二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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薄桜鬼  沖田総司
日時: 2011/01/30 17:20
名前: さくら (ID: w/qk2kZO)


初めて書きます。
下手ですがどうぞ読んでやってください。


こういう方はお断り。
荒らし目当て


沖田好きな方はぜひどうぞ。
基本的沖田ですが、時々他のメンバーも出てくるかも…?


温かい目で読んでやってください。

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Re: 薄桜鬼  沖田総司 ( No.100 )
日時: 2012/09/23 17:51
名前: さくら (ID: cPNADBfY)

神威咲夜さん

初めまして^^
読んで下さって大変嬉しいです
思えばもう二年以上も書いてますねぇ
ひとつひとつが長々しいので申し訳ないです
ありがとうございます

頑張ります!

Re: 薄桜鬼  沖田総司 ( No.101 )
日時: 2012/09/23 18:55
名前: さくら (ID: cPNADBfY)

長い間闇の中を歩いていた。
どこへ向かっているのか、全くわからない。
目の先に手をかざしてもその手さえ見えない深い闇。
千鶴はただ愛しい人の姿を探してさまよっていた。

「沖田さん…」

何もない、闇の中。不安で胸が押し潰されそうになる。
けれど何故か総司を探さなくてはいけないような気がするのだ。自分の中の何かがそう急かすのだ。焦燥はじりじりと胸を焦がし、千鶴は走り出していた。

「沖田さん、沖田さん…!」

がむしゃらに走った。四肢を懸命に動かし、痛み始める胸を叱咤して。それこそ必死に。

「おき…た…さん…っ」

けれど愛しい人の姿はおろか、闇が一層深くなるばかりだった。
手足が限界を向かえ、歩調を緩めると膝が砕けてしまった。
その場に座り込み、しばらく深呼吸を繰り返す。

「……!!」

微かな声が聞こえた。集中していないと聞き落としてしまいそうな小さな声。
千鶴は再び神経を集中して耳を澄ます。

『ごめん…ごめんね…』

間違いない。この声は—————

「沖田さん!!」

その声の主が総司だとわかると声がする方へ走り出した。
どれほど走っただろう。体中の関節は悲鳴をあげ、足は重くなり、肺腑は酸素を求める。
もう駄目だと思った千鶴の目の前に、遠くだが総司の背中が見えた。

「沖田さん!……————?」

あの広い背中が今は何故か小さく見えた。

「泣いてる…?」

大きな背を丸めて、何かに耐えているように見えたその痛々しい姿に、千鶴は胸が締め付けられる思いがした。
今すぐ近寄って背中から彼を包んであげたい。全てを抱擁し、全てを受け止める鞘になりたい。
だが千鶴の想いとは裏腹に、総司の姿がだんだんと小さくなっていく。

「!!待ってください!!沖田さん!」

千鶴の呼び止める声とともに、大きな破裂音が響いた—————。




「…総司は今しがた出て行ったぞ」
「…さい、とう……さん?」
「総司がどうした。何度も名前を呼んでいたが…」

一が傍らに居ることを確認して、千鶴はぐるりと部屋を見渡した。
一と自分以外誰も居ない。部屋は暗く、灯篭の光が一の影を揺らしていた。時分はもう夜らしい。一体いつ倒れて、今は何時なのだろう。

「あの、沖田さんは…」

それよりも知りたいことがあった。夢に見た総司はいつもの総司ではなかった。気になって千鶴は一を見つめた。

「あぁ、さっきまでここに居たのだが———」

突然、破裂音が轟く。
この音は———

「長州…か薩摩かはわからんが、先ほどからこの通り鉄砲を打ち鳴らして挑発を繰り返している。あいつはそれに誘われ飛び出していったのだ。お前のことを任されて俺はここに居るだけだ」

この音で自分が目覚めたことを悟って、千鶴は上体を起こした。

「おい」
「大丈夫です。私も行きます」
「そんな体で何を言う。まだ安静に———」

ふらつく体を叱責して、千鶴は立ち上がった。少し貧血気味だが、今は構っていられない。
総司がまた戦場に飛び出していった。広い背中が何かに耐え忍んでいるように見た。きっと今総司は何かと戦っている。
支えてあげないと。いつ彼が何かの拍子で崩れてしまうかわからない。
その気持ちが千鶴を動かした。
近くに置いてある小太刀を腰に差し、部屋を後にする。
千鶴の必死の形相に、一は引き止める余地もなかった。

「まるで何か糸のようなもので繋がっているのではないのか、あの二人…」

どちらか一方が離れれば、どちらかが追いかける。離れている時間がないように見える。

「全く…周りの迷惑もたまには考えないのか」

やれやれと首を振って、一は立ち上がると外に出た。庭で警護をしている隊士に向かって一は問うた。

「一番隊組長はどこに行った。追いかける」

放っておけばあの二人は必ず何かを引き起こす。一はそれを見越して腰を上げた。
隊士から総司の向かったおおよその方向を聞き出し、羽織を取りに部屋に戻る。その途中、副長室で足を止めた。

「副長」
「斎藤か」

近藤が襲撃されてから羅刹隊以外の隊士や幹部も寝ずの番をしている。
明かりの点っている土方の部屋に一は静かに入室した。

「総司が飛び出していきました。羅刹隊もこの挑発に人員を割いて調査に向かわせたようですが、また暴走してしまえば総司は誰も止められないものかと…」
「あぁ…だろうな」
「自分が出ます。許可を頂けますか」
「…総司を頼む」

一は土方の強い眼差しを受け止め、大きく頷いた。




闇の帳はすっかり落ち、その上黒い雲が空を覆う。さらに闇が深くなる夜道を千鶴は疾走していた。まるで夢の続きを見ている錯覚に陥る。
不安を振り払うように、千鶴は宵闇が迫る道を走った。

Re: 薄桜鬼  沖田総司 ( No.102 )
日時: 2012/09/23 23:42
名前: 神威咲夜 (ID: kAWEuRKf)

全部見ました!もう…!すばらしい!!さくら様は神ですね!wwだめだぁ!続きが気になるぅ!!

Re: 薄桜鬼  沖田総司 ( No.103 )
日時: 2012/09/30 23:58
名前: さくら (ID: cPNADBfY)

火薬の臭いが充満している。
暗闇を縫うように蠢いている人影は、ざっと数えただけでも十人を超えていた。
総司は荒いげた息を整えるために、そっと白い息を吐き出した。
満月のない今夜は暗くて見通しが悪い。肌を切るような緊張感に誰も口を開こうとはしなかった。ただ暗闇の中互いの気配だけを感じ、そして睨み合っている。
真っ暗闇の中総司は神経を研ぎ澄ませて、目を細めた。
先ほどから打ち鳴らしている銃口がこちを向いていることに。

「あんたなら来ると思ってたよ。沖田総司」

声がした。それは急に現れた。
総司の背後を取った薫は嬉しそうにそう言った。
背中を取られても動じない総司の反応を見て、少し落胆したのか薫の声の調子は一気に下がる。

「久しぶりに会えたのに、あいさつもなし?」
「僕は別にお前に会いに来たんじゃない。僕は近藤さんを撃った奴を探しに来た」

振り返らずに総司は肩越しに問うた。

「あぁ、新撰組局長はどう?急所を外していたとは言え、かなりの重症だったはずだけど。瀕死?危篤?出血死とか—————」
「黙れ」

悠々と、まるで傷付けた相手を他人事のように語る薫に、総司は振り向きざまに間合いを詰めた。それは瞬く程の速さ。その手にはいつ抜刀したのか刀が握られている。

「僕の質問に答えろ」

どんな物をも貫きそうな鋭い眼光で、薫を睨みつける。その鬼を宿したような目に、ぞくぞくと背中を這う感覚を薫は楽しんだ。

「そう言えば、ちょうどあの日だったかな」

うっそりと口元に笑みを添えて、薫は続けた。

「御陵衛士の残党に会ったよ。彼ら、騙まし討ちにされた伊東の恨みを晴らしたいんだってさ」

薫の言うあの日とは、伊東を討った油小路の変を指している。
油小路で伊東は討てたが、その一派全てを打倒した訳ではない。総司の記憶では何人かとり逃がしていた。そして今、そのとり逃がした何人かが総司に銃口を向けている。
刀を向けられても薫はゆったりとした口調で話す。

「奉行所に討ち入る勇気もなさそうだったし、街道に張り込めば良いとは教えてあげたかな」

総司の形相が一変した。
その鋭利な眼光をさらりと受け流し、薫は嘆息交じりに付け足す。

「誤解しないでくれる?僕だって悪気はなかったんだよ?」

そうして目を細めて残虐なまでの笑みを浮かべた。

「新撰組局長ともあろう人が、まさかあんなに油断してるとは、まさかの俺も思わなかったからね!」

薫は今にもこみ上げてくる笑いを、堪えているのか。肩を揺らしている。

「そう…じゃぁここに居る人間全員が犯人っていう訳だね…」
「この状況で何を言ってるの?見てわからない?あんたは罠にかかったんだよ。それすらも分からなくなったの?」
「罠…?」

いくつもの銃口が向けられている中で、総司は嗤っていた。

「これのどこが罠なの?たとえ何人かかって来ようが、関係ないよ。近藤さんを撃った奴等をまとめて始末できるんだからさ」

総司は刀の切っ先を薫に向けると同時に、更にその間合いを詰めて薫の首を取った。
後ろから刀を首にあてがう形で、総司が薫の動きを封じたのだ。

「まずはその憎たらしい口を利けなくしてあげるよ」

総司が首に突きつけた刀を横に薙ぎ払おうとした刹那。
違和感を感じた。
薫がやられそうになっているというのに、御陵衛士の一派は動こうとしない。否、銃口は自分に向けられているものだとばかり思っていた。
その銃の焦点は己ではない。通りの後ろ。自分の背後を通り越した先———

「千鶴、ちゃ…」
「相手は新撰組の沖田だ。銃で狙ってもなかなか当たらないだろうね」

危機的状況であるはずの薫は何故か、余裕を含んだ口調で口を開く。
総司の背後。視線の先には、肩で息を切らしている千鶴の姿があった。ここまで必死に追いかけてきたのだろう。
総司は地面に沈み込むような感覚を覚えた。
どうしてまた君がいるの。どうしてこんな所にいるの。
総司の瞳が揺らいだのを、薫は見逃さなかった。

「弱い奴から先に狙った方が早いかもね」

その言葉に総司は弾かれたように走り出した。
間に合え。
事情を把握し切れていない千鶴は、目を丸くさせる。暗闇の中では自分に銃口が向けられているなど、彼女にはわからない。
逃げて。
総司は全力で駆けた。なのに彼女までそう距離はないはずなのに、中々たどり着けない。全てがゆっくり動いているように見えて、総司は歯噛みした。

「千鶴ちゃ————」

手を伸ばせば彼女はすぐそこ。
もう少し。
その時。銃声が暗雲の夜空にいくつも木霊した。



一瞬雪かと思った。
こんなにも冷える夜だ。きっと雪でも降っているのだろうと、総司は思った。頬にかかる冷たいこれは、きっと雪だ。
でも何で赤いんだろう。
視界に飛ぶ雪は赤かった。その色はまるで———

「血…?」

それが己の血だと気付いたのは、総司の視界は大きく傾き地面に倒れた後だった。

Re: 薄桜鬼  沖田総司 ( No.104 )
日時: 2012/10/06 13:40
名前: さくら (ID: cPNADBfY)

銃声が暗い夜空に響いた。
その時になって千鶴はようやく理解した。
総司がなぜこちらに向かって走ってきたのか。どうして薫はあんなに嘲笑っているのか。
だが、気付いたときには全てが手遅れだった。総司の手が一瞬頬に触れた、かと思った刹那。
総司の体が大きく傾いだ。千鶴はただ呆然と総司が地面に倒れ込むのを見つめることしか出来なかった。
総司の赤い血が地面に広がっていく。それを見て金縛りが急に解けたかのように、千鶴は我に返った。

「あ…あ、ぁ…」

総司の血は広がり、千鶴の足元を赤く染め上げる。
大丈夫、だとは思わなかった。羅刹の力があるから銃に撃たれたところで死に至らないとは聞いていた。だけど、けど。
銃で撃たれた銃傷はすぐに塞がるはずだ。だが、その気配もなく無残にもそこから血が流れ出す。

「沖田さん…沖田さんっ…」

膝を突いて、総司の体に手をかける。総司はうっすらと開いた瞳から千鶴を探して、視線をさ迷わせた。

「…どこも、痛くない…?」
「痛くないです…!!」

総司のおかげで千鶴は銃弾を受けていない。
こんな状況まで自分を気遣う総司に、胸が苦しくなった。

「そう、ならいいんだ…」

千鶴の無事を確認できて安堵したのか、総司は瞼を落とした。

「…沖田さん?沖田さんっ沖田さん!!!」

いくら体を揺すっても硬く閉ざされた瞳は開く気配を見せない。千鶴は何ども愛しい人の名を呼んだ。
一人だけ傷ついて、それでいいことなどない。

「間抜けだなぁ…でも沖田なら庇うと思ってたよ」

薫がくすくすと笑みをこぼしてこちらに近づいてくる。
千鶴は嫌な予感がした。同時に自分から血の気がうせていくのもわかった。

「まさか…最初から沖田さんを狙ったの…?」

薫はさらに笑みを深くした。その反応を見て、千鶴は確信した。

「誰かさんを守ったせいで、沖田は重症だ。怪我、痛そうだね。可愛そうだなぁ」

薫の言葉に哀れみなどない。むしろ声音からは喜々としたものを感じられる。
千鶴は絶句した。ひどい…!ひどいひどい…!!!

「どうしてお前がそんな顔をするんだ?」

千鶴の頬を涙が伝う。それを見た薫はうっそりと微笑んだ。

「お前が居なければ沖田は一人でもこの包囲網をどうにかできたかもしれない。あぁ、誰かさんをかばって傷を負うこともなかってだろうな」

その言葉で千鶴は自覚した。総司を追い詰めたのは自分であると。
千鶴が唇を噛んで薫を睨みつけた。それが唯一できる薫への非難だった。すると急に薫の顔から笑みが掻き消えた。

「…お前はもっと苦しめばいいよ」

ゆったりとした歩調で近づくと、千鶴の目線に合わせるように膝を折る。

「お前も沖田もそう簡単には殺さない」

それは呪詛のように。千鶴の心を鷲掴み、逃れることを許さないほど気迫で続けた。千鶴の瞳が絶望に彩られていく。
この絶望感には覚えがある。薫が総司に変若水を飲ませたとき。あのときと同じように千鶴を陥れるため、総司を利用して残酷な手口で襲いかかって来る。
今回も同じ、心に深い傷を残すように千鶴を陥れた。

「可愛い妹と次に会える日が楽しみだよ」

やるべきことは終えたと言わんばかりに、すっと立ち上がると何事もなかったように立ち去ろうとした。

「薫!!!」

千鶴は声を張り上げた。呪いをかけられように強張った体は震えている。だが、残虐な手で自分だけではなく愛しい人まで傷付けられて黙っている訳にはいかない。
立ち去ろうとしていた背がこちらを振り返った。

「あぁ、その顔…その声……」

薫は微笑んだ。それは今までの笑みとは違い、心から喜んでいるようだった。

「絶望と怒りを知れば知るほど、お前の顔は俺に似ていくよ…血の繋りも馬鹿にできないな」

薫の言葉は闇に消え、残された千鶴は総司に視線を落とした。

「…沖田さんっ…ごめんなさい…」

どうして自分たちは傷付け合ってしまうのだろう。ただ傍にいて守りたいと思うだけなのに。願えば願うほどその思いとはかけ離れた状況になってしまう。
静寂に包まれていた闇夜に足音が響いた。それはこちらに向かっているらしい、複数の足音だった。今まで音をなくしていた世界に喧騒が迫ってきた。
泣き続ける千鶴の元にようやく探し当てた一が隊を率いて駆け寄ってきたのだ。

「千鶴…」

総司の容態に気付いた一はすぐさま隊士に命じて総司を運ぶように手配する。

「千鶴、怪我はないか」

総司が運ばれていくさまをただ見送るだけしか出来ない千鶴に、一が声をかける。

「私の…せいなんです…私が、私が沖田さんを…」

手足の感覚が麻痺していく。周りにいる隊士達の声や一の声も遠のいくようだった。ただ頬を伝う涙の感覚だけははっきりしていた。
泣き咽ぶ千鶴が、今にも壊れてしまいそうな気がした一は、目を細めた。そして千鶴の横に膝をついた。

「お前が気負う事はない・・・それは総司が望んでいない…大丈夫だ、千鶴。戻るぞ」

千鶴はしばらくその場で泣き崩れていた。


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