ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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E2(エキストリーム・エキセキューション)
日時: 2010/11/26 17:56
名前: 林 大介 (ID: .O7WJzbr)

はじめまして。
なるべくリアルに迫力のある小説を書きたいと思います。矛盾点や問題点が多々あると思いますが、素人の勉強不足だと思って見逃してください。
よろしくお願いします。

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Re: E2(エキストリーム・エキセキューション) ( No.13 )
日時: 2011/05/12 20:11
名前: レッドラム (ID: w1UoqX1L)

「う!!」
AとBは思わず口に手を当てる。

その何とも言えない異臭。
まるで生ごみを半年放置したような悪臭。
誰も嗅いだことのないような表現し難い怪臭!!

Aは思った。
これは…死臭!!

生まれて一度も嗅いだことのない臭い!
人生で決して出くわす事のない臭い!
病院の一室、衛生管理が出来ている環境なら
その臭いは消すことが出来る。
だから今まで嗅いだことない!
ばっちゃんの時でさえも!
これがリアルな死臭!
考えるだけで喉から酸っぱいものがこみ上げる!
あの奥のドアを開けたらその正体がある!!

誰も見たことない醜態が…

AとBは玄関で顔を見合わせた。

A「この臭いは明きかにあの奥から…」
B「はい…」
A「覚悟しなきゃな…」
B「は、はい…」
A「いっくぞ…」

AとBは玄関の奥にあるドアをゆっくり開ける。

Re: E2(エキストリーム・エキセキューション) ( No.14 )
日時: 2011/05/18 11:23
名前: レッドラム (ID: w1UoqX1L)

ドアを開けると、そこには台所とリビングがある。
床にはゴミが散乱してあり、特に気になるのがウィスキーやウォッカといったアルコール度数の高いお酒の瓶が所々に放置してある。

AとBは恐る恐るも前に進んだ。

A「な、なんだこの音は?」
B「テレビの砂嵐の音?っすかね?」

リビングの奥にテレビがあり、Bの言う通りテレビの砂嵐の音だった。
そのテレビの前に呆然と胡坐をかいでいる南がいた。

A「南!」

Aは堰を切ったかのように、声を上げた。
南が死んでいない安心感と醜態を見ずに済んだ安心感から生まれた声。
Aは南に近づいた。

A「南、心配したぞ!どうして、連絡をよこさなかった!」
Aの言葉に南は反応を示さなかった。ただ口は半開きになり、時折したたり落ちるよだれ。髭は剃ってなく、髪はベタベタ。3日間風呂に入っていない体臭とアルコールの臭いが混じり合い、部屋の中は異様な臭いに包まれていた。

A「なぜ、何も言わない?俺たちは心配でここに来たんだぞ!」

南の黒目がゆっくりとAの方向を向く。

「心配…かけて申し訳ない。僕は…この通り元気です。今日のところは…一人に…させて下さい。」

A「お前…どれくらい酒を飲んだ?そしてこの異様な臭い…相当吐いてそのままなのか?」
B「そういえば、こっこの床所々変色してる!」

「お願い…お願いします。一人にさせて下さい。もう一人がいい…」

A「今のお前を見て、誰が一人にできるか!お前な〜、俺たちがどんな気持ちでこの家に入ったと思う!最悪、お前が死んでたらどうしようってそればかり考えてたんだぞ!ていうか、正直に言うがこんな役目したくなかった!でも今、お前が生きていることを確信したことで、お前を一人にしてサイナラなんて出来るか!」

「…」

A「体の調子はどうなんだ?」

「だ…だいじょ…うぶです。」

A「何が大丈夫だ!酒ばかり飲んで、ろくにメシも食ってないんだろ!」

「…」

A「良い医者を知っている。彼は精神科医だ。お前が今苦しんでいることに関して、きっと助けになってくれるだろう。」

「精神…科医?俺の…頭はいかれてるの…か?」
南の言動と目つきが豹変した。

「いっいかれているのは俺の妹達を殺したクソッタレだ!!そいつのせいで!そいつのせいで俺は何もかも!何もかも奪われた!どうして!どうして、俺はこんな目に!」
嗚咽を上げ、泣き崩れる南。手の内ようのないAとB。
ただその姿を黙って見るしかなかった。

ひとしきり泣いた南は急に立ち上がり、リビングを徘徊する。

A「どっどうした?」

「これも空。これも空。くっくそ!買いに行かなきゃ。」

A「買うって酒をか?」

南はAの質問に聞く耳を持たず、リビングから出ようとする。

A「おっおい!」
AはBに合図を出し、南を捕まえるよう支持をだす。
Bはとっさに南の腕を掴むが、それを振り払う。

これはまずいと直感したAはBと共に南を羽交い絞めにする。

「なっ何をする!お、俺は酒を買いに行くだけだぞ!」

A「うるさい!これ以上酒を飲んで、さらにていたらくな生活をしようっていうのか!」

「はなせ!警察呼ぶぞ!俺には人権がある!自由がある!酒を買う自由がある!」

A「何訳の分からんこと言ってるんだ!こんな姿!みっともない姿!妹さん達が見たらさぞかし残念がると思うぜ!」

「うるさい!あんたに何が分かる!」

A「あんたって!俺はお前の上司だぞ!口の利き方を慎め!」

暴れまくった挙句、3人は床に倒れる。
二人の下敷きとなった南は手を玄関に伸ばす。

「こっこんな、酒くらいしか…酒くらいしか…なかった」

A「ハァ、ハァ、は?何言ってる。」

「こっこんな生活を忘れられるのは…酒しかなかった…それしかなかった…」

A「ハァ、ハァ、分かってるじゃないか。そうやって酒に飲み込まれ、自分自身を見失ったんだ。家族を失って…自分まで失って…それでいいのか!」

「!!」

A「諦めるなよ!自分の人生を諦めるな!まだまだやり直せるだろ!どんな方法でもいい!自分を取り戻せって!」

「!!!」

玄関に伸ばした手がゆっくりと下がる。
少しの静寂が南の一声で消え去った。

「し、紹介してください。その医者。」

Re: E2(エキストリーム・エキセキューション) ( No.15 )
日時: 2011/05/19 01:19
名前: レッドラム (ID: w1UoqX1L)

あれから4ヶ月が経った。

俺は仕事と病院を行き来しながらもアルコール依存症を克服し、健全な体と精神を取り戻した。

かのように見えた…

あの日…

忘れもしない…8月4日午後12時20分を。

俺は病院から帰り、自宅で何気なくテレビをつけた。
放送していたのは定番の「笑っていいかも!?」。
コンビニで昼食を買った。
サンドイッチとフルーツジュース。
俺は何気なくその番組を見ていた。
そして、ニュース速報が流れた。

同時に電話のベルが鳴る。
俺は速報を見ることなく、せわしなく受話器を取る。

「もしもし。南ですけど。」

「○×警察署刑事課の大林です。お久しぶりです。連絡が遅れて申し訳ないです。本日午後12時に妹さん達を殺害したと思われる男を逮捕しました。ちょうど今頃ニュース速報で流れていると思いますが。」

南は驚愕したと共に、大林の報告を無視して、番組を見た。
番組にはたしかに今回の事件の犯人が捕まったと記されている。
急いで他の番組をにチャンネルを切り替えるが、放送しているのは料理番組や通販番組ばかり。

南は知りたかった。

どんな人間が自分の妹たちを殺したのかと。

とりあえず今は具体的な情報を得られないことが分かり、再び受話器を握る。

「動揺されてる気持ちは分かります。今からでもこちらから伺いまして、犯人の情報をお伝えしてもよろしいでしょうか?」

「はい…お願いします。」

その日南は知る。

その男の名前を。

門田利行という名前を。

自分の全てを打ち砕いた、その男の名を。




Re: E2(エキストリーム・エキセキューション) ( No.16 )
日時: 2011/05/27 20:31
名前: レッドラム (ID: w1UoqX1L)

「こっこいつが俺の妹たちを…」

手が震えた。
口が震えた。

抑えきれない怒りが憤怒した。
身を乗り出し、テレビを掴む。

「こっ、こいつか〜!!殺してやる!殺してやるぞ!!!」

その日のニュース番組のトップは門田の逮捕についてばかりだった。
後に多くのマスコミが南の家を囲う。

「南さん、今のお気持ちをお聞かせください!」
「犯人に一言お願いします!」
「今望むことは何ですか?」

南は家から出なかった。
一人、テレビと向き合いながらマスコミの質問に静かに答えた。

「今望むこと…それは…それは…それは…」

「妹たちにもう一度会いたい…もう一度…」

「それが出来ないから!それが出来ないから、俺は復讐しかない!これでは報われない!俺も!妹たちも!門田を、門田を殺す!この手で!
それが俺の望みだ!」

南は決意した。
いずれ訪れる裁判の日を。
その日に門田を殺すと。

Re: E2(エキストリーム・エキセキューション) ( No.17 )
日時: 2011/06/09 20:46
名前: レッドラム (ID: w1UoqX1L)

その日はすぐに来た。
門田の初公判の日。

南は用意周到だった。
裁判所の入り口で行われる手荷物検査。
それを掻い潜るための準備。

南は初公判3日前、事前に予約した木製の解体銃を購入していた。
見た目はただの木屑。
しかしそれらを順に組み合わせていくと銃になるという優れ物。
一部の金属部品もたとえカバンに入ってたとしても誰も銃の部品とは思わない。
ただし肝心の銃弾は見た目でバレるため、自身の靴のつま先奥に隠す。
南は知っていた。
金属探知機は靴までは調べないことを。

この銃を手に入れるため方々を探し回った。
パソコンや携帯の裏サイトから闇の人間達の裏情報まで。
数多の情報全てを考慮して、この結論に辿りついた。
木製銃を使って、公判中に門田を殺すと。

南の予想通り、検問は難なく通過した。
その後、トイレに向かい個室便所に入り、銃を組み立てる。
そして靴のつま先に忍ばせていた銃弾一発を銃創に詰める。

「一発か…まぁ、最前席だ…距離は十分だ。むしろ超至近距離。絶対に外さない。狙うは…頭…奴の致命傷。それを狙わなかったら、今までの準備が水の泡。大失敗!絶対に一撃で仕留める!殺す!!…フー」

トイレという密室で独り言を呟きながら、心を落ち着かせる。
生まれてから、一度も人を殺したことがない。
果たして、何の訓練もセミナーも受けてないド素人刺客が人を殺すことが出来るのか…
その疑問が南の頭から離れない。

人を殺すということ…
それはその人の無限に広がる人生を閉ざしてしまうこと。
もし、妹たちが生きていたらこれから仕事、恋愛、結婚、家族、老後、色々な経験が待っていたかもしれない。
それを閉ざしたのが門田利行。
こいつの人生を閉ざすのは俺…か?

南の気持ちに一瞬、いわゆる常識の範囲の良心が過ぎる。

ダメだ!!
何を思っている!
こんな土壇場になって、変な疑問を持つな!!
俺は…俺は決めたんだろ!
殺す!門田を殺して、俺の今までの苦しみを吐き出す!
そして、浄化する!この怨念を!!

南は心を決め、トイレから出る。


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