ダーク・ファンタジー小説
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- 我落多少年とカタストロフ【完結】
- 日時: 2014/06/29 22:15
- 名前: 月森和葉 ◆Moon/Z905s (ID: fCO9WxRD)
「もう、駄目なんだ」
「決まってしまっていることなんだよ」
「なんで?」
「ユウ、あたしのこと好きだって言ったよね?」
「だったら、なんでそんな顔してんの?」
「こんな僕でも」
「いつか、笑える日が来るのですか?」
「愚問だな」
はじめまして、月森和葉(つきもりかずは)と申します。
いつもは二次映像に居たり雑談板に居たりリク依頼総合にてイラスト屋をやらせて頂いたりしています。
興味が沸きましたら、是非とも見てやって下さいませ。
※ここから注意です※
●厨二嫌い、月森のことが嫌いという方は、無理に見て頂かなくてもかまいません。
●荒らしはご遠慮下さい。
●コメントをする際は、ネチケットを守りましょう。
以上でございます。
皆様に楽しんでいただけますよう。
2013年3月23日
*イメージイラスト
北城霧 >>3
立花遥香 >>5
理実悠人 >>9
日和北都 >>13
日和三波 >>25
*頂き物
たろす@様より霧 >>28
2014年6月29日完結
- Re: 我落多少年とカタストロフ ( No.16 )
- 日時: 2013/04/14 20:38
- 名前: 月森和葉 ◆Moon/Z905s (ID: BsB4CdF8)
「何故、早く行動しない?」
いつもの通り、黒い部屋に黒い人物が現れた。
が、今回は何やら苛ついている様子だった。
「いつ始めるかなんて僕の勝手だ。僕が決めて何が悪い?」
「何も悪くない。しかし、終末を待っている人間も沢山居るのだ。お前の存在を、何よりも誇りにしている人間もいるというのに、それを何も分かっていない愚かな子供よりも無下にするというのか? 新世界の神になるべき男が」
「僕は神になんかならない……!」
いつもは柔らかい表情を堅く歪めて、吐き捨てるように言う。
すると今度は呆れたようで、肩を竦めた。
「いつまでもそうは言っていられない。お前が望まなくとも、世界は終わりを迎えようとしている。知っているだろう? 地球が崩壊を始めていることを」
また突然に現れ、突然に消えてゆく。
「忘れてはいけない。世界は必ず終わりを迎えるということを……」
- Re: 我落多少年とカタストロフ ( No.17 )
- 日時: 2013/04/19 21:35
- 名前: 月森和葉 ◆Moon/Z905s (ID: BsB4CdF8)
「会長……最近何かあったのでしょうか?」
「いや、わからん。が、しかし、何かがあった、またはあることは確かだろうな」
この会話は生徒会副会長と書記の、北都と三波の会話である。
およそ兄弟らしからぬ会話(というか言葉遣いだが)、生徒会長である霧を心配していることは伺える。
「北都、そろそろ会長を起こさないとまずいのでは?」
「ああ、そうだな」
心優しい後輩が起こしてくれようとしたのだが、タイミング悪く、教師が生徒会室の扉を開けた。
「おい、北城居るか?」
「うあ……」
この妙な声を上げたのは紛れもない北都である。
「どうした? 日和……おっと、妹も居るのか、北都」
この兄弟は上の学年に兄が居る。よって、兄、弟と呼ぶわけにもいかず、二人以上が居る場合は、教師達は彼らを下の名前で呼ぶ。
「おい、それ誰だ?」
教師が指差した先にいるのは、机に突っ伏して寝ている霧である。
絶体絶命の日和兄妹だった。
「……すみません、先生。会長はちょっとお疲れの様子で……。会長、起きて下さい! 会長!」
揺すってみるも、霧は目を覚まさない。
北都と三波の焦りは高まるばかりだ。
堪りかねた教師が、眠っている霧の頬を思い切り抓り上げた。
「おい、こら北城! 生徒会室で寝るな!」
「ふぁっ!?」
妙な声を上げ、霧が眼を覚ました。
「ったく……。会長のお前がそんなだと、他の生徒にも影響を与えるのだぞ!?」
そこからたっぷり四十分、男性教師による説教が続いた。
北都と三波はとばっちりである。
「今日はここまでにしといてやるが、次やったらどうなるかわからんからな。いいな」
「はい……」
それからやっと用事を言い付け、職員室に戻っていった。
「…………」
何かに疲れ切ったような、そんな空気が生徒会室を満たす。
「……ごめんね、二人とも」
そんな中、霧が口を開く。
「僕の所為で巻き込んじゃったね。お詫びに何か奢ってあげるから、今日はもう帰ろう」
「いえ、会長の所為ではありません。私たちの不徳の致すところです」
男子高校生の台詞とはとても思えないが、北都は霧に向かって頭を垂れた。
「申し訳ありませんでした」
それと同時に三波も頭を下げる。
「ちょ、ちょっと二人とも……。やめて、顔上げてよ。ほんとに僕がいけなかったんだから」
すると三波が顔を上げる。
「取りあえず、先程先生が持っていらした用事は私にやらせて頂きます。その作業は会長より私の方が向いていると思われるので」
教師が持ってきた用事は、委員会での必要経費と思われるもののリストアップである。
彼女は会計も兼ねているので、恐らく霧よりいい仕事をしてくれるだろう。
と、少なくとも霧はそう思っていた。
しかし現実は、何をやらせても、どんな人と比べてみても、霧の成績の方が遙かに良い。
ただ、周りの人間も、霧でさえ、その事実を知らなかった。
- Re: 我落多少年とカタストロフ ( No.18 )
- 日時: 2013/04/25 18:36
- 名前: 月森和葉 ◆Moon/Z905s (ID: BsB4CdF8)
頭を下げる二人をなんとか説得し、帰り道に霧は二人に飲み物を奢った。
「アイスとかでも良いのに」
「いえ、自分は甘いものは苦手ですので」
北都はそう言って、アイスコーヒー(ブラック)を選び、三波は、
「減量中です」
と言ってノンシュガーのレモンティーを選んだ。
「二人とも、無欲だねぇ……」
半ば呆れたように霧が言うと、二人は、
「下手に欲張っているより良いかと思いまして」
「そのように躾けられました」
と返した。
そういう霧も、今日はみかん水(百五円)である。
「会長こそ、それ……」
「あー、もうなんかね、食欲無くなってきたからこれでいいやとか思って」
「夏バテですか?」
「そうかも」
はは……と力無く笑う。
確かにこの茹だるような暑さは、やる気というやる気全てを根こそぎ浚っていってしまう。
「しかし、暑いな……」
握ったペットボトルから結露した水が、コンクリートの地面の上に落ちていくつもの黒い染みを作った。
- Re: 我落多少年とカタストロフ ( No.19 )
- 日時: 2013/05/03 06:47
- 名前: 月森和葉 ◆Moon/Z905s (ID: BsB4CdF8)
登校日からもだいぶ経ち、補習も終わったある夜。
夏休みもあと一週間ほどで終わりである。
遥香は、残りの宿題を片付けてしまおうと机に向かっていた。
霧には会わないが、悠人には何度も会った。
いわゆる、デートという名のお出かけである。
一段落したわけでもないが、少し休憩しようと思ってテレビをつけた。
最初に画面に映ったのは、何処かの会場での記者会見のようだった。
『……、…………!』
記者が騒がしく質問を投げつけ、それに当事者が答える。
何か言うたびに、激しいフラッシュが反射して、テレビ画面の向こうなのに眩しい。
明るく瞬くテレビを観るとも無しに見つめ、氷の入ったカップに口を付ける。
記者会見が終わり、ニュースキャスターが映る。
『……以上が、核変動による記者会見でした。政府は、この問題を……』
(核変動……? それって、ガチにやばいんじゃない……?)
そう思いつつもさして大したことにも思えなかったので、テレビを消して机に戻った。
- Re: 我落多少年とカタストロフ ( No.20 )
- 日時: 2013/05/09 06:38
- 名前: 月森和葉 ◆Moon/Z905s (ID: BsB4CdF8)
風の吹いている河原。
そこに、自分を含めた三人が座っていた。
夕焼けが迫る夏の街で、友人が立ち上がって自分達に背を向け、水面に向かって両手を広げて、何かを話している。
内容はあまり聞き取れない。
その顔がはっきりとこちらを見据え、笑って、でも悲しそうに、何かを呟いた。
刹那、柔らかい橙色の光を照らし出していた太陽は堕ち、暗い闇が街に覆い被さった。
今まで目の前に立っていた友人の顔が、闇に覆われて消える。
「キリ!!」
そう叫び、悠人は気付いた。
ここは河原ではなく、自分の部屋のベッドの上だ。
「はぁっ、はぁっ、はぁー……」
悪夢だ。
街は闇に覆われ、その闇に親友までもが呑まれる。
「…………」
悠人はぎゅっと拳を握りしめ、まだ暗い薄暗い朝焼けの街を太陽が昇るまで見つめていた。