二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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白昼夢見聞録
日時: 2011/06/25 10:13
名前: PIPI (ID: 42M2RXjr)

 はじめまして、PIPIです。

 初投稿なのでへたくそですが、よろしくお願いします。

【登 場 人 物】

 安斎 千尋 Anzai Chihiro
  高1の女の子。高い妖力を持っている。

 外谷場 宗司 Toyaba Souji
  エクソシスト「アシェラ」の一員。千尋の町の担当エクソシスト。

 久住 隼人 Kusumi Hayato
  千尋のクラスメイト。物静か。

 植木 春子 Ueki Haruko
  千尋のクラスメイト。人見知りが激しい。

 陣内 連太郎 Jinnai Rentaro
  町一番の不良少年。かなりの横暴。

 ギルベルト・ウォーカー
  エクソシスト教団「アシェラ」元帥。

 カティア・クロムウェル
  エクソシスト教団「アシェラ」7番隊隊長。

 セレヴィ・オルレイン
  犯罪組織「キメラ」リーダー。  

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Re: 白昼夢見聞録 ( No.25 )
日時: 2011/07/07 19:15
名前: PIPI (ID: Uvcwa5h/)

「ち・・・ちーちゃん・・・・何・・・あれ・・・」

「・・・え?・・・春子・・・見えるの・・・?」

 春子の言葉に動揺する。

 春子はまっすぐ、あの悪魔を見ておびえている。つまり、春子には悪魔が見えているということだ。

 でも、どうして?

 ドゴッ!

「!・・ぐぅっ・・・」

 悪魔に、横蹴りを食らわされて、地面にひれ伏す千尋。

「ち、ちーちゃん!?」

 春子は完全におびえているが、ちゃんと理性はあるようだ。

「・・・あ、あんた・・・なんで・・・」

『ずっと、この女に憑りついていたんだよ。お前の居場所が分からなくなってから、この女に憑りついていれば、来ると思ったが、3年も待たされるとは・・・。』

「ど・・・どういうことよ」

『この女を使って、そこのガキに暴行を加えていたんだが、どうやらその餌にも誰も食いついてくれなくてな。意味がなかったらしい』

「・・・・!!」

 今まで、3年間。

 春子は、この女子に暴行を食らっていたというのか。

 しかも、自分のせいで。

 それなのに—————私は—————。

『おや?今日は、あのお得意のバットは持っていないようだな』

「・・・ッ!!」

 自分の不甲斐なさに、唇をかみしめた。

 関係ないと思っていた。

 自分さえ、いなくなれば、誰もあんな思いしないと思っていた。だから、みんなと離れたのに。

 どうして、逆に傷つけてしまったんだろう。

「ッあう!!」

 容赦ない悪魔の攻撃に、体の痛みは増すばかりだった。

『あの時の借りは返させてもらおう。お前は、私が苦しませて苦しませて苦しませて、殺す。』

「や、やめて!!」

 そこには、春子の姿があった。

「ば・・・・」

「やめてよ!ちーちゃんは——————あたしの友達なの!!」

「・・・・!!」

 —————どうして。

 いままで、傷つけられていた原因でもある私を、どうして友達なんて言えるんだ。少なくとも、私は、あなたに友達らしいことなんてしていなかった。なのに—————。

『こんな、陰気で過去にとらわれて、亡霊のように廃ビルをさまよう女の何がトモダチだ!笑わせるな』

「違う!ちーちゃんは、陰気でも亡霊でもないよ・・・」

 春子は、目に涙を流しながら、言葉を言った。

「私の————唯一の友達だよ。だから、傷つけないで」

 たった一言。それだけが、千尋を救った。

 その一言だけで、千尋はまた立ち上がれる。

 ドガッ!!

 悪魔を殴った。

Re: 白昼夢見聞録 ( No.26 )
日時: 2011/07/07 19:22
名前: PIPI (ID: Uvcwa5h/)

「春子・・・ありがとう。もう大丈夫。もう、あたしは大丈夫だから」

「ちーちゃん・・・」

「下がってて。絶対、こいつは倒すから」

 千尋は、拳に力を入れる。こんな一発じゃ、この怒りは消えない。

『大口叩くな、小娘ェ!』

 すると、悪魔は口に衝撃波をためる。前回の悪魔に比べれば、小さかったが、ダメージを食らうのには変わりない。

(だめだ、間に合わない!)

 春子を守りながらでは、とてもよけきれない距離。

 しかし—————。

 ゴツン!

 何者かが、悪魔の頭を上から思い切り、バットで殴ったため、悪魔は自分の口の中で衝撃波を食らうことになった。

「まーったく、悪魔相手に素手でやれると思ったか?」

「あ・・・・・」

 嫌というほど聞いたことのある声。

 その男から、自分のバットを受け取る。

「無理してんじゃねぇよ。お前に死なれて困るのは俺なんだからさ」

「・・・あんたなんて、来なくてもあたし一人で片づけられたのに」

「またまたぁ。ピンチだったくせに」

「うっさい」

 こうやって、憎まれ口をたたきあうのに、安心を感じていた。

 外谷場は、にやりと笑って千尋の隣に立った。

Re: 白昼夢見聞録 ( No.27 )
日時: 2011/07/07 19:26
名前: PIPI (ID: Uvcwa5h/)

 数分前————。

「・・・!!」

 カティアの手を止めたのは、外谷場だった。

「・・・起きていたのか」

「まあ、さっきまではガチで寝てたけど。さすがに顎をクイッとやられたら気づくって」

 へらへらした表情で、カティアの腕をつかんで攻撃をやめさせる。

「・・・なぜ、あのガキを生かす必要がある?」

「・・・千尋のことか。俺は、アイツに賭けているんだよ」

「賭ける・・・・?」

 外谷場は、カティアの手をそっと放した。

Re: 白昼夢見聞録 ( No.28 )
日時: 2011/07/08 19:02
名前: PIPI (ID: Uvcwa5h/)

「千尋なら、必ずあの二人を昔のようにしてくれる。俺は、そう確信している。千尋は、最後の望みなんだ」

 カティアは、視線を逸らした。

 悲しげな表情をして、口を開く。

「もし・・・戦争が終わらなかったらどうするつもりだ?」

「その時は、俺がすべての責任を持ってやるよ」

「宗司」

「ん?」

 ドガッ!!

 カティアに思いきりグーで殴られる。

「いっ・・・だたたたた・・・・」

「なぜ、よけなかった」

 宗司は、左頬をさすりながら、カティアを見た。

「そりゃあ・・・。こんな根拠も保障もない言葉をきいたら、怒るだろうなって思ってさ。まあ、それでも、信じてくれ、としか言いようがないんだけど」

「・・・お前はいつでもそうだ」

 カティアが握っていた拳をさらに強く握りしめた。

「いつも、自分一人だけで背負って・・・他人に頼ろうとしない」

「それは、千尋も同じだよ」

 へらへらとした表情は変わらない。

「・・・・・分かった。お前のことは、本部には言うまい。しかし、本部が気づいたら、その時は覚悟したほうがいい」

「お、優しいねぇ、ありがとさん」

 そういったら、カティアが鬼の形相でこちらを睨んできたので、口を閉じる。

「私は、あのガキをまだ認めたわけなじゃない。それを忘れるな」

「・・・分かってるって」

Re: 白昼夢見聞録 ( No.29 )
日時: 2011/07/08 21:36
名前: PIPI (ID: Uvcwa5h/)

「さて、どうしたもんかねぇ、この状況」

 外谷場はのんきな口調で悪魔と対峙する。

「だから、あんたなんて来なくてよかったのに。・・・まぁ、バットを持ってきてくれたのは助かったけど」

「お?照れてんの?」

「ふざけんな、バカ」

 ブゥン、とバットが空気を斬る音がする。千尋は、口の中の血をペッと吐き出して、悪魔に近づいた。

 いつもと同じだ。

 悪魔と向き合って、力の限り、倒す。

 いつもは、ただの暇つぶし。ただの腹いせ。

 でも、今回は違う。

 過去の決着に。唯一の親友を護るために。

『そんなバットでどうにかなると思ったか?私は、昔とは比べ物にならないくらい強いんだ!』

「黙ってろ」

 千尋が鋭く言い放った。その言葉に込められた憤怒が悪魔にも伝わって、怯むように黙った。

「あんたがどれだけ強くなったかなんて知らない。強くなったところであたしを怒らせたのには変わりない。それに————」

 千尋は地面を強く蹴って、高く飛ぶ。

「あんたが強くなったところで、あたしが弱くなったわけじゃないだろーがぁぁぁぁ!!!!」

 バコォォォォン!

 鈍い音が周り中に響き渡った。

 悪魔は自分の強さを過剰に信じていたのか、避けようとせず、そのまま灰になって消えてしまった。

「ちー・・・ちゃん・・・」

「・・・春子」

 何を言えばいいのだろうか。

 自分のせいで今まで木津ついてきた人間に、なんといえばいいのだろうか。千尋の中には、ただ迷いしかなかった。

 気まずい。何か言わなくては。

「・・っ・・・あの、さ。はる・・・」

 ぎゅっ

 突然体が、後ろに倒れてしまう感覚に襲われた。しかし、何とか足で踏ん張る。

 気づけば、春子が千尋に抱きついていた。

「よかった・・・!!死ななくて・・・!!」

「・・・はる・・・」

 春子が泣いていた。

 今までの感情をすべて流すかのように、わんわんと泣いた。

 千尋は、その小さな頭をそっと撫でた。

「ごめん、春子・・・。・・・あたし、明日はちゃんと、学校行くからさ。・・・ごはん、一緒に食べよ」


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