ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 怪談(短編集)
- 日時: 2011/04/21 22:26
- 名前: 涼 (ID: fS3ho1RJ)
始めまして私の名前は涼と言います。
色んな怪談話を書きたいと思ってます
よろしくお願いしますね
- Re: 怪談(短編集) ( No.39 )
- 日時: 2011/04/28 17:07
- 名前: 涼 (ID: 3JA2YsPn)
*/10 ( 猫ノ仇討ち )
毎晩必ずあたしの部屋は猫の鳴き声が響き渡るの。
「………怖い、よお」
怖くなったあたしは、何度も何度もお母様にお父様に相談したわ、
心配したお父様は高名な占い師や陰陽師に相談したけど無駄だった。
また今晩も猫の鳴き声が聞こえる。
—— ニャア…ニャア…ニャア
何で鳴くの、何処からあたしの部屋に猫の鳴き声が聞こえるの?
怖くなったあたしは今晩もまた密かに泣きながら眠る。
早くこの怪奇な現象が収まれば良いのに。
あたしたちは猫に何もしていないのに。
そしてある晩の真夜中に、あたしは遂に猫を見た。
猫はあたしの布団の上に乗っている。
不思議と怖い感じが薄れた、可愛い子猫ちゃんだ。
子猫に触れようと手を伸ばした瞬間、喉が異常に痛くなった。
「…………………………っ!!」
「ふぎゃあ…」
子猫は更に深く喉に噛み付く。
痛い。
痛い…、子猫……ちゃ………ん。
あたしの視界がぼやけて遂に真っ暗に閉じた。
——
ある江戸の片隅に由緒ある武士の家柄の大きな屋敷があった。
そこに奉公していた女中の娘はある時、主人の理不尽な怒りにより、
その娘を斬り殺してしまった。
その娘が可愛がっていた野良猫が何処から現われ娘の傍に近寄ったが、
更に激怒した主人により、その野良猫の子猫も斬り殺されてしまった。
それ以来主人が溺愛する娘が毎晩必ず猫の鳴き声が聞こえると訴えた、
主人は幾度も高名な陰陽師や占い師に任せたが全て結果は無駄に終わり
そしてある晩にその最愛の娘は殺されてしまった。
動物に喉を噛まれたように喉を中心に血が真っ赤に染まってたという。
溺愛する娘を殺された主人は猫の祟りだ、と叫びながら気を狂って、
遂に妻と共に心中する事件が起こった。
それ以来この屋敷に住まう者はなかったと伝えられる———。
「ふうん、そんな言い伝えがあるんだ」
目の前の少女は朽ち果てたその言い伝えの屋敷を見上げる。
その言い伝えを教えてくれた先程知り合った少女。
少女と同じくらいの8,9歳ぐらいの年頃だった。
心なしに少女は言い伝えで殺された主人の娘に似ている、と思った。
「ねぇ、お名前は?」
「お鈴」
少女の問いに少女は背を向いたまま答えた。
「ねぇ、あなたはお肉かお魚どっちが好き?」
「お肉っ!」
「そう……私もよ」
鈴と名乗った少女の目が猫のように吊り上がり、黄金に変わっており、
そして口の中に、白く尖った牙が見える。
少女は気付かずにその知り合った鈴と親しく話しかける。
鈴の伸びすぎた手の爪が、夕日の光に、キラッと光った——。
- Re: 怪談(短編集) ( No.40 )
- 日時: 2011/04/28 17:10
- 名前: 涼 (ID: 3JA2YsPn)
*/ 凪様
ありがとうございます!
青年陰陽師の名前は、
作中に出てきましたが
安藤司と言います!
安部清明がモデルとは言えません
既に書いてはいますけど(笑
応援ありがとうございました!
- Re: 怪談(短編集) ( No.41 )
- 日時: 2011/04/30 21:40
- 名前: 涼 (ID: 16jvce1r)
*/11 ( 気付いた真実 )
私が生まれる前にお父さんと離婚したお母さん。
私を施設に入れて必ず迎えに来ると言い何処かへ行った。
お母さんに逢いたいと一心に我慢しながら待ち続けていた。
そんな、ある日の町に遊びにいった時にお母さんを見かけた。
隣にいる男の人と女の子は誰なの?
後をつければその女の子はお母さんの事を「ママ」と呼んでいた。
次にお母さんの隣にいる男の人の事を「パパ」と呼んでいた。
お母さん………私を捨てたの?
私は耐え切れずその場を離れてしまった。
そして施設に自分の部屋に戻るや否や泣き続けた。
お母さんは必ず私を迎えに来てくれると信じていたのに。
騙された。
私は泣きに泣いて泣き叫んだ。人の慰めなんか聞く耳も持たず。
——
あの日から私の人生は変わった。
もう絶望としか言いようが無かった。
私は捨てられたんだ。
再婚したお母さんが憎いけど悲しいよ何で捨てたの?
涙で視界が歪み、施設を飛び出して雨の町を歩き体がずぶ濡れになる。
歩道橋を上ろうと、階段を踏み入れた瞬間、視界が真っ暗になった。
—— 雨で濡れた地面が私の服を汚れた
怒られるなと溜息したが不思議な事に服が全く汚れていなかった。
何でだろう、と思いながら私はお母さんを探す。
無駄なのに。
だけど探さずにはいられなかった。
私を捨てたのか、迎えに来る意志があったのか真意を確かめる為に。
お母さんを探す為に施設に怒られる覚悟で雨の町をさ迷った…。
——
「愛海っ!ねぇ…知ってる?」
「何がよ」
「雨の町、都市伝説」
「ああっ!知ってる!」
「話題だよねー」
「うんうん、切ないんだよね」
道端にすれ違った女子高校生の話題に私は気になって耳を傾けた。
女子高校生たちが話す都市伝説はこんな話だった。
ある施設に母親に捨てられた女の子が母親が必ず迎えに来るという、
約束を信じて待っていたがある日、町で偶然母親が再婚した男性と、
その子供と仲良くしている姿をその女の子が見かけてしまいます。
ショックを受けた女の子は雨の日に施設を飛び出し歩道橋を上ろうと、
階段を踏み入れた瞬間、雨で滑ってしまい、転落死しました。
だけど女の子は未だに気付かずに、その母親を探し続けているのです。
ですがある日、母親を見つけた女の子はその再婚相手と子供と共に、
殺してしまいました。
哀れ女の子は殺した事に気付かず未だに母親を探し続けるのです。
そしてその女の子に殺された母親と再婚相手と子供は成仏できずに、
雨の日になると女の子の謝罪と苦しみの為、泣き続けているのでした。
三人が成仏する為には女の子が成仏しないといけないのでした。
「なんか切ない……」
「その女の子さ、まだ12歳なんだよ」
「えぇ!!やばいじゃん」
「だよねー」
私がその女子高校生の噂に切ないと同時にある違和感を感じた。
何処かで聞いた事があるような話のような気がする。
気のせいだと思い直し、私は今日もお母さんを探し続ける。
今日は天気が良いのに、私には、影がなかった——。
- Re: 怪談(短編集) ( No.42 )
- 日時: 2011/04/30 23:35
- 名前: 涼 (ID: 16jvce1r)
*/12 ( ひまわりと私とあの子 )
私は大きな木がある丘の草原にいつも独りで遊んでいた。
夏には丘の下にあるひまわり畑が楽しみだった。
早く暑い夏が来れば良いのにな、と毎日楽しく遊んだ。
そして午後の昼下がりに初夏が訪れた事がとても嬉しかった。
同時に草原には見た事のない私と同い年そうな男の子が来た。
草原の緑色の草が青々と茂っているから風が吹くと心地好く揺れる。
—— サァァ……。
草が風に揺れる。綺麗な光景に見惚れてた私に男の子と視線が合った。
ドキッとしたけど男の子は私を見て優しく微笑んだ。
私も釣られて笑った。
あの男の子は誰なんだろう、と次第に気になり始めた。
男の子がこっちに近づく。
胸が不思議とドキドキしてきた。何でだろう、分からない。
「君、何てお名前なの?」
明るく澄んだ声に更に胸がドクンッとする。
「私は依麻だよ!」
「そう、僕は雄大だよ、始めまして」
私は雄大くんと仲良くなった。この事は誰にも言わずに秘密にしてた。
だけどある日の夜にママに「何で草原に行くの?」と聞かれたの、
私は雄大くんの事を話したら、ママとパパは寂しげに微笑んだ。
そして私にこんな話をした。
あの草原の大きな木には不思議な都市伝説があった。
独りで遊んでいると不思議な男の子がその子と遊びだす。
そしてある日を境に居なくなり、その代わりその男の子と遊んだ子は、
幸せなことが起きるという都市伝説。
私はそんなの嘘だ、と信じなかったけど翌日になり草原に行った。
雄大くんを待ってたけど、どんなに待っても雄大くんは来なかった。
それどころかあの日以来、雄大くんは二度と来なかった。
時は流れて12歳になった私はもう一度だけ、あの草原に来た。
雄大くんはあの都市伝説の男の子なんだ、と私は自然と認識した。
そして久しぶりにひまわり畑を見た瞬間、息を呑んだ。
ひまわりが咲き誇っていたのだ。
目を疑う光景に私は一瞬、目を逸らした。
嘘だ。今はまだ初夏なのに。まだひまわりは咲いていないはず—。
視線を前に戻したら、目の前の光景は、まだ草だけだった。
あの都市伝説の最後を思い出す。
必ず幸せになれる。
今まで受験とかで忙しくまともに草原になんか行けなかった私の為に、
何処かにいる雄大くんが仕組んだプレゼントなの?
「ありがとう………雄大くん」
そして草原一面に涼やかな風が吹き渡った。
雄大くんと過ごした短い日々は、
いつか忘れる時がくるかも知れないけどね、
その時にまた私の元へそっと思い出させてください。
—— 分かったよ、依麻。またね
雄大くんの声がはっきりと聞こえたある昼下がりの初夏の日でした。
年老いて老死する直前に思い出した私の淡い初恋と不思議な過去。
私は静かに目を閉じた。
おばあちゃん、と呼ぶ愛しい娘や孫たちに囲まれて。
気が付けば私は死に装束の格好だ。
そして私が老婆のはずが草原との思い出がある6歳の姿だった。
私のいる場所は冥界ではなく青々と生い茂る草と大きな木のある草原。
そこに見慣れた顔があった。
雄大くんだ。
私は思わず雄大くんに駆け寄った。
雄大くんはあの頃と変わらぬ笑顔を浮かべて頭を撫でてくれた。
「久しぶりだね、依麻ちゃん」
「そうだね、雄大くん」
奇しくも私が死んだ日は雄大くんと出会った初夏のあの日だった。
雄大くんはやがて寂しげな表情で空に指を指す。
私の行くべきところは分かっている。
だけど、
「雄大くんも一緒に行こうよ」
「ゴメンね、ダメなんだよ。……ほら、お行き」
雄大くんに言われて私は曙光の差す方向に向かい天へと昇った。
もう一度振り返れば雄大くんは手を振っている。
私も手を振り替えした。
「また、会えるよね?」
「きっと逢えるさ」
景色が草原から純白へと変わった。
またね、雄大くん。
- Re: 怪談(短編集) ( No.43 )
- 日時: 2011/05/02 22:18
- 名前: 涼 (ID: u7NWpt/V)
*/13 ( お稲荷様 )
最初はほんの軽はずみな悪戯だった。
神社の隅にある小さな鳥居の奥にある小さな祠に、
神社の狛犬が、狐に変わっている云わばお稲荷様の祠に
網状の扉を開け、中に入ってた綺麗な鏡を取り出しただけなのに。
掌に簡単に乗せれるくらいの小さな鏡だった。
それをお母さんにプレゼントしようとポケットに入れただけなのに。
境内の神木の周りを遊んでいた時から異変は既に起きていた。
ふと、背後から何かの気配を感じた。
最初は気のせいだと気にしなかったけど背後の何かの気配を感じる。
それが何かの動物だと気付いた時に怖くなってすぐに神社を出ようと、
階段を降りようと門を潜ろうと向かう前に、気付いた。
遊びすぎた所為で神木から近くの森に入った事を。
そして迷った事を。
仕方なく辺りを歩くけど一向に神社が見つからない。
それどころか奥深く霧が立ち込めていた。
「どこ………?」
泣きそうになった。でも、お母さんに逢いたいから我慢した。
お母さんにプレゼントしようと思った鏡をポケットから取り出す。
キラキラと輝いてて、綺麗。
「やっと、見つけた」
澄んだ冷たい声にビクッとした僕が横を振り向けば、男の人がいた。
神社の神主さんみたいな白い服を着た男の人が、僕を見ている。
日本人にはありえない、若者なのに白髪で目が金色……。
立ち竦む僕にその男の人が近づいてきた。
逃げたい。怖くて逃げられない。
傍らに来た男の人が僕に左腕をつかんだ。
「それは白狐様の神鏡だ、早く返せよ」
「はく…こ?」
「そなたが持ってる鏡の持ち主だ、あの祠に祀られている鏡はな…
白狐様という白色の毛を持ったお稲荷様が祀られている鏡なんだ」
神社は神様が祀られている、お稲荷様も例外ではなかった。
僕はただこの綺麗な鏡が使われずに入っているから、
誰もいらないのかな、と思っただけなのに。
「そなたの母を思う気持ちは感心するが、早くそれを返すが良い」
「やだ……!!」
「何故返さぬ、それはそなたの物ではない」
「お母さんの……病気が治るには……これが……」
男の人はまたか、という表情を見せた。
僕がこの鏡を取ったのはプレゼントの他にも病気を治す為だ。
ある都市伝説でこの鏡を病気の人にプレゼントすると完治する。
そんな噂を聞いた。
僕にはお父さんがいないからお母さんだけだった。
そのお母さんが病気でろくに薬すら買えない。
お金が必要だもん。
だけどそのお金すら無いに等しいんだから。
どうせ、このボロい鏡なんか盗んでも誰も困らないはずなのに…!
「もう良い、勝手にしろ」
男の人の言葉と共に消えて辺りの霧は更に深く濃くなった。
怖くなった僕は霧の中を走り抜ける。
だけど、分からない。
ここが何処なのか全く分からない。
そして、やっと道すら分からなかった霧の中から抜け出せた、
僕はホッと一安心して辺りを見回せばそこが神社の境内だと分かった。
境内との境界線で階段の続く門はすぐ近くまである。
僕は門を潜ろうと走った瞬間、突然、視界が真っ暗になった。
——
僕はこのお稲荷様が祀られている祠の前に立った。
網状の扉を開けて中にあるのは小さな鏡。
とてもキラキラしている。
これさえあれば、お母さんの病気が良くなるんだね………。
そっと、鏡のほうへ僕は手を伸ばした。
——
「白狐様、あの子を殺しませんか?」
先程の狩衣に差袴に頭には烏帽子という神主の服を着た青年が
呆れたように鏡を手に取りポケットに入れた少年を見つめる。
隣にいる十二単の服を着た女こと白狐に尋ねた。
白狐はやわらかく微笑む。
「後もう一度だけこの経験をさせれば良かろう」
「甘すぎます」
「幼心なのだ、後で我がすぐに取り戻そう」
「あの子は母子共に死んでおられますのに?」
初夏の風が冷たく辺りに吹き渡った。
サラサラと、銀色の髪をした女の髪が舞う。
「我があの子を誘導させよう、母の待つ冥途にへ」
「私がやります、人間如きに……」
「人間だからこそ、愛しいのだ、臣狐よ」
狐の尻尾を生やした白狐はくるりと背を向けた。
後もう一度だけ罪を償う少年を冥途に誘導させる準備をするのだ。
隣に臣狐と呼ばれた青年は呆れる素振りを見せ、彼女の後に続く。
神社に祀られているお稲荷様の名前は白狐と呼ばれる女狐だった。
そして白狐に従う使い狐の名前が臣狐と呼ばれているのを、
慈悲深い白狐に救われる予定の少年は、永遠に分からないまま。
この掲示板は過去ログ化されています。