ダーク・ファンタジー小説

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

魔法遣いのオキテ(ファンタジー)
日時: 2012/07/11 01:22
名前: yuunagi(悠凪) (ID: wfu/8Hcy)
参照: http://ncode.syosetu.com/n2549z/

・あらすじ

王立魔法科学院——通称「アカデミー」には二つの学科コースがあった。一つは「普通学科コース」。もう一つは「魔法遣使学科コース」。普通科を就学している生徒たちの学び舎はアカデミー。だが、魔法遣使学科——魔遣科を就学している生徒たちの学び舎は……え? 個人事務所?!

・当作品は不規則な構成(時系列)となっていますご了承下さい。
(例)夢見る愚者篇=未来(現在) 物憂う少年の贖罪篇=過去 etc.

・なお、当作品は小説家になろうさま、Arcadiaさまの方でも投稿させていただいていますご了承ください。(只今、諸事情により更新停止中。涼しくなった頃に再開予定)

※お気軽にご感想などをよろしくお願いしますm(。-_-。)m

・夢見る愚者篇(全三十話)
初期メンバーである牧瀬流風が三年になり、中途編入した雨宮彗月が二年になって……。そして、ようやく正式にメンバーに加わる新入生——椎葉姉妹が入所してから早数ヶ月経過したある日に起こった事件の内容です。

※なお、不規則な構成(時系列)となっておりますので、もしかすると……描写等で至らない部分があるかも知れません。ご了承ください。

 序 章 〜夢見る愚者 前 篇〜 其の一 >>01
 序 章 〜夢見る愚者 前 篇〜 其の二 >>02
 第一章 〜夢見る愚者と軟派男〜 其の一 >>05
 第一章 〜夢見る愚者と軟派男〜 其の二 >>08 >>09
 第一章 〜夢見る愚者と軟派男〜 其の三 >>10 >>11
 第一章 〜夢見る愚者と軟派男〜 其の四 >>12
 第一章 〜夢見る愚者と軟派男〜 其の五 >>13 >>14
 独 白 〜牧瀬流風 十八時十三分〜 >>15
 第二章 〜夢見る愚者とくりそつ姉妹〜 其の一 >>16 >>17
 第二章 〜夢見る愚者とくりそつ姉妹〜 其の二 >>18 >>19
 第二章 〜夢見る愚者とくりそつ姉妹〜 其の三 >>22 >>23
 第二章 〜夢見る愚者とくりそつ姉妹〜 其の四 >>24 >>25
 第二章 〜夢見る愚者とくりそつ姉妹〜 其の五 >>26
 第二章 〜夢見る愚者とくりそつ姉妹〜 其の六 >>27 >>28 >>29
 独 白 〜椎葉鳴 十三時十九分〜 其の一 >>30
 独 白 〜椎葉鳴 十四時十九分〜 其の二 >>31
 第三章 〜夢見る愚者とおしどり夫婦〜 其の一 >>32 >>33
 第三章 〜夢見る愚者とおしどり夫婦〜 其の二 >>34 >>35
 第三章 〜夢見る愚者とおしどり夫婦〜 其の三 >>36
 第三章 〜夢見る愚者とおしどり夫婦〜 其の四 >>37
 第三章 〜夢見る愚者とおしどり夫婦〜 其の五 >>38 >>39
 第三章 〜夢見る愚者とおしどり夫婦〜 其の六 >>40 >>41
 第三章 〜夢見る愚者とおしどり夫婦〜 其の七 >>42 >>43
 独 白 〜雨宮彗月 八時一分〜 其の一 >>44
 独 白 〜久遠寺美鈴 十三時十一分〜 其の二 >>45
 終 章 〜夢見る愚者 後 篇〜 其の一 >>46
 終 章 〜夢見る愚者 後 篇〜 其の二 >>47
 終 章 〜夢見る愚者 後 篇〜 其の三 >>48 >>49
 終 章 〜夢見る愚者 後 篇〜 其の四 >>50
 補 遺 〜久遠寺美玲 十三時十一分〜 >>51

・夢見る愚者篇〜After Story〜(全四話)
本篇〜夢見る愚者〜の後日譚です。

 幕 間 〜牧瀬流風 十八時十三分〜 其の一 >>52
 幕 間 〜椎葉鳴 十三時十九分〜 其の二 >>53

・物憂う少年の贖罪篇
アカデミー入学時代。初々しい頃の魔遣科一年、牧瀬流風の物語です。

(2)第一章 〜夢見る愚者と軟派男〜 其の五 ( No.14 )
日時: 2012/06/14 23:04
名前: yuunagi(悠凪) (ID: wfu/8Hcy)
参照: http://ncode.syosetu.com/n2549z/7/

 ナイフは見事、小柄の男の手を貫くように刺さり、そこから血液が「どくどく」と滴り落ちる。
 だが、小柄の男は歯を食いしばって痛みに耐え、流風に手を翳し続けた。
 痛みで手を下ろすとばかり思っていた流風は「ありゃ?」と、刺された小柄の男の忍耐強さに驚きつつ、急いでその場を離脱。

 しかし、一向に能力が発動する気配がなかった。
 それどころか黒装束の三人は天を仰ぎ。翳していたその手を掲げ。
 そして、もがくように何かを掴もうと必死に手を動かし始めた。

 それを見た流風は「魔法遣いになるまでの軌跡とその末路」と名付けられたサイトに添付されていた動画および夢想薬開発の記述と思わしき文書の事が頭に過る。
 彼らの行動が夢想薬を過度に摂取した場合に起きる拒絶反応のような行動に似ていたからだ。

 ——ただ、それでも流風には謎が残っていた。

 一体、何を掴み取ろうとしているのかが分からなかった。

 ——夢想薬を過度に摂取する者にしか見えない何かが見えるのだろうか?

 だけど、夢想薬の特性を考えればそれはありえない。いくら、合法麻薬とはいえ夢想薬には幻覚症状と言った副作用は一切なかったからだ。

 ——だったら、一体彼らには何が見えているのだろう?

 ——そして、何を掴み取ろうとしているのだろうか?

 流風はあらゆる可能性を考慮して一つの仮説を……。
 いや、ただの思いつきに過ぎない、とある考えに至った。

 「もしかして、お兄さん方には見えている……?」

 少し自信なさげにそう呟いた流風は一息吐いて、黒装束の三人が見えているものを確かめるため。
 突然、両耳に付いたクロスのイヤリングに手をやり。そして、念じるように瞳を閉じた。

 「——出ておいで、シルフィー」

 その声に応えるかのように流風の背後に突然、長くて白いストールで裸体を隠し、エメラルドグリーンの綺麗な瞳が特徴的な緑髪の少女が現れ「ぷかぷか」とあくびをしながら浮いていた。
 そして、その縁髪少女を呼び出した影響なのか、流風の瞳の色が彼女と同じ緑色へと変化していた。

 「あっ、もしかして寝てた?」

 流風の言葉に「シルフィー」と呼ばれた少女は少し恥じらうように頬を赤らめながら首を横に振って否定する。
 が、彼女の反応に流風は「くすり」と笑った。
 シルフィーが眠っていないと首を振って否定しつつも口元に涎の跡が残っていたからだ。

 「さてと」と、唸った流風は男たちが伸ばす腕の先に目をやった。

 すると、赤く発光した球体が男たちに捕まらんとトリッキーに動き回っていた。
 その光景を見た流風は「……なるほど」と唸り、首を縦に振って頷く。
 男たちが何を掴み取ろうとしていたのかが分かり、流風が頷き納得していると。
 大柄の男が何かに気付き、流風の元へ荒々しい息遣いと共に一歩ずつ歩み寄ってきた。

 「それっ……。それをっ……。我らに……よこしぇぇぇ!」

 奇声のような大声を発して、流風に——彼の背後で「ぷかぷか」と浮いているシルフィーを捕らえらんと、大柄の男が猪突猛進で突っ込んでくる。
 彼の猛々しい気迫に彼女は「ビクっ」と怯えて流風の背中に隠れた。

 流風はシルフィーを怯えさせた大柄の男を鋭い目つきで睨みつけると、徐に大きく息を吸って息を止め。右腕を迫りくる男に向けて薙ぎ払うように振るった。

 すると、密閉された部屋の中に突如、激しい音を立てた突風が発生し。
部屋の中を照らしていた蝋燭の灯火は消え、その風の勢いに押されて大柄の男は後方に吹き飛ばされ。後方にある壁に全身を強く打ち付けられた。

 他の二人も同様に壁際まで後退する。
 その突風の強さを物語るように窓を固く封鎖していた板が外れ。
 辺りに外光が射し始めた。

 「全く……。女の子の扱いには気を付けてほしいものだね。シルフィーが怯えちゃったじゃない」

 少々呆れながら流風がそうぼやき。
 身を潜めていたシルフィーは自分を捕らえようと突進してきた大柄の男の様子を窺うように、流風の背後からちょこっとだけ顔を出した。
 彼女の視線の先には黒装束の三人が赤い球体を取る事を忘れて佇んでおり。
 「一体何が起こったのか」と言った風に驚いた表情を浮かべていた。

 「ちょっとちょっとちょっと〜。今さら驚かないでよ。僕の事を調べたんでしょ? あ〜そうか……。モノホンを見て驚いちゃってる訳ですかい? そうですよぉ〜。僕は意のままに風を操れちゃう魔法遣いでぇ〜す」

 と、軽い口調でピースをして調子付いた流風。
 彼の軽口に我に返った黒装束の三人は急いで赤い球体を掴み取ろうとあがく。
 が、流風はそうはさせまいと。もう一度息を吸ってから息を止め。

 今度は左手を拳銃の形にして、銃口と化した人差し指を彼らに向け。三発の銃弾を放つ動作を取ると、そこから目に見えない風弾が発生し。
 サイレント弾のように音を立てずに彼らの腹部へ着弾した。

 空気を圧縮して創られた弾丸は打撃にも似た強い衝撃で、黒装束の三人はその痛みに堪らず悶絶し、腹部を押えてしまう。
 彼らの腹部を射ぬいた流風はキザったらしくガンマンのように「ふぅ〜」と銃口に息を吹いた。

 「シルフィー。カウントは?」

 流風の言葉にシルフィーは指折り数えながら何かをカウントし始め。
 そして、数え終えたのか折った指を流風に提示する。

 「ありゃ? 残り九発か……。結構、時間経ったと思ったんだけどねぇ〜、あんまり回復してないのね……」

 「がっくし」と嘆くように肩を落とした。
 その間に黒装束の三人は腹部を押えながらも必死に赤い球体を追い続ける。
 何かに取り憑かれたように赤い球体を懸命に追い求める。
 が、決死に伸ばす腕も赤い球体にひらりと容易くかわされ。

 そして、崩れ落ちるように膝をつき。這いつくばりながらも赤い球体を掴み取ろうと彼らは腕を伸ばし続ける。
 黒装束の三人に無情の知らせを告げるように彼らの身体から蒸気のようなものが少しずつではあったが発生し始め。
 それを見た流風は口を徐に開いて、

 「……浄化の炎」

 と、力無く口走った。

 黒装束の三人から発生した蒸気は徐々に勢いを増して「魔法遣いになるまでの軌跡とその末路」に記載されていた記録通りに数分後に彼らの身体は発火し始めた。
 それでも彼らは身体を浄化の炎に燃やされながらも宙に舞う赤い球体から視線をそらすことなく、腕を懸命に伸ばし続ける。
 皮膚は焼きただれ、血肉が浮き彫りになりつつある黒装束の三人を流風は視線をそらす事無く最後まで見届けた。

 ——しばらくして、浄化の炎は黒装束の三人を燃え尽くして満足したのか。

 徐々にその炎の勢いを弱め。そして、鎮火した……。
 皮膚が全て剥がれ落ちた状態となった彼らは未だに宙に舞う赤い球体を見つめたままではあったが。徐に、

 『夢見る愚者たちに祝福を……』

 と、唱えて。

 ——そのまま彼らは静かに息絶えてしまった……。

独 白 〜牧瀬流風 十八時十三分〜 ( No.15 )
日時: 2012/06/14 23:06
名前: yuunagi(悠凪) (ID: wfu/8Hcy)
参照: http://ncode.syosetu.com/n2549z/8/

 はいは〜い!
 流風タイムの時間だよ。
 拍手ぅ〜。

 【パチパチパチパチ〜】

 ——はぁ〜、全く……。

 彗月くんがまさか動いているとは正直、思わなかったねぇ。
 今回の事件が起こった現場を考えれば彼を動かしてはマズイと思わなかったのかね、所長殿は……。
 おかげさまで彗月くんは吐いちゃったみたいだし。
 それに鳴にゃんに二八二八さてもらったし——って、僕の馬鹿っ!

 ——ゴホン、まぁ〜美玲ちゃんの思惑はさておき……。

 今回の事件は何と言うか、複雑な気分になっちゃうよねぇ……。
 夢想薬の開発に関わっていたであろう「魔法遣いになるまでの軌跡とその末路」を立ち上げた人物と「夢見る愚者」と名乗る集団にそれを束ねる「大司教」と呼ばれる人物……。

 ——これらは全て何か関係性があるのだろうか?

 こればっかりは「大司教」と呼ばれる人物に問わないと分からない。
 なぜなら「大司教」と呼ばれる人物が自ら束ねる集団の幹部クラスであろう使徒たちに現地政府お抱えの研究所にしかない、夢想薬の原液を渡したのだろうから……。

 だけど、これは何の確証も得ない僕の推測にすぎない。

 たまたま彼らが独自のルートで夢想薬の原液を入手したのかも知れないし……。
 ホント、ただの噂究明だった仕事がとんだ大事件へと発展したもんだ。
 それに僕たちの情報を彼らがどうやって掴んだのかも気になる。

 ——ふむ、分からない事ばかりだ。

 でも、一番分からないのは夢想薬を過度に摂取する事によって起こる、あの副作用の事は使徒のお兄さん方は知っていただろうに……。
 そこまでしてやり遂げたかった目的とは一体何だったんだろう?

 お兄さん方の会話から「討伐」やら物騒なワードが出ていたし。
 それに「時統べる魔女」と「その部下である眷属の五人」ねぇ〜。
 色々と勘違いしてらっしゃるみたいですなぁ〜。

 ——まぁ〜いいや、こちらとしては好都合だしね。

 さてと……。
 報告がてら後輩のパシリでも遂行しようかね。
 後輩を使いに走らせた張本人は首を長〜くして待ちわびているだろうから、ね……。

(1)第二章 〜夢見る愚者とくりそつ姉妹〜 其の一 ( No.16 )
日時: 2012/06/15 20:42
名前: yuunagi(悠凪) (ID: wfu/8Hcy)
参照: http://ncode.syosetu.com/n2549z/9/

 ——電波塔界隈。
 衛星都市一番の高さを誇る電波塔を囲うように車が行き交うロータリー。
 そこから東西南北と伸びる大通りへと大勢の車たちが方向転換する。

 そのロータリーの南側。

 南部にある歓楽街へと伸びる片道三車線の南通り。
 その通りの一車線には規制線が張られ一般人たちが立ち入らないように囲われている。その内側にはアスファルトが陥没し、人型を象った白いテープが貼られていた。
 それを見るために野次馬たちが囲うように参列している中、必死に覗き見ようと頑張るトーテムポールがいた。

 束ねた茶髪を左肩に垂らし、白い翼が描かれた鞄を背負い。継ぎ接ぎだらけのウサギのぬいぐるみを大切そうに抱える少し垂れ目の少女が、束ねた茶髪を右肩に垂らし、黒い翼が描かれた鞄を背負う少し吊り目の少女に肩車をされていた。

 二人の少女は背格好も同じで服装も白いブラウスの上に五芒星を象った校章が描かれた紺色のサマーセーターに、赤と黒の格子柄のスカートと同じだった。
 「ふらふら」と、足元がおぼつかないながらも「苦じゃない」といった風に余裕を見せて肩車をする男勝りな妹の椎葉鳴(しいばなる)と。
 その上に乗るシャイガールな姉の椎葉鳴(しいばめい)は仲の良い双子の姉妹である。

 椎葉姉妹は雨宮彗月や牧瀬流風と同じく、美玲の事務所で働きながら学院へ通う学生で彗月や流風の後輩に当たる。
 現在、彼女らは彗月や流風と同じく夢想薬の噂について調査をしている最中だった。

 「何か見えた? 姉貴」
 「ううん。前の人たちが邪魔で何も見えない」
 「ったくよぉ〜。邪魔だよな〜この野次馬たち」
 「えっと、ナルちゃん。それ……私たちにも言える事だよ」
 「えぇ〜。でもよぉ〜姉貴ぃ。アタシたちはアタシたちなりの理由があって群がってるに過ぎないぜ。こんな野次馬根性の輩と一緒にしないでほしいもんだ」

 二人は昨夜、起こった事件現場に「何か手掛かりがないか」と出向いたものの。
 起こってさほど経っていない事件現場見たさに集まった野次馬たちが邪魔をして、なかなか事件現場を覗き見る事が出来ずにいた。

 「視線を高くすれば見れるんじゃないか」と肩車をしたのは良かったが、小柄の彼女らが肩車をした所で野次馬たちの壁を超えるほどの高さに達する事は無かった。

 ——そこで椎葉姉妹は考えた。

 「どうやれば見れるのだろうか」と唇を尖らせながら考えた結果。
 何か妙案でも浮かんだのか、二人は同じようなタイミングで頷き、行動に出る。
 肩車の態勢から土台の椎葉妹がしゃがみながら折った膝で足場を作り。その足場に上に乗る椎葉姉が足を乗せて。バランスを崩さないように椎葉姉の足を妹が掴んで、組み体操のサボテンの態勢を作った。

 「ど、どうだ、姉貴。何か見えた?」
 「う〜ん。見えそうで見えない」

 ウサギのぬいぐるみをしっかりと抱きかかえながら椎葉姉はそう呟く。
 姉の言葉に椎葉妹は「見る位置がダメなんだ」と思い。姉を抱えたまますり足で早送りをしなければ変化が見られないほどのスピードでじりじりと横に移動する。
 一旦、姉を下ろして移動する方が効率的だと言うのに、椎葉妹の思考回路にはそういうアイディアが全くと言って良いほどに浮かばなかった……。

 「あっ、何か見えそう……」

 事件現場が見える位置を探して牛歩のように移動する中、椎葉姉がそう呟いた。
 「ふむ」と椎葉妹は唸り、その場で立ち止まって足場を固定する。

 「も、もう少しで、見えそう……」

 少し「ぷるぷる」と震えながらも椎葉妹にしっかりと足を支えられて、椎葉姉は絶妙なバランスを維持しつつ、覗き見ようと奮起する。
 すると、道端で組み体操のサボテンを組むおかしな態勢の彼女らに気付いたある少女が椎葉姉妹の元へゆっくりとした足取りで近づいて行き、

 「——うん、スカートの中が見えそうだよ。お嬢さん方」

 と、囁くように投げかけた。
 後方から女性の声でそんな言葉を掛けられた二人は視線だけを後方に向け、

 『スパッツを履いてるんで、大丈夫(です)!!』

 と、声を掛けた少女に心配無用とばかりに少し声を張って対応し。視線を前方に戻して事件現場を覗き見ようと再び奮起する。
 少女の言葉に対応してからしばらくして、椎葉姉妹は少し違和感を覚え。眉間にしわを寄せてしかめ面となって、首を傾げた。

 「あれ……? どこかで聞いた事のある声だ。それに見覚えのある服装をした人だったなぁ〜」と、思案顔になる。
 が「ふむ」と、椎葉姉妹は唸りながらも事件現場を覗き見ようとさらに奮起した。

 そんな彼女らに対し、声を掛けた少女は少し首を傾げて怪訝そうな表情を浮かべている。
 「そこまで必死になってまで何を見たいのだろうか」と、この人だかりは何を見に集まってきているのか分からないと言った風に不思議そうな表情をさらしていた。

 すると、椎葉姉妹は何か思い出したのか口裏を合わせたように「あっ……」と力無い声を発し、声を掛けてきた少女に顔を一斉に向けた。

(2)第二章 〜夢見る愚者とくりそつ姉妹〜 其の一 ( No.17 )
日時: 2012/06/15 20:45
名前: yuunagi(悠凪) (ID: wfu/8Hcy)
参照: http://ncode.syosetu.com/n2549z/9/

 『美鈴さん(ちゃん)!?』

 心底驚いたのか口を開け、目を見開き。
 間抜けな表情をさらしながらも椎葉姉妹は急いで組みを解く。

 「……気付くの遅いよ、二人とも」

 嘆息交じりにそう答える、綺麗に腰の辺りまで伸びる黒髪をなびかせた凛々しい顔立ちの椎葉姉妹と同じ白いブラウス、紺色のサマーセーターに赤と黒の格子柄のスカートにプラス赤いタイを身に付けた服装の少女。
 久遠寺美玲の妹、久遠寺美鈴(くおんじみすず)がそこにいた。

 不真面目な姉の美玲とは違い。真面目な美鈴はすぐ散らかり放題になる事務所の掃除をするために顔を出す事しばしば……。
 流風や彗月。それに椎葉姉妹とは違って、事務所で働いてはいなく。学院に通う普通の学生である。
 彗月とは同級生で、椎葉姉妹の一年先輩に当たる美鈴は彼女らから実の姉のように慕われている。

 「メイちゃん。ナルちゃん。この人だかりは?」

 首を傾げて何を見たさに集まっている人だかりなのか椎葉姉妹に尋ねる美鈴。
 彼女の質問に椎葉姉妹はバツが悪そうに表情を曇らせフリーズした。
 久遠寺美鈴は超がつくほどの大真面目で椎葉姉妹に「とある事情がある」とは言え。美玲の仕事を手伝っている事にあまり快く思っていなかった。

 そのため、この人だかりの理由を正直に答えてしまうと美玲の手伝いをしている事を美鈴に勘ぐられてしまう恐れがあり、椎葉姉妹は「この場をどう乗り越えたら良いか」と模索した。
 美鈴に「がみがみ」と説教される訳にはいかないので、普段から頭を使う作業を姉に任せっきりの妹までもが頭から白い煙を出しながら考える。

 「二人ともどうしたの?」

 フリーズして反応の無い椎葉姉妹を不思議そうに美鈴が尋ねる。
 その言葉で我に返った椎葉姉妹は少しあたふたしながら口を開く。

 「なっ、何でもないよな? 姉貴!」
 「うっ、うん。何でもないですよ!」
 「そう?」

 『うんうん!』

 内心「バレてはいけない」と思う気持ちが全面に出てしまい、少しいい加減な対応をとってしまった椎葉姉妹の受け応えに対して、美鈴は納得してくれたのか、頷いた。
 しかし、まだ美鈴の中には疑問が残されていた。

 「じゃ〜、この人だかりは? 何かあったの?」

 核心に迫る質問に椎葉姉妹は「ビクっ」とつい反射的に身体を強張らしてしまい。
 その反応に美鈴は首を傾げる。
 「黙ってしまえば怪しまれる」と考えた二人は、まず切り込み隊長である椎葉妹が適当に話をつけて。それに合わせて参謀である椎葉姉が辻褄合わせをしたら良いと結論づけ。
 アイコンタクトで合図を送り作戦を決行した。

 「……ピエ〜ルが、さぁ……」

 そう覇気の無い声で話しながら姉の方を「チラチラ」と一瞥し。
 「援護を頼む」と視線を送る。
 椎葉妹のアイコンタクトに椎葉姉が軽く頷き、

 「そっ、そうなんですよ。ピエールさんが現れたみたいなんですよ〜」

 と、にこやかに口裏を合わせに行った。
 しかし、椎葉姉の内心は「その人、誰!?」と、疑問符が乱立していた。

 ——そう、ピエールなる人物は椎葉妹が適当に創った架空上の人物だった。

 「ピエール……さん?」

 案の定、聞いた事の無い名前に美鈴は首を傾げてしまう。

 「え! もしかして、美鈴さんはピエールの事知らないのか!?」
 「あ、あんな有名な人の事を美鈴ちゃんが知らない訳ないでしょ〜ナルちゃん」
 「そっ、そうだよなぁ〜。あははは……」
 「そっ、そうだよ。あははは……」

 セリフ棒読みの大根役者のような口調で居もしない人物をあたかも居るような素振りで話を強引に進める椎葉姉妹の額には汗が滲み出ていた。
 しかし、大根役者っぷりの椎葉姉妹の口裏合わせに美鈴は何も違和感を覚えずに本当にピエールなる有名な人物が居るのだと信じ。
 「ふむ……」と唸った。だが、

 「——そのピエールさんって人は何をしている人なの?」

 美鈴はピエールなる架空の人物の情報を知りたいのか、そんな質問を二人に投げかける。

 「えっ!? ああ、アレだよ。アレ。なっ、姉貴!」
 「うっ、うん。アレですよ。アレ!」
 「あれ……?」

 抽象的な返答に美鈴は怪訝そうな表情を浮かべて首を傾げる。
 椎葉姉妹は「まさかそこまで質問されると思わなかった」と表情を曇らせ口をつぐむ。
 「さて、どうしたものか」と、椎葉姉妹は頭をひねる。
 すると、何か良い設定でも浮かんだのか、徐に椎葉妹が手を叩いて、

 「——自称洋人の星と名乗る真性邦人のホラ吹き者」

 と、真顔でそう答え。
 「上手くやったぜ姉貴!」と、親指を立てて見せた。
 そんな椎葉妹によるピエールの素性設定に椎葉姉は額を押えて小さく嘆息した。

 「……ああ、ナルちゃんに任せるんじゃなかった」と、今頃になって後悔する椎葉姉は「とにかく美鈴ちゃんにバレなきゃいいんだ」と、気持ちを切り替えて破綻な設定に乗る事にした。

 「そっ、そうなんですよ〜。ホラ吹き者で世間を騒がしたあのピエールさんが、ここに来ているみたいなんですよ。それで生ピエールさん、見たさに皆さんが集まって来ていると言う訳なんです〜」
 「そうそう。それでアタシらも生ピエール見たさに野次馬根性をさらけ出しているって所だ!」
 「へぇ〜。だから、二人ともサボテンまでして、その人の事を見たかったんだね〜」

 二人の話を完全に信じきったのか。
 何も疑う事無く頷きながらそう呟いた美鈴に、椎葉姉妹は後ろ手に拳を握りしめた。

 『うん!』

 満面の笑みで頷き、締めにかかった椎葉姉妹の内心は上手く美鈴を騙す事ができ、安堵の気持ちで一杯になっていた。
 そんな彼女らの反応を見て。美鈴は何を思ったのか、唐突に、

 「……ちなみにお姉ちゃんから頼まれた依頼ってなぁに?」

 と、こちらも満面の笑みで尋ねる。
 しかし、椎葉姉妹の笑みとは違い何か含みを持たせた不気味な笑みだった……。

 「——えっ? ああ、夢想薬って呼ばれる薬の噂についての調査だよ。それが? ……あっ」

 騙しに成功し、安心しきっていた所にそんな質問を吹っ掛けられ。
 うっかり流暢な口調で話してしまった馬鹿正直な椎葉妹はまんまと美鈴にしてやられた事に気付き、口を開けて間の抜けた表情をさらしてしまう。
 妹のミスに椎葉姉は大きく嘆息を吐いて額を押えた。

 「——さてと、メイちゃん。ナルちゃん。大切なお話があるんだけど……良い、かな?」

 手を打って笑顔でそう話す美鈴に椎葉姉妹は「ぷるぷる」と身体を小刻みに震わせ、表情を曇らせる。

 『……はい、喜んで……』

 力無くそう返答した椎葉姉妹の瞳は少し潤んでいた。
 そして、椎葉姉妹にしか見えない何かが美鈴の背後にいるのか。

 しきりに「黒いのが……黒いのが……」と呟きながら、三人は人ごみの中へと消えて行った……。

(1)第二章 〜夢見る愚者とくりそつ姉妹〜 其の二 ( No.18 )
日時: 2012/06/16 21:33
名前: yuunagi(悠凪) (ID: wfu/8Hcy)
参照: http://ncode.syosetu.com/n2549z/10/

 「な〜んだ、正直に話してくれたら良かったのに〜」

 飲み物が入ったグラスに添えられたストローを掻き回しながら美鈴がそう嘆く。
 椎葉姉妹と久遠寺美鈴の三人は大切なお話をじっくりと出来る場所を探し求め。
 そして、ようやく見つけたカフェに入店し。二階席にあるテラステーブルを囲ってその大切なお話に興じていた。

 「……ごめん。でもよ〜正直に言うとまた反対されると思ってさぁ〜」
 「……うん。美鈴ちゃんを騙した事は謝ります」
 「まぁ〜反省してくれたんならいいけどさぁ〜」

 椎葉姉妹が久遠寺美玲の「手伝い」をする事を美鈴が快く思っていないのには理由があった。
 美玲の仕事は時たま命に関わるほどの危険な仕事を受諾する事があり。
 「年頃の少女たちにそんな危険な仕事をやらせる訳にはいかない」と、真面目っ子な美鈴は反対していたのだが、今回の仕事内容が「ただの噂の究明」と危険そうな仕事じゃないと分かり。さすがの美鈴も「それなら」と椎葉姉妹の仕事を承諾した。

 それでも椎葉姉妹の立場上、どんな仕事だろうとやり遂げなくてはならなかった。

 ——それは牧瀬流風や雨宮彗月も同じ事だった。

 「——それで、その噂って?」
 「いや……何でも、この街で出回っている夢想薬って薬を飲み過ぎると魔法遣いになれるみたいなんだよ」
 「……魔法遣い? ——って、皆みたいな?」
 「それ、NGワードですよ、美鈴ちゃん。周りに部外者がいる時は自重してください。それと美玲ちゃんはまた違う次元の……って、私も少し言い過ぎですね」

 「反省、反省」と頭を軽く小突いて口をつぐむ。
 椎葉姉に指摘されたもののあまりピンと来なかったのか、美鈴は怪訝そうに首を傾げる。

 「自重って言われてもなぁ〜。私、普通科だし……。それにお姉ちゃんと流風さんたちの違いって未だに分からないし……」
 「簡単な話だぜ。媒体を介して行使するか、ダイレクトで行使するかの違いだ」
 「ナルちゃん、さっきからNG連発。少し自重してください」
 「……へ〜い」

 椎葉姉に注意されて少し不貞腐れてしまった椎葉妹はテーブルに項垂れながらも、ストローをくわえて飲み物を口に含む。

 「——まぁ〜要するにですよ。美玲ちゃんはチートで私たちや流風ちゃんは正攻法です。——ただし、彗月ちゃんは論外です」

 妹に「言い過ぎ」と注意しながらも、少し嘆息交じりに美鈴に分かりやすく解説する椎葉姉に椎葉妹は目を細めて、

 「……姉貴のそれはNGじゃないのかよ」

 と、不貞腐れながらぼやいた。

 「ナルちゃんみたいに具体的じゃないからセーフです」

 膝の上に乗せたウサギのぬいぐるみの腕を掴んで小さくセーフと腕を動かして、そう呟いた後に「なぜ、美鈴が衛星都市に来ているのか」と、疑問に感じた椎葉姉は徐に口を開く。

 「それはそうと……美鈴ちゃんはこっちで買い物か何かですか?」
 「ううん、違うよ。——彗月を探してるんだけど……見なかった?」

 美鈴の返答に椎葉姉妹は揃って首を傾げてきょとんとする。
 椎葉姉妹の記憶では雨宮彗月はお気に入りのソファーでいつも通りに惰眠をむさぼっている姿が残されていたから。

 「あれ? 事務所に居なかったですか?」
 「いや、居なかったよ。お姉ちゃんに聞いたらこっちって……」
 「え? 彗月こっち来てんの?」
 「……それは意外ですね」

 椎葉姉妹は彗月がこちらに来ている事を知りすごく驚いた。
 椎葉姉妹の二人も雨宮彗月の体質の事を当然の事ながら知っているために「まさか、彗月が人の多い場所に来ている」とは微塵も思わなかったのだ。

 「で、美鈴さんは何で彗月を探してんの?」

 そんな彗月をわざわざ探している理由を尋ねた瞬間。
 美鈴の雰囲気が先ほどまで椎葉姉妹に対して抱いていた気持ちに切り替わり「ぷるぷる」と身体を震わせ、徐に拳を強く握り締めた。
 その美鈴の動作に椎葉姉妹は反射的に「ビクっ」と身体を強張らせる。

 「あの馬鹿! また学校サボったのよ。あれほど言ったのにこのままだと留年だよ!」

 テーブルを勢いよく叩き。テーブルに置かれた飲みかけのグラスたちが少し宙に舞う。
 そして、真面目っ子美鈴の怒りがまだ治まらないのか、唐突に「当店オススメ、デラパフェスペシャル」なるメニューを店員を呼びつけて注文した。

 美鈴の自棄行動に椎葉姉妹は顔を引きずった。
 と、言うのは「デラパフェスペシャル」なる物をメニュー表で知り「……これ一人で食べれるの?」と、少し懸念を抱いたからだ。

 「ねぇ〜二人はどう思う? 彗月はこのままでいいと思う?」

 この質問に椎葉姉妹は考える間もなく、二人は見合わせて頷く。

 『——彗月(ちゃん)のあの性格を考えたら無理だろ(じゃないですか)?』

 二人の息ぴったりの返答に美鈴は納得して頷くものの、

 「でも、それを矯正するのが委員長としての私の仕事……」

 と、毅然な態度で彗月の教育係のような発言をした。

 『大変ですね、そのお仕事……』
 「でも、必ずやり遂げて見せるわ……」

 少し呆れた様子の椎葉姉妹を余所に、真面目っ子久遠寺美鈴は雨宮彗月の矯正教育に拳を握りやる気を見せる。
 そんな美鈴の姿に椎葉姉妹の二人は小さく合掌した。
 見つかれば即矯正教育を施されるであろう雨宮彗月に向けて、憐れみの意を込めて祈るように二人は合掌する……。

 「——さてと、そうと決まれば私もお姉ちゃんの手伝いしようかなぁ〜。彗月にも逢えるかも知れないし……」

 美鈴の思いつきのようなこの発言に椎葉姉妹は表情を歪めた。
 いくら実の姉のように慕っている美鈴とは言え、こればかりは了承できない。
 それは今回の仕事が危険性の無さそうな「噂の究明」とは言え、もしもの事があったらと思うと……。
 そのため「どんな仕事であろうと部外者を巻き込むのは私たちのルールに反する」と上司である美玲からの命令でもあり、椎葉姉妹の美鈴に対する想いでもあった。

 「——えっと……言いづらいんだけど……」

 先に切り込み隊長である椎葉妹が少しもじもじしながらも話を切り出す。

 「ん? なぁに?」

 普段、大雑把な性格である椎葉妹が、あまりする事の無い動作に美鈴は首を傾げて怪訝そうな表情を浮かべる。
 言いづらそうにもじもじする妹に変わり、椎葉姉が徐に口を開く。

 「その……部外者を同行させるのはですね、NG……なんです」
 「それって、お姉ちゃんの命令?」
 『まぁ〜そうなるな(なりますね)』
 「ふむふむ……。——だったらこうしよう」

 何か妙案でも浮かんだのか「ポン」と手を打つ美鈴の姿に椎葉姉妹は首を傾げる。

 「私は二人の遥か後方から付け回す事にするよ。それなら同行とは言えないでしょ?」

 この美鈴の発言に椎葉姉妹は「性格こそ天と地ほど違うけれど、二人は血が繋がっているんだなぁ〜」と、しみじみと思った。

 「まぁ〜それなら……」
 「——いやいや、ナルちゃん。バレたら減俸ものだよ」

 美鈴の意見に椎葉妹が心変わりする、すんで所で椎葉姉は注意を促す。
 「ふむ、あともうひと押しか……」と椎葉妹の反応を見て美鈴は畳み掛けに入った。

 「お姉ちゃんに話さなきゃバレやしないよ。それに仕事を早く終わらせたいのならそれなりに人手がいるじゃない? ——そこでよ。私が手伝えば仕事が早く終わるかも知れないし私も彗月を見つけられるかも知れないじゃない?」
 「……確かに、な」

 美鈴の畳み掛けにまんまとやられた椎葉妹は「ああ、その通りかも」と大きく頷く。
 そんな憐れな妹の姿を見て、椎葉姉は口を尖らせながら、

 「——ちょっと、美鈴ちゃん。ナルちゃんの事を誘惑しないでください。ナルちゃんは頭を使う作業は苦手なんですから」

 と、苦言を呈した。
 椎葉姉の苦言に美鈴は悪びれる事無く「むしろ正攻法でしょ?」と、毅然とした態度で徐に口を開いて、

 「うん、それを承知の上で誘惑していたんだけど……」
 「……二人とも、さり気なく酷い事を言ってないか?」

 椎葉妹は「さっきから自分に対して悪口を言っているんじゃなかろうか?」と疑問に感じてしかめ面で二人に問いかけてみたが、二人は「何の事かさっぱり」と言った風にきょとんとした。

 『気のせいじゃない?』

 「ふむ……気のせい、か……?」

 少し疑問を残しながらも「二人がそう言うなら勘違いだったんだな」とお馬鹿な椎葉妹は納得した。


Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。