二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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剣と魔法と学園モノ 一緒に冒険しませんか?第二章突入!
日時: 2011/12/18 11:00
名前: 冒険者 ◆6ITp4OKtkc (ID: Y8BZzrzX)

はじめまして。冒険者といいます。ここでは書くのが初めてです。
二次創作が好きなので、最近初めて遊んでいるととモノというゲームをオリジナルを踏まえて書きたいと思います。
これまで多くのキャラ、ありがとうございました!必ず出します!

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Re: 剣と魔法と学園モノ 一緒に冒険しませんか? キャラ大募集 ( No.6 )
日時: 2011/10/23 10:58
名前: 冒険者 ◆6ITp4OKtkc (ID: Y8BZzrzX)



第一話 謹慎明け


「いいかい?もうこんなことが一切起きないように、注意するんだ。君は普通より強いんだから」
「……不服です」
「え?」
「だから不服です。何であたしだけ謹慎食らって、あいつらは保健室送りのままなんですか?あたしは喧嘩を吹っ掛けられたからぶっ飛ばしただけです。それのなにがいけないんですか?」
とある学園の職員室。優しげなエルフの先生が、紅い目と紅い髪の毛の女の子を呼び出し、苦笑しながらお説教をしている。
少女の顔は不満だけしかない。困り果てたように先生は優しく諭す。
「いいかい?ゆうの、君の力は他種族に見せびらかせるものじゃない。そもそも、喧嘩になったら誰かを呼べばいいだけだろう?」
「そんな暇あったと思います?11人も同時に上級生相手して、そんな余裕あったらぶちのめしてます。まぁ、だからぶちのめしたんですけど」
「あのねえ……」
彼は諦めた。彼女はうちのクラスでも随一の問題児だ。今年の新入生は扱いにくい、複雑な子が多い。特に彼女や、杏樹と呼ばれる少女は、周りに心を開かない。
今だって不満しか口にしていない。何が気に入らないか、それは周り全てではないかと彼は予測する。
「もういいです。教室に戻ります。どうせすぐに出ますよね?」
「そうだね……。今日は歓迎の森に、薬草を取りに行く課題だよ。誰かと必ずパーティを組むんだよ、じゃないと課題は認めないからね?」
「……」
職員室を出て行こうとしていた、ゆうのは振り返ると露骨に睨みつけてきた。バハムーンのような紅い瞳。若手の教師を震え上がらせるには十分すぎる迫力だ。が、彼は慣れているので呆れて肩を竦めるだけ。
「……」
彼女は面倒そうに踵を返し、帰って行った。
「あの子、なんとかなりませんか……?」
呆れる彼に、同期のエルフの女性の先生が近づいて言った。
「大丈夫ですよ、あの子は根はやさしいですから。杏樹のように……」
彼はさみしそうにつぶやいた。



「……」
ゆうのは、教室に入った。とたん、クラスメートの視線が一斉に自分に集まる。それは畏怖と、好奇と、その他諸々だ。全部、有効的とはお世辞でも言えない。それだけゆうのはクラスから浮いていた。彼女はそれを無視して、自分の席に座り、突っ伏した。
眠い。昨日は体の痛みと感情の高揚を抑え込むのに精いっぱいで、眠れる余裕がなかった。今のうちに寝るのもありか。でも、そうすると出遅れる。そうすれば単位が貰えない。めんどくさい。
「……」
前の席を見る。薄い金髪のフェアリーが一人で席で薬剤書を呼んでいた。綺麗な翠の瞳、ふわふわと浮いているその姿は伝承の妖精そのままだ。彼女も楽しそうに談笑するクラスメートから浮いている。その空間だけエアポケットが空いているように空間ができている。
「……」
彼女は杏樹。ゆうのの前の席で、互いに話したことはないが、彼女も自分と同じように浮いている存在だ。パーティの要である薬師という薬専門の職業でありながら、誰ともパーティを組んだという話を聞かない。
彼女も、今回の課題はどうするんだろう。試しに話しかけてみることにした。
「杏樹」
「……」
無視された。まぁ、目だけはこちらに向いたので、話を聞く意思があるとみていいだろう。
「今日の課題、パーティを組まないと単位貰えないわよ。どうするの」
「別に。どうもしない」
取りつく島もない。一蹴された。さすがに他人を寄せ付けないだけのことはあるか。
「あたしと組まない?」
「……?」
単刀直入で言った。彼女は振り返り、怪訝そうな顔でゆうのを見る。
ゆうのは続けた。
「今回だけ、互いが単位が取れないと困るでしょ。だから表向きだけ、一緒にやるの。実際は好きに動くってのはどうよ。その間、互いの詮索は一切なし。および目的のものをみつけたら現地解散。これでどう?」
「……」
「別に、あんたと一緒だろうが誰だろうがあたしには関係ないけど。少なくてもあんたは他人と一緒に行動するような奴じゃなさそうだし。利害が一致してるでしょ?」
「……貶してる、わよね?」
「別に。事実を言ってるだけよ」
彼女の眉がつりあがるが、ゆうのは黙って答えを促す。
「……」
彼女はぱたんと本を閉じ、しばし口元に指を当てかんがえる。
「……妥協するわ」
「そう」
しばらくの間の後、杏樹はそう答えた。
ゆうのも了承。
「……」
彼女はまた読書に戻った。
ゆうのもつかの間のお昼寝を満喫するのであった。

Re: 剣と魔法と学園モノ 一緒に冒険しませんか? キャラ大募集 ( No.7 )
日時: 2011/10/23 11:33
名前: 冒険者 ◆6ITp4OKtkc (ID: Y8BZzrzX)




第二話 歓迎の森


「……」
「……」
互いに、ゆうのも、杏樹も、一言も喋らない。別に気まずくもないし。
余計なことをべらべら喋ってモンスターに居場所を教えることもない。明るいこの森じゃ、モンスターもたかが知れてるけれど。
先生は杏樹とゆうのが一緒に組んだことに喜んでいるようだった。なぜなのか理由は知らないが、彼を天然でおバカだとゆうのは感じてるため、どうでもいいことが。ゆうのの肩辺りに飛んでいる杏樹は、ある位置につくときょろきょろし始めた。
「何?」
「この辺にあるのよ。課題の薬草」
「さすが薬師」
「うるさい」
純粋に褒めると、嫌そうな顔で杏樹は言った。本当にいやらしい。
「まぁいいけどね」
ゆうのも別に気にしてないのでその辺で探索を開始した。
ぽかぽかと気持ちいい日差し。地下迷宮と違ってここはお日様の光が存分に浴びられる。日光浴にはちょうどいい。モンスターなんて大したこともないし、この後日没までここで昼寝してようかな、などと邪念を考えてながら探す。
兎に角、ほしいものは片っ端からポシェットの中にぶち込んでいく。
何か毒草みたいなもんもあったけど、気にしない。錬金術で適当に実験道具にでもすればいい。
しばらく探しながらゆうのは杏樹に声をかける。
「あった?」
「ええ。課題分も取ったし。目的達成したから、ここで解散してほしいいんだけど」
「いいけどさ、あたしの分ってある?」
「……自分で探しなさい」
「それもそうだ」
薬師に頼って楽をしようと思っていたのだが駄目だった。
彼女は、杏樹が視界の隅から消えていくのを確認しながら詮索続行。
しばらくして、課題の薬草を発見。たくさん自生していた。あるだけ持っていこうとがめつい心で全て採取してしまう。余った分は痛み止めに加工して薬代わりにするつもりだ。
「さて、サボるか」
うーん、と伸びをして、適当に日差しのいい大木を見つけ、根元から飛び上がる。太い枝を足場にして、てっぺん近くまで登ると、太い枝に乗っかり、幹に寄りかかる。日差しが気持ちいい。
「……」
そのまま睡魔に任せて寝る。彼女の意識は一瞬で消え去った。




「……?」
はっ、と目が覚めた。
視界が暗い。山の方に太陽が沈んでいる。日没だ。
「……ふぁ〜」
能天気にあくびをしながら、彼女は大木から飛びおり、着地。
地図すら持ってきていない。方向も適当に道なりにゆうのは歩きだす。
「……?ここどこ?」
ものの30分もしないうちに学校整備の森の中で迷子になった。ちなみに学校側とは反対方向に進んできたのである。
「やばい、迷子かしら」
気づいたのはそれから更に一時間ほど経過した頃だった。
周りは真っ暗だ。自分の影すら見えないほどの闇。そんな中、彼女の目が微かに発光していた。不気味な、血の色を連想させるような真紅。
これが彼女にとっては、コンプレックスであり、同時にモンスターたちには警戒を示す色だ。
自分は強い、死にたくないなら近づくな。本能に呼び掛ける真紅。それがあるから闇の中、モンスターの徘徊する森の中を堂々と歩けるのだ。
イリーガル。この言葉はゆうのの故郷で、突然変異を意味する言葉だ。
ゆうのの付けられた異名は、まさにこれ。それは今でも時々蔭口で使われる。
「……」
それはともかく、ゆうのは迷子になっていた。学校に戻れるのはいつの話だろうか?

Re: 剣と魔法と学園モノ 一緒に冒険しませんか? キャラ大募集 ( No.8 )
日時: 2011/10/23 14:51
名前: 冒険者 ◆6ITp4OKtkc (ID: Y8BZzrzX)




第三話 杏樹は死なせない!




「……あれ、おかしいな?」
ゆうのはすっかり迷っていた。それほど広い森でもないが、何分彼女が勘で進んでいるため、更に奥地に奥地にと進んでく。
「……?」
ゆうのは前方で僅かな魔力の移動を感じた。誰かこんな夜更けに、戦っているらしい。
夜になればモンスターは凶暴化する。そんな無謀なことをする馬鹿など、滅多にいないはず。ゆうの以外は。
前方、よく見ると微かに明るい。弱いながら、爆発音も聞こえた。
「……」
考える。適当に進んでいるが、間違いなくこの先に誰かいる。ぶっちゃけ、誰かと一緒なのは嫌だが、このままだと単位が認めてもらえない。だから仕方ない。そう判断した。ゆうのはこのまま進むことを選んだ。自分じゃ状況を打破できない。
だから誰かの力を借りるしかないのだ、結局。



「………」
がさごそと、匍匐前進を続ける、こうすればモンスターにも気付かれずに進める。紅い瞳はこういうとき不利だ。自分の居場所を知らせているようなもんだ、内心毒づきながら進んでいき、茂みの中からその戦闘行為を行っている愚か者を見物して、最後ついていってという作戦の元、彼女は茂みの中で目を凝らす。
どこかで見たことのあるような妖精が、なにかと戦っている。
しかも一匹じゃない。何匹もいる。一般の生徒が一人で相手出来る量じゃない。
あの薄い金髪は。翠の瞳は。
(……杏樹!?)
杏樹その人だった。必死にモンスターの攻撃を回避しつつ、魔法で迎撃している。だが、魔力が切れかかっているのか、飛んでいる軌道がおかしい。ふらふらとしている。まさか、あの量を一人で相手してるのか。
(……)
ゆうのは動かず、じっと様子を見る。彼女は苦悶の顔ながら、諦めずに戦っている。あの杏樹が、危険を分かってないとは思えない。そういう噂だ。冷静沈着、取り乱すことはまずありえないという。
だがいまの彼女は感情的に動いている。焦っているのか、魔法が何発も外れている。その魔法が森を煌々と明るくし、魔力の流れをゆうのでも分かるレベルで放出させているのだろう。放置しても、先生たちが気づいて、助けに来るだろう。これは罰則ものだと思いながら、相手のモンスターをよくみて、驚いた。
(ブラックベア!?何で地下迷宮のモンスターが地上に!?)
ブラックベア。名の通り、黒いクマ。だがそれの体長は3メートルを余裕で超え、一撃で大木をへし折る腕力で有名だ。
それが何匹も、フェアリーである杏樹にはあまりにも戦局が悪すぎる。
(あっ!)
遂に、回避ができずに、ブラックベアの一匹が杏樹をたたき落とした。
杏樹は地面に叩きつけられ、なんとか立ち上がろうとしている。が会心の一撃をもらってしまったようだ。ぐったりと倒れこんでしまった。
(ヤバい)
クマ共は杏樹に止めを刺すつもりだ。何匹もこちらに背を向け、咆哮をあげて喜びの声をあげている。獣のくせに、とゆうのは無意識でむかついてた。確かに昼間、一回組んだだけだ。それだけだ。だが、目の前で、知っている人物が、殺されそうになってて、それでも他人ずら出来るか?
答えは、
「っ!」
ガサガサ!とゆうのは立ち上がった。クマが一斉に振り返る。
ゆっくりと、群れに向かって歩き出す。一匹が、巨大な体躯で立ちはだかる。面倒だ。
「どけ」
低いこえで呟き、裏拳で襲ってきたクマを吹っ飛ばす。そいつは大木を激突、だか止まらず一本へし折って視界から消えた、べきべきと大木が折れる音で、クマの咆哮が消えた。
本人は気付いていないが、ブラッドアイが更に爛々と輝いている。真紅の瞳は、バハムーンを超えて、魔王のように邪悪な紅に。真紅の髪の毛も、地獄の業火のように、踊る。
クマたちの何匹かはその異様な光景に怯えて逃げて行った。
が、何匹かは残り、唸り声をあげて勇敢にもゆうのに襲いかかった。
いや、勇敢ではないか。愚か、だ。獣にすら分かる単純な実力差を、そいつはわかってなかったのだから。当然、当たり前の結果が導き出される。
「フレア」
呟き、襲ってきたクマをスカートを翻し、豪快に蹴りあげた。しかも、莫大な魔力を込めた蹴りで、だ。そいつは蹴りあがった瞬間、刹那の時間すらおかず塵になった。
更に進む。助けるために。
「バースト」
無属性の魔法弾をクマ一匹に向かって発射。慌てて逃げだす背中に直撃、消し飛ぶ。
「……ああ、もうめんどう!」
あと4匹も残ってる。ゆうのは一帯をまるごとぶっ飛ばすことにした。
極大範囲魔法のひとつ。先生には使うなとくぎを刺されたが。糠に釘だ。
「バミング!!」
大きく垂直に飛び上がり、攻撃を回避。爪が空を切る。
空中で体勢を変え、地面に向かって頭から突撃するように調整、突撃。
彼女の手が、地面に当たった瞬間。
歓迎の森の一部で、大爆発と轟音が発生。同時に凄まじい爆風と光が生まれる。
それが学園にも届いたのだった。

Re: 剣と魔法と学園モノ 一緒に冒険しませんか? キャラ大募集 ( No.9 )
日時: 2011/10/23 15:35
名前: 冒険者 ◆6ITp4OKtkc (ID: Y8BZzrzX)




第四話 友達


「……?」
「目、覚めたみたいね」
「っ!?」
がばりと、飛び起きた。みると、保健室だった。見慣れた天井。
傍らにパイプ椅子に座ったゆうのが、包帯を巻いた両手をひらひらさせながら微笑んでいた。自分は、と杏樹はそこで自分はモンスターの大群に襲われて、迎撃していたことを思い出した。そして今はベットの上。
つまり、この結果は。助けられたいうことか。
「……誰が、助けてくれたの?」
「あたし」
あっけらかんとゆうのは言った。
「時間外の外出。んでもって危険モンスターとの戦闘行為。まあ、謹慎もらってもおかしくない行為ね」
「……」
杏樹は黙る。そんなこと、理解した上の行動だ。だから、後悔はない。
「安心していいわよ。あたしが全部被ってあげたから」
「?」
ゆうのは笑顔で続けた。
「だから、それらの違反行為はあたしがあんたを唆して、なおかつ強引に連れてきたってことにしといたわ。あの天然先生も意外とおバカさんよね。簡単に信じちゃうんだもん」
「……は?」
「だからあんたは無罪放免。なんかあったんでしょ?詳しくは聞かないから、後は勝手にしなさいよ」
とだけ言って、立ち上がる。
「ちょっと待って!どういう意味よ!」
杏樹が問いただすと、ゆうのはあっさり吐いた。
「だから、分かんないの?あたしがあんたをかばった。そんだけよ。何か文句あるの?」
「……どうして?」
ギロ、と睨んでも彼女は動じない。紅の瞳で睨み返す。
「あんたも馬鹿ね。あたしが庇う理由?そんなの教えるわけないでしょ。あたしが納得すればいいの。あんたもあたしも互いを詮索しない、そうでしょ?」
「違う!そういう意味じゃない!なんで助けてくれたのって聞いてるの!?」
ゆうのはびっくりした顔で、杏樹をみた。そしてなぜか大笑いを始めた。自分でも顔が紅くなるのが分かった。
「な、何がおかしいのよ!?」
「助けた理由、はね」
笑いを堪えながら彼女は言った。
「あたしが助けたかった。それだけよ。あんたを見殺しにしたくなかったし、せっかくまぁ、パーティ組んだ仲間だしさ」
「なか、ま……?」
「あんたはね。特別っていうか、なんていうか。自分でもよくわかんないわよ。他の連中とかなんてどうでもいいのよ。あんたを助けたかった。それだけ」
「じゃあ、その怪我も……?」
彼女は震える指で、ゆうのの両手を指差す。ゆうのはまた笑っていた。
「これは単なる自爆。歓迎の森の一部、跡形もなくぶっ飛ばしちゃったからさぁ。威力加減するの忘れてた。おかげでまた一日謹慎貰ったよ、ほんとあたしってば何がしたいんだか」
呆れと自嘲が入った乾いた笑い。杏樹は申し訳ない気持ちになった。
ゆうのは、自分だけ損してまで、自分を助けてくれた。それで、仲間と、言ってくれた。
「って、助けた理由、言っちゃたか。まぁいっや。お大事ね、杏樹」
今度こそ、彼女は保健室を出て行ってしまった。杏樹は考える。
今度は、目のまで、永遠にいなくなる、なんてことはないだろうか?
ゆうの、彼女は信用していいのだろうか?
身を呈して、守ってくれた。それでいて、何も聞かないで去って行った。
彼女は、「仲間」と言ってくれた。
それは「友達」なのだろうか?

Re: 剣と魔法と学園モノ 一緒に冒険しませんか? キャラ大募集 ( No.10 )
日時: 2011/10/25 14:06
名前: 冒険者 ◆6ITp4OKtkc (ID: Y8BZzrzX)




第五話 またやからした


「……ぅ」
次の日。ゆうのは寮の自室でベットに寝転んでいた。というか、起き上がれない。
両手が焼けるように痛い。炎の中に手を突っ込んでいるみたいだ。
昨日のバミングが、両手にかなりの負担を掛けたのは知っている。だが、ここまでの痛みとは予想外だ。痛みでうめき声を時々上げている。
多分、自分の魔力が一度解放したせいで爆発的に膨張し、元に戻った結果、行き場を失って体内で暴走していると思われる。それが昨日の魔力放出口である両手に集まって傷の治癒を邪魔してるのだろう。それが痛みになってる、それだけの話だ。
簡単な話、余力の魔力をどこかに逃がせれば痛みは治まる。だがこんな莫大な魔力を、並大抵の魔具に注いだら壊れてしまう。それどころかこれまた行き場の無くした魔力が暴発し、大爆発を起こしかねない。
それこそ発電機のように常時魔力を使い続けるような道具でないと、魔力が膨大すぎて道具の方が悲鳴をあげてしまう。
「……たぁ……」
おかげで両手を使えないため、(体重をかけると悶えるような激痛が走る)ずっとベットで横になっている。おなかもすいた。だけど物が持てないと何もできない。
骨折した人間はこうなるのかな、と空腹に悩むゆうのは茫然とそんなことを考え始めた。
その時だった。控え目に、トントン、と扉をノックする音が聞こえた。
「?」
自分に会いに来る物好きなんていたかな、それとも担任が説教でも来たかな、などと思いつつ返答。入ることを許可する。すると、あまりに予想外の人物が入ってきた。
「ゆうの、大丈夫……?」
杏樹だった。ゆうのも、びっくりしてきょとんとしてしまう。
おっかなびっくり杏樹はドアを開けっ放しにすると、一旦外に出て何か大きな荷物を持って入ってきた。それはフェアリーの彼女には大きすぎるバック。一生懸命羽を動かしてふらふらしつつも、ベットのそばまで持ってきた。
「杏樹、いま授業中でしょ?何してるの?」
「お見舞い。授業は薬剤の調達ってことで免除してもらってる。それよりゆうの、ほんとに大丈夫なの?」
「大丈夫よ。というか、あたしは謹慎中なんだから、訪ねてきたらだめでしょ」
「謹慎は表向きでしょ?ほんとは、休養だって先生言ってたわ」
「げ……」
本気で調子が悪いのを見抜いていたらしい。ゆうの自身はそんなこと微塵も言葉にしていない。顔色にもだしていた覚えはないのだが……。あっさりと見抜かれる自分に軽い嫌悪感。
「……なに、お礼のつもり?」
軽い皮肉を入れてゆうのは言った。自分で勝手に行動しただけなのに、それで感謝されても後味が悪い。だが。
「……そうね、一応助けてもらった借りもある訳だし、それに」
と杏樹は区切ってゆうのに告げた。
「貴方は私の仲間。同じパーティのメンバーでしょ。お見舞いくらい、当たり前よ」
と言ってそっぽを向いた。どうやら照れくさかったらしい。
ゆうの、ポケッとしていたが、一秒後にははっとした。
彼女は本気で感謝しているのだ。仲間として。どうやら、昨日の言葉を何やら違う意味で受け取ってしまったらしかった。昨日のは言葉のあやだ————そう説明すると、何だか杏樹を裏切ってしまいそうで、言葉にするのが嫌になった。あたしは、杏樹と、友達?
まだ友達にしたって、お互いを軽く知った程度だし、まだ彼女の秘めたる「闇」をゆうのは知らないし、杏樹もゆうのの「悲しみ」を知らない。
だが、お互いに一歩だけであるが、近づけたようだ。彼女なら、一緒にいても、気味悪がない。この紅の瞳を。紅の髪の毛を。この膨大な魔力を、この常人離れの身体能力を。
「ねえ、杏樹」
「何?」
「あんた、あたしが怖くないの?」
「え?」
ゆうのは、怯えながらも言葉にした。杏樹の真意が、どうしても知りたかった。この力、どう受け止めるのか。杏樹は少し黙った。彼女なら、包み隠さず本音を言うだろう。何となくそう思った。まだたった一回だけだけと。彼女は一緒にいても、いつも通りだった。怖がらなかった。妬まなかった。拒絶もしなかった。それが、どういう意味か、知りたいと心の底から思った。
「怖いといえば、そうね。怖いわ。でも」
彼女は、人差指をゆうのの鼻っ面に向けて言った。
「私は、強かろうが、弱かろうが、どうでもいい。私だって、この金色の髪の毛のせいで、酷い目にあった。貴方も、こういう差別を受けてきたのね?」
「……。そうね、化け物と言われたわ。同族からも、異属からも。特に、天使と龍から酷く言われた」
「そう……」
「あんたも、同族から受けたの?迫害を」
「まぁ……色々と、ね」
「お互いの傷跡を抉るようなこと、しなくていいわ。あたしは、差別される痛みを知ってる。だけど、周りの連中は分かってない。だから、あたしは痛みを知ってる奴しか、友達とは認めない」
「じゃあ、私は友達?」
「そうね。友達よ」
と、ゆうのは、手を出した。
「?」
「改めてよろしく。杏樹」
握手、という意味だとすぐ悟る。杏樹も、手を出してしっかり握った。
「よろしく、ゆうの」
と最高の笑顔で答えた。



そしてゆうのの断末魔が聞こえたのは、すぐ後だった。


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