二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- 白昼夢見聞録
- 日時: 2011/06/25 10:13
- 名前: PIPI (ID: 42M2RXjr)
はじめまして、PIPIです。
初投稿なのでへたくそですが、よろしくお願いします。
【登 場 人 物】
安斎 千尋 Anzai Chihiro
高1の女の子。高い妖力を持っている。
外谷場 宗司 Toyaba Souji
エクソシスト「アシェラ」の一員。千尋の町の担当エクソシスト。
久住 隼人 Kusumi Hayato
千尋のクラスメイト。物静か。
植木 春子 Ueki Haruko
千尋のクラスメイト。人見知りが激しい。
陣内 連太郎 Jinnai Rentaro
町一番の不良少年。かなりの横暴。
ギルベルト・ウォーカー
エクソシスト教団「アシェラ」元帥。
カティア・クロムウェル
エクソシスト教団「アシェラ」7番隊隊長。
セレヴィ・オルレイン
犯罪組織「キメラ」リーダー。
- Re: 白昼夢見聞録 ( No.30 )
- 日時: 2011/07/09 00:30
- 名前: PIPI (ID: Uvcwa5h/)
3、マリアビートル
あれから一週間が経ち—————。
ようやく千尋もこのクラスに馴染んできた。馴染んできたといっても心を許すのは春子だけ、というのには変わりなかったが。
傷も癒え、ようやくいつも通りの日常を取り戻しつつあった。
「そういえば、春子。もう、その、いじめられてたりしないよね?」
「あ、うん!もう大丈夫。あ、久住君だ」
「久住君?」
春子の視線の先を見ると、物静かそうな生徒が、春子の隣の席に座った。あの席は、いつも空席だったが、どうやらあの生徒の席だったらしい。
「あいつ、なんでいつも学校に来ないの?」
「さあ・・・。なんか、家の用事とかバイトとか・・・」
「バイト?」
「うん。久住君、一人暮らしだからバイトで稼いで高校に通っているんだって。だから、バイトが忙しいと、学校に来れない日が多くて」
ふぅん、と相槌を打った。
千尋も一人暮らしだったが、千尋にはなぜか父親という人物が残してくれた多大な財産があるため、お金には困らなかった。
そういえば、と千尋は外谷場の顔を思い出す。
千尋は、父親の顔を知らなかった。父親の親族とも会ったことがなかった。というより、誰もその存在を知らないらしい。
しかし、外谷場は何か父親のことについて知っているようだった。聞いたけど、答えてはくれなかった。
何故?答えたくない?答えられない?
あの、銀髪の外人と何か関係でもあるのだろうか?
写真を思い出す。
あれは————誰だ?
「なんで・・・外人・・・・」
「あー、確かに外人にも見えるよね」
「え?」
「ホラ、久住君って鼻筋通ってるし。外人っぽいかも」
ああ、そっちか。
久住をもう一度まじまじと見る。確かに、顔が整っていて、鼻筋が通っていて外人のようにも見えた。
だが、千尋が見た写真の中の銀髪の男は、完全に外人であった。
興味ない、とばかりに顔をプイッとそむけた。
- Re: 白昼夢見聞録 ( No.31 )
- 日時: 2011/07/09 00:38
- 名前: PIPI (ID: Uvcwa5h/)
そして、これも偶然か否か。
今週は、久住と掃除当番だった。今まで、久住がいなかった分、春子が屋ていなかったため、今日は久住と二人で掃除をすることになった。
正直言って、千尋は不服そうだった。こんなおどおどとした男とやるのは千尋にとってかなり嫌だった。
さっきから、ほうきを少しはくたびにあたりをきょろきょろと見回している。
「ねえ」
千尋が強めに呼び止めると、久住はびくっと体を震わせた。
「な、何?」
「なんで、あんたそんなにびくびくしているのよ」
「えっと・・・。その、危険な人に狙われてるっていっても、信じらんないよね」
「・・・?」
「ああ、ごめん、今のナシ」
そういって、またほうきをはきはじめる久住。
千尋は、久住の顔色をうかがう。別段、嘘を一定量にも見えない。
「誰にねらわれているの?」
「あー、うん・・・。危険な仕事を受け持っている人とか」
「だから、誰?」
「えっと、あの、無理に信じようとしなくていいよ」
「だから、誰ってきいてんじゃん」
「・・・信じているの?」
驚いたように、久住が千尋を見上げた。
千尋は、普段から奇妙なものに見慣れているので、そういう久住の反応を見ても鼻をフンと鳴らすだけだった。
- Re: 白昼夢見聞録 ( No.32 )
- 日時: 2011/07/09 14:05
- 名前: PIPI (ID: Uvcwa5h/)
「で?」
「え?」
「誰なの?」
千尋の言葉に目を丸くする久住。
「・・・あー、ごめん。用事ができました!ちょっと帰ります!」
シュタッとほうきを千尋に強引に持たせると、素早く鞄を手に持ち帰ろうとする久住。
「・・・まだ話は終わってないでしょーが!!」
千尋はそう叫んで、ほうきを思い切り久住に投げた。
意外にも、久住は後ろの危険な気配を察知して、軽やかによける。しかし、それで千尋の攻撃が終わるわけもなく、千尋はさらに地面を蹴って、久住をありったけの力で殴った。
鈍い音が教室に広がる。
頬をさすりながら、起き上がる久住。
「いたた・・・。だから、ダメだって・・・。すごい、危険だし」
「いいよ、そんなの。危険なことには慣れてるし」
すると、あきらめたように久住はため息を大きくはいた。
「・・・・・蜜柑と檸檬」
「は?」
「そういう、殺し屋家業の人がいて」
「・・・・・へえ」
「・・・信じられないでしょ」
「どうして?」
「え・・・・いや、果物の名前の人が殺し屋家業の人っていうのとか」
「まあ、ありじゃない?」
「ありなんだ」
すごいな、と久住は千尋を見る。特に、驚いている様子もなかった。
「その人たちに狙われているの?」
「うーん・・・。狙われているっていうか、まあ、いろいろと複雑なんだ」
「複雑?なにが」
すると、今回こそ千尋を驚かせる言葉をはいた。
「僕も業界で「天道虫」って呼ばれる—————殺し屋なんだ」
- Re: 白昼夢見聞録 ( No.33 )
- 日時: 2011/07/09 14:31
- 名前: PIPI (ID: Uvcwa5h/)
「・・・あんたが、殺し屋?」
千尋は少なからず動揺していた。千尋の質問に、久住は静かにうなずいた。
「やっぱり、信じられない?」
「・・・・・。」
確かに、こんなどうしようもなく頼りなさげな青年を殺し屋だと思う人間はまずいないだろう。しかし、先ほどのほうきを避けた動きは素人ではなかった。
「・・・信じるつもりはないけど・・・。あんたが、嘘を言っているようには見えない」
「ああ、そう言ってくれるとありがたいよ。で、その、僕の雇い主、柏木マリアっていう人なんだけど、その人にある人を連れてくるように言われているんだ。連れてくるっていうか、拉致っていうか」
「拉致、ねぇ・・・。誰を?」
「なんか、市長さんを拉致るんだけど」
現実味がない話なのに、千尋はその話にのめりこんでいた。
「その市長さんの護衛についているのが、蜜柑と檸檬なんだ。」
「その、果物コンビは強いの?」
「もう、すっごく強い。業界でも一位なんじゃないかってくらい」
「あんたは?」
「もう、すっごく弱い。業界でも一位なんじゃないかってくらい」
確かに、弱そうだ。事実、千尋のパンチを思い切り食らっている。
「それに、僕は運がないしさ」
「運?」
「前に、偉い政治家の浮気現場を撮影する仕事が来たんだ。そしたら、その日にロビーで突然連続射殺事件が起きたんだ」
「ああ、あったね、そんなこと」
まさか、久住があの場にいるとは思わなかった。
「それから、ファストフード店に行って、新製品を食べて、その場で「うますぎる、うまさ爆発だ」なんて大げさに驚いて見せる仕事もあった」
「おいしくなかったの?」
「おいしかったよ。やだ、食べた直後に店が本当に爆発したんだ」
「ああ、あの元アルバイト店員の犯行だっけ」
確かに、こんな話をさせられるとついていないことがわかる。
「僕は昔からついていないんだ。小学校の時も、クラスに金持ちの息子がいて、その金持ちの息子と間違えられて僕が誘拐された」
「・・・どうだった?」
「泣いて誤解を解こうとしたけど、犯人は信じてくれなかった」
だろうね、と千尋は呆れながらも相槌を打つ。
「金持ちの息子の父親に犯人は電話したんだけど、息子は家にいるから犯人の身代金の要求にもこたえなくて。まあ、本当の息子じゃないんだから当たり前だけど。ここで犯人たちもおかしいぞって気づいてくれて」
「へえ。じゃあ、解放されたの?」
「もっと後でね。すると、犯人たちは今度は僕の家に身代金を要求してきたんだ。多分、金が入ればどこの親からでもいいって判断したんだろうね。で、父親が電話に出てくれたんだけど、犯人に対してとても正しいことを口にした」
「何?」
「無い袖は振れないって」
「ああ」
本当についてないな、と千尋は思う。
「まあ、僕の家はすごく貧乏だったから、分かったよ。だから、自力で逃げた。正直犯人たちもどうでもよくなっちゃったんだろうね」
「運がないっていうのもわかるね」
「だろ」
- Re: 白昼夢見聞録 ( No.34 )
- 日時: 2011/07/09 14:41
- 名前: PIPI (ID: Uvcwa5h/)
「だから、僕は本当についていないんだ。今回の敵が蜜柑と檸檬だっていうのも、きっと僕の運がついていないからなんだ」
「それは」
違う、と言いそうになるが、やめた。本当にそうなのかもしれない、と思いたくなってきてしまったからだ。
「・・・あんたは、どうするの?」
「僕?正直、この仕事はおりたいけど、おりたらお金がやばいんだ」
「金と命、どっちが大事?」
「お金がないと、今月は生きていけないから、少しの可能性に託すよ」
賢明な判断だな、と久住を見る。
「じゃ、協力してやってもいいよ」
「え?」
「二回も言わせんな」
「・・・・いや、無理だって。君みたいな女の子がかなうわけないじゃないか」
「その女の子に殴られたのはどこのどいつよ」
言い返すと、久住はぐっとこらえていた。
「でも、すごく危険だし、死んじゃうよ」
「あたしは、死なないから大丈夫。ていうか、あんたになんで心配されなきゃならないのよ」
こんな弱そうな男に心配されるなんて、と千尋はため息をついた。
久住は、これは言っても聞いてくれないな、と諦めたように肩を落とした。
「・・・・分かった。でも、本当に僕は君の安全を保障できないから」
「あんたに保証されるほうがよっぽど不安だっての」
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