二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- 薄桜鬼 沖田総司
- 日時: 2011/01/30 17:20
- 名前: さくら (ID: w/qk2kZO)
初めて書きます。
下手ですがどうぞ読んでやってください。
こういう方はお断り。
荒らし目当て
沖田好きな方はぜひどうぞ。
基本的沖田ですが、時々他のメンバーも出てくるかも…?
温かい目で読んでやってください。
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- Re: 薄桜鬼 沖田総司 ( No.90 )
- 日時: 2012/08/06 12:25
- 名前: さくら (ID: cPNADBfY)
どれほどその場に立ち尽くしていたのか。千鶴は気を取り直して、せめて隊士達に茶を淹れてから自分は休もうと思った。
ただ最後に総司に茶を持って行って、もう一度彼の様子を確認したい。先ほどの総司は鞘のない刀。振るい方次第でどんなものをも傷付けてしまいそうな、そんな危うさが感じられた。少し刺激を与えてしまえばどうなるかわからない。千鶴の目にはそう映った。
「沖田さん…」
不安を振り払うように自分の頬を叩く。
「いけない、いけない。私がもっとしっかりいしなくちゃ」
現在の奉行所は薩摩の行動に気を張っている。薩摩への警戒と近藤の襲撃で隊士内には余裕がない。誰も総司が気を揉んでいることなど構っていられない状況なのだ。
「せめて私だけでも…」
彼を支えてやらねば。
迷惑だ。とまた毒づかれるかもしれない。だが総司をどうしても放っておけないのだ。
「あれ…」
大きな盆に複数の湯飲みを乗せて、総司が警護する場所へ行くと千鶴は小首をかしげた。
「あの、すみません」
「はい」
近くで警護していた、おそらく総司の隊の隊士に声をかけた。
「沖田さんはどこへ?」
玄関脇を警護している総司の隊に、隊長である彼の姿がない。
ただ総司がいないだけで千鶴は抑えていた不安が爆発した。焦燥が胸を焦がして息が詰まりそうになる。早く、早く彼はどこに居るのか教えてほしい。
「あぁ、沖田隊長なら藤堂隊長の所に行くと言ってつい先刻ここを離れましたが…」
「ありがとうございます!あの、これ皆さんで飲んでください!」
盆をその隊士に押し付け、千鶴は踵を返した。
駆け足で平助の下へと急ぐ。この不安がなくなればいい。きっと平助のところに居て、二人で軽口を叩き合っている。ただその姿さえ見られればいい。そうして不安を拭えれば。それだけで。
「総司?見てないけどなぁ。何で?どうかしたのか?」
「えっ…」
千鶴の背中から不安が這い上がってくるようだった。
「沖田さん、平助君の所に行くって言って…持ち場を離れたって、隊士の人が教えてくれて…それで…」
「もしかして、あいつ…俺、土方さんに報告してくる!」
二人の予想が一致した。平助はすぐさま身を翻して土方の元へ向かう。
千鶴はいてもたってもいられなかった。探さなくちゃ。そう思った刹那足が自然と動いていた。
千鶴は玄関を抜け、そのまま大通りに身を躍らせる。
どこに彼が行ってしまったかはわからない。けれど方向はこちらだと直感が語っていた。
その直感は当たった。
月が美しい夜だった。そのためか明かりがなくても遠くを見渡せた。
見えなければ良かった。千鶴はそう思ってしまった。
通りの先には複数の人物がたむろっている。刀を差しているところをみるとあれは武士だ。
その武士が固まっている。否、ある一点を見つめて動けなくなっている。
その視線の先を追って千鶴も同様地に根が張ったように動けなくなった。
血の臭いが鼻腔をかすめた。
「っ…!!」
浅黄色の羽織が月明かりによく映えた。
武士が群がる中心に彼は佇んでいる。赤く染まった刀を片手に。
- Re: 薄桜鬼 沖田総司 ( No.91 )
- 日時: 2012/08/07 13:53
- 名前: さくら (ID: cPNADBfY)
あぁ、見つけた。
群がる武士の姿を目にしたとき、総司はうっそりと息をついた。月明かりのおかげで夜目がよく利いた。おかげで安々と見つけ出すことが出来た。
服装や話し声を聞いているかぎり、薩摩藩士に違いない。
総司はゆっくりとした歩調で目の前に布陣する一群に近づいていく。
武士の群れを見つめた途端、総司の心は殺意に満ちていった。目の前が急に暗くなり、風の音、己の足音、遠吠えを繰り返す犬の声さえも聞こえなくなる。ただ自分の鼓動の音と息遣いだけが耳につく。
逸る鼓動をなだめるように総司は刀の鯉口にそっと手をかけた。
唇が乾燥しているためか、我知らず自然と舌なめずりをしていた。その時に総司は気づいた。自分の口端が吊り上っていることに。
「あっ…おい」
総司の気配に気がついた藩士が一人、声を上げた。
今夜は明るい晩だ。相手も当然夜目が利く。特に総司が羽織っている浅黄色の羽織は目立った。
「あいつ、新選組の沖田総司じゃねぇぃか…!?」
「何っ」
薩摩藩士の群れが一斉に総司の方を振り返る。
おそらくこちらの様子を伺っていたのだろう。薩摩藩士は総司を見るなり警戒の色を濃くした。
「一応聞いておこうかな。ねぇ、君達って薩摩藩士だよね?」
「ちっ!相手は一人だ!こっちの動向を知られちまったら意味がねぇ!やっちまえ!!」
「…うん。そのなまり方は薩摩だね。じゃぁもう一つ。近藤さんを撃ったのは、誰?」
およそ二十人はいるであろう人数が総司を取り囲み、それぞれ抜刀する。
総司の問いに答える者はいなかった。
「そう…ま、いいや。誰でも。どうせ全員殺すつもりだったし」
総司のその言葉とその無邪気な笑顔に藩士達は身をすくませた。
「ひるむなっ!!いけぇ!!」
誰からともなく発せられた怒号を合図に、藩士が一斉に襲い掛かってきた。
総司は瞬きの間に身を低く構え、抜刀する。飛び掛かって来た数人はその一閃を食らい、地面にもんどりうつ。
仲間の倒れた体を踏み越え、次の剣撃を繰り出す。総司は刀を素早く捌き、右切り上げ、左薙ぎ、逆袈裟の連撃を何人もの相手に見舞った。
その速さは瞬きほどの間だった。その間に半数近くを倒してしまった。
その勢いに圧された藩士達は、数歩後ずさる。
総司はもちろんその動きを見逃さなかった。
一気に間合いを詰めて、三段突きを放つ。相手を突いた時、血飛沫が顔や体にかかったが、そんなこと気にも留めない。
周囲に充満した血の臭いと、転がる死体の景色に酔ったような感覚を覚える。
優越感、充実感、満足感。全てが押し寄せてきて総司の身を震わせた。
久しぶりの感覚に、うっそりと目を細める。
かつての昔の自分を思い出す。兄弟子達に試合を申し込み、あの時は圧倒的な力で相手を打ちのめした。それはもう相手が虫の息になるほど。
それを止めたのは近藤だった。
あの時は『もういいんだ。お前は勝ったんだから』と、抱きしめてくれた。
「近藤さん…また褒めてくれるかな」
自分はこんなにたくさん敵を討ちましたよ。見てください。
僕はあなたのためなら剣にだってなれる。
「ねぇ、近藤さん…」
狂喜。否、狂気と表現する方が合っているかもしれない。
総司のその様子にますます恐怖を覚えた藩士達は足がすくみ、その場にへたり込む者、走り去ろうとする者が現れた。
総司はすかさず逃げ出した者を追いかけ、後ろから突きを見舞う。
すぐさま相手から刀を引き抜く。その際に血が飛び散る。
手や顔にかかった血を見つめると、総司の血が騒いだ。
『血がほしい———』
鼓動がどんどん早鐘を打ち、手にある血を舐めようと舌を伸ばす。
視界が真っ赤に染まったと思った刹那、小さな影が眼に映った。
「沖田さんっ!!!」
千鶴は総司のそばまで駆け寄るが、その足を止めた。
血溜まりが広がっている。総司を中心に死体が転がり、悲劇の惨状に千鶴は顔を引きつらせた。
総司はゆっくりと足を進めた。黙って千鶴の脇をすり抜けようとした刹那、千鶴が手を広げた。
「待ってください。沖田さん」
千鶴は両手を広げて、総司の進路を閉ざす。
それに苛立ったのか、総司は眉根を寄せ千鶴を睨みすえた。
「もう、やめて下さい。こんなことして、何になるんですか?」
「何になる…?」
この時になって総司はこの子は誰だろうと思った。どうして自分の邪魔をして、邪推な言葉を吐くのだろう。
総司のその冷めた瞳を見て、千鶴は悲しくなった。
その瞳には何も映っていない。暗い色があるだけだ。
「僕は新選組ののためにやっているだけだよ?」
「新選組のためにとおっしゃるなら、どうして誰にも言わずに、黙って出てきたんですか?」
「…僕が私闘のためにやってるって言いたいの?」
千鶴は答えなかった。その沈黙が是、といっているようで苛立った。
どうしてこの子にここまで言われなくちゃいけないんだろう。僕は新選組のために刀を振ったまでだ。なのに。
千鶴の澄んだ瞳に見つめられると、どうしてか自分がやったことがいけないことのような罪悪感に襲われる。
「…どきなよ」
「どきません。絶対に」
「どかないと、殺すよ」
その言葉に一瞬千鶴の瞳が揺れた。よく見れば手が震えている。無理もない。あまりこういった場に慣れていない彼女は、きっとこの場に立っているのもやっとなはずだ。
「どきなよ。でないと———」
総司は右手に意持つ刀を振り上げようとした。
「私は沖田さんの鞘になりたいんです」
- Re: 薄桜鬼 沖田総司 ( No.92 )
- 日時: 2012/08/10 17:00
- 名前: 桜舞姫 (ID: O72/xQMk)
きたね、沖田さん暴走!!
千鶴ちゃんどうなるっ!?
続き楽しみだァァァ!
- Re: 薄桜鬼 沖田総司 ( No.93 )
- 日時: 2012/08/13 17:58
- 名前: さくら (ID: cPNADBfY)
桜舞姫さん
いつも読んでくれてありがとう^^
私も書いていてすごい楽しい←
狂ってる沖田さんが好きー
さてさて
狂った沖田はどうなるのかなぁ
- Re: 薄桜鬼 沖田総司 ( No.94 )
- 日時: 2012/08/13 18:56
- 名前: さくら (ID: cPNADBfY)
目と鼻の先に総司が突きつけた剣先が迫っている。
だが、それにも臆せず千鶴は懇願するように愛しい人を見つめた。
「私は沖田さんの鞘になりたいんです」
「…君が何を言っているのかわからないよ」
心臓が早鐘をうつ。千鶴は総司の冷たい態度にもひるまず続けた。
「今の沖田さんはすごく危うい…少しの刺激に過敏に反応してしまって、すぐに刀を抜いてしまう。振りようによってはどんなものをも傷付けてしまいそうで…私は沖田さんを守りたい」
「千鶴ちゃん…」
「暴走、しています。今の沖田さんは。ふと正気に戻ったとき、誰かを傷付けたことに後悔してほしくないんです」
「千鶴ちゃん…僕は新選組の刀だよ?後悔なんてするわけない。もう黙って帰ってくれないかな。でないと———」
剣先が迸る。千鶴は反射的に目を瞑った。
断末魔の叫びと鈍い音が同時に聞こえた。次に千鶴が目を開けたとき、背後には死体が転がっていた。
千鶴を押しのけるようにして藩士を倒した総司は、忌々しげに呟く。
「でないと、間違えて斬っちゃうかも。ねぇ、邪魔にしかならないんだし早く帰りなよ」
「沖田さ…」
千鶴の呼びかけに応える素振りもなく、総司はまだ残っている薩摩藩士の残党に向かって駆ける。
隙を突かれた藩士達は次々に倒れ、一瞬にして血の雨が降った。
血の臭気。死の気配。血溜まりの中に佇む総司の姿はまるで鬼のようで、千鶴は自分が知っている総司ではなくなるようで怖くなった。
「沖田さん…」
目にかかる髪から血が滴り、総司は顔を拭った。
羽織に染み付いた血の臭いにくらりと眩暈がした。鼓動が高鳴り再び血が騒ぎ出す。
他者の血を求めている。手についた血が目に留まり、総司はそれから目をそらせなくなった。
そっと口を開き、舌を伸ばす。
「沖田さんっ!!」
ふわりと、血の臭いを掻き消す芳香がした。
「やめて下さいっ!!沖田さん、気づいてないかも知れませんけど羅刹化しています!」
千鶴が総司の背中に抱きついて、動きを封じた。
周りの薩摩藩士が総司を見つめて悲鳴を上げ、そのまま逃げ出してしまった。
おそらく総司の変貌に恐れたのだろう。残るは無数の死体と二人だけ。
「やめて下さい。沖田さん…今のあなたは羅刹化して狂っていく隊士さんそのものです」
その言葉に総司は雷に打たれたような衝撃を受けた。
ようやく遠のいていた意識が戻ってきたようだった。正気に戻った総司は震える腕で、必死にしがみつく千鶴を見つめた。
「千鶴ちゃん…僕、は…」
みるみる白い髪が元に戻り、赤い目も色を戻した。
それを見た千鶴は安堵のため息を漏らした。と、同時にそのまま気を失った。
無理もない。転がる死体の中で、暴走する総司を止めるとなればただでは済まないところだったのだ。
崩れ落ちそうになる彼女を抱きとめて、総司は目を瞬く。
「あぁ…そうか」
周りの状況を確認して目を細める。
すると通りの向こうから二つの足音が近づいて来た。
「こんなところに居たのか」
「また派手にやらかしたなぁ」
やって来たのは一と左之助だった。事態を理解した二人は溜息をついた。
「早くこっから逃げるぞ。そいつも心配だしな」
総司の腕の中で意識を失う千鶴を見て、左之助がそう促した。
遠くから響く呼び笛に三人は気を引き締める。
「薩摩の連中が来る。行くぞ」
さきほどの残党が仲間を呼んだらしい。夜の静かな闇を切り裂くように提灯の光が遥か向こうで燃えている。大勢で押し寄せられれば勝ち目がない。
三人はそのまま奉行所に向かって全力疾走した。
総司は闇を駆けながら腕で眠る千鶴に視線を移した。
「ごめんね…」
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