ダーク・ファンタジー小説

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白夜のトワイライト【完結版】番外編を書くのが楽しすぎる……
日時: 2013/07/30 11:19
名前: 遮犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: Drat6elV)
参照: 参照1000突破! 記念企画、イラスト・挿絵募集してます!

世界は不都合だ。
救われた命、消えた命、理不尽な死、理不尽な世。

最期には消えていく存在だと知りながら世界に生かされている気がした。

だとしたら、僕達はゴミで、世界はゴミ箱なのかもしれない。

酷いな、と僕は小さく呟いた。


——————————


【前書き】
初めまして、が多いと思われます。遮犬しゃいぬと申すものです。
このたび、大幅な変更点を加えていますので、リメイクではなく、あくまで完全版として再投稿させていただくことにしました。
この作品は、一年半前ぐらいでしょうか。そのぐらいの時から連載を続けていた作品ですが、内容等が矛盾していたり、設定や進行も多くミスが見られた為、修正で何とかなるとは思えなかったのでもう一度こうして連載を再スタートさせていただきます。

予定としましては、この作品の完結を含め、続偏と過去偏も用意していますが……この完結版の完結だけでも相当な日にちがかかることは必須なので、書くかどうかはまだ未定です;
ですが、またもう一度再スタートということで、元から読者として読んでくださっていた方々、そしてこれから読んでくださるという方々含め、頑張って書きたいと思いますのでどうか応援を宜しくお願いいたします><;
ちなみに、シリアス・ダークの元の小説とは大幅に設定が変更している点が多い為、あくまで新連載としてみていただければ嬉しいです。



2013年新年のご挨拶……>>51

参照1000突破記念企画「イラスト・挿絵募集」……>>73


〜目次〜

プロローグ
>>1

第1話:白夜の光 (修正完了)
【#1>>4 #2>>5 #3>>6 #4>>7 #5>>11
EX【>>13
第2話:身に纏う断罪 (修正完了)
【#1>>14 #2>>15 #3>>18 #4>>19 #5>>20
EX【>>21
第3話:過去の代償(白夜の過去前編) (修正中)
【#1>>22 #2>>23 #3>>24 #4>>25 #5>>26 #6>>27
EX【>>28
第4話:訣別と遭逢 (修正中)
【#1>>29 #2>>30 #3>>31 #4>>34 #5>>35
EX【>>36
第5話:決められた使命 (修正中)
【#1>>37 #2>>43 #3>>46 #4>>49 #5>>53
EX【>>58
第6話:罪人に、裁きを
【#1>>65 #2>>70 #3>>77 #4>>80 #5>>85 #6>>87
EX【>>89
第7話:ひとときの間



【番外編】
『OVER AGAIN〜Fire Work〜』
予告編
>>59

【#1>>90 #2>>91 #3>>93

Re: 白夜のトワイライト【完結版】 ( No.18 )
日時: 2013/02/16 00:06
名前: 遮犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: 5LwYdnf7)

 人助け、と簡単に人は口にするが、そうそう皆が皆出来ることじゃない、と日上 優輝は思っていた。
 もしそんなことを口走りながらそれをする者がいたら、一発ぶん殴ってやろうかとも思っている。人のことを何も知らないクセして、そんな偽善者染みたことを抜かしながら行う人助けとやらは一体何だろうか。

 ——侮辱だ。

 少なくとも、優輝はそう思っていたのである。
 しかし、そんな優輝はその考えをたちまち改めなければならない出来事が起こる。目の前で子犬を愛でる女性、八雲 涼風がその発端であった。
 八雲は若くして(年齢不詳らしいが)第三部隊の部長を務めあげる実績を誇っているわけだが、その過去は誰も知らない。知っているとなれば、上層部の人ぐらいで、彼女の過去は人知れず伝染していくこともないまま"この有様"であった。

 捨てられた子犬や子猫、勿論既に大人になって犬や猫もそうだが、何せ動物系は全て連れて来る。持ち主に返す為という理由があるわけだが、その分それを手伝わざるを得ないのは彼女の部下達である優輝らなのであった。

「また連れてきたんですか……」
「んー……えっとね? 迷子になっちゃってたから——」
「それは迷子じゃなくて、捨て犬って言うんですよ……捨てた持ち主を探してどうするんですか……」

 八雲のタチが悪いのはここからである。
 持ち主に返す為、という理由は考えてみれば、捨て犬らを拾ってきての事なので、優輝らにとっても、また捨てた持ち主らにとっても非常に困ることなのだ。
 というわけで結果的にどうするかというと、

「また動物園って言われちゃいますよ……」
「いいじゃない。第三部隊限定の動物園、凄く楽しそうっ」
「楽しくないですっ!」

 と、思わず優輝は言ってしまったとすれば、

「……楽しく、ない……?」
「あ、いや、その……」

 優輝へ一斉に周りから痛い目線が送られてくる。
 八雲はというと、だんだんと顔が塞ぎ込んできて、更には一人で呟き出した。

「楽しくないんだ、楽しくないんだ……皆の為を思ってのことでもあるのに……私、やっぱり余計なことしちゃったんだ……」
「あ、あの……八雲部長?」
「うわああああああああん! いらないことしちゃったんだああああ!」

 全員がため息を吐く瞬間である。
 見た目は凄く大人の女性の風格を漂わせている八雲だが、良かれと思ってやったことを強い言葉で否定されるとこのようになる。気をつけてはいるのだが、一週間に何回か、誰か一人はやってしまう。

「お、落ち着いてくださいって、八雲部長!」
「はぁ……またダントツで今週の泣かせ大賞一位だな、日上」
「いや、俺はっ!」
「うわああああん! 何で勝手に泣かせ大賞とか作ってるのぉぉー? 橋本さん酷いよぉぉおお!」
「え、俺ですかぁッ!?」

 突然矛先を自分に仕立て上げられた橋本は思わず自分に指を指して驚く。

「あーあ。橋本さん……」
「いやいや! 柊! お前も俺じゃないって分かるだろ!?」
「いや、今のは橋本さんのせいっすね」
「日上! お前はいいんだよ! 元はといえばお前が——!」
「うわああああん! 私のせいで喧嘩してるぅぅうう!」
「違いますから! 違いますから! 八雲部長!!」

 そんな第三部隊の面子らに横からか弱い声で落ち着いてください、と声をあげるのは相原のみで、そんな相原の声は八雲の泣き声に難なく掻き消されてしまうのであった。


 ——数十分後。


「……落ち着きました?」
「……何とか、うぅ」

 まだ余韻があるのか、少し涙目の八雲に優輝は何枚ものティッシュを渡す。
 皆よりまだ幾分と大きめで、そこそこ立派な机の上に乗せた『第三部隊部長 八雲 涼風』と書かれた三角錐が形無しである。

「落ち着いたところで、話があるんですけど、部長」
「優輝君、部長って呼び方はダメだよ。八雲さんって呼ばないと、デコピンするよ?」
「あ、いや、すみません、八雲さん。デコピンはマジで勘弁してください」
「ふふ、冗談だよぉー」

 優輝が焦り焦りにそう答える。その様子に八雲は満足そうに涙目ながらも頷いて笑った。
 優輝らが八雲に対してすぐに泣くから恐縮しているというわけではない。
 この涼しそうな着物姿に、泣きやすく、いつも笑顔を含めている八雲であるが——能力的には恐ろしい力を秘めているのだ。能力犯罪事件のいくつもをたった"一人で"解決へと導いたその姿は英雄視されていたぐらいだったそうであるが、とある事件をきっかけに第三部隊の部長となり、大きな役目もあまりなく、捨て犬などを拾ってくる生活になっている。
 本人はこれで満足しているのか、それは全く分からない心理ではあるが、優輝でさえも大丈夫かと思う一面が沢山あった。どうしてこの人が部長になったのか、そこまでの伝説を作っているのか、謎に包まれている。

「それで、何かな?」
「あぁ……昨日、とある組織がある人物と密談するという情報が入り、調べあげて、捜査してきました」
「ん……ある人物?」

 八雲の言葉で、一瞬沈黙が部屋に訪れた。橋本らも耳を傾けている様子だったが、優輝は八雲の顔を真剣な眼差しと、他の"感情"を乗せて言った。


「——"黒獅子"と呼ばれる男のことです」


 バンッ! と、その時机を叩く音が室内に響く。相原のみが音に反応してビクリと体を震えさせる。音の発生源はその相原の傍にいた橋本からだった。

「優輝。お前、やっぱり……」
「俺にとって、黒獅子は贖罪なんです。単なる復讐なだけかもしれない。だけど、俺は真実が知りたい。真実を知る為に、俺は此処にいるんです」
「お前……」

 橋本はそれ以上、口は開けなかった。優輝の強い意志がその言葉の全てにこめられていたからである。後ろにいる橋本の方へは振り向かず、ただ目の前にいる八雲に、そして橋本にもこの思いはぶつけていた。

「はぁ……またこれね」

 頭を抱えるようにしてため息を吐いて言った千晴に、どうすればいいのか分からなくて勝手に慌てる相原。そしてそれら全てを受け止めた八雲が口を開く。

「それで……黒獅子さん? とやらの居所は掴めたの?」
「いえ……まだです。ですが、収穫はありました」
「収穫?」
「はい……。密談場所の倉庫に、用途不明の研究所らしき施設が見つかったんです。更に、密談相手の組の男が最後に、極秘の何かをやっていると、言い残したんです」
「極秘の何か……もっと詳しいことは掴めてないの?」
「すみません……仮面をつけた、謎の男にそれを阻止されてしまって……」
「仮面の男……ふむ」

 考え込む仕草は見せず、八雲はただ子犬の頭を撫でながら話していた。そして、ゆっくりと頷いて優輝に告げる。

「優輝君は、覚悟あるってことだよね。真実がどうであれ、それを解明したいという、強い覚悟が」
「……はい。俺のやるべきことは、それだと確信しています」

 八雲は数秒間、優輝の顔を見つめ、それからすぐに元の笑顔へと切り替わって笑った。

「ふふ、じゃあ捜査手伝ってあげる。第三部隊の部長としてね」
「あ……ありがとうございます!」
「部長! いいんですか?」

 橋本が声を室内に響かせる程度の声を張り上げ、八雲へと問うが、八雲の表情は変わらず、

「少年は少年らしく。信じた道は自分の手で開いていくものですよ、橋本さん?」

 八雲は笑みを浮かべたままそう答えた。
 まるで、遠い頃の自分を見るかのように、八雲は優輝のやる気に満ちた表情を見て頷き、そして誰にも聞こえないような声で呟く。


「……運命、か」


 八雲の腕元では子犬が嬉しそうに目を細め、その手を遊び相手にじゃれていた。

Re: 白夜のトワイライト【完結版】 ( No.19 )
日時: 2013/01/20 23:11
名前: 遮犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: 5LwYdnf7)

「……何がよろしくな、ですか! いきなりあんな乱暴に入ってきて言う言葉じゃないでしょうっ」

 一方、エルトールではこうして春の怒声が鑑に向けて放たれたところであった。

「……ッて、そう言うなよ。どうせこれから顔合わせることになるんだしよ」
「そういう問題じゃありませんっ。ヒナさんが驚いてしまってるじゃないですか……!」

 肝心のヒナは、春の言った通りかどうかは分からないが、確かに多少なりとも動揺はしているようだった。その様子を見た鑑はあんなものは挨拶代わりだろう、と愚痴を零しつつ、

「へいへい……なら俺は帰りますよっと」

 このように言い残して鑑は部屋の外へと出て行く。それと入れ替わりのように今度は秋生が部屋へと入って来る。

「いてて……全く、鑑さんは容赦ねぇんだから……。で、ヒナちゃんだっけ? 俺は吾妻 秋生。よろしくな」

 雛へと声をかけた秋生であったが、雛はその返事をするか否か戸惑っている様子にも見え、どうにもそれを拒否しているような様子も伺えた。

「ありゃ……? もしかして、嫌われてる?」
「……月蝕侍。それより、結局白夜光と食事を楽しんできたのですか?」
「え!? あ、あぁ……いや、白夜君、大和撫子の料理だと聞いた瞬間、方向変えて出て行ったけど……」
「きっと後から食べようと思ったんですね……後のお楽しみということですか」
「いや、それはないんじゃ……」

 春の見事な解釈に秋生も少しばかり呆れたような物言いで口を挟む。その様子がヒナにとってどうにも滑稽に思えた。
 こんな会話が今まで自分の目の前で繰り広げられたことは果たしてあっただろうか。
 ——なかった。そんなことは、決して、一度も。少女の過去はそれほどに残酷なものだった。語りたくも、思い出したくもない、忌まわしい記憶が現実としてそこにある。事実としてそこにあってしまう。

「ヒナさんは、私の料理を食べますよね?」
「え、あ……」

 そんな過去のことを思い返していたら、突然話をふられ、言いよどんでしまったが、横から秋生が凄い勢いで猛反発して来る。

「ちょ、ダメダメ! やめとけって! 大和撫子の料理は……!」
「凄く、美味しいみたいですね」
「何で自分で言ってるんだよっ」

 そんな会話が、少女には新鮮に感じた。今までなかった感情や、会話がそこにある。これが求めていたものだとすれば、それは何て幸せなのだろうとヒナは思った。
 今までの不幸は、これからの幸せの為にあるのだろうか。もしそうであるならば、それに甘えたい。今までの過去など捨てて、新しく生まれ変わりたい。
 だからこそ、少女は。


「——ふふっ」


 だからこそ、少女は笑ったのである。それは、あまりに自然な笑顔で、春と秋生は思わずその笑顔に見惚れてしまっていた。


——————————

 
 エルトールの門の外では、門番役を務める和泉と宮辺が二人して駄弁っていた。基本的に交代制ではあるのだが、今日は長らくこの二人が門番役を与えられることになってしまったからである。その理由は詳しく知らされてはいないものの、団長直々の指令であると共に、朝のじゃんけんで負けたから、という子供染みた理由があるから二人はこうして門番をやっているというわけであった。

「……にしても暇だよなぁ。門番なんてやらなくても、誰もエルトールに侵入しようとか、そんなこと考えねぇだろ」
「まあ、そうかもしれないですけど……一応本部ですし、そういう辺りはしっかりしておかないと"けじめ"がつかないんじゃないですか?」
「……けじめねぇ」

 くだらない、とでも言うように呆れた顔をする和泉の様子を見慣れた宮辺はふぅ、と小さく息を吐いた。
 長らくそんな風に愚痴っていたり、最近何か面白いことはないかと二人で言い合ったり、様々に退屈を凌ごうとする二人であったが、人影がその二人の目の前に現れる。

 その人影に気付くまでに少しかかった。油断していたということもあったのだが、その人影の持ち主は見るからに変だったからである。

「ッ! おいっ、止まれ!」

 和泉がその人物を止める。腰元に帯刀していた刀の柄をしっかりと握り締める。宮辺は目を少し細め、背中の銃には手をかけていなかった。

「待ってください、和泉君。……敵じゃないと思います」
「敵じゃねぇ?」

 どういうことだ、と和泉の口から零れる前に、目の前の人から声があがった。

「うぅ……た、助けてくれ……ッ」

 それは助けを呼ぶ内容。薄暗いアンダーの世界の中、ようやく人影の正体がハッキリと分かってくる。
 その人物は、男であった。姿としては中年のようで、服装は、なんと警察の特殊部隊のような格好をしている。どういうことなのか服が所々汚れ、破れていたり、更に気付いたのは頭や体の様々な部分から血が流れているということだった。

「おいっ、大丈夫か!?」

 和泉はその男の元へと駆け寄り、男を支えようと肩を貸す。男は動かない様子の右肩へと左手をやり、足を引き摺りながらここまで来たようである。
 和泉が肩を持ち、とりあえず座らせると、男は震える口で話し始めた。

「頼む……これを、これをあんた達の団長に……」

 和泉の手に渡されたのは手紙だった。血が所々にこびりついているようで、汚れている。

「手紙……? これは渡しておくが、一体何があったんだ?」
「……ダメだ……。俺には、もう……もう……頭が、イカれちまう……!」
「どういうことだ? おい、しっかりしろ! 大丈夫か!」

 男は震え出し、だんだんとその震えは痙攣へと変わり、速度をあげていく。あまりの不気味さに、和泉は介抱していた手を放して離れるが、男は痙攣を続ける。
 そして、その痙攣は暫く続いたかと思うと、次にうめき声をあげ、腹の辺りが大きく地面にバウンドした。男はバウンドした直後、急に意識がなくなったかのように地面へ倒れる。

「何だ……?」

 思わず和泉が呟いたその瞬間、隣にいた宮辺がいつの間にか背中にあったはずのスナイパーライフルを構えていた。標準は、起き上がらない男に向けて。

「お、おいっ、葵! お前何して……!」

 慌ててそれを制そうとした和泉へと目線を送らず、ただ表情と言葉で伝えた。


「和泉君。どうやらこの男は——まだ生きているようです」


 そう言った途端、死んだと思われていた男が再び地面から体をバウンドさせ、まるでテレビの巻き戻しのように男は立ち上がる。
 倒れてから塞いでいた目を大きく開け、口からは狂ったかのような叫び声があがると、先ほどまで傷塗れで瀕死のような状態であった男が突然襲いかかって来た。

「んな……ッ!」

 和泉が反応するより前に、宮辺がその引き金を容赦なく引いていた。その素早い行動力は彼の能力である"鷹の目"のおかげであることが容易に理解できる。 その証拠は、彼の目にあった。能力を発動する時、彼の両目は黒い目ではなくなる。何色かに帯びるのだが、この色は特定されておらず、人によって見える色も違うらしい。
 その異色の目で睨んだその先にいる狂った男の足へと銃弾が貫通した。

「ぐぎゃああああッ!!」

 まるで正気の人間のよう、本当に痛みを感じているみたいであり、雄叫びをあげるが、状態としてはまだこちらに歩こうともがく。先ほどの足に当たった銃弾は肉を抉り、骨に激突して骨が更に折れている様子だったが、転ぶ様子は微塵もなく、不愉快な音を鳴らしながら和泉達へまだ襲いかかって来ようとしていた。

「葵ッ、お前それ威力強すぎだろうが! 拳銃で応対しろ!」
「……和泉君。そういうわけには行かないよ。この男、早く倒さないと結構まずいんだ」
「何言ってんだ! さっきまで普通の——」
「そう、さっきまではね。でも違う。元から普通じゃなかった。この人の傷痕にしては、やけに出血が多いような気もしたんだ。防弾チョッキで覆われて見えないと思うけど、多分無理矢理"固定"されてる」
「……どういうことだよ、って!」

 話している間にも、男は突進してくる。スピードこそ遅いが、その人間ではない動きに恐怖さえも感じる。立てないはずの足で立ち上がるその男は明らかに異常と認識できた。
 咄嗟に二人はその男から距離を離れる。そして再び宮辺が口を開いた。それも、衝撃の内容を言葉に乗せて。


「この男、腹が切り裂かれてる。それを縫わずに、何かで上から固定されてあるみたいだよ。切り裂かれた腹の中にあるのは——爆弾だ」


 宮辺の能力である"鷹の目"はそんな部分まで分かる。相手を見るだけでその状態を分析出来てしまう。 その能力が捉えたものは、普通ならば有り得ない、衝撃の事実だった。

Re: 白夜のトワイライト【完結版】 ( No.20 )
日時: 2013/04/07 02:39
名前: 遮犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: cEkdi/08)

 思い出したくもない戦慄が、ふとした瞬間に蘇ってくる。
 体が、脳が、自分という存在が、全てそれらを拒絶しているのにも関わらず、その戦慄という名の"傷跡"が思い返せられてしまう。

 白夜は一人、その戦慄が渦巻く中に立たされていた。春に自分の過去を覗かないように言ったことは、つまりこの戦慄のことを指している。
 白夜にとって、触れられたくない過去。それは厳重に、断じて他人に見られないように鍵が閉まっていた。その過去には一体何が起きたのか。春はいまだに見られないでいる。いや、見た瞬間に白夜に殺されるであろうことを口で言われなくとも理解してしまっている自分がいたからであった。

 そんな白夜の戦慄の渦の中には、どうしても彼自身、拭いきれぬ身に纏う罪が存在する。
 その罪は、決して断罪されることのない罪。彼は未だに誰にも語ろうとはしなかった。

「おー、白黒。お前こんなとこで何してんの?」

 エルトールの会議室は数多くある中、一階の会議室は特にこれといって使う用途もない。使うとするならば、団長室近くの会議室がほとんどである。外観を損なわない為か、一階の会議室だけは騎士系統をモチーフにしたのか分からないが、円状に作られた机に椅子が設置されてあった。天井には華やかな色彩にいかにも洋風の表しともいえるシャンデリアが施されている。

 その会議室に、白夜は一人で佇んでいた。それを鑑が見つけたのである。
 前々から白夜は何かとあればこの場所で一人になっていることが多い。それを知っている鑑からすると、この場所にいたことがまさに必然ともいえることだった。そのことを分かっているか、白夜も鑑が来たとしても目を一瞬向けただけで、他には何も言葉を口にしない。

「なんだよ、つれねぇなぁ」

 小さく嘆息しながらも、鑑の表情は笑みを浮かべていた。このような愚痴ともいえる言動は毎度のように言っている為なのか、両手を大袈裟に挙げて大きくリアクションをとる。しかし、白夜は全く興味を示さない。窓の外をぼんやりと眺めていることから全く行動を逸らさないのだ。

「……白黒よぉ。食堂の飯は食ったのかよ?」

 鑑の問いに対して、白夜は沈黙を貫いたが、少し経つと食べていない、と呟いた。

「ははっ、やっぱりな。お前といえど、大和撫子の料理は避けるわな……俺も、あいつの外見的にもコードネーム的にも料理出来そうだったからな……最初はあっさり騙されて、やばかった」

 と、口に出してから無邪気な少年のように笑った。その姿を見て、白夜は窓から鑑の方へと向き直し、

「俺も、騙された。……それからは食べてはいないが」
「お、やっぱり白黒もか。まあなぁ……あれはねぇよなぁ。あいつの目の前で言ったら、ぶん殴られそうだけどな」

 基本、白夜と鑑はこんな感じだった。鑑が話しかけ、白夜がそれに答える。いつも冷たい様子の白夜ではあるが、その白夜が本来の白夜ではないことに鑑は気付いていた。そして、白夜が"白夜しか知らない戦慄の渦"の中に放り込まれていることも。

「……やっぱり、まだ"黒獅子"を探してんのか?」
「……あぁ」

 鑑の急な話題の変更に加え、探している黒獅子の名があがったことで表情はすぐに固くなる。少しの間があったものの、返事を交わしただけまだ心は落ち着いているようだ。

「もうお前が来て一年になるな……。今思えば早いし、それまで色々ありやがったな」
「……いきなり何だ?」
「まあまあ、聞けよ。俺が突拍子もないことはお前も重々承知済みだろ? ……なあ白黒。俺はお前を手伝ってやりたいとは思うぜ。でもな、一番聞かせて欲しいのは、お前の過去だよ」

 鑑がそこまで喋ったところで、白夜は特に何も反応もせず、無言を押し通していた。
 関わりたくない、出来ることなら目を背けたいことがこの過去にあるのではないかと鑑は思っていたからである。

「……俺は、お前の——」
「迷惑だ」

 お前の力になりたい。そんな言葉をかけようとした鑑を、白夜は拒絶の言葉で迎えた。思いもしなかったその言葉。いや、鑑はどこかでそれを予想していたのかもしれない。拒絶されると分かっていて言ったのである。

「馴れ合いはいい。ディストから契約通り黒獅子についての情報を貰う為にここにいる。それがないなら、ここにはいない」

 キッパリと言い切った白夜は、明らかに拒絶を示していた。他人を寄せ付けないとするその目に、威圧感が伴う。見た目的には子供で少年の白夜だが、この拒絶の威圧が鑑を黙らせた。

「……分かったよ。俺は何もいわねぇ。……でも、お前はもしかして——」

 と、鑑の言葉は突然何かで遮られる。それはこの入り口から近い一階からだからこそ分かったのかもしれないが、その音は明らかに銃声。それもその銃声は普通の拳銃のものではない。近距離でも長距離でも瞬時に放つことの出来るその特徴がある鋭く、響く音は同業の身であるならばよく知っているものだった。

「この銃声……宮辺のものか?」
「……行くぞ」

 白夜と鑑は異変を感じ、会議室から飛び出す。
 ——二人が立ち去った後、白夜が見つめていた窓から"何か"がいたことを二人は勿論、誰も知りえるはずがなかった。

 そう、"誰も"。


——————————


 一方その頃。武装警察ではとあるニュースが飛び込んでいた。
 神楽 社、別名断罪と呼ばれる犯罪者を捜索する為に駆り出された特殊部隊一同が"帰って来ない"という報告である。

 その不可解な事件は、瞬く間に武装警察内部に広がり、マスコミ等には今の所漏らさないように徹底するつもりのようであった。
 その情報は勿論、優輝らのいる第三部隊にも流れる。丁度その時、拾ってきた犬を例の動物園疑惑の部屋へと入れたところだった。

「消息不明? どういうことよ」

 千晴が思わず呆れた様子で呟く。これだから無能は、とでも言いたいような仕草をとっているが、誰もそれを咎めなかった。

「断罪って奴に全員拘束されたとか?」
「バカ言うな。特殊部隊は20人以上いたんだ。それに、いくら相手が凶悪犯罪者だからといってこちらは人数に合わせ能力を持ったものに、戦闘訓練を幾度もなく積んだもの達だぞ? 簡単にやられるとは思えん」

 優輝の言葉を否定した橋本であったが、現状では今の所何も分からないのが事実である。可能性は100%ではないということだった。

「んー……多分、救出部隊を配属されることになるかな。各部隊から集まって……」

 と、八雲が純粋にそう述べた時、突然第三部隊の部屋が開け放たれた。まず最初に入ってきたのは、SPのような格好をした長身の男。更に続いてきたのがいかにも偉そうな振る舞いをしている20代の男だった。
 警察官の服装がどことなく似合うその男は、入ってきたや否や、座っている八雲の方へと近づいて来る。

「……これは、どうされましたか?」

 八雲が冷静に男に向けて言い放つと、男は不敵にそれを見て笑う。

「ふっ……八雲 涼風。歴戦の武装警察官だったお前に問う。今回の件についてだ」

 今回の件、というのは皆言わずとも分かっている。勿論、その内容は例の失踪事件のことだとその場にいた者はすぐに判断できた。
 八雲の返事などさておき、男は流暢な口調で喋る。

「今回の件、断罪の仕業だと思うか?」
「……まだ詳しくは分からないですが、断罪である可能性は低いと思われます」
「……根拠は?」
「断罪を狙った捜査の中で20人以上の特殊部隊が姿を消した。断罪を狙うことに関して、それを断罪が知りえるはずがない。もし知りえるとするならば、味方に内通者がいたかもしくは別の所から情報が漏れたか……ですが、それもないと思われます。特殊部隊は裏切り者に関しては徹底しており、今回派遣された部隊はその中でも特に優れた精鋭部隊だからです。そうとなれば……第三者の介入が無難だとは思われますが、全員が全員消息不明というのは明らかにおかしな事例です。この事件には、何か一枚噛んでいる……と見るのが妥当ではないでしょうか」
「……なるほど」

 八雲の言ったことに、男は特に感嘆した様子もなく、無表情に呟いた。そして、一度目を閉じ、すぐに開けたかと思うと八雲へと突如言い放つ。


「上層部からの命令だ。今回の件について、"第三部隊のみ"に特殊部隊捜索を任せる。……以上」


 その言葉は、全員の表情を凍りつかせるには十分な内容だった。

「ちょっ……! ちょっと待ってください!! ただでさえ得体の知れない事件なのに、どうして俺達だけなんですか!」
「落ち着け! 日上!」

 橋本は必死に優輝を抑えたが、橋本も気持ちでは同じのようで優輝同様の視線を上層部の者らしき男に向けた。
 しかし、男は無表情でそれを見つめるばかりで、SPらしき男が懐に手を出している。どうやらその中には拳銃があるようだ。

「いいか? 勘違いしているようだが……これは命令だ。お前等はそれに従う。それがお前等の仕事だろう。いいか、命令だ。従わなければ……ここからは出て行ってもらうことになる」
「ッ! ふざけ——ッ!!」

 優輝が再び怒鳴ろうとしたその時、

「やめなさい」

 ただ一言。凍りつくような八雲の一言で優輝は言葉が詰まった。見るだけで分かる。八雲は内にその怒りを抑えていた。しかし、それを表そうとはしない。程なくして、八雲は告げる。

「了解しました。早速任務に取り掛からせていただきますので」
「……ふんっ。それでいい。……君も、こんな乱暴な部下がいると参るものだね、全く」

 そのまま黙って引き下がっていればいいものの、男はそんな言葉を口に出してしまっていた。

「……お言葉ですが、この者は私が最も信頼する部下の内の一人です。訂正してください」

 何か冷たい——冷気のようなものが部屋の中に散布する。それを放っているものは、コードネーム"零傑"と呼ばれた、八雲 涼風その人である。
 しかし、それに気付いていないのか、男は特に何も返さずに扉から出ようとした——その時。

 突然、男の行く手に巨大な氷柱が勢いよく放出される。それに驚き、男は思わず尻餅をついてしまう。護衛の男達もみっともなく叫び声をあげる。

「訂正、まだしてませんよね?」

 笑顔と共に放たれた言葉は、まさに"零傑"その人であった。
 八雲を睨み付けるように見つめた男は、愚痴を零しつつ、上層部に連絡してやると捨て台詞を吐いて早々と出て行き、沈黙が漂よう。

「ふふ、貴方の無能さを早く気付くように、とも連絡しておいた方がいいですね」

 と、八雲は呟く。こんな感じで冷静そうに見えて切れている八雲は毎度のように言葉が今までとは違う。 これが本性なのか、普段の彼女が本性なのかは第三部隊の全員でも未だに分からない。

「……でも、本当にやるんですか? 八雲さん」

 冷気がまだほのかに残っている中、優輝が話を切り出した。自分のことを庇うという言い方はおかしいが、大切な部下だと言ってくれた八雲にはもはや感謝の言葉もいらないほどの信頼関係が出来ている為、早々と任務のことを切り出したのである。
 その途端、冷気は静かに消えていき、八雲が笑顔で、

「私はやらないといけないね。第三部隊の部長だし……皆はどっちでもいいですよ?」
「いやいや! 俺も……いえ、私も勿論参加しますよ、八雲部長!」

 橋本が賛同した後、優輝らもそれに賛同する意思を示すかのように頷いていく。
 それを見た八雲は、一瞬驚いたような顔は見せたが、また朗らかな笑顔に変わっていった。

「ふふ、じゃあ、よろしくね?」
「「はいっ!」」

 あの気弱な相原でさえも強気に返事を言い切った。
 その様子を見て、小さく笑い声をあげ、また誰にも聞こえないように呟く。


「……誰も、死なせない」


 彼女の運命、もしくは彼女なりの"身に纏う断罪"は小さく現れ始めていたのである。



第2話:身に纏う断罪(完)

Re: 白夜のトワイライト【完結版】第2話完結 ( No.21 )
日時: 2013/02/16 00:01
名前: 遮犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: 5LwYdnf7)

「おいっ、何事だッ!」

 鑑が玄関のドアを開け放つと、声を荒げて目の前の光景を見た。白夜も鑑に続いて後方より遅れて辿り着く。

「もう終わってる。今、葵が調べてるところだ」

 和泉がぶっきらぼうに言いながら目線を宮辺に移す。すると、そこには倒れている男の胴体部分にある防弾チョッキを外している宮辺の姿があった。

 男が突然襲いかかってきたあの後、何故か突然男は倒れていた。何が起きたのかその場にいた二人にも分からず、宮辺が脈を取る限りは既に死亡していると断定されている。
 検死をする為、宮辺はいつの間にか白いゴム手袋をつけて丁寧に男の情報を掴もうとしていた。
 男の倒れた地面には血が広がっているが、どうやら全体の傷から流れた血と、大部分は宮辺の撃ったであろう足の部分からの出血ということが見て分かる。なぜなら、足元の方にはそれだけ血の量が他と比べてみても多かったからだ。完全に折れ、開放骨折状態でも無理矢理立ち上がっていた男の足は、もはや足と言えるものではなかった。そして腹部には、不自然な出っ張りが確かにあり、その姿は異形そのものである。

「やっぱり……爆弾だ」

 宮辺がその時、小さく呟く。それを聞いた和泉が冷静にその爆弾について聞こうとしたが、間髪入れずに放たれた宮辺の言葉によってそれはどこかへ飲み込まれていってしまった。

「腹が切り裂かれて、そこに爆弾があると思ったんだけど……どうしてだろう」
「何がだ?」

 宮辺が怪訝な表情を浮かべ、不思議に思う所が和泉には分からないようであり、どうにもいえない難しい表情をしていた。それを考察する宮辺は次のように述べていく。

「出血量が全体の傷に比べて、あまりに多かった。それに、お腹の部分が不自然に守られていたんだ。包帯とかでぐるぐる巻きにされてたりして。……でも、お腹は切り裂かれてなかった。けど、何かが入り込んだ痕があるんだ」
「ちょっと待てよ。お前の言うそれだと、どこから出血してたんだ? 入り込んだ形跡があるって、切り裂かれてもないのに、そんなことできるわけがないだろ」
「うん。でも、爆弾はちゃんとお腹の中にあるんだ。無理矢理埋め込まれてる感じ。これだけでも相当酷いんだけど……どういうことなんだろう」

 倒れた男の謎の出血量。宮辺の言い分では、この出血量は間違いなく致死量であるらしい。足から流れた血がそれに達したんじゃないかという言い分も他にあったが、その前に宮辺の"能力"によって元からこの致死量だったということは分かっていた。最初の時点では致死量に達しても死なないように能力か何かによって処置が施されていたのか。あるいは男の自身の力によってここまで辿り着いたのかと考察する。
 と、その時。白夜が突然、鑑と和泉、そして宮辺を通り越して倒れている男の元へと歩き、次のように話す。

「腹を切り裂かれ、そこに何かを仕込まれたのはまず間違いないだろう。……男はそれで、助けを求めたのか?」
「いや……確か、そんなことは言ってなかったはずだ。俺にこの手紙をディスト団長に渡すようにと伝えてから、突然おかしくなったんだ」
「手紙……? この男がか?」

 和泉が白夜の質問に答えるが、その内容を訝しげに聞いていた鑑が問う。

「あぁ。これがその手紙だ」

 血で汚れたその手紙をその場にいる者に分からせるかのように、和泉は手で手紙を左右に振って見せる。

「助けを求めなかった。つまり、男は自分の腹に爆弾が仕込まれていることを知らなかったのか。もし腹を切り裂かれたまま爆弾を入れられていたならば、あまりの痛みでそれには気付くだろう」
「……だとしたら、何者かによって気を失っている間、無理矢理腹ん中にぶちこまれたってことかよ?」

 想像したものがあまりの惨劇な為、表情が強張っていく。

「……宮辺。お前は何故この男の腹に爆弾があると思ったんだ?」

 白夜の突然の問いに、宮辺は一瞬少しだけ肩を上下すると、自分の能力に確信を持つかのように淡々と話し始めた。

「僕の能力で幾分か把握した辺りでは、腹部の重装備を解くと不自然な出っ張りがあることに気付きました。そしてそれに伴って聞こえる一定音の電子音。体内部からでしか聞こえないほど微かなものですが、これは爆弾特有のものではないかと思われました。しかし、どうやらタイマー設定はされていないようで、爆弾自体に強い衝撃を与えると爆発するようになっているみたいです」

 白夜を除く、他の二人はその考察に納得していた。実際に腹を切り裂いてみたわけではないが、相当の観察力であろう。とは言っても、彼の能力なしにではそれは為し得ないことでもある。音などは全く聞こえず、彼の能力を使わねば捉えることの出来ない音。それは白夜にも聞こえていないはず。
 だが、白夜は男を見定め、こう言い放った。

「じゃあ、何故爆弾を仕掛けたんだと思う?」
「え……? それは、エルトールを攻撃する為なんじゃ——」
「それならこんな回りくどい真似はしない。爆弾で攻撃するなら、他にもっとやり様はある。この男は"撒き餌"に使われたんだろう」
「撒き餌だと? ……おい、もしかして——」

 鑑が呟いたその途端、一つの考えが過ぎる。出来れば考えたくないことだが、この男は爆弾を体内に積んでいる形で襲いかかり、それは能力者達の相手を勤めさせる役目を担っていたのではないかと考えられたのだ。つまり、白夜の言う撒き餌は有り得ると確信出来たのである。
 例え腹部に衝撃が走り、爆発したとしても、それは単なる時間稼ぎでしかない。何故そこまで手間のかかることをするのか。考えを募らせていくと、見えてくる答えは既に浮かんでおり、鑑は誰に言われることもなくエルトールの内部へと走り、戻っていった。

 犯人の目的。それはエルトール内に侵入すること。犯人が誰だか分からない以上、目的も何も分からない。しかし、爆弾が仕掛けてあることを予測できたのは、宮辺のみ。それは宮辺の能力を知っていての犯行なのか、それともこちら側が男の腹部を傷つけることを期待しての犯行なのか。
 男の現在の死因は、恐らく出血によるショック死と診ていいと思われていた。死=爆発でもない。攻撃が目的ではないようである。

 そこから導き出された答えは、エルトールの侵入をしてから、何者かを誘拐、または恐喝等の行動をとるということ。しかし、それが実行可能なのは、今日がこれだけ警備が手薄だということ。内部から出ようと思えば前の門からでしか出れないこと。そして、外から侵入するには内部で操作が必要だということ。それらをあらかじめ把握していなければならない。しかし、相手の能力によってそれはまた異なる。能力によっては通れないはずの道が通れるようになってしまうのだから。

 万が一のことを考えた鑑の行動に、和泉と宮辺も続いていく。しかし、白夜はそこから動こうとはしない。ただ一人、そこで立ち尽くした後、一つの物陰に向けて声をかけた。


「隠れてないで、そろそろ姿を現したらどうだ?」


 白夜の言葉は誰に向けられたのか。誰もいないはずのその場に、ゆっくりと闇から現れるかのように男が一人、"不自然な登場"をした。不気味な笑い声を発し、"それは仮面を被って"白夜へと数歩近づいた。
 それは恐らく男だと思われる。どことなく不気味な違和感のようなものを放ち、そこに立っていたのである。

「あれれ? いつからバレてたの?」

 おどけたような、小バカにしたような感じの声で男は話した。慣れた感じに首を左右に振って音を鳴らす。軽く骨が外れるような音が不気味に響く。
 白夜は後ろを振り返ることなく、男の質問に答えていた。

「不自然なことだらけだ。出血量があまりに多すぎる。この量ならここに辿り着く前に死んでいるはずだが、生きていた。爆弾か何かを埋め込まれていたのにも関わらず、それを怖がることもなく、手紙を渡した。その後、狂ったように暴れ、足を撃たれてから死んだように倒れる。……男の腹部にある爆弾は、恐らく衝撃を与えても爆発しないだろう。外部からの衝撃を与えて爆発するものではなく、内部からの衝撃……つまり、それ専用の爆発装置がある。それは、すぐに爆発されては困るものだったからだ」
「うん……まあ、そうだね。手紙を届けてくれないと、僕は困るからさ」

 と、当然のように男は話す。そのヘラヘラとした口調や、気持ちの悪い雰囲気といい、何かがこの男は違っていた。

「その血液の量は、ずっと垂れ流しだったんじゃない。お前がここでこの男を殺したんだ」
「ふぅん……まあ、確かにここでこの血は流したけど、死んでたら生きてないじゃない?」

 男の言葉は最もである。ここまでがこの場で考えられる限界だった。その後は、この男の何かしらの能力のせいで再び生き返り、手紙を渡させる。腹を切り裂かれた形跡がない以上、どうやってこの男が爆弾を仕込んだのか分からない。いや、それ以前にこの男ではない、別の者が埋め込んだ可能性だってある。そうとなれば、この場所で殺していたという推測は全くの別物ということになってしまう。
 仮面の男は、楽しそうに笑っているのか、微かな笑い声と肩を小刻みに上下させていた。

「ふふふ……まぁ、僕の"能力"を知らないしね……上出来だと思うよ、うん。……"黒獅子"も君のことを気に入るわけだ」
「何……!?」

 その言葉を聞くや否や、白夜はゆっくりと男の方へと振り返る——が
 その瞬間、飛び込んできたのは倒れていた男だった。そしてその後方には、男がニヤリと笑顔でいる。その手には、何かの装置が握られていた。恐らくは——

「どっかーん」

 と、男の一言と同時に装置のボタンが押される。その刹那、白夜のすぐ前方で男の腹部が盛り上がり、突然爆発を巻き起こしたのであった。


——————————


「爆発……!?」

 鑑が突然の爆発に驚きを表すが、今はそれどころではない。館内に侵入者がいるかもしれないのだ。
 和泉と宮辺には人質だった少年少女の確認を急がせる。少女の方、雛は春がついていると予測されるのでまだ多少安心は出来たが、少年の方は分からない。犯人が何を目的として侵入してきているかも分からない状況だからである。

 鑑は急いでディストの元へと向かう。今日は本当に偶然か分からないが、メンバーが出揃っていない。他のメンバーは皆それぞれに仕事をしているはずだ。それを部外者が知っていることはない。
 エレベーターへと急いで駆け込み、ディストの部屋へと目指す。この少しの時間が限りなく惜しい。少しでも体を動かして急いでいる感覚を得る為にも階段での移動の方が良かっただろうか、とも考えた鑑であったが、間もなくしてエレベーターは軽快な音と共に開いた。

 目の前は既に団長室。急いでその中へと飛び込み、

「団長! 無事かっ!?」

 と、声を荒げ、部屋に入ると——そこにはディストに銃口を突きつけている何者かがいたが、今までディストと話していたのかどうか分からない。その者は男か女か分からないようにフードを被り、マントを覆い、仮面をつけている。この状況が把握出来ない鑑はディストの危機を感じ取り、煮え滾る思いをぶつけるかのように言い放った。

「てめぇ……! いい度胸しやがって。俺がいる限り、ここから出れると、思うなよ?」

 鑑の両手が熱を帯びる。それは赤く、紅蓮のように熱気を漂わせ、室内の気温を急上昇させていく。
 ディストは銃を突きつけられているというのに、平然な顔をしていた。それに加え、呑気に角砂糖をコーヒーに入れていたのである。

「鑑君、落ち着いて」

 ディストの言葉は意外な言葉だったが、鑑がその程度で落ち着けるはずがなかった。
 その瞬間、犯人らしき者はディストに小声何かを言うと、ディストのすぐ後ろにある窓へと飛び込もうとする。

「逃がすかよッ!!」

 鑑は右手をまっすぐ犯人へと伸ばす。紅蓮の手は恐るべき速度で、まるで紅蓮の槍の如く、熱を帯びた一閃が駆け巡っていく。しかし、犯人は既に窓から飛び降りており、その紅蓮の一閃は凄まじい熱気と共に窓を豪快に突き破った他、その近くにあるものを全て熔けさせていった。

「クソッ! あの野郎……!」
「鑑君! ……もういいよ。大事無い」

 ディストの言葉で、鑑は侵入者を追いかけようとするのを止めたが、それがどうにも納得いかずに反論の言葉を述べる。

「何で止めやがる! あの野郎、喧嘩売りやがって……! あのままタダで済ませたら……!」
「まあ、落ち着いて。……紅茶でも、いかがかな?」

 ディストの調子は変わらず、鑑は舌打ちをして悔しがる他になかった。


——————————


 その後、白夜は爆発を難なく逃れ、煙の中で仮面の男を捜したが既にその場から立ち去っていた。男の死体も何も残っておらず、爆発の後の煙の臭いがその場に残っているだけである。

「あの男……黒獅子を知っていた……?」

 白夜はその煙の中でただ一人、佇んでいた。

Re: 白夜のトワイライト【完結版】第2話完結 ( No.22 )
日時: 2013/02/16 18:37
名前: 遮犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: 5LwYdnf7)

 記憶が曖昧に残る。それはぼんやりと浮かんでは消えることを繰り返す。忘れたくても忘れられない記憶は残像の消えることなく留まり続ける。
 悲劇が後悔となって襲いかかった時。何も抵抗は出来ずに、不条理な運命に従ってしまっているような、そんな想いが張り巡っていった。


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第3話:過去の代償

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 一階の会議室にて、今いる限りのエルトール面々は出揃った。
 事の発端が終わりを迎えてから早くも30分は経過しており、円卓状の机の周りに並べられた椅子に白夜らは座ったと思いきや複雑な表情をそれぞれに浮かべている。
 そんな中、春だけが椅子に座ることなく立ち尽くしていたが、春はつい先ほどこの会議室を訪れたばかりの為、座るタイミングがなかったのだ。

 雛と共にあの部屋にいたのだが、部屋は防音防弾の設備が兼ね備えられており、中から外の音は聞こえないようにもなっている。外からは専用の鍵以外、強力な力でもなければ壊すことは出来ない。
 そんな部屋にいた春が外の様子に気付くまで時間がかかったことは必然であった。扉のすぐ傍まで来て話されると多少聞こえやすくなる為、力強くノックする音と和泉の声が聞こえたところでやっと気付いたのである。
 春に何も責任は無いが、多少なりとも力になれたことはあったのではないかと春は自分で責任を感じ、上手く話せず戸惑いつつこの場にいた。
 だからといって、誰も春を責めようなどとは思わなかい。むしろ、その逆だろう。犯人の目的が分からなかったあの最中では、人質を狙っているということも十分に考えられる。少年の方は宮辺が確保し、安全を確かめたが、犯人はどちらを誘拐するか、あるいはどちらも誘拐せねばならなかったか分からなかった為、気付かなかったのが原因だとしても、それは正しかったと暗黙の了解を全員がしていた。

「畜生……! 俺が逃がさなければ……あの野郎、必ず見つけてぶっ倒してやる……!」

 鑑が机を力強く叩き、その拳は怒りによって震える。
 格好や性格からはあまり想像つかないが、鑑は任務に忠実な男であり、承った任務は必ず全うすることが彼なりのポリシーでもあった。それを傷つけたことによる犯人への怒りに対しての反応なのだと、この場にいる全員が理解しているのは容易に分かる。分かっているからこそ、誰も諌めないのだから。
 彼に仕方が無かったという言葉はない。その考え自体が既に頭から消えてしまっている。言葉は乱暴だが、深く責任を負っていることが表情が察すことが出来た。

「俺なんて、滅茶苦茶申し訳ないっすよ……食堂で寝てたなんて」

 申し訳なさそうに秋生が突然口を開く。
 話した通り、秋生は食堂で仮眠を取っていたと証言している。
 食堂はエルトール内でも隔離された場所にあった。騒音等は聞こえるが、ロビーへと戻る際に時間がかかるのは確かである。それも、秋生が気付いたのは爆発音が鳴り響いてからのことであり、急いで起きてロビーへと向かった頃には宮辺が人質であった少年の身の安全を確認していた所だったのだ。
 秋生は春以上に悔しい思いを噛み締めていた。春はまだ部屋で雛を匿っている、というまともな使命を果たせたが、秋生は何も出来なかったのだから。ただ食堂で寝ていて気付かなかった、という言い訳は恥ずかしくてこれ以上は言えないでいたのである。
 しかし、それだけ誰もが予想だにしなかった出来事だということは間違いない。門前で侵入しようと図る者はいても、中に入らせたことは今まで一度もなかったのだ。それだけ徹底した防備を兼ね備えていたはずが、あっさりと侵入されてしまった。
 誰も、何も言えずにただ黙っているだけの時間が多少続いていく。この時間は、一人の人間を待つには長すぎる時間のようにも全員が感じていた。

 そんな重苦しい空気の中、突然扉が開く。そこにはこの空気とは随分かけ離れた笑顔を浮かべるディストの姿があった。

「やぁ、待たせたね」

 それだけ言うと、ディストは軽い足取りで自分の席、つまりテーブルの両端の片方へと座る。座席は適当であるが、ディストは団長ということもあり、会議を指揮する身としてもこの両端の一つを選ぶことを毎度心がけているようであった。人を待たせて悪かったという考えは彼にはないようで、いつもこうして周りを待たせている常習犯である。
 ディストの銀髪が優雅に揺れ、中世的な顔立ちに浮かぶ笑みを少し薄くし、

「さて。これより緊急会議を始めるよ」

 たったこれだけの言葉で、会議はようやく始まりを迎えた。

——————————

 緊急会議の内容は誰もが分かっていた。勿論、先ほどの事件のことである。
 エルトール内は完全要塞と言われるほど難攻不落として有名だった。そんなエルトール内に侵入者が簡単に入ってきたのである。結果は何もなかったように思えるが、侵入されたこと自体がこれまでにはなかった緊急事態だった。
 どうして侵入することが出来たのか。簡単に侵入することは勿論不可能である。門以外の侵入経路は完全に防備している"はず"なのだ。それは誰もが分かっていること。ましてや、極悪犯罪人を処罰する組織の中に侵入しようなどとは普通誰も考えない。いわゆる自殺行為であると思われるからだ。

「おかしな点が沢山見つかってしまうが……まあ、とりあえずは無事で良かった。幸い、犯人は何も盗らなかったようだし、機密事項の書類等も無事でよかったよ」

 ディストが小さく笑いながら手元にあるコーヒーをよくかき混ぜていた。既に砂糖を入れたのか、その隣には角砂糖が多量に入っているビンが開けて置かれている。

「……確かに盗まれたものはないと思うが、渡されたこの手紙は何だ?」

 和泉が右手でその手紙を掴み、全員に見えるように掲げて見せた。
 手紙は多少血か何かで汚れた痕があり、正式に政府等から送られてくるようなものではないことは確かである。その理由としてはまだあった。宛先も届け先も何も書いていないのだ。正式の手紙ならば、勿論宛先や届け先は書くだろうが、この手紙にはまるでない。血やその他の何かで消されたような痕跡もなかった。

「それはもう読んだのか?」
「いや、まだだ。ディスト団長宛だって、一応宛先は口答で言われたからな」

鑑の質問をスムーズに返答する和泉はその手紙を左右へヒラヒラと振る。その会話が終わるにつれて、その場にいた一同の視線はディストへと向けられていた。その視線に気付いているのか気付いていないのか分からないが、ディストは変わらず優雅に多少の笑みを浮かべながら無言で提出の意を表した。
 和泉から手渡しでそれを受け取ると、ゆっくりと手紙を開く。いつの間にか、ディストの手には白い手袋をつけていた。

 手紙の中を探り、慎重に、丁寧にディストが取り出したものは——銀色に光るネックレスだった。

「ふむ……何だろうね、これは」

 興味深そうに言うと、続いてディストが細い指で摘みあげたのは紙切れだった。一見、普通の手紙の内容が書かれていると思われる紙。何か仕掛けがあるわけでもなく、普通の紙である。その紙を、丁寧に開く。皆の視線が集まる中、ディストは黙ってその手紙の内容である文面を見つめる。
 それから暫くの間が経ったような気がした。既にディストが読んでいるのか読んでいないのか分からない。ディストの目は一つも動いてはいないからだ。周りからは要するに"手紙の内容は長文ではない"ことが明らかとなった。しかし、ディストは黙ってそれを見つめるばかりで、言葉を発そうとはしない。

「おい……団長。何が書いてあるんだよ?」

 耐えかねた鑑がディストへと言葉を投げかける。その言葉によって、固まっていたディストがようやく時を再開させた。

「ふふ、まあ、面白いジョークかもしれないけど、なかなか冗談では済まないのかもね? これは」

 ディストは一人でようやく言葉を口にすると、手紙を前方の机へと投げ捨て、皆がその手紙を確認する前に言った。


「"トワイライトは、再来する"……。そう、書かれてあった」


 ディストの言葉は事実だった。文面には血文字かどうかは分からないが、赤い文字でそう綴られていたのである。
 ——トワイライト。その言葉を聞き、この会議にいた者は皆悪寒のようなものが走る。この言葉で悪寒を感じないものは能力者では恐らく存在しないだろう。

 電脳世界エデンが発見され、人々が覚醒し、能力を得てから幾月が流れ、能力は便利なことにも使えるようにもなり、その能力によって様々な現象や科学が生まれることになったことは歴史上、事実である。
 しかし、その事実とは裏腹に能力は世界に悪影響も及ばせていった。それは、一言で表せば"戦争"である。能力は戦争の道具の一つとして捉えられるようになったのだ。世界はだんだんと能力を行使していき、次第に世界は大戦を始めることとなっていった。
 そんな最中、突如能力を皆が使い、殺し合いが始まった途端に世界は現実世界ではなくなった。この時代のことを、今は"喪失の時代"と呼ばれている。その所以は、誰もがその事実を"曖昧になっている"為であるからだ。
 予測されたその時代の現象は世界で様々な起こり得ないはずの現象が起き、電脳世界エデンと一体化した、という説が強い。しかし、それは遠い昔の話ではなく、つい5年ほど前の出来事だというのだから不思議である。喪失した時代はすぐ最中にあったというのだから。
 
 しかし人類がただ覚えていることがあった。それは"トワイライト"という兵器によって喪失の時代は終焉を迎えたという紛れもない事実である。

 トワイライトの威力は凄まじく、全てを破壊し尽くした。人も、何もかも全てを飲み込んで——。
 トワイライトによって何が終わりを迎えたのか、誰も知り得ない。しかし、実際のところは誰もが"忘れてしまっているだけ"なのではないかという説が重要視されてきてはいるが、誰も真相は分からないままである。ただ、能力者が行使されて行われた戦争——それも近い内にそれが起こった。それを覚えていない自分達に対する違和感、恐怖が能力者達にはあるのだ。
 このトワイライトという兵器から基づいて、この喪失された時代に行われたはずの戦争の名をそのまま"トワイライト"と名づけたのであった。

「……これを団長に届ける為に侵入、ってか? とことんなめてやがるな……」

 鑑の言葉はこの会議にいる誰もが思ったことであった。
 根拠も何もなく、予言めいたことが綴られたその内容は度が過ぎたものだからだ。誰も真相を知らないことを再び再来すると予言する手紙。それはどういう意味を表しているのか。ましてや、それをディストに届けた所でどういう結果を得られるのか。それもまた疑問であり、そうして繰り返される疑問の数々は既に限界を超えていた。


 トワイライト。その言葉は、この会議にいる誰よりも白夜が一番深く捉えていた。
 その言葉だけで、曖昧に渦巻いていた過去が再び鮮明に色を表していく。頭に激痛が突如走り、頭を抱えて小さく唸り声をあげる。

 抵抗は出来なかった。どうしても、どうしても代償を背負えというのだろうか。


 何故俺が断罪者を演じているのだろうか。


 俺が一番——断罪されなければならない存在だというのに。


 記憶はこだまする。蘇る曖昧な過去が、白夜の薄れた意識の中でぼんやりと色を取り戻していった。


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