ダーク・ファンタジー小説

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我落多少年とカタストロフ【完結】
日時: 2014/06/29 22:15
名前: 月森和葉 ◆Moon/Z905s (ID: fCO9WxRD)

「もう、駄目なんだ」
「決まってしまっていることなんだよ」

「なんで?」
「ユウ、あたしのこと好きだって言ったよね?」
「だったら、なんでそんな顔してんの?」

「こんな僕でも」
「いつか、笑える日が来るのですか?」

「愚問だな」


 はじめまして、月森和葉(つきもりかずは)と申します。
 いつもは二次映像に居たり雑談板に居たりリク依頼総合にてイラスト屋をやらせて頂いたりしています。
 興味が沸きましたら、是非とも見てやって下さいませ。

※ここから注意です※
●厨二嫌い、月森のことが嫌いという方は、無理に見て頂かなくてもかまいません。
●荒らしはご遠慮下さい。
●コメントをする際は、ネチケットを守りましょう。

 以上でございます。
 皆様に楽しんでいただけますよう。

2013年3月23日

*イメージイラスト
北城霧  >>3
立花遥香 >>5
理実悠人 >>9
日和北都 >>13
日和三波 >>25

*頂き物
たろす@様より霧 >>28

2014年6月29日完結

Re: 我落多少年とカタストロフ ( No.36 )
日時: 2013/10/05 18:54
名前: 月森和葉 ◆Moon/Z905s (ID: UUbzo1gV)

「……んだよ、霧」
「……久しぶり」
 その場に呼び出されたのは、二人の親友たちだった。
 少し前に喧嘩をして顔を合わせ辛かった彼らだが、霧が二人を言葉巧みにこの場に呼び出したのだ。
「なんでも。今日久しぶりに買い物に行ったから、二人にお土産買ってきたんだ」
 三波にもそうしたように、紙袋を取り出して差し出す。
「それをいつも肌身離さず持って、大切にして欲しいんだ。そうしたら僕のことを忘れないだろうから」
 袋を開けると、小箱に収められた時計が出てきた。
 遥香には綺麗な赤いバンド、悠人のものは鮮やかな黄色いバンドが設えてある。
 手にしてみると、それ程でもないが手に吸い付くように重みがある。
 彼はこれと同じものを三波にも渡していた。
 バンドが緑のものを、北都の分と、二つ。
「霧、これ……」
「何も言わずに受け取って。僕は二人が大好きだ。だから、二人が喧嘩してるのを見るのはもう嫌なんだよ」
 彼は自分の左腕を突き出して見せた。見ると、彼の腕には同じ造りで、バンドが透き通るような青の時計が嵌っている。
 不思議な光景だった。
 霧はいつもと変わらずに微笑み、喧嘩していたはずの二人はきょとんと顔を見合わせていた。
「なんで二人が喧嘩してるのか、僕は知らない。でも、やっぱり喧嘩してるより仲が良い方がいいに決まってる。みんな一緒に居て、一週間のうちに何度も顔を合わせるのだから」
 ね? と霧が言うと、二人はどちらとも無く吹き出した。
 そしてひとしきり笑うと、
「そうだね。みんな、仲が良い方がいいよね」
 と、遥香は、少し寂しそうに言った。
「ごめん、ハル。俺……」
「いいの。いいのよ、ユウ。あたしはキリもユウも大好きだよ」
 駆け出し、二人の首に腕を回して縋り付く。
「ちょ、ハル……!」
「うわっ!」
 衝撃に耐えられず、霧はその場に尻餅を付いた。
 それに巻き込まれるように遥香と悠人も川原の芝生の上に座り込む。
 そうして三人で顔を見合わせ、大声で笑った。
 こんなに笑ったのは久しぶりだった。

Re: 我落多少年とカタストロフ ( No.37 )
日時: 2013/11/12 21:56
名前: 月森和葉 ◆Moon/Z905s (ID: QxIgp5vM)


「ただいま戻りました」
 三波が家に戻ると、幸いにも待ち構えていたのは双子の兄だった。
「お帰り」
「北都」
 少し驚いて顔を上げたが、すぐに畏まって礼を言った。
「何、兄さんを騙す事なぞ造作も無い。友達と出掛けたと言ったら納得したよ」
 友達と出掛けた、というのはあながち間違いでもない。
 霧は学校での知人であり先輩で、それを友達という枠で括ったとしてもなんら問題も無い。
 それに、三波が直に言ったのなら兎も角、北都が言ったのなら方英は三波を疑うことすら出来なかったはずだ。
 思わず笑みを零すと、霧から贈り物を貰ったのを思い出して北都に差し出した。
「これ、霧さんから」
「霧さん?」
 三波は赤面し、慌てて口を覆ったが北都は微笑んだだけだった。
「別に自分は君達の仲を詮索したりはしないよ。方栄兄さんでもあるまいし」
 彼は笑って霧からの袋を受け取ると、何も無かったかのように自分の部屋に戻っていった。
 三波は少し兄の反応に少しばかり放心していたが、やがて自分の部屋に戻った。
 そして机の上に今日霧が贈ってくれたヘアークリップと時計を並べる。
(明日、お会い出来たら改めてお礼をしよう……)
 机の上で腕を組み、そこに顎を乗せてその二つの品を眺めていたら、いつの間にか眠ってしまっていた。

Re: 我落多少年とカタストロフ ( No.38 )
日時: 2013/12/18 06:32
名前: 月森和葉 ◆Moon/Z905s (ID: QxIgp5vM)

 そして次の日、彼は学校に現れなかった。

 授業が終わり休み時間に入ると、遥香と悠人は廊下で鉢合わせし、相手の顔を見るなり挨拶もなしに言った。
「なあ、今日キリ見たか?」
「ううん、見てない」
「今日もか……」
 悠人が顔を少し歪ませる。
 そう、霧が学校に来なくなってから今日で二週間が経つ。
 二人は放課後になったら生徒会室に行こうと約束をし、それぞれの教室に戻った。

 しかし、生徒会室に赴いても状況は全く変わらなかった。
 時刻は遅くなっていたが、まだ多くの生徒が生徒会室に残っていた。
 どうやら霧が居ないことで作業が滞っている状態が続いているらしい。
「理実さん、立花さん!」
 珍しく北都が慌てた声を発した。
「会長が何処にいらっしゃるか、ご存知ではありませんか!?」
 悠人は無念そうに首を振る。
「俺らも今探してるところなんだ。端末も繋がらない。此処には顔くらい出してるんじゃないかと思ったんだが……」
 北都も首を振った。
「残念ながら分かりません。会長が居ないことで、生徒会もてんてこ舞いです。それに、三波が……」
 そう言って双子の妹に眼をやる。
 肩までの髪をゴム紐でまとめ後輩に指示を出し、自らの仕事も的確にこなしていく。
 それでもその顔は心なしか暗く曇っている。
 その指示に従っている生徒達も不安そうだった。
 北城霧とはこの学校で知らぬ者の無い、絶対的な支持を誇る生徒だった。
 成績は必ず上位、優しく穏やかな性格と顔立ち、そして生徒会長として築いてきた何百人もの生徒の充実した学園生活。それだけで、彼が絶対的な信頼と人気を確立させるには難しくなかった。
 その彼が数週間も学校に現れていないとなると、生徒達は不安に心をかき乱さずには居られないのだ。
 自らの安定した生活が崩れることを恐れて。

Re: 我落多少年とカタストロフ ( No.39 )
日時: 2013/12/27 19:28
名前: 月森和葉 ◆Moon/Z905s (ID: QxIgp5vM)

 そうして波乱に満ちた数日間が過ぎ、三週目も半ばが過ぎた頃、四人の端末に霧からの通信文が受信された。
 通信文を開封すると、それは紛れもない霧の口調でこう記されていた。
「皆さん、心配を掛けてごめんなさい。僕は大丈夫です。突然で申し訳ありませんが、今日、学校が終わったらこの地図が示す場所に来てください」
 スクロールバーを動かして下を見ると、地図が添付されている。
 端末を閉じてポケットに仕舞い、何も無いように授業を受けた。
 しかし、皆内心戸惑っていたはずだ。
 彼が地図で示した場所は、今は工事をしている筈である。
 行ったとしても中に入ることは難を要するだろう。
 だが、工事現場によくある鉄の足場を潜ると其処は、果たして長い通路が続き、階段が彼らを主の下へ誘うように伸びていた。
 誰も何も言わない。誰かが息を呑む音さえ聞こえそうだった。
「——、行きますよ」

Re: 我落多少年とカタストロフ ( No.40 )
日時: 2014/01/10 19:34
名前: 紗銀 (ID: Mu5Txw/v)

つっきー!
来たよ!

更新待ってるねー


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