ダーク・ファンタジー小説
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- 我落多少年とカタストロフ【完結】
- 日時: 2014/06/29 22:15
- 名前: 月森和葉 ◆Moon/Z905s (ID: fCO9WxRD)
「もう、駄目なんだ」
「決まってしまっていることなんだよ」
「なんで?」
「ユウ、あたしのこと好きだって言ったよね?」
「だったら、なんでそんな顔してんの?」
「こんな僕でも」
「いつか、笑える日が来るのですか?」
「愚問だな」
はじめまして、月森和葉(つきもりかずは)と申します。
いつもは二次映像に居たり雑談板に居たりリク依頼総合にてイラスト屋をやらせて頂いたりしています。
興味が沸きましたら、是非とも見てやって下さいませ。
※ここから注意です※
●厨二嫌い、月森のことが嫌いという方は、無理に見て頂かなくてもかまいません。
●荒らしはご遠慮下さい。
●コメントをする際は、ネチケットを守りましょう。
以上でございます。
皆様に楽しんでいただけますよう。
2013年3月23日
*イメージイラスト
北城霧 >>3
立花遥香 >>5
理実悠人 >>9
日和北都 >>13
日和三波 >>25
*頂き物
たろす@様より霧 >>28
2014年6月29日完結
- Re: 我落多少年とカタストロフ ( No.21 )
- 日時: 2013/05/11 19:38
- 名前: 月森和葉 ◆Moon/Z905s (ID: BsB4CdF8)
やがて訪れる始業式。
壇上で述べる生徒会長の言葉にも幾分慣れ、学級活動も終わり、生徒会室に寄って帰ろうと扉を開けると、中から見慣れない少年がとてつもない形相で霧を睨み付けてきた。
体格の良い少年だ。そして如何にも文武両道を貫き通し、自分の見たいことしか見ないという性格を表した顔つきである。
「……どちら様?」
少々怯えつつも、冷静に名前を問う。
「他人に名を問う時はまず自分から名乗り賜え」
面食らいつつ、正直に名乗った。
「北城霧です。生徒会長という肩書きがありますのでご存じとは思いましたが。そちらは?」
相手もこう切り替えされるとは思っていなかったようで、慌てた表情を隠しきる前に言葉を投げかける。
「俺は日和方英(ほうえい)だ。今日は妹のことで話があって、来た」
(妹……? あ)
丁度その時、北都と三波が開け放したままだった扉の前に立った。
「……!」
二人がそこに立ちつくすのと、方英が叫ぶのが同時だった。
「三波! 北都! お前らはもう此処へ行くなと言ったろうが!」
一瞬で空気が凍る。
そこで動いたのが、北都だった。
「兄さん、それは出来ませんと言ったはずです。後期生都会執行部はもう我々に決まっているのです。今更降りることは出来ません」
実の兄に向かって淡々と話す北都は、兄にも何にも揺らがないという意志に満ち溢れている。
「ならば、俺が生徒会長になればよかったのだ。しかし、人を見る目のない生徒諸君は、俺ではなく北城を会長に選んだ。これは我が校始まって以来の大きな欠落だ!」
「欠落しているのは我々ではなく、兄さんの頭ではないのですか? 成績が良いだけでは生徒会長にはなれません。兄さんに無く、会長にあるもの。それは、人望です」
容赦のない弟の台詞に方英は絶句した。
(北都君、それ言っちゃ駄目だって……)
「……北都、あとで家に帰ったら俺の部屋に来い。話すことがある」
「どうぞ」
何でもないように返すと、北都は方英が出たかどうかも確かめずに後ろ手で扉を閉めた。
部屋に静寂が戻ると、北都は鞄を放り出して霧に頭を下げた。
「……北都君?」
「先程は、兄が失礼いたしました」
「うん、それはいいんだけど……ていうか、お兄さん似てないね」
「は。よく言われます」
顔を上げると、三波を呼び寄せ、定位置に着いて話し始めた。
それにならい、霧も席に着く。
「……先程、兄が来た理由は分かりますか?」
黙って首を振ると、北都は溜め息を吐いて三波の方を見た。
「すみません、会長。今のは、……私の所為です」
顔を俯かせ、ぽつりと言葉を洩らした。
「……先日、家族で食事をしていた時のことです……」
その食事の席で、尊敬している人は誰か、という話題が上がった。
北都は軍事関係者の名を挙げて熱っぽく語ったが、三波は霧の名前を挙げたらしい。
「すみません、迷惑かとは思ったのですが……」
頷き、話を続けるように促す。
それで勘違いした方英が、生徒会室に乗り込んできたというのだ。
「なんとまあ……」
「申し訳ありませんでした。軽率でした。……勿論、恋慕というわけではありませんので……」
そう言う三波の声が小さく震える。
霧は、それには気付かずに「大丈夫」と言った。
- Re: 我落多少年とカタストロフ ( No.22 )
- 日時: 2013/05/18 17:35
- 名前: 月森和葉 ◆Moon/Z905s (ID: BsB4CdF8)
「……失礼、します」
三波はそれだけ言葉を絞り出すと、鞄を置いたままに部屋を飛び出した。
「どうしたの? 彼女」
「……さあ……」
北都は気付かない振りをしたが、三波の眼には涙が溢れていた。
どうやら霧は本当に気付いていないようだった。
それと同時に、別の場所で別の少女が涙を流すことになる。
- Re: 我落多少年とカタストロフ ( No.23 )
- 日時: 2013/06/01 15:46
- 名前: 月森和葉 ◆Moon/Z905s (ID: BsB4CdF8)
「今、なんて言った……?」
真っ青な顔をした遥香、そしてその前に立つ悠人。
「……別れよう、って言ったんだ……」
自ら紡いだ言葉に、悠人は苦痛を感じているようだった。
「……なんで?」
遥香の薄い赤みが差した頬を、涙が一筋伝った。
「ユウ、あたしのこと、好きだって、言ったよね?」
一言一言を区切りつつ、自分に言い聞かせるように単語を発していく。
「だったら、なんでそんな顔を、してるの?」
言った本人も辛そうな表情を隠せない。
「……俺だって、こんなこと言いたかねーよ……」
「じゃあ、なんで……」
ポケットに手を突っ込み、俯いたまま喋りだした。
「俺、この前夢見たんだよ……。すげぇ鮮明な奴。俺と、ハルと、キリで河原の芝生のとこに座ってんだ。そしたら、キリがなんか言いながら立ち上がって、こっち向いて笑うんだ。……それが、すげぇ悲しそうでさ。そしたら、空が真っ暗になって、キリもその闇に飲み込まれちまう。俺とハルだけが残って……それが、俺にはどうしてもただの夢には思えねぇんだ」
「だから……何?」
「だから、さ。俺じゃなくてキリに……キリと一緒にいてやってくれよ……」
「何よ、それ。ユウはあたしじゃなくてキリに幸せになって欲しいの? そんなのずるいよ……。あたしが好きなのはキリじゃなくてユウなのに」
遥香が俯いた。
コンクリートの上に涙が落ちて模様を象っていく。
「俺には、それが本当に起きることのような気がしてならないんだ。もう駄目で、変えることも不可能で、とっくの前に起きるのは決まってしまっていることなんじゃないかって……」
「だから何よ」
「…………」
悠人は何も言わない。
ただ彼の悲しそうな表情が眼に焼き付いて離れない。
「……もう、知らない。ユウなんて嫌い。大ッ嫌い」
そう吐き捨てるように言葉を絞り出すと、遥香はその場を去った。
- Re: 我落多少年とカタストロフ ( No.24 )
- 日時: 2013/06/15 19:49
- 名前: 月森和葉 ◆Moon/Z905s (ID: BsB4CdF8)
それから数日が経つ。
遥香と三波、それに悠人までが霧と顔を合わせようとしない。
内心、霧の心中は穏やかではなかった。
もうすぐあの日を控えている。
自分はどうするのか、そして友人達とはどうするのか。
二学期の中間テストを目前にした今、焦るばかりで全く勉強もはかどらない。
そんな中、悲しみに打ちひしがれていた一人の少女が、動いた。
朝、学校に登校し靴箱を開けると、三波の字でメモが置かれていた。
『今日の放課後、四時頃に、屋上にいらして下さい。お話したいことがあります』
なんだろうと思って霧はメモをポケットに入れた。
断っておくが、霧はこの呼び出しが何のことなのか全く分かっていない。
何か起きたのだろうかくらいにしか考えていないのだ。
彼は、極度に鈍かった。
それが、それだけが、たった一つの彼の難点なのだ。
- Re: 我落多少年とカタストロフ ( No.25 )
- 日時: 2013/06/20 21:18
- 名前: 月森和葉 ◆Moon/Z905s (ID: BsB4CdF8)
- 参照: http://mb1.net4u.org/bbs/kakiko01/image/1432jpg.html
やっとこさ三波ちゃんの絵を載せます。
北都と組み合わせで結構お気に入り。
描き方が変わってるのは気にしないでくださいorz