二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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薄桜鬼  沖田総司
日時: 2011/01/30 17:20
名前: さくら (ID: w/qk2kZO)


初めて書きます。
下手ですがどうぞ読んでやってください。


こういう方はお断り。
荒らし目当て


沖田好きな方はぜひどうぞ。
基本的沖田ですが、時々他のメンバーも出てくるかも…?


温かい目で読んでやってください。

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Re: 薄桜鬼  沖田総司 ( No.105 )
日時: 2012/10/19 18:57
名前: さくら (ID: cPNADBfY)

遅れて屯所に戻ったとき、屯所は騒がしかった。
総司が担ぎこまれ、手当てに追われている者が複数。千鶴はただその情景をただ呆然と見ていることしか出来なかった。
半ば一に引っ張られるかたちで屯所に連れ戻された千鶴は、総司の手当てする現場から離れた部屋にいる。
総司の手当てを本来ならば手伝わなくてはならない。だが、今はもう体は鉛を詰め込んだように重く、離れた部屋から処置に追われる人の声や喧騒を聞くことしか出来なかった。

「私が…私のせいで…」

涙は枯れることなく流れ続けた。はらはらと頬を伝い静かに落ちて着物に吸い込まれる。
もう何も考えられない。考えたくない。
総司の容態が気にはかかるが、負傷した彼を直視しつつ、手当てなどできる気力がなかった。その傷は自分がつけたも同然の傷だ。罪悪感に苛まれ、今総司を真っ直ぐに見れない。

「……沖田さん」

立ち上がる気力もない千鶴の声はただ空しく大気に消えてゆく。
すると突然、大きな足音が聞こえた。その足音は千鶴のいる部屋へと近づいてくる。足音は部屋の前で止まると、襖が勢いよく開けられた。

「こんなところで何をしているんだ」
「…やま、ざ…き、さん…?」

どうしたんですか、と千鶴が問う前に山崎は彼女の腕を掴み、立ち上がらせた。そしてそのまま廊下へと連れ出すとずんずんと広間に向かう。

「あ、あの…山崎さん…?」
「君は僕の助手のはずだ。薬や手当て全般は君と僕でが一任されていただろう」

山崎は怖いほど真剣な顔つきで千鶴に言った。だが山崎の言葉の意味がわからず、視線を泳がせているとあることに気がついた。
今向かっている広間には総司がいる。

「山崎さん…っ…離して下さい!私、私は」

千鶴の抗議に耳を傾ける様子も無く、山崎はそのまま広間へと入っていく。強引に連行された千鶴は心臓が止まったかのように動けなくなった。
平隊士が数人総司を囲むように処置に当たっている。
今の時分は夜。薄暗い部屋では傷口がよく見えないため、いくつもの燭台が広間に運び込まれていた。おかげで広間は明るい。だが千鶴はその明るさを憎んでしまった。
総司が銃で撃たれたとき、現場は外でしかも突きも見えない闇夜だった。そのため流れ出る血は見えたものの傷口まで見えなかった。
だが、今はその傷口が煌々と照らし出されている。横たわり、上半身が露になったその姿に、千鶴は眩暈がした。
その傷口からは赤い鮮血があふれ出ていた。

「雪村君、早くそこの桶で手を洗って手当てを———」
「できません…私には無理です」

千鶴はそう言って広間を後にしようとした。だがすかさず山崎が彼女の腕を掴んで引き止める。

「離して下さい!私にはっ…沖田さんを手当てする資格なんてありませんっ…!!沖田さんがこうなったのも私のせいなんです…私の…」

必死に山崎の手から逃れようともがくが、山崎の腕はびくともしない。それどころか更に力を込め、再び広間に千鶴を連れ戻す。
抵抗する千鶴を総司の傍に座らせた。そして珍しくも山崎は声を荒げた。

「沖田さんの顔を見るんだ!彼は今必死に戦っている。それなのに君は戦っている彼を置いて逃げるのかっ」
「…っ」

視線は総司の顔に張り付いて離れない。
傷の痛みと出血からなる発熱にうなされ、その顔は苦痛に歪んでいた。
ときおり呻くように声を上げ、荒い呼吸を繰り返す。

「でも、わ、私は…」
「このままだと彼の命が危うい。さっき山南総長が羅刹ならば弾丸を摘出すれば傷はすぐに癒えるはずだとおっしゃっていた…」
「……」
「だが弾丸を取り除いても傷が塞がらない…このままだと彼の命が…雪村君。現場を見たことで頭が混乱しているのもわかる。だが今は戦っている彼のためにも、手伝ってほしい」
「山崎さん…」

その表情は真剣そのもの。総司を救いたい思いで溢れていた。
山崎の真摯な表情を前に、千鶴のなかで何かが弾けた。
そうだ、自分だけ逃げてはいけない。ここには傷に立ち向かう総司と、その彼を助けようと戦っている山崎がいる。自責の念に苛まれている場合ではない。一刻を争う事態だ。どうしてそれがわからなかったのだろう。
千鶴は両手で頬を思いっきり叩いた。突然の行動に目を丸くする隊士もいたが、今はそんなこと気にしていられない。

「すみません、取り乱して。もう、大丈夫です!」

山崎は大きく頷くと、千鶴とともに処置にとりかかった。

「沖田さん…死なないで下さい…っ!!」

雨雲が広がる空が白みはじめる頃まで、千鶴と山崎、そして総司の戦いは続いた。

Re: 薄桜鬼  沖田総司 ( No.106 )
日時: 2012/10/28 23:12
名前: さくら (ID: cPNADBfY)

夜が明けて、総司は何とか一命を取り留めた。
山崎と千鶴の格闘の末、銃創の縫合が成功した。だが、出血による発熱は治まらず意識も戻っていない。危険な状態には変わりなかった。
とりあえず手は尽くした。あとは総司の回復力に賭けるしかない。
千鶴がほっと肩の力を抜いたのは太陽が山際から顔を覗かせた頃だった。
山崎も長丁場が堪えたのか、千鶴と同様に脱力した。

「二人ともご苦労だった。おかげで総司が助かった」
「いえ…」

広間には処置を終えた総司の容態を心配して集まった幹部が揃っていた。
特に土方は手術の際に立会い、総司を見守っていた。

「ですが、危険な状態であることに変わりはありません」
 
山崎は土方に向き直り、硬い声音で告げた。
広間に集まった幹部の視線が総司に集まる。表情は一見穏やかに見えるが、それは衰弱しているというだけだ。顔からは血の気が失せている。加えて発熱からか息が荒い。

「あぁ…そうだな」
「副長、いかが致しますか?」

斎藤の問いかけに険しい表情で土方は口を閉じた。
決断のときが迫っている。
今この奉行所に医者はいない。本来ならば総司をちゃんとした医者に診せるべきだ。だが、新撰組の主治医を務めている良順はここにはいない。
貴重な戦力である総司を治療のため護送するか。
それとも、総司の回復力を願ってここに残すか。

「けどよ、どうして銃弾を受けたくらいでここまで重症になるんだ?羅刹は弾丸を受けても死なねぇんだろ?」

新八が眉根を寄せた。それは誰もが疑問に思っていたことだ。
その答えを知っているであろう山南も難しい顔をしていた。

「確かに、銃弾を受けてもそれを摘出すれば回復するはずです…ですが今回の銃に使われていた弾は銀でした。この銀の銃弾のせいで回復ができなかったのではないか、と私は思います」

山崎が銃弾を摘出した際に山南が預かった銀の塊が布に包まれている。
総司の血の色が付着し、今は黒い塊に見えた。

「じゃぁ羅刹でも回復できねぇなら、総司は…」

新八が発した言葉の先を誰もが予想した。
広間が重い空気に包まれる。
固唾を呑んで見守っていた千鶴は土方に視線を向けた。近藤が伏している今、決断を下すのは土方だ。
土方は固く閉ざしていた口を開いた。

「決まってるじゃねぇか。総司を松本先生のところへ護送する」

それはこの厳しい戦況の中、戦力を欠くということだ。誰もが暗い表情で俯くしかなかった。

「…が、それは一時的にだ。総司が回復したらまたここに戻ってもらう」
「お、おう。そうだよな!」
「そうだよ、総司がこんなことぐらいでへこたれたりしねぇって!」

新八や平助は顔を上げて気を取り直した。
千鶴も大きく頷いた。今は一刻も早くちゃんとした治療を受け、そうして全快したならまた復帰してほしい。
総司の護送が決定すると、手配や準備のためにそれぞれが動き出す。

「千鶴」

総司の額の上に乗せていた濡れ手ぬぐいを取り替えていた千鶴は、顔を上げた。

「少し、お前に話たいことがある。来てくれ」

土方が真剣な面持ちで外に出るように促す。
千鶴は一つ頷くと立ち上がった。

土方の部屋で、千鶴は向かい合うようにして座った。二人きりで話すのは初めてかもしれない。
土方はまっすぐに千鶴を見つめて口火を切った。

「話ってのは他でもない。総司のことだ」

土方は言葉を選んでいるのか、少し逡巡してさらに続けた。

「今回の護送、お前がついて行ってくれねぇか。多分、あいつが一番支えとしているのはお前のはずだ」

二人は周知の仲である。土方はそれをわかっていて、千鶴に改めて頼んだのだ。当然千鶴は総司についていくと、土方は思っていた。
だが、千鶴は首を横に振った。

「…できません…私には…」
「できない?どうしたんだ…一体…」

二人はどちらか一方が離れれば、磁力があるように追いかける。それほどの仲だと思っていた。土方はは目を丸くして千鶴の言葉の先を待った。

「…私は、沖田さんの鞘になりたい…そう思っていました。変若水を飲んでから沖田さんはどこか危うく、私が離れなければ、傍についていれば沖田さんの力になれるから大丈夫。私がしっかりすれば、大丈夫、と」

千鶴の膝の上で震えている拳を、土方は見逃さなかった。

「でもっ…また、また沖田さんは傷ついてしまった…!!鞘になろうなんてとんでもありません…傍に居るどころか私はただの足手まといだったんです…っ」

脳裏には残虐な笑みを浮かべて嗤う兄の姿があった。
土方はただ黙って千鶴の言葉に耳を傾ける。

「私では…鞘になれない…傍にいる資格なんて…」

そこで、千鶴の言葉が途切れた。
土方は真剣な表情から急に柔らかい顔つきへと変わる。

「そんなもん、俺だってねぇよ」
「…え?」

顔を上げれば、悲しい色を瞳に浮かべた土方の笑みがあった。

Re: 薄桜鬼  沖田総司 ( No.107 )
日時: 2012/11/15 21:05
名前: ひで (ID: IjQjsni6)

続き楽しみすぎる!!
いつですかー!?

Re: 薄桜鬼  沖田総司 ( No.108 )
日時: 2012/11/18 17:45
名前: さくら (ID: cPNADBfY)

ひでさん

はじめまして^^
読んでいただいてありがとうございます


次書きますよー

Re: 薄桜鬼  沖田総司 ( No.109 )
日時: 2012/11/18 21:38
名前: さくら (ID: cPNADBfY)

どこか痛々しく遠くを見つめている土方は笑ってはいるが、悲しみを背負っている影が見えた。
千鶴は顔を上げて土方の言葉の先を待つ。

「あれはいつだったんだろうな…」

ぽつりぽつりと土方は語り始めた。これまでにない優しい口調で。幸せだった日々を思い出しながら千鶴に聞かせた。

「俺が道場に来たばかりの頃。近藤さんと二人で町を歩いていたときだ。柄の悪い連中に絡まれたんだがな。何とか蹴散らしたはいいが、近藤さんが軽い怪我をしたんだ。それで道場に帰ったら総司が怒ったんだ。『あんたがついていながら何やってんだ』ってな」

土方は苦笑を浮かべながら目を細めた。その視線の向こうには懐かしい日々が思い出されているのだろう。
千鶴はつられて微笑んだ。

「俺は総司の後から入ったからよくは知らねぇが、総司にも色々あったらしくてな。その総司に手を差し伸べたのが近藤さんらしい。そんな大切な近藤さんを傷付けたって怒られてよ」
「昔から沖田さんは変わっていないんですね」
「あぁ。その時俺は思ったんだよ。あぁ、こいつには近藤さんが必要なんだって。じゃぁ俺はこの人を守ってやらねぇと。でなきゃ総司が途方に暮れてしまう。それだけはだめだってな」

優しかった目元が急に真剣みを増して、力強い光を目に宿す。
だがそれはすぐに掻き消えた。

「そう思って今まで近藤さんを支えて、総司を諌めてきたが…俺はあいつの傍にいる資格なんざねぇんだ。二度も近藤さんを傷付けた…」
「それは、土方さんのせいでは…!」
「あいつはそうは思っていないだろう。だが、それでいい。あいつは俺を憎んで前に進んできたんだ」

鬼の副長にそぐわない台詞に、千鶴は浮かんだ疑問をぶつけた。

「……土方さんは沖田さんを大切に思っていたんですか…」
「…悪いか?」
「い、いえ!いつも沖田さんにはきつく当たっているように思えたので…」

今までの千鶴の記憶の中ではいつも土方が総司に厳しい態度であったことが多かった。総司の性格にも少々問題があったため、それを諌める役を土方が買っているものだとばかり思っていたのだ。

「まぁ…傍(はた)から見ればそう見えるだろうな。総司本人もそう思ってるだろう。俺は小さい頃からあいつを知っているからな。実の弟のように思っている」

思いがけない土方の台詞に千鶴は目を剥いた。
だが千鶴ははたと気が付いた。
近藤が総司の目指す光なら、土方はその光へ真っ直ぐ進めるように道を作っているのではないか。
近藤の背中を一心に追いかける総司が道を踏み外さないように。
そのため少々口調がきつくなったり、態度が厳しいものになったのではないか。裏を返せばそれは土方の愛情表現だったのではないか。

「…土方さんは……」

そのことに気付いた千鶴は二の句が継げなかった。

「そのせいで俺はあいつに心底嫌われているがな。それも構わねぇさ。あいつが道に迷わなかったら、それで…」

その表情はとても優しいものだった。どれほど総司を思っているのかがわかるほどに。
土方の大きな愛情に総司は気付くことはないだろう。土方もそれで構わないと思っている。

「もしかして…土方さんは…」

今まで総司を支えていた鞘だったのではないか。総司の道の障害となるものは退け、進む道を補整してきたに違いない。
本当に見えないところで苦労をしている人だと、千鶴は思った。

「千鶴」
「はい」
「刀を出せ」
「?」
「いいから」

言われるがまま千鶴は横に置いてあった小太刀を前に出す。

「峰をこちらに向けて抜け。少しだけでいい」

千鶴は小首を傾げながらも言われたとおりにする。
すると土方も己の刀を前に出し、峰を千鶴に向けたかと思うと千鶴のそれに軽く触れた。
キンと金属音が響いた。
目を瞬いている千鶴に土方は言葉を続けた。

「金打と言ってな。武士が契約を交わすときに行うものらしい。絶対に約束を違えないという意味がある」
「約束…」
「約束しろ。お前は総司の鞘となり、あいつを支えてやれ。それが出来るのは…いや、頼めるのはお前しかいない」
「土方さん…あ、あの私は…」

自信が無かった。
支えようといつも傍にいた。だがそれはかえって総司を追い込むことになってしまうのだ。今回の件で千鶴はそのことを痛感した。
自分にはできない。総司の鞘にはなれない。
千鶴の思いを察したのか、土方は微笑した。

「だったらどうしてあいつを助けた?大怪我を負ったあいつをどうしてお前は救ったんだ?」
「そ、れは…山崎さんに頼まれて…」
「断れば良かっただろう」
「……わ、私は…」

どうしてと問われてもわからない。ただ、総司が瀕死の状態だった。だから助けた。理由を聞かれると答えに窮してしまう。

「それはな、千鶴。お前も総司が必要だからだよ」

土方は自分の刀を納めると、呆然とする千鶴の手に己のを重ねる。

「あいつがお前を必要としているように、お前にもあいつが必要なんだよ。なくてはならない存在なんだろう。言っている意味がわかるか?」

千鶴はただ頷くしかできなかった。妙に納得してしまったからだ。
そうだ、自分は土方が必要なのだ。総司がいない世界など考えられない。どうして今更自分は驚いているのだろう。

「きっとあいつがお前を守るために突き放すこともあるだろうが、お前だけはあいつの傍を離れないでやってくれ。今のあいつはお前なしに立っていられないはずだからな」
「私に…できるでしょうか…」

土方が今まで担ってきた鞘の役目を。自分に出来るのか。

「俺が認めてこうして頼み込んでるんだ。どこに不安なんざあるんだ?」
「土方さんは凄いですね…土方さんが肯定してくれるだけでこんなにも安心できるんですから」

土方の言葉には魔法が宿る。彼が是といえば全てがそのように思えるのだ。

「…大丈夫だ。お前ならきっとできる。その真っ直ぐな心であいつを護ってくれ」

土方はそっと千鶴の手を握ると刀を鞘に戻させた。
鍔が小さく鳴る。
千鶴はただ頷いた。
その目に迷いはなかった。


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