ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- E2(エキストリーム・エキセキューション)
- 日時: 2010/11/26 17:56
- 名前: 林 大介 (ID: .O7WJzbr)
はじめまして。
なるべくリアルに迫力のある小説を書きたいと思います。矛盾点や問題点が多々あると思いますが、素人の勉強不足だと思って見逃してください。
よろしくお願いします。
- Re: E2(エキストリーム・エキセキューション) ( No.18 )
- 日時: 2011/06/10 18:53
- 名前: レッドラム (ID: w1UoqX1L)
傍聴席に座る南。
その時は刻々と迫っていた。
そして公判が始まる。
「被疑者 門田利行出廷してください」
裁判官の一言で奥の扉が開き、門田が二人の警察官に両脇を抑えられ姿を現す。
髪はボサボサで、薄く髭が生えている。
目は虚ろで無表情。
南は怒りを隠せなかった。
鋭い眼光で門田を睨み付けた。
拳を握り、歯を食いしばり、理性を保つ。
この計画を実行し、成功させるには理性は不可欠。
ここは南にとって正念場だった。
今、怒りに任せて門田に銃を向けたら、間違いなく両脇の警察官がそれを阻止するだろう。一発しかないチャンスを無駄にしてしまう。ここは証言台に門田が立った瞬間を狙うのがベスト。
奴が完全に一人になり、尚且つ最前列に一番近い証言台で奴を討つ!
怒りと理性が交じり合う混沌とした感情の中で南は決意した。
「やめときな…」
南は一瞬自分の耳を疑った。
たしかに今誰かが自分に向かって一言放った。
幻聴か…南は思った。その瞬間…
「幻聴ではない。俺が言ったんだ。」
南の隣に座る黒いスーツの中年男。
男は解体銃の入ったカバンに手を沿えた。
「ここに君の計画が入っているのか?どうやって手に入れたかは聞かないでおこう。しかし、やめたほうがいい。今日、俺はそれを君に言いに来たんだ。」
南は愕然とした。
その男は淡々と話しながらも、何とも言えない迫力。
まるで全てを見通せるかの眼力。
南は震えた弱い口調でその男に話し掛ける。
「なっ何者ですか?あなたは?」
男は静かに答えた。
「言えません。ただあなたを見張るよう上から指示されています。」
「う、上?」
「君の情報はほとんど知っています。アルコール依存症で病院に通っていたことも。あなたは情緒不安定なところがある。それは今後また病院に通えば治るかもしれない。しかし、ここで変なことをすれば君は警察管理の精神病棟送りだ。そこから出るのは容易ではない。その覚悟がおありかな?」
南はその男に全てを読まれていた。
そしてその説得力ある言葉に少し魅かれつつもあった。
しかし、その刹那証言台に向かう門田と南の目が合う。
今までその男との会話に夢中で門田の存在を忘れかけていた。
証言台に立つ門田。
南の気持ちに火がついた。
ようやく思い出した復讐心。
銃の入ったバックを持ち、手を入れる。
「君は優しい人間だ。心の底から優しい人間。そんな人間には到底無理だ。人を殺すことなんて。」
男は最後に一言放つ。
南はバックの中で銃を持ち、男に言った。
「それ以上何も言わないで下さい」
席は立ち、カバンから銃を取り出す。
傍聴席、裁判官、検察官、警察官の目が一斉に南に注がれる。
その異変に気づき、門田も振り向く。
銃口を門田の頭に向け、引き金に人差し指を掛ける。
その瞬間、悲鳴と怒号が館内に鳴り響く。
まさにパニックである。
あまりの異変に目が点の門田。
しかし、自分が置かれている状況をすぐに察知し目が大きく開く。
「たっ助けてくれ…」
弱々しく南に一言。
しかし、南は表情変えることなくゆっくり引き金を引く。
「お、お願いだ!!助けてくれ!頼む!頼むから!!」
今度は力強い門田の懇願が南の心を震わせる。
「そうやって…そうやって強く懇願した妹達をお前は殺したんだ!!」
南は門田に言い放つ。
「お前はその報いを受けるべきなんだ!」
引き金がいよいよ最終ラインに突入しようとしていた。
「ヒー、ヒー、やだ、やだ!死にたくない!死にたくない!」
門田の何とも言えない必死の形相。
全てのプライドを度外視した愚かさと情けなさの協奏曲。
その協奏曲を聴きながら、南に一つの疑念が過ぎる。
こんな男を殺すのか?
たしかにこの男は妹たちを殺した。
この事実は曲げる事は出来ない。
しかしながら、こんなにも脆い男とは…
まるで子供…自分勝手の利己主義。
何の覚悟もなく、幼稚な殺意が妹達を殺した。
こんな男の為に俺は引き金を引くのか?
南の疑問は深くなり、広がるばかり。
ここまできて引き金が引けないその心は…
あの男の言う通り。全てを見通したあの男の言う通りになった。
「俺は優しい」
そう思った瞬間、後ろから警察官に南は取り押さえられた。
その衝撃でゆっくりと木製銃も地面に落ちる。
南は何も出来ぬままその場で逮捕となった。
もちろんこの事件はトップニュースとなり前代未聞の出来事となった。
南はその日から抜け殻となる。
警察管理の精神病棟の片隅で。
結局何も成せないまま、一人で空回りし、挙句の果てに暗い部屋の中。
絶望と少しずつ現れる「あきらめ」という文字。
その文字を見つめながら、南の1年は去った…
第3章 あきらめの1年間 完
- Re: E2(エキストリーム・エキセキューション) ( No.19 )
- 日時: 2011/06/16 00:51
- 名前: レッドラム (ID: w1UoqX1L)
第4章 もう一人の標的者
「なるほど…そういうことね…」
その一言を放ったのは、南が収容されている精神病棟の局長、美尾さゆり。各所に設置されている盗撮カメラで南と御堂の会話を探った。
「民法党の議員がこんなところに来て、被疑者と密会なんて妙だと思ったわ。そして、一部始終を聞いてみたら、なんて素敵な事でしょう。私はこれで主人公になれる。くだらない日常からメルヘンのお姫様に。」
彼女は日常に絶望感を感じていた。
ありふれた精神を乱した患者との付き合いに飽き飽きしていた。
彼女は思っていた。
精神が乱れた患者こんなものではない!っと。
辺りかまわず人を襲い、死に追い込む。
それがたとえ女性だろうが、子供だろうが、関係ない。
何故なら彼らはサイコパス(異常者)なのだから…
しかし、実情この病棟には所謂普通の殺人者しかおとづれない。
「13日の金曜日」という映画には到底現れないような草食系殺人者
ばかり。なんとも味気ない。
逆にそんなことを考える私のほうが異常者であり殺人鬼…
美尾は日々の生活に上記のような感情を持っていた。
しかし、法律を犯せない臆病さ。
精神病棟の長である責任。
この二つの鎖に繋がれ美尾は理性を保っている。
「法の下、人を殺せる。その情報を知った者は誰でも標的者になれる。だから私は標的者になれる。そういうことね。」
御堂と南の会話を盗み聞きし、その鎖が今解き放たれようとしていた。
- Re: E2(エキストリーム・エキセキューション) ( No.20 )
- 日時: 2011/06/17 01:51
- 名前: レッドラム (ID: w1UoqX1L)
「あきらめ…」
南は一言呟いた。
御堂は南の言葉に続けるように話した。
「南さんの気持ちはよく分かる。誰もが…たとえ被害者になったとしても加害者に対しての直接の復讐などほぼ無理に等しい。それはなぜか?
理性という鎖に縛られているから。どんなに口では殺す!復讐してやる!と思っても理性が邪魔をする。もっといえば…これから自分自身に降り懸かる罰を気にしている。そんなところもある。
しかし…南さん…あなたは実に清い心を持っている。誰も成しえなかったこと…恐らくは誰かが一度は考えたが成し得なかったことを寸前までやった。そんなあなたに諦めて欲しくはない!法という名の下に南さん…あなたは裁くことが出来る!門田という憎き殺人鬼を!諦めなければ成すことが出来る!あなたの真の目標を!!」
御堂の最後の説得が終わった。
これほどまでに御堂が南にこだわることを南自身も不思議に思っていた。
しかし、御堂の言い分も分からないこともない。
この1年間の苦しみ、絶望感は加害者に対して万事に値する。
その万事を結局まっとう出来ず自分自身も牢に閉じこまれた愚かさ。
南の頭の中は何が正しく、何が悪いのか混乱を生んでいた。
そして…たどり着いた…最大の答え…
南は御堂に語る。
「諦めたくない。かつて俺の上司が「諦めるな!」と言ったことを思い出す。時が経つにつれそれを忘れかけていた。俺はもう後ろを振り向かない!教えてくれ!具体的に!門田を処刑する方法を!」
南の覚悟は決まった。
このE2という法律に加担した。
御堂は南にそっと話しかける。
- Re: E2(エキストリーム・エキセキューション) ( No.21 )
- 日時: 2011/06/17 22:20
- 名前: レッドラム (ID: w1UoqX1L)
「3日前に南に話した内容を聞いたわ」
美尾は御堂に迫る。
ここは御堂の事務所。
「妙だと思ったの。秘書も連れない民法党の議員が私の精神病棟に来て、コソコソと被疑者と密会だなんて。だから聞かせてもらったわ。あなたと南被疑者の会話を」
「各所に盗聴器があるとは…私も誤算か…」
「そんなことも気がつかないなんて。やはり、危機感のない最近の政治家ね。」
御堂は俯きながら、言う。
「E2の内容はどこまで知っている?」
「無論、一部始終全部!余すことなく聞いたわ。」
「で、あなたの望みは何ですか?」
「フ…E2に私も参加するわ。結論から言うと、私も一度でいいから人を殺してみたかった。合法的に。そして、人殺しの感情を知りたかった。それが、今後の私の糧になる。精神科医としての力量をアップするきっかけとなる。」
御堂は半ば呆れながら聞いていたが、
「なるほど。しかし、人殺しがしてみたかったというのは狂気染みている。そのことに関して、精神科医として、いや、人間としておかしいと思いませんか。」
「思わない。これは、この法律はどんな個人的な感情も受け入れるはず。私の真の底は今言ったこと。つまりは人を殺し、その私の感情を知りたい。それだけよ。それが殺人者の気持ちとリンクすれば、今後の精神鑑定の解決材料になる。」
「もっともらしい考え方だが、あなたはただ人を殺したいだけでは?」
「そうだとしても、何が悪い?あなたは南に言った。E2という情報を共有できた者は誰でも標的者になれると。標的者として今後、門田を狙おうが、狙わないが、私の勝手。そうでしょ?」
美尾は続けて、御堂に迫る。
「だから早くよこしなさい。門田を殺す武器を!」
- Re: E2(エキストリーム・エキセキューション) ( No.22 )
- 日時: 2011/06/18 14:19
- 名前: 紅蓮の流星 ◆vcRbhehpKE (ID: L7bcLqD7)
な に こ れ 超 た ぎ る
…いきなりスミマセン。紅蓮の流星というものです。
設定が非常に興味深く、心理描写がよく書き込まれていて、なんか気付いたら思わずコメントしていました。
これからも更新頑張ってください。陰ながら応援させていただきます。
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