二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- 白昼夢見聞録
- 日時: 2011/06/25 10:13
- 名前: PIPI (ID: 42M2RXjr)
はじめまして、PIPIです。
初投稿なのでへたくそですが、よろしくお願いします。
【登 場 人 物】
安斎 千尋 Anzai Chihiro
高1の女の子。高い妖力を持っている。
外谷場 宗司 Toyaba Souji
エクソシスト「アシェラ」の一員。千尋の町の担当エクソシスト。
久住 隼人 Kusumi Hayato
千尋のクラスメイト。物静か。
植木 春子 Ueki Haruko
千尋のクラスメイト。人見知りが激しい。
陣内 連太郎 Jinnai Rentaro
町一番の不良少年。かなりの横暴。
ギルベルト・ウォーカー
エクソシスト教団「アシェラ」元帥。
カティア・クロムウェル
エクソシスト教団「アシェラ」7番隊隊長。
セレヴィ・オルレイン
犯罪組織「キメラ」リーダー。
- Re: 白昼夢見聞録 ( No.15 )
- 日時: 2011/07/04 18:43
- 名前: PIPI (ID: Uvcwa5h/)
きもだめし、当日。
千尋たちは集合場所に集まり、夜の森を歩いた。
「やだ、こわいよぉー」
「おいおい、まだ始まったばっかりじゃん」
当然のことながら、女子は男子にかわい子ぶり、男子は女子にアピールするように強がった。
植木は、本当に怖がっているようで、ずっと千尋の袖を引っ張っている。
そして、千尋は前方を睨みつけながら歩いた。
正確に言うと、前方にいる、天狗のような巨大な顔を持つ、悪魔を睨みつけながらだ。
『強い・・・強い妖力を感じる・・・お前、人間なのか?』
悪魔が千尋に話しかけてきた。無論、千尋はそれをシカトする。
他の者には悪魔の声が聞こえていない。女子の甲高い声と、男子の強がった声しか聞こえない。
『お前の魂・・・旨そうだ・・・。でも、ただ食べるのはもったいないな・・・』
「ち、ちーちゃん・・・怖いよぉ・・・」
「春子」
鋭く自分の名前を呼ばれてびくっと震える植木。
「少し、静かにしてて」
『そいつ、お前の友達か・・・?こいつもうまそうだ・・・』
その言葉に、千尋はピク、と反応して悪魔を一層、強く睨み付ける。
それが効いたのか否かはわからないが、悪魔はスゥ、と消えた。
肝試しが終わって二日後。
下校中に、突如としてきもだめしのときの悪魔が目の前に現れた。
しかも、この前とは数倍、大きくなっていた。
さすがの千尋も、その大きさに圧倒された。
『もう腹がすいてどうしようもない・・・。食わせてもらうぞ、お前』
そういって、襲い掛かってくる。
「ち、ちーちゃん!?」
いきなり千尋が走り出すので、一緒にいた植木は驚いた。
「春子!ごめん、先帰るから」
そういって、すぐに走り出す。
悪魔はやはり追ってきた。
当時、両親がいない千尋は、親戚の家に預けてもらっていたが、今向かっているのは親戚の家ではない。親戚の家に逃げ込んだところで、何の意味もない。
向かっているのは、昔、両親と一緒に暮らしていた古い家だ。
自分の両親が何の仕事をしていたのかは知らないが、その家にはお守りだとか除霊の道具だとかが、転がっていた。
『待てぇ、小娘!』
悪魔はしつこくついてくる。千尋は力の限り、全力で駆け抜けた。
家に入ると、すぐに扉を閉める。なぜか悪魔は入ってこなかった。扉をドンドン叩いている。
しかし、このままでいるわけにもいかず、父親が使っていた部屋に逃げ込む。戸棚や引き出しをめちゃくちゃに探した。
「!・・・これ・・・」
見つけたのは、札だ。
黄色い、何が書いてあるのかは読めないが、多分除霊用の札だろう。
札は、大量にあった。段ボール3個分、詰め込んであった。
近くにあったのは、バットだ。マイケル・ジョーダンのサイン付きのバットだ。そのバットを手に取り、とにかく大量にその札をぺたぺたと貼り付けた。
この札に何の効果があるのかはわからない。
しかし、今はこれに頼るしかなかった。
不意に、段ボールの下に写真があるのに気づく。
もしかしたら、自分の父親の写真なのかもしれない。千尋は、自分の父親の顔を知らなかった。親戚に尋ねても、その親戚は母親の親族で、その親戚も知らないようで、父親の親族は、誰も見たこともないし、知らなかったらしい。
写真を手に取る。
そこに写っていたのは、銀髪の外人だった。
紅い瞳に、透き通るような銀髪、ハリウッドスターのような、とても整った顔立ちの男性だった。
『小娘ェ!』
悪魔の声だ。
部屋に入ってきた。
悪魔が、大きな腕を、振り上げた。
反射的に、千尋は思い切り悪魔の顔を、バットで殴り飛ばした。
『あ、あぎゃああああ!!!』
どうやら、効いているようで、後ずさりする。
『うぅ・・・もういい、お前はもうやめだ・・・』
「何よ・・・。意外に簡単に折れるのね。手ごたえ無いな』
千尋が挑発的な言葉を送ったのに対し、ここで、悪魔がいやらしく笑った。
『春子って言ったかな、あのガキ』
「ッ!!」
『あいつも、うまそうだ』
「や、やめろ!春子は関係ないでしょ!あんた、負けたんだから潔く負けを認めなさいよ!」
『誰が負けたって?それに、俺らに潔さを求めるなんて、馬鹿か?』
悪魔はそう吐き捨て、スゥ、と消えて行ってしまう。
「ッ!・・・春子ッ・・・」
千尋は、勢いよく家を出た。
- Re: 白昼夢見聞録 ( No.16 )
- 日時: 2011/07/04 19:42
- 名前: PIPI (ID: Uvcwa5h/)
「春子、どうしたの?」
下校途中だった、クラスメイトの女子に話しかけられる植木。
「んー、よくわかんない・・・。ちーちゃん、いきなり走り出して帰っちゃった」
「何それ!?うっわ、サイテー」
「常識的にありえないよね。友達見捨てるとか」
「てか、春子。もしかして、安斎さんに愛想つかされたんじゃない?」
「え・・・・・」
クラスメイトから発せられる千尋の悪口に、植木は困惑した。
「絶対そうだって!春子、見捨てられたんだよ」
ミステラレタ・・・?
「そ、そんなこと・・・」
「てかさー、前から思ってたんだけど、安斎さんってウザくない?」
「あーわかるわかる!あの女王様って感じの雰囲気が偉そうでさ」
「春子も嫌だったでしょ?」
「・・・・あ・・・・」
急に声を発することができなくなった。分からない。
そんなことない。ちーちゃんはすごくいい人だから。
本当はそういいたいのに、なぜか声が出ない。
まるで、誰かに喉を締め付けられているような、そんな感覚だった。
「あ!あれって、安斎さんじゃね?」
女子の一人が、指をさす。
確かに、その方向には千尋がいた。焦っているように、走ってきた。
「やだ、バット持ってる!」
「は?なんで?気持ち悪」
「あ・・・ち・・・ちゃ・・・」
「・・・!?は、春子!?どうしたの?」
突然、植木の顔色が真っ青になった。突如として現れた異変に、周りの女子も困惑する。
千尋には見えていた。
あの、悪魔が。
悪魔が植木の細い首を絞めている光景が。
「春子!!」
『もう、来たのか!?』
「あ・・・・」
すっと、悪魔が植木から離れる。
その少しの瞬間を千尋は見逃さなかった。
悪魔が植木から離れた瞬間—————バットを振り上げた。
バカァァァァァァンンンンン
「・・・え・・・」
—————血。
赤く、きれいに宙を舞う水滴。
それを鮮やかに流しているのは————
「・・・は・・・春・・・子・・・?」
悪魔をかばうように、春子は千尋のバットの攻撃を受けた。
分からない。
なんで、春子が血を流しているの?
なんで、春子が倒れているの?
なんで、春子が————————————————?
「・・・!」
春子がかばったのは、悪魔なんかじゃない。クラスメイトの女子だ。
あのまま、悪魔を攻撃していれば、被害を受けていたのは、クラスメイトの女子だった。悪魔の位置が、丁度クラスメイトの女子の目の前だった。
春子は、千尋がクラスメイトの女子を攻撃しようと勘違いして、彼女たちをかばったのだ。
「そん・・・な・・・・違う・・・ちが・・・」
「殺した!!」
突然、クラスメイトの女子が叫んだ。
ハッと彼女たちを見る。
彼女達には、恐怖の色、軽蔑の色の瞳で千尋を見ていた。
「は、春子!?大丈夫!?死なないで!」
「春子!!」
「ひ、人殺し!」
春子は、頭から血を流し、意識を失っている。
千尋は—————。
親友に近寄ることもせず、彼女たちを罵ることもせず、悪魔を倒そうともせず—————。
ただ、そこで呆然と立ち尽くした。
- Re: 白昼夢見聞録 ( No.17 )
- 日時: 2011/07/04 20:09
- 名前: PIPI (ID: Uvcwa5h/)
病院に運ばれていった植木は、幸い脳に後遺症を残すこともなく、大事には至らなかった。
遅れてきた植木の家族は、千尋を責め立てた。
「なんで、あの子をバットで殴ったんだ!」
「あの子が何をしたっていうの!?」
泣きながらそう叫ぶ両親に、千尋は何も言い返すことができなかった。ただ、その言葉を体に刻みつけるように親身に聞いていた。
クラスメイトの女子の証言で、千尋は何か月か少年院に入院することになった。
警察になんで殴ったのか、説明はしなかった。説明できるはずがなかった。
院から出てきて、学校には行かなくなった。しかし、親戚の家にもいかなくなった。親戚は、千尋を捨てた。
そして、千尋は廃ビルを見つけて、そこに住みつくようになった。
- Re: 白昼夢見聞録 ( No.18 )
- 日時: 2011/07/05 19:56
- 名前: PIPI (ID: Uvcwa5h/)
「なるほどね・・・」
植木の話を聞いて、大体理解した外谷場。
「ちーちゃんは、そんなことする人じゃない・・・。何か、理由があったはずなの・・・だから・・・」
「だろうな」
「・・・え・・・」
植木の言葉にあっさり肯定する外谷場に驚く。
外谷場も、悪魔の仕業だということは、感じ取っていた。
- Re: 白昼夢見聞録 ( No.19 )
- 日時: 2011/07/06 19:25
- 名前: PIPI (ID: Uvcwa5h/)
「で、春子のところへ行ってきたわけ?」
帰ってきた外谷場にきつめの語調で問いただす千尋。
「なんだ、お前には関係ないだろ?」
「関係ある。どうせ、あたしのことでも聞いてきたんでしょ」
やってらんない、と言わんばかりにプイッとそっぽを向く。
後ろからは外谷場の呆れたため息が聞こえた。聞こえるようにため息をついたんだ。
「あのなぁ、自惚れんなよ。俺は別に、お前らのトモダチ関係を結ばせようなんてするつもりないんだから」
「むしろ、引き裂いているって思わないの?」
千尋の言葉はお構いなしに、話を続ける。
「俺は、お前と契約を結んじまったからここにいるだけで、何もお前らに干渉するつもりはねぇっての。お前さえ、生きていりゃいい」
「・・・・」
外谷場のほうへ顔を上げる千尋。
外谷場の言葉は、分かりやすくて、同情や邪心は感じられなくて、いい。落ち着く。なんだか、許せる。
「ま、自分たちのことは自分たちで何とかしろよ」
それだけ言って、外谷場はすぐに眠ってしまった。
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