であること。
②標的者は個人であること。グループ、団体はみとめ られません。
③標的者は政府認定の凶器を使用すること。
④標的者は政府認定の標的場所で対象者を狙うこと。
⑤標的者は対象者と契約、利害関係を結んではならな い。

以上のルールを守れなかった場合、その場で逮捕します。

Re: E2(エキストリーム・エキセキューション) ( No.7 )
日時: 2010/12/16 16:26
名前: 林 大介 (ID: w1UoqX1L)

「なんですか?これは」
その男は資料を片手に口を開く。

「新法案エキストリームエキセキューション。略してE2。直訳すると究極の処刑。」
ハキハキとした口調でその男は答える。
恐らく最近新調したであろう光沢の美しい黒のスーツと有名ブランドの時計。
その男の名は御堂洋平。
民法党の若手議員であり、E2の提案者。
先月の国会でE2法案が衆議院を可決し、その2週間後早々と施行された。

「E2?毎日ニュースや新聞を読んでいるが、そんな法案聞いたことがない。」

そう答える男の名は南晴彦。
幼少の頃、両親を病気で亡くし、妹2人と父方の実家で不自由なく過ごしていた。
しかし、悲劇は続く。
サイコパス門田利行によって妹二人が惨殺。
晴彦が留守中の出来事であった。

事件後、晴彦は妹2人を亡くしたショックでノイローゼになり、うつ病を患う。
精神病院に入院することになり、リハビリ中の最中、御堂が晴彦の前に現れた。

ここは精神病院のラウンジ。

「知らないのは当然です。あくまでも極秘に進められた法案です。しかしながら形だけでも正当な手続きを取らなければ後々問題となりますので。それだけデリケートな法案なのです。あまり世間にバレてしまうと一部の団体がうるさいものでして」

御堂がゆっくりと、そして静かに話を進める。

「しかしそれは南さん。あなた次第です。あなたのやり方一つでこの法案が世間に広がるも広がらないも全てあなた次第。あなたのための法案なのです。このE2は。」

あっけに取られながらも、少し興味が沸いてきたのか前のめりになって話を聞く晴彦。
それを察し、御堂はさらに話を続ける。


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